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レルザン皇太子のお礼
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ティグロン毒餌事件から数日。レルザンがアンディーヴとプリュネにお礼の品を持ってきた。
「アンディー、プリュネ嬢。改めてお礼を言わせて欲しい。ありがとう」
「いえ、そんな」
「僕は何もしていませんよ」
「何を言う。アンディーは魔力の消費し過ぎで数日寝込むし、プリュネ嬢は女性の命とも呼べる髪を短くしてしまっただろう」
「髪ならまた伸びますもの」
「僕も今はすっかり回復しましたよ」
「それでも礼を言わせてくれ。本当にありがとう」
「…はい、レルザン皇太子殿下」
「兄上の力になれて嬉しいですよ」
「二人とも、これを受け取ってくれ」
「これは?」
「お礼の品だ。二人とも欲しい物を言ってくれないから、選ぶのにちょっと困った。気に入らなければ使わなくてもいいが、受け取ってくれると嬉しい」
「…兄上は強情っぱりですね。わかりました。受け取りましょう」
「わ、私なんかが受け取っていいんでしょうか…」
「ぜひ受け取ってくれ」
「は、はい」
二人が受け取ると、レルザンは満足して自室に戻る。アンディーヴとプリュネは箱を開けて驚いた。
「ティグロンの…」
「ぬいぐるみ、ですわね…」
「…兄上」
一体自分をいくつだと思っているのだろうか、あの兄は。
「…可愛いですね!」
「そう…ですね…」
「私、大切にします!」
「僕もですよ」
そうして二人とも部屋の一番目立つところにティグロンぬいぐるみを飾るのだった。
ー…
「…それで、ティグロンに毒餌を盛ったものはアンディーヴの命令と言っているんだな?」
「はい。殿下、ご兄弟を疑うのは心苦しいかもしれませんが、ここは…」
「いや。それならばなぜ自ら危険を冒してまでテレポートした?最悪魔力欠乏症で死に至るというのに」
「…それは」
「きっと俺とアンディーの仲が修復しかけているのが面白くない連中の仕業だ。探りを入れておけ」
「はい。殿下。ですが、どうか少しだけでも疑う心をお持ち下さい」
「…。そうだな、わかった。下がれ」
「はい」
「…。可愛い弟を、疑えるものかよ。あの娘が来てから、また優しい弟に戻ったのだ。疑えるわけがない」
レルザンには苦労が絶えないが、それを表に出さないくらいには成長している。皇太子として相応しくあるために。その座を譲ってくれた弟に恥ずかしい思いをさせないように。なんだかんだでブラコンなのだ。可愛い弟を疑うことなどできない。
「…案外と、面倒な立場だな。皇太子というのは」
こんな思いを弟にさせずに済んだ、という意味では自分が皇太子になってよかったかもしれない。
「アンディー、プリュネ嬢。改めてお礼を言わせて欲しい。ありがとう」
「いえ、そんな」
「僕は何もしていませんよ」
「何を言う。アンディーは魔力の消費し過ぎで数日寝込むし、プリュネ嬢は女性の命とも呼べる髪を短くしてしまっただろう」
「髪ならまた伸びますもの」
「僕も今はすっかり回復しましたよ」
「それでも礼を言わせてくれ。本当にありがとう」
「…はい、レルザン皇太子殿下」
「兄上の力になれて嬉しいですよ」
「二人とも、これを受け取ってくれ」
「これは?」
「お礼の品だ。二人とも欲しい物を言ってくれないから、選ぶのにちょっと困った。気に入らなければ使わなくてもいいが、受け取ってくれると嬉しい」
「…兄上は強情っぱりですね。わかりました。受け取りましょう」
「わ、私なんかが受け取っていいんでしょうか…」
「ぜひ受け取ってくれ」
「は、はい」
二人が受け取ると、レルザンは満足して自室に戻る。アンディーヴとプリュネは箱を開けて驚いた。
「ティグロンの…」
「ぬいぐるみ、ですわね…」
「…兄上」
一体自分をいくつだと思っているのだろうか、あの兄は。
「…可愛いですね!」
「そう…ですね…」
「私、大切にします!」
「僕もですよ」
そうして二人とも部屋の一番目立つところにティグロンぬいぐるみを飾るのだった。
ー…
「…それで、ティグロンに毒餌を盛ったものはアンディーヴの命令と言っているんだな?」
「はい。殿下、ご兄弟を疑うのは心苦しいかもしれませんが、ここは…」
「いや。それならばなぜ自ら危険を冒してまでテレポートした?最悪魔力欠乏症で死に至るというのに」
「…それは」
「きっと俺とアンディーの仲が修復しかけているのが面白くない連中の仕業だ。探りを入れておけ」
「はい。殿下。ですが、どうか少しだけでも疑う心をお持ち下さい」
「…。そうだな、わかった。下がれ」
「はい」
「…。可愛い弟を、疑えるものかよ。あの娘が来てから、また優しい弟に戻ったのだ。疑えるわけがない」
レルザンには苦労が絶えないが、それを表に出さないくらいには成長している。皇太子として相応しくあるために。その座を譲ってくれた弟に恥ずかしい思いをさせないように。なんだかんだでブラコンなのだ。可愛い弟を疑うことなどできない。
「…案外と、面倒な立場だな。皇太子というのは」
こんな思いを弟にさせずに済んだ、という意味では自分が皇太子になってよかったかもしれない。
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