田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと

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黒の少年に変な虫がつかないようにそばで守る

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隣国の皇室から秘密の迎えが来て、リュックとアリス、シエルと共に転移魔法で皇居に招かれた。リュックと共に謁見室に入る。そこにはすでに皇帝陛下がいて、私達は礼を取る。

「面をあげよ。…ふむ、そなたが我が息子か?」

「…本当にそうかはわからないけど、多分」

リュックがそう答えれば、皇帝陛下はリュックを手招きする。

「もっと近くに寄るがいい。魔術で血の繋がりを調べる」

「わかった」

リュックが皇帝陛下のもとへ寄れば、魔術が発動した。キラキラした光にリュックが包まれて、その姿が輝く。

「…うむ。我が息子であることが証明された。…我が息子よ、これからは皇子としてここで過ごすのだ」

「うん。…俺、あんまり頭良くないけど頑張る」

「良い良い。すぐに慣れるだろう」

「…そうかな」

「そなた達も、良く我が息子を保護してくれた。おかげで大事な我が後継者を無事呼び寄せられた。礼を言う」

皇帝陛下はそう言うと、アリスを見て微笑んだ。

「聖者の色を持つ者に助けられたとは、有り難い。よければ我が息子のお披露目のパレードとパーティーに、そなたも参加してくれないか」

「え、あ、は、はい!僕でよろしければ!」

「よしよし。そこの二人も、頼むぞ」

「はい!」

「承知致しました」

ということで、私達はリュックのためのパレードとパーティーに参加することになった。















「わあ。御神輿の上ってこんな感じなんだね」

「さすがに僕も初めて乗ったよー!アリスティアお兄ちゃんもお兄様も初めてだよね?リュックは?」

「俺も初めてだ」

「私もさすがに神輿に担がれたことは今までなかったな」

神輿に担がれて、リュックのお披露目のパレードが始まる。

「パーティーも楽しみだね、アリスティアお兄ちゃん」

「そうだね、シエル様」

「リュック殿下も幸い歓迎されているようで、本当に良かったですね」

「ありがとう、ご当主様」

「今はもう、リュック殿下は皇子なのです。私のことはクロヴィスでいいのですよ」

リュックは私の言葉にちょっと困ったように笑う。

「…なんだか、やっぱり皇子様扱いには慣れそうにないな」

「リュック、大丈夫?」

「うん。…ただ、パーティーが終わって帰るまではずっと一緒にいて欲しい」

「うん、もちろんだよ」

話しながら、パレードを見る人々に手を振る私達。

「聖者様ー!皇子様ー!万歳ー!」

どうやらリュックもアリスも、相当に歓迎されているようだ。












パレードが終わると、今度はパーティー。リュックと、私とアリスとシエルも皇帝陛下と一緒に待機。この国の貴族の人々が全員集まったところで、皇帝陛下の後ろに続いて入場した。

「皆、ご苦労。今日は知っての通り、我が息子が帰還したので皆に挨拶のために集まってもらった。すでに魔術で血の証明も済んでいる。さらに、その息子を保護したのはこちらの聖者とその婚約者である」

みんな、アリスとリュックに視線を向ける。

「私は我が息子を後継者として育てる故、皆もそのつもりでいるように。」

そして私達は皇帝陛下に、あとは好きにパーティーを楽しめと言われて一緒に軽く食事を摂りながらお別れを惜しんでいた。けれど周りは当然放っておいてはくれなかった。

「第一皇子殿下、おかえりおめでとうございます!」

「聖者様、もしよろしければ俺と少しお話しませんか」

「あの、聖者様の婚約者の方ですよね?もしよろしければ是非あちらでお話などしませんか?」

「君は聖者様の婚約者の方の弟さんかな?料理は美味しいかな?」

貴族女性に言い寄られて少し嫌な気分になる。何故だか、そんな姿をアリスに見られたくはなかった。その間にも、アリスとリュックの周りの人だかりは大きくなる。これはアリスに女性に言い寄られている姿を見られるどころの騒ぎじゃなくなってきた。

「聖者様、もしよければ一緒にバルコニーで休憩でも…」

「聖者様、それよりもこれ美味しいですよ!よかったら食べませんか?」

「あ、ありがとう。でも、好きな食べ物は自分で取ります。お話も、楽しそうだけど今は大丈夫…」

リュックもアリスもガンガン迫ってくる貴族達にタジタジだ。アリスが他の男性に言い寄られているのを見て、何故だか不快になって割って入る。

「私の婚約者を口説かないでいただきたい。私は婚約者を大事にしていますから、貴方方がいくらアプローチしても無駄ですよ」

「な、そんなつもりでは…」

「あと、アリスは見た目は男装した美少女ですが普通に男ですから」

「え」

「ほら、皆様。アリスもリュック殿下も困っていらっしゃるので離していただけますか?」

さらっとリュックのことも攫って人の少ないエリアに逃げる。さすがにしつこく追ってくる人はおらず、また四人でゆっくり落ち着いて別れの挨拶をする。

「リュック…殿下。またお会い出来たら嬉しいです」

「俺も、いつになるかわからないけど立派な皇子様になったら連絡するね。多分、見てくれだけでもそれっぽくなったら連絡くらいいいよね?」

「そうですね!でも見てくれだけじゃ怒られちゃうかも」

「リュック殿下なら必ず素敵な皇太子になれますよ。ね、クロヴィス様」

「私もそう思いますよ、リュック殿下」

リュックとお別れの前にたくさん話して、パーティーが解散になると転移魔法で公爵邸に帰ることになった。

「リュック殿下、またいつか」

「必ずまたお会いしましょうね!」

「僕、連絡待ってます!」

「うん…またね、クロヴィス様、アリスティア様、シエル様。本当に楽しい時間をありがとう。必ずいつか連絡するからね」

手を軽く振って別れる。転移魔法が発動すると、次の瞬間には公爵邸でもう目の前にリュックはいない。…少し寂しいと思ったのは秘密だ。
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