上 下
30 / 61

ショタジジイの気持ちを知る

しおりを挟む
「今日は楽しかったな、イザベル」

夫婦の寝室で、二人でベッドに横たわってそんな話をする。

「すごく楽しかったです!ありがとうございます、ユルリッシュ様。ユルリッシュ様と一緒にいると、すごく楽しいことばかりです!」

「はは、それは良かった。俺も、イザベルと一緒にいると幸せだ」

…今日のユルリッシュ様はなんだかすごく甘い。

「…どうした?イザベル」

「えっと…」

「なんだ、言ってみろ」

「…その、あんまりにもユルリッシュ様が優しいから、勘違いしてしまいそうというか」

「勘違い?」

ユルリッシュ様は首をかしげる。自意識過剰みたいで、自分で言うのは恥ずかしいんだけど。

「その、ユルリッシュ様に愛されてるのかなぁ…みたいな…」

「?イザベルは俺に愛されているだろう?」

「博愛精神的な意味じゃなくて、あの…恋愛感情で」

「…だから、その意味で愛されているだろう?」

「え?」

私が…ユルリッシュ様に、恋愛感情の意味で愛される?

「…?」

理解が追いつかない。

「…よし、イザベル。寝るのは少し後にしよう。少し話し合いが必要らしい」

にっこり笑ってそう言われて、身体を起こして話を聞く体勢に入る。

「あのな、イザベル。俺はイザベルが好きだぞ?」

やっぱり、改めて言われてもよくわからなかった。

…わからないというか、わかりたくないというか。

そう、また裏切られたら怖いから、理解したくなかったのだ。けれど、ユルリッシュ様の透き通るような綺麗な声での愛の告白は、たしかに頭に残ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼の義妹は、本当に可哀想な子だ。

下菊みこと
恋愛
ダークなお話です。 愛し合う二人、邪魔な義妹。その行き着く果ては? そんなお話です。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約者がわたくしの実妹と不貞行為を働いて、妊娠までさせたので責任を持って『贄』となっていただきましょう

下菊みこと
恋愛
裏切られたので、徹底的に復讐するお話。 ご都合主義のSS。 かなり暗くて、かなり悲しくて、双子以外全員自分勝手で、ざまぁとか言ってられないお話。 スカッとはしない。読後感絶対悪い。何があっても大丈夫な人にしかお勧めできません。 小説家になろう様でも投稿しています。

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

傷ついた第一王子殿下は、異母妹を可愛がる

下菊みこと
恋愛
お兄様が過保護なお話。ざまぁは添えるだけ。 クロヴィスは第一王子だが残念ながら兄弟がいなかった。実母も亡くし寂しい思いをしていたクロヴィスだが、義母である王妃の妊娠がわかる。生まれた妹を溺愛するクロヴィス。そんな妹に婚約者ができるらしい。二人の顔合わせの席をこっそり見守っていたクロヴィスは…。 小説家になろう様でも投稿しています。

何度死んで何度生まれ変わっても

下菊みこと
恋愛
ちょっとだけ人を選ぶお話かもしれないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです

ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?

妹が私の婚約者を奪うのはこれで九度目のことですが、父も私も特に気にしていません。なぜならば……

オコムラナオ
恋愛
「お前なんてもういらないから。別れてくれ。 代わりに俺は、レピアさんと婚約する」 妹のレピアに婚約者を奪われたレフィー侯爵令嬢は、「ああ、またか」と思った。 これまでにも、何度も妹に婚約者を奪われてきた。 しかしレフィー侯爵令嬢が、そのことを深く思い悩む様子はない。 彼女は胸のうちに、ある秘密を抱えていた。

処理中です...