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最終的に行き着くところに行くお話
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よくある話だ。
愛読書の悪役令嬢に転生した。
テンプレだな、というのが最初の感想だった。
とはいえ、始めのうちは悪役にされるのを回避しようと頑張った。
兄に媚を売り、両親に自分を認めさせた。
「私は小説とは違って、愛される侯爵家のお姫様となった」
両親は優秀で美しい私を可愛がった。
兄は自分に懐く私を溺愛した。
私は見た目も心も醜い嫌われ者の悪役令嬢にはならなかった。
見た目も心も美しいと言われるようになった。
けれどヒロインである妹がストーリー通りに現れた。
「見た目も心も美しいヒロイン。お父様の実の娘。私の腹違いの妹」
継母となった母は妹に当たりがきつい。
けれど小説とは違って虐待はしない。
私がなだめているから。
兄は妹を警戒している。
小説のように溺愛することはない。
父は小説通り、可愛がるわけでもなく邪険にするでもないどっちつかずの態度。
ヒロインである妹の母はすでに鬼籍。
「私は家族には愛されている。使用人達や領民にも。けれど、婚約者は…」
私の婚約者は、私を嫌っている。
小説では悪辣な悪役令嬢を嫌っていた。
この世界では、優秀過ぎる私を疎んでいる。
そしてヒロインである妹は、小説と同じように婚約者に近寄った。
私に虐められていると、婚約者に吹き込んだ。
「…どうして実の妹を虐めるんだ」
「そんなことはしておりません」
「嘘をつけ、本人が泣いて俺に頼ってきたんだぞ。お前は本当に最低な女だな」
…正直を言うと。
私は彼が嫌いだ。
私が優秀だからと疎むとか、性格最悪すぎる。
婚約者より婚約者の妹を信じるのも害にしかならない。
だから、もういいやと思った。
「私をお疑いなら、それでもいいですが…帰ってもらっていいですか?同じ空気を吸いたくないので」
「…は?」
「帰れ」
彼を追い出す。
そしてしばらくしてから、荷物をまとめて家出した。
何故って、彼と結婚するくらいなら家出した方がマシだから。
婚約は家同士の約束事で、簡単に覆せるとも思えない。
だから自由を手にするために、家出を強行したのである。
「この尻軽女!我が家に引き取ってもらった恩も忘れて、優しく接してくれた実の姉を悪者にして婚約者を寝とるなんて!」
「やはりお前など引き取るのではなかった…」
「もしあの子が無事に帰ってこなかったら…絶対に許さない!」
どうしてこうなるの?
私はこの世界のヒロインなのに。
きっとあの悪役令嬢が何かのバグなんだ。
あの悪役令嬢が悪いんだ。
「お姉様が私を虐めたんです!信じて!」
「心優しいあの子がそんなことをするものか!」
「お前はもううちでは面倒を見られない。出て行きなさい」
「…え?」
「お前は見た目はいいから、娼館にでも行けば雇ってもらえるだろう」
どうしてこうなるの?
私は悪くないのに。
あの悪役令嬢が、ちゃんと嫌われ役を演じないのが悪いのに。
私は屋敷を追い出され、結局娼館で働かざるを得なくなった。
愛読書の小説の世界にヒロインとして転生して、幸せになれると思ったのに…どうして。
「この馬鹿者が!」
父に打たれる。
「婚約者を信じず、婚約者の妹に手を出すなど何を考えている!?」
「あの女は出来がいいからと俺を見下してたんだ!だから仕返しのつもりで…」
また打たれる。
「彼女は見下すどころかお前を常に立てて、支えてくれていたんだぞ!馬鹿者が!」
「は?」
「お前はわからなかったのかもしれないがな、お前をよろしくと周りとの橋渡し役までこなしてくれていたんだ!お前は友達が多いと自分を誇っているが、実際には彼女が助けてくれた結果だったんだ!」
「…え?」
そんなの聞いていない。
そんなはずない。
「お前の愚行のせいで、我が家との付き合いを考え直したいという家が多い…なんてことをしてくれたんだ!」
「そ、そんな」
「お前は勘当だ!さっさと出て行け!」
生意気な婚約者を罵り、美しい婚約者の妹を愛した結果…家を出された。
弟が家を継ぐことになるらしい。
俺は数日もしないうちに飢えて、誰にも顧みられることがなくなった。
友達だと思っていた連中も、助けてくれなかった。
最終的には奴隷として人攫いに連れて行かれることとなった。
俺はどこから間違えたというのだろうか。
結論から言うと、私は数日で家族に確保された。
家出したが、家出先は隠居した田舎の祖父母の屋敷だったから。
祖父母がこっそりと家族に連絡を入れたらしい。
祖父母は突然家出してきた私を優しく受け入れてくれていたが、そこはしっかりしていた。
無事でよかったと兄に泣かれて、両親には叱られてしまったが…迷惑をかけたのに、それでも家族は私の味方だった。
「お前とあのアホの婚約はこちらから破棄したし、あの娘は家から追い出したから帰っておいで」
兄の言葉にホッとする。
どうやらあの人たちとはもう関わらなくていいらしい。
なら家出の理由はもうない。
「はい、お兄様」
「よかった…さあ、帰ろうか」
「はい」
兄と手を繋いで屋敷に帰る。
帰ったら、元婚約者からの慰謝料やら賠償金やらでお小遣いをたんまりもらえた。
何に使おうか考えて、私は一つの結論を出した。
私は今、小説家として活動している。
小説家というか、婚約者と妹に裏切られた経験をそのまま小説にして自費出版したのだ。
その赤裸々な内容にかなり世間は騒ぎ、本は飛ぶように売れた。
自費出版したのだが、十分すぎるほどのリターンがあった。
そして、そんなことをしていたら同じく婚約者を寝取られた経験を持つという男性との出会いもあった。
「君に話して心が軽くなったよ」
「それは良かった」
男性は私に悲しい過去を話して、心が楽になったらしい。
「ところで、このことを小説にするとか…ダメですか?」
「はは、ぜひ小説にでもなんにでもしてくれ。復讐なんて怒られるかもしれないが、やはり報復しないと気が済まないからな」
「よし、お任せください!」
私はその男性の経験も小説にして自費出版した。
結果、その男性を裏切った女性は影でコソコソ色々言われて今になって因果が巡っているらしい。
そのことで男性に感謝され、今では同じ傷を持つもの同士ということでお付き合いも始めている。
元婚約者とは人として付き合うのにも相性最悪だったし、なんだかんだでこうなってよかったのかもしれない。
今幸せだから、そう思うだけかもしれないけれど。
愛読書の悪役令嬢に転生した。
テンプレだな、というのが最初の感想だった。
とはいえ、始めのうちは悪役にされるのを回避しようと頑張った。
兄に媚を売り、両親に自分を認めさせた。
「私は小説とは違って、愛される侯爵家のお姫様となった」
両親は優秀で美しい私を可愛がった。
兄は自分に懐く私を溺愛した。
私は見た目も心も醜い嫌われ者の悪役令嬢にはならなかった。
見た目も心も美しいと言われるようになった。
けれどヒロインである妹がストーリー通りに現れた。
「見た目も心も美しいヒロイン。お父様の実の娘。私の腹違いの妹」
継母となった母は妹に当たりがきつい。
けれど小説とは違って虐待はしない。
私がなだめているから。
兄は妹を警戒している。
小説のように溺愛することはない。
父は小説通り、可愛がるわけでもなく邪険にするでもないどっちつかずの態度。
ヒロインである妹の母はすでに鬼籍。
「私は家族には愛されている。使用人達や領民にも。けれど、婚約者は…」
私の婚約者は、私を嫌っている。
小説では悪辣な悪役令嬢を嫌っていた。
この世界では、優秀過ぎる私を疎んでいる。
そしてヒロインである妹は、小説と同じように婚約者に近寄った。
私に虐められていると、婚約者に吹き込んだ。
「…どうして実の妹を虐めるんだ」
「そんなことはしておりません」
「嘘をつけ、本人が泣いて俺に頼ってきたんだぞ。お前は本当に最低な女だな」
…正直を言うと。
私は彼が嫌いだ。
私が優秀だからと疎むとか、性格最悪すぎる。
婚約者より婚約者の妹を信じるのも害にしかならない。
だから、もういいやと思った。
「私をお疑いなら、それでもいいですが…帰ってもらっていいですか?同じ空気を吸いたくないので」
「…は?」
「帰れ」
彼を追い出す。
そしてしばらくしてから、荷物をまとめて家出した。
何故って、彼と結婚するくらいなら家出した方がマシだから。
婚約は家同士の約束事で、簡単に覆せるとも思えない。
だから自由を手にするために、家出を強行したのである。
「この尻軽女!我が家に引き取ってもらった恩も忘れて、優しく接してくれた実の姉を悪者にして婚約者を寝とるなんて!」
「やはりお前など引き取るのではなかった…」
「もしあの子が無事に帰ってこなかったら…絶対に許さない!」
どうしてこうなるの?
私はこの世界のヒロインなのに。
きっとあの悪役令嬢が何かのバグなんだ。
あの悪役令嬢が悪いんだ。
「お姉様が私を虐めたんです!信じて!」
「心優しいあの子がそんなことをするものか!」
「お前はもううちでは面倒を見られない。出て行きなさい」
「…え?」
「お前は見た目はいいから、娼館にでも行けば雇ってもらえるだろう」
どうしてこうなるの?
私は悪くないのに。
あの悪役令嬢が、ちゃんと嫌われ役を演じないのが悪いのに。
私は屋敷を追い出され、結局娼館で働かざるを得なくなった。
愛読書の小説の世界にヒロインとして転生して、幸せになれると思ったのに…どうして。
「この馬鹿者が!」
父に打たれる。
「婚約者を信じず、婚約者の妹に手を出すなど何を考えている!?」
「あの女は出来がいいからと俺を見下してたんだ!だから仕返しのつもりで…」
また打たれる。
「彼女は見下すどころかお前を常に立てて、支えてくれていたんだぞ!馬鹿者が!」
「は?」
「お前はわからなかったのかもしれないがな、お前をよろしくと周りとの橋渡し役までこなしてくれていたんだ!お前は友達が多いと自分を誇っているが、実際には彼女が助けてくれた結果だったんだ!」
「…え?」
そんなの聞いていない。
そんなはずない。
「お前の愚行のせいで、我が家との付き合いを考え直したいという家が多い…なんてことをしてくれたんだ!」
「そ、そんな」
「お前は勘当だ!さっさと出て行け!」
生意気な婚約者を罵り、美しい婚約者の妹を愛した結果…家を出された。
弟が家を継ぐことになるらしい。
俺は数日もしないうちに飢えて、誰にも顧みられることがなくなった。
友達だと思っていた連中も、助けてくれなかった。
最終的には奴隷として人攫いに連れて行かれることとなった。
俺はどこから間違えたというのだろうか。
結論から言うと、私は数日で家族に確保された。
家出したが、家出先は隠居した田舎の祖父母の屋敷だったから。
祖父母がこっそりと家族に連絡を入れたらしい。
祖父母は突然家出してきた私を優しく受け入れてくれていたが、そこはしっかりしていた。
無事でよかったと兄に泣かれて、両親には叱られてしまったが…迷惑をかけたのに、それでも家族は私の味方だった。
「お前とあのアホの婚約はこちらから破棄したし、あの娘は家から追い出したから帰っておいで」
兄の言葉にホッとする。
どうやらあの人たちとはもう関わらなくていいらしい。
なら家出の理由はもうない。
「はい、お兄様」
「よかった…さあ、帰ろうか」
「はい」
兄と手を繋いで屋敷に帰る。
帰ったら、元婚約者からの慰謝料やら賠償金やらでお小遣いをたんまりもらえた。
何に使おうか考えて、私は一つの結論を出した。
私は今、小説家として活動している。
小説家というか、婚約者と妹に裏切られた経験をそのまま小説にして自費出版したのだ。
その赤裸々な内容にかなり世間は騒ぎ、本は飛ぶように売れた。
自費出版したのだが、十分すぎるほどのリターンがあった。
そして、そんなことをしていたら同じく婚約者を寝取られた経験を持つという男性との出会いもあった。
「君に話して心が軽くなったよ」
「それは良かった」
男性は私に悲しい過去を話して、心が楽になったらしい。
「ところで、このことを小説にするとか…ダメですか?」
「はは、ぜひ小説にでもなんにでもしてくれ。復讐なんて怒られるかもしれないが、やはり報復しないと気が済まないからな」
「よし、お任せください!」
私はその男性の経験も小説にして自費出版した。
結果、その男性を裏切った女性は影でコソコソ色々言われて今になって因果が巡っているらしい。
そのことで男性に感謝され、今では同じ傷を持つもの同士ということでお付き合いも始めている。
元婚約者とは人として付き合うのにも相性最悪だったし、なんだかんだでこうなってよかったのかもしれない。
今幸せだから、そう思うだけかもしれないけれど。
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