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蛇足かもしれないその後の話
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兄様に、旦那様と話し合うと宣言した。
そして今、旦那様に時間を作ってもらって話し合いの席を設けた。
「旦那様、私…」
「本当にすまなかった」
旦那様は私に謝る。
それはなんの謝罪だろうか。
「君に我慢を強いて、人助けもなにもあったものじゃない。証明のしようはないが、本当に俺は従妹に…オーギュスティナに下心はなかった。でも、君に嫌な思いをさせたこともようやく身に染みてわかった」
「そうですか…」
結婚してから、二年。
たった二年だが、されども二年。
私もこれまで意地を張っていたのだが、旦那様が毎日死んだような顔をして私に謝ってきたり愛人をあてがおうとしても拒否したりするのでそろそろ気持ちが落ち着いてきた。
仕返しとしては、もう十分だと思えた。
「…ええ、認めましょう。たしかに旦那様はティナ様を愛人にする気はなくて、それに新しい愛人も欲していない」
「…!」
「それでも、壊れた愛情は元には戻らない。昔のような純粋な思いで貴方を愛することは私にはできない」
「レナ…そんなことを君に言わせたのは俺だ、本当にすまない…」
「…もう、いいです。いいんです。だから…夫婦関係を、やり直しましょう」
私の言葉に旦那様は驚く。
離縁を迫られるとでも思っていたらしい。
「え、離縁したい…のではなく?」
「まあ正直それも考えましたが、家同士の利益ある結婚に水を差すのもあれですし…私もこの二年でだいぶ病んでいた心も回復しましたし」
「そうか…君を追い詰めてしまって本当に申し訳なかった」
「この二年で十分謝罪は受けました。もうこれ以上は謝らないでよろしい。…私も、たくさん意地を張って意地悪をしたのですから。これでトントンです」
「レナ…!」
彼に重要な提案をするのはここから。
受け入れてくれるなら、もう一度真剣に彼と向き合おう。
「なので、夫婦として…その前に人としてもう一度お互いにきちんと向き合いましょう」
「ありがとう、レナ…!」
「けれど…夜の方は、私が完全に貴方を許し受け止められるようになるまで絶対強要しないでください。夫婦としてやり直しますが、きちんとやり直せるまで夫婦の触れ合いは禁止です。…よろしい?」
「!!!…もちろんだ。いくらでも待つ」
覚悟の決まった顔で頷く彼。
私たちはこの日を機に夫婦関係をやり直し始めた。
それからさらに三年。
朗報が届いた。
義兄に捕まっていたらしいティナ様だが、義兄が急逝したらしい。
ティナ様がなにかしたとかでもなく、ただただ偶然に偶然が重なっての避けようのない事後だったらしい。
可哀想なことだが、天罰だと思ってしまう。その義兄が全ての元凶なのだから。
「ティナ様は自由になったのですね」
「ああ。今は遺産を使ってお一人様を満喫している。君にも改めての謝罪の手紙が来ているが、読むか?」
「はい」
受け取ったのは長い手紙。そこには本当に当時下心はなかったこと、傷つけてしまったことへの心からの謝罪。そして近況が書いてあった。
旦那様と夫婦関係をやり直してだいぶ経ち、今では下心はなかったことも受け止められるし謝罪も心にスッと入ってきた。
そして未亡人となった彼女は、生活に困ることもなく今では一応ちゃんと自立して幸せだと知って…正直ほっとする自分がいた。
私が意地を張って愛人呼ばわりしたことで彼女は家を出て、結果全ての元凶たる義兄に捕まってしまったとどこか罪悪感を感じていたから。
ちなみに彼女たちは白い結婚だったらしく、新しい結婚相手も今探しているらしい。良い人が見つかることを祈る。
「ティナ様とも…いつかきちんと和解したいですね」
「!…そうか」
「もう少し心の整理がついてからになりますけど、いつかは…きっと」
旦那様ともだいぶ和解できてきたが、まだ夜の方は許してはない。
けれど子供も欲しいことだし、そろそろいいかなと思う自分もいる。
旦那様の子供が欲しいと思えるようになった時点で、だいぶ許せているとも思うし。
「旦那様」
「うん?」
「夜の方もチャレンジしてみますか?」
彼は私の言葉に目を見開いて、そして頷いた。
「優しく、大切にする」
「もう優先順位は間違えないでくださいね」
「もちろんだ」
まあ、雨降って地固まるということにしておいて欲しい。
そして今、旦那様に時間を作ってもらって話し合いの席を設けた。
「旦那様、私…」
「本当にすまなかった」
旦那様は私に謝る。
それはなんの謝罪だろうか。
「君に我慢を強いて、人助けもなにもあったものじゃない。証明のしようはないが、本当に俺は従妹に…オーギュスティナに下心はなかった。でも、君に嫌な思いをさせたこともようやく身に染みてわかった」
「そうですか…」
結婚してから、二年。
たった二年だが、されども二年。
私もこれまで意地を張っていたのだが、旦那様が毎日死んだような顔をして私に謝ってきたり愛人をあてがおうとしても拒否したりするのでそろそろ気持ちが落ち着いてきた。
仕返しとしては、もう十分だと思えた。
「…ええ、認めましょう。たしかに旦那様はティナ様を愛人にする気はなくて、それに新しい愛人も欲していない」
「…!」
「それでも、壊れた愛情は元には戻らない。昔のような純粋な思いで貴方を愛することは私にはできない」
「レナ…そんなことを君に言わせたのは俺だ、本当にすまない…」
「…もう、いいです。いいんです。だから…夫婦関係を、やり直しましょう」
私の言葉に旦那様は驚く。
離縁を迫られるとでも思っていたらしい。
「え、離縁したい…のではなく?」
「まあ正直それも考えましたが、家同士の利益ある結婚に水を差すのもあれですし…私もこの二年でだいぶ病んでいた心も回復しましたし」
「そうか…君を追い詰めてしまって本当に申し訳なかった」
「この二年で十分謝罪は受けました。もうこれ以上は謝らないでよろしい。…私も、たくさん意地を張って意地悪をしたのですから。これでトントンです」
「レナ…!」
彼に重要な提案をするのはここから。
受け入れてくれるなら、もう一度真剣に彼と向き合おう。
「なので、夫婦として…その前に人としてもう一度お互いにきちんと向き合いましょう」
「ありがとう、レナ…!」
「けれど…夜の方は、私が完全に貴方を許し受け止められるようになるまで絶対強要しないでください。夫婦としてやり直しますが、きちんとやり直せるまで夫婦の触れ合いは禁止です。…よろしい?」
「!!!…もちろんだ。いくらでも待つ」
覚悟の決まった顔で頷く彼。
私たちはこの日を機に夫婦関係をやり直し始めた。
それからさらに三年。
朗報が届いた。
義兄に捕まっていたらしいティナ様だが、義兄が急逝したらしい。
ティナ様がなにかしたとかでもなく、ただただ偶然に偶然が重なっての避けようのない事後だったらしい。
可哀想なことだが、天罰だと思ってしまう。その義兄が全ての元凶なのだから。
「ティナ様は自由になったのですね」
「ああ。今は遺産を使ってお一人様を満喫している。君にも改めての謝罪の手紙が来ているが、読むか?」
「はい」
受け取ったのは長い手紙。そこには本当に当時下心はなかったこと、傷つけてしまったことへの心からの謝罪。そして近況が書いてあった。
旦那様と夫婦関係をやり直してだいぶ経ち、今では下心はなかったことも受け止められるし謝罪も心にスッと入ってきた。
そして未亡人となった彼女は、生活に困ることもなく今では一応ちゃんと自立して幸せだと知って…正直ほっとする自分がいた。
私が意地を張って愛人呼ばわりしたことで彼女は家を出て、結果全ての元凶たる義兄に捕まってしまったとどこか罪悪感を感じていたから。
ちなみに彼女たちは白い結婚だったらしく、新しい結婚相手も今探しているらしい。良い人が見つかることを祈る。
「ティナ様とも…いつかきちんと和解したいですね」
「!…そうか」
「もう少し心の整理がついてからになりますけど、いつかは…きっと」
旦那様ともだいぶ和解できてきたが、まだ夜の方は許してはない。
けれど子供も欲しいことだし、そろそろいいかなと思う自分もいる。
旦那様の子供が欲しいと思えるようになった時点で、だいぶ許せているとも思うし。
「旦那様」
「うん?」
「夜の方もチャレンジしてみますか?」
彼は私の言葉に目を見開いて、そして頷いた。
「優しく、大切にする」
「もう優先順位は間違えないでくださいね」
「もちろんだ」
まあ、雨降って地固まるということにしておいて欲しい。
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