田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと

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黒の少年は私の使い魔を嫌わないらしい

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「そういえば、クロヴィス様とシエル様ってどんな魔法が得意なんですか?」

アリスが、シエルと私に魔法について質問をしてくる。アリスは魔法が使えないから、逆に興味があるのだろう。

「僕の得意な魔法?僕はね、治癒魔法とか保護魔法より攻撃系の魔法…特に、雪とかつららとかの系統の魔法が得意だよ!もちろん攻撃しなくても、暑い日なんかに周囲の温度を下げたりも出来るんだ!」

シエルは得意げに胸を張る。可愛い。

「私は…そうだな。器用貧乏というか、どんな系統の魔法も使えるが一つを極めることが出来なかった。今はシエルに魔法の特訓で勝てるが、その内魔法では勝てなくなるだろう。その分武芸を磨いておかないと、魔法剣術でも負けそうで怖いな」

「でも、逆に言えばなんでも使えるのがお兄様の強みなんだよ!僕みたいな氷系の魔法を使う人には炎系の魔法で対処できるし、闇なら光、光なら闇、炎なら水、みたいに絶対的優位に立つことが出来るんだ!」

「闇と光の系統の魔法はそれぞれがそれぞれの特攻だから、優位とは違うけどな」

私はシエルの頭を撫でる。シエルは嬉しそうに笑う。それを見たアリスの表情が柔らかくなる。

「アリスティアお兄ちゃん、よかったら僕の魔法見る?さすがに高火力の魔法は邸内では使えないけど、ちょっとくらいなら見せられるよ!お庭行く?」

「え、いいの!?見たい見たい!」

「いーよ!ほら、手を貸して。アリスティアお兄ちゃん、行こう!」

シエルに手を引っ張られて庭に出るアリス。私も付いて行く。

「じゃあねー、とりあえず雪でも降らせてみる?雲からではなく魔法で頭上からだけど!」

「わー!本当に雪だー!」

頭上の高いところから柔らかな雪が降る。少し周囲の温度が肌寒くなるが、アリスは気にしていない様子だ。

「あとは…そうだなぁ、つららのイルミネーションとか?」

「つららのイルミネーション?」

「お兄様、手伝ってー!」

「わかった。任せろ」

シエルが庭につららを出現させる。後は私の出番だ。闇魔法で周囲を暗くして、光魔法でつららを照らす。

「わあ…!すごーい!!!」

「えへへ!でしょでしょ?」

感動して、思わずシエル様を抱きしめるアリス。思わず可愛いと思ってしまって、慌てて首を振る。私に男色の趣味はない。…可愛いと思ってしまった瞬間や首を振るところは、アリスにもシエルにも見られていなかった。よかった。特にシエルに見られると色々誤解されそうだからな。

「ふふ。アリスティアお兄ちゃん、そんなに感動したの?」

「した!シエル様すごい!クロヴィス様もすごい!」

「このくらい大したことはない」

そしてイルミネーションを解く。

「お兄様、つららの処理よろしくね!」

「わかった。いつまでもあっても邪魔だしな」

大きな炎を燃やしてつららを溶かした。アリスはその光景すら嬉しそうに、物珍しそうに見つめる。

「クロヴィス様とシエル様は本当にすごいです!天才ですね!」

「そうかなぁ。えへへ、アリスティアお兄ちゃんに褒められると嬉しい!」

「まあ、私は天才ではないがそれなりに使えるからな。天才はシエルの方だが、褒められて悪い気はしないな」

シエルはニコニコ笑顔で、それに対してアリスも笑顔になる。幸せな空間が広がっていた。

「すごく良いものを見せていただきました!クロヴィス様、シエル様。ありがとうございました!」

「うん、どういたしまして!」

「また見たければいつでも声をかけると良い。暇なら付き合う」

まあ、暇な時はそんなに多くないんだが。

「わあい!また見せてもらえるんですね!」

「そうだ!せっかくだから僕の使い魔を見せてあげるよ!」

「使い魔ですか!?ぜひ見たい!」

「おいで、リズ!」

シエルが使い魔を呼び出す。リズはいつ見ても可愛い、シエルにぴったりの使い魔だ。

「わあ、可愛い!」

「でしょでしょ!リズっていうんだ!とっても賢くて可愛い良い子なんだよ!」

「わあ…いいなぁ。僕も魔法が使えたら使い魔を作るのにな」

「アリスティアお兄ちゃんはどんな使い魔が欲しいの?」

「え?うーん…綺麗な子!」

アリスがそう言うと、シエルが私の服の裾を引っ張って上目遣いでお願いする。

「ねえお兄様、アリスティアお兄ちゃんにもお兄様の使い魔を見せてあげてよ。たくさん使い魔いるんだし、アリスティアお兄ちゃんが気に入った子がいたら譲ってあげて?」

「だが、アリスティアが気にいるだろうか?」

「アリスティアお兄ちゃんは女の子じゃないもん。そんなきゃーきゃー怖がらないよ」

そうだろうか。可愛い使い魔を作ったつもりが、シエル以外みんな嫌がるので見せるのはちょっと怖い。たが、シエルがそう言うのなら。

「…わかった。アリス、見てみるか?」

「もちろん見たいです!」

ということで、私は使い魔を呼び出した。様々な虫の使い魔。とてもかっこいいし可愛いと思うのだが、アリスの反応はどうだろうか?

「おー!クワガタにカブトムシ、蜂に蝶々に蚕!みんなカッコ可愛いね!」

「か、かっこいい?可愛い?」

「うん!すっごく素敵!」

アリスの反応を見たシエルが胸を張る。

「…ね?アリスティアお兄ちゃんに見せてよかったでしょ?僕もお兄様の使い魔は好きだけど、アリスティアお兄ちゃんなら気にいると思ったんだ!」

「…さすがはシエルだな。アリス、ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい。人によっては苦手だと避けられるんだ。私は好きで使い魔に選んだんだが、だからこそ嫌がられると悲しい。そんな風に喜んでもらえて、有り難い」

私はアリスの頭を撫でる。

「気に入った使い魔がいれば、アリスが呼び出したりすることも出来るようにしておくが」

「え、いいの!?じゃあ、この青い蝶々の子が欲しいな」

「わかった。…よし、これでアリスに所有権は移った。あとは、魔力の供給は引き続き私が請け負うようにしておいた。好きに愛でるといい」

「クロヴィス様!何から何まで本当にありがとう!嬉しい!」

アリスはサファイアを優しく撫でる。

「この子のお名前は?」

「サファイアだ」

「サファイア、よろしくね」

サファイアに丁寧に接するアリスに、好感を持つ。

「アリス。サファイアは使い魔だから、幾らでも触って大丈夫だぞ。そんなにやわじゃない」

「そうなんですか?サファイア、触っていい?」

「触っていいらしいぞ」

「サファイア、触るね。わあ、羽ってこんな感じなんだね!サファイア痛くない?大丈夫?」

「大丈夫だそうだ」

その後も私の通訳のもと、アリスはサファイアと交流を深めた。
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