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慈愛深いお嬢様は俺のモノ
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気持ち悪い。何もかもが気持ち悪い。大した努力もせずにただ貴族に生まれただけで幸せそうな奴らが気持ち悪い。平民に生まれたからって努力を投げ出して自堕落に過ごす奴らが気持ち悪い。俺はあいつらとは違う。いつか成り上がって全員見返してやる…。
ー…
「お嬢様、またスラム街の孤児を拾っていらしたのですか?お嬢様のお小遣いの範囲で雇っているとはいえ、いつか限界が来ますよ?」
俺の仕えるお嬢様は善人だ。吐き気がするほど人というものを信じている。はっきり言ってバカである。
「あら。まだまだお小遣いはあるわよ?」
「ですが、この間もお嬢様の隙を見て金目のものを盗んで逃げ出そうとした者がいたでしょう?俺が気付いて止めて治安部隊に突き出したから良かったですが、そうでなければお小遣いも何も無くなっていたかもしれませんよ?あまり人を信じ過ぎてはいけません」
「でも、可哀想なんだもの。それに、慈しむべき子供なのよ?」
気持ち悪い。ただ貴族として生まれただけで、こんなにも世界を優しいものだと、美しいものだと勘違い出来るこの女が気持ち悪い。
「そうですか。お嬢様が良いなら良いのです。ただ、もう少し自分を大事になさってください。人を受け入れるだけが優しさではありませんよ」
「わかったわ。そうだ!ねえ、今日から雇うあの子の指導をお願いしてもいいかしら?貴方の指導があればきっとすぐに上達するわ」
「わかりました。しっかりと一人前の執事に育て上げてみせましょう。…悪いことをしなければ、ですが」
「もう。可愛らしい子供よ?今度こそ大丈夫よ」
気持ち悪い。なんでそんなに人を信じられる?バカなのか。バカだった。
「では、俺は早速新人の研修に向かいます。失礼致しますね」
「あの子をよろしくね」
まるで弟を託すようにスラム街の孤児を俺に託す。なんでそんなに他人に愛情をかけられるんだ。意味がわからない。
ー…
…結局。今回拾ってきた孤児も金目のものを盗んで逃げ出そうとした。俺は証拠付きで治安部隊に引き渡した。あの女は裏切られたことを嘆くどころか、あの孤児のこれからを心配して泣いていた。バカなのか。バカだった。
「…お嬢様」
「悪いことをせずに、ここで働き続けていたら安定した生活が出来たでしょうに。可哀想だわ…」
「お嬢様。あの者を心配する必要はありません。お嬢様は裏切られたのです」
だから、あんなガキのために泣くなよ…。
「だって、可哀想なんだもの…どうして…」
「…お嬢様、失礼します」
バカを抱きしめてやる。
「え?」
「お嬢様が泣き止むまで、どうかこうして抱きしめさせてください。…優しいお嬢様。もう傷つかないでください。慈悲などかけるから、こうなるのですよ?」
「…そうね。でも、私はやっぱり孤児を見捨てることは出来ないわ。孤児院に預けても、孤児院によってはロクな扱いを受けないらしいし…私が引き取った方が幸せになれるはずだもの」
…バカはどこまでいってもバカだな。
「ならせめて、俺の目の届く範囲で。それならいつも通り、手遅れになる前になんとか出来ますから」
「今回みたいに?」
「ええ」
上目遣いで潤んだ瞳を向けてくるバカ。可愛らしいなんて思ってしまう自分が気持ち悪い。こんな気持ち悪い女のなにがいいのか自分でもわからない。
「お嬢様、落ち着きましたか?紅茶をお淹れ致しますね」
「ありがとう。貴方がいてくれて、本当に助かっているわ」
「過分なお言葉ですが…ありがとうございます」
これからもこの関係はきっと続く。気持ち悪い。けど、いつかこのバカが他の男のモノになると思うともっと気持ち悪いから、さっさとこのバカを手に入れられるように旦那様や奥様に色々吹き込んで俺を婚約者に据えようという流れを作っている。このままいけば俺も晴れて爵位持ちの婿養子だ。だから、はやく。はやく手に入れたいと思うのは、きっと成り上がるためだけだ。
ー…
「お嬢様、またスラム街の孤児を拾っていらしたのですか?お嬢様のお小遣いの範囲で雇っているとはいえ、いつか限界が来ますよ?」
俺の仕えるお嬢様は善人だ。吐き気がするほど人というものを信じている。はっきり言ってバカである。
「あら。まだまだお小遣いはあるわよ?」
「ですが、この間もお嬢様の隙を見て金目のものを盗んで逃げ出そうとした者がいたでしょう?俺が気付いて止めて治安部隊に突き出したから良かったですが、そうでなければお小遣いも何も無くなっていたかもしれませんよ?あまり人を信じ過ぎてはいけません」
「でも、可哀想なんだもの。それに、慈しむべき子供なのよ?」
気持ち悪い。ただ貴族として生まれただけで、こんなにも世界を優しいものだと、美しいものだと勘違い出来るこの女が気持ち悪い。
「そうですか。お嬢様が良いなら良いのです。ただ、もう少し自分を大事になさってください。人を受け入れるだけが優しさではありませんよ」
「わかったわ。そうだ!ねえ、今日から雇うあの子の指導をお願いしてもいいかしら?貴方の指導があればきっとすぐに上達するわ」
「わかりました。しっかりと一人前の執事に育て上げてみせましょう。…悪いことをしなければ、ですが」
「もう。可愛らしい子供よ?今度こそ大丈夫よ」
気持ち悪い。なんでそんなに人を信じられる?バカなのか。バカだった。
「では、俺は早速新人の研修に向かいます。失礼致しますね」
「あの子をよろしくね」
まるで弟を託すようにスラム街の孤児を俺に託す。なんでそんなに他人に愛情をかけられるんだ。意味がわからない。
ー…
…結局。今回拾ってきた孤児も金目のものを盗んで逃げ出そうとした。俺は証拠付きで治安部隊に引き渡した。あの女は裏切られたことを嘆くどころか、あの孤児のこれからを心配して泣いていた。バカなのか。バカだった。
「…お嬢様」
「悪いことをせずに、ここで働き続けていたら安定した生活が出来たでしょうに。可哀想だわ…」
「お嬢様。あの者を心配する必要はありません。お嬢様は裏切られたのです」
だから、あんなガキのために泣くなよ…。
「だって、可哀想なんだもの…どうして…」
「…お嬢様、失礼します」
バカを抱きしめてやる。
「え?」
「お嬢様が泣き止むまで、どうかこうして抱きしめさせてください。…優しいお嬢様。もう傷つかないでください。慈悲などかけるから、こうなるのですよ?」
「…そうね。でも、私はやっぱり孤児を見捨てることは出来ないわ。孤児院に預けても、孤児院によってはロクな扱いを受けないらしいし…私が引き取った方が幸せになれるはずだもの」
…バカはどこまでいってもバカだな。
「ならせめて、俺の目の届く範囲で。それならいつも通り、手遅れになる前になんとか出来ますから」
「今回みたいに?」
「ええ」
上目遣いで潤んだ瞳を向けてくるバカ。可愛らしいなんて思ってしまう自分が気持ち悪い。こんな気持ち悪い女のなにがいいのか自分でもわからない。
「お嬢様、落ち着きましたか?紅茶をお淹れ致しますね」
「ありがとう。貴方がいてくれて、本当に助かっているわ」
「過分なお言葉ですが…ありがとうございます」
これからもこの関係はきっと続く。気持ち悪い。けど、いつかこのバカが他の男のモノになると思うともっと気持ち悪いから、さっさとこのバカを手に入れられるように旦那様や奥様に色々吹き込んで俺を婚約者に据えようという流れを作っている。このままいけば俺も晴れて爵位持ちの婿養子だ。だから、はやく。はやく手に入れたいと思うのは、きっと成り上がるためだけだ。
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