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黒の少年は、私のために祈ってくれる
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ある日、商談を一つ成立させて帰る際に襲撃を受けた。魔法で返り討ちにして治安部隊に引き渡す。平気なふりをしていたが、馬車に戻り家路につくまでの間大分くらくらした。なんとか自分で治癒魔法の応急処置をするが、痛みで集中できない。まずいかもしれない。ひとまずポールの肩を借り、馬車を降りて屋敷内に戻る。
「クロヴィス様!?どうしたんですか!?何があったんですか!?」
「アリス、大丈夫だ。心配ない…」
「心配するに決まってるでしょう!リュック、治癒魔法かけて!!!」
「わかった!ご当主様、いいか?」
「…頼む。痛みで治癒魔法に集中出来なくて、自分では難しくてな。すまない」
リュックが治癒魔法をかけてくれる。その横でアリスが、私の手を握って励ましてくれた。
「魔法の使えない僕にはわからないけれど、僕の護衛になるくらいにはリュックの治癒魔法は優秀だとポールから聞いてます。きっとすぐ良くなるから、頑張ってください!」
そう言いながら、私の手を握るアリスの手は震えている。血を見て怖いのだろうに、健気に励ましてくれるアリスに癒される。
「アリス。不安にさせてすまない。でも、本当に大丈夫だ。リュックの治癒魔法で大分楽になってきた」
「…本当?」
「本当だ」
「よ、よかったぁ…リュック、どう?まだ魔力持ちそう?」
「俺は結構魔力ある方だから大丈夫。ただ、血のせいで傷口見えづらい。ポールさん、ご当主様の傷口を清潔なタオルで拭って欲しい」
リュックの指示でポールが清潔なタオルを持ってきた。
「ご当主様。失礼します」
「ああ、頼む…」
「…うん、とりあえずお腹は傷口塞がってきたね。太ももも血は止まったし。俺一人でも内側までしっかり治せると思うけど、一応終わったら治癒術師に見てもらってね」
「わかった。…アリスがリュックを雇って欲しいと言ってくれて、助かったな。リュックもアリスもありがとう」
「そんな、僕何も出来なくて…」
ポールも治癒魔法を使えるが、リュックは下手をするとポールと同等かそれ以上に治癒魔法を使えるようだ。助かる。だが、アリスは暗い顔をする。感情の色も暗い。何故アリスがそんな顔をするのかわからない。十分役に立ってくれているのに。
「アリス」
「…なんですか?」
「誰かがこうして手を握って側で励ましてくれるだけで、心強い。それが君で良かった。アリスのおかげで、私は頑張れる」
「…ふぇえええええ、クロヴィス様ぁあああああ!!!」
子供のように泣くアリス。その間に治癒は済んだ。
「はい、これで内側まで含めて治癒魔法は終了。ただ…やっぱり血が多く出ただろうから貧血も心配だし、血を増やすお薬をもらうためにも本当にちゃんと診てもらってね?」
「わかった。ほら、アリス。怪我は完全に治ったぞ」
「ふぇえええええ!!!よ、よがっだー!!!」
「心配かけてごめんな、アリス。君がそんなに泣き虫だとは思っていなかった」
「クロヴィス様ー!!!ご無事でなによりですー!!!」
すっかり元気になった私は、泣き止むまでアリスの頭を撫でた。ルー先生もその後に来てくれた。感染症もなさそう、治癒も完璧、ただ貧血気味だからと血を増やすお薬だけもらった。今回の襲撃はちょっと冷やっとしたので、最終的に無事に済んで良かった。
「でもクロヴィス様、なんであんな大怪我をしてたんですか?もう、怪我はしないで欲しいです」
「すまない、アリス…私は公爵であり、女王陛下の甥にあたる。そのことで、人から狙われやすい立場にあるらしい。私を排除したい人間は多いんだ」
「そ、そうなんですか…クロヴィス様は、いつも頑張ってるんですね…偉いです…」
何故アリスがそんなショックを受けるんだ。自分のことのように傷ついた顔をするアリスが理解できない。
「それならせめて、僕は毎日クロヴィス様の無事を祈りますね。呪われた黒の僕の願いが叶うかはわからないけど、祈ります」
なんで、呪われた黒を宿し誰よりも人の悪意に触れてきただろうアリスがこんなにも人に優しくできるんだ。
「…アリス。なんで君はそんなに人に優しくできるんだ?自分を冷遇した両親を怨むでもなく、縁談を押し付けた姉を非難するでもなく、シエルを可愛がりリュックを雇い入れ、私のために毎日祈るなんて。理解できない」
「え?うーん。別に僕は優しくないですけど…そう思うなら、それだけ僕がクロヴィス様を大好きってことでしょうか?」
バカじゃないのか。なんでそんなお人好しなんだ。息が苦しくなって、まるで海中に溺れる感覚。この感情は、なんだろう。
「…君は、変わってる」
何故か泣きたくなるような気持ちになった私に、いつもとは逆にアリスが頭を撫でた。
「クロヴィス様!?どうしたんですか!?何があったんですか!?」
「アリス、大丈夫だ。心配ない…」
「心配するに決まってるでしょう!リュック、治癒魔法かけて!!!」
「わかった!ご当主様、いいか?」
「…頼む。痛みで治癒魔法に集中出来なくて、自分では難しくてな。すまない」
リュックが治癒魔法をかけてくれる。その横でアリスが、私の手を握って励ましてくれた。
「魔法の使えない僕にはわからないけれど、僕の護衛になるくらいにはリュックの治癒魔法は優秀だとポールから聞いてます。きっとすぐ良くなるから、頑張ってください!」
そう言いながら、私の手を握るアリスの手は震えている。血を見て怖いのだろうに、健気に励ましてくれるアリスに癒される。
「アリス。不安にさせてすまない。でも、本当に大丈夫だ。リュックの治癒魔法で大分楽になってきた」
「…本当?」
「本当だ」
「よ、よかったぁ…リュック、どう?まだ魔力持ちそう?」
「俺は結構魔力ある方だから大丈夫。ただ、血のせいで傷口見えづらい。ポールさん、ご当主様の傷口を清潔なタオルで拭って欲しい」
リュックの指示でポールが清潔なタオルを持ってきた。
「ご当主様。失礼します」
「ああ、頼む…」
「…うん、とりあえずお腹は傷口塞がってきたね。太ももも血は止まったし。俺一人でも内側までしっかり治せると思うけど、一応終わったら治癒術師に見てもらってね」
「わかった。…アリスがリュックを雇って欲しいと言ってくれて、助かったな。リュックもアリスもありがとう」
「そんな、僕何も出来なくて…」
ポールも治癒魔法を使えるが、リュックは下手をするとポールと同等かそれ以上に治癒魔法を使えるようだ。助かる。だが、アリスは暗い顔をする。感情の色も暗い。何故アリスがそんな顔をするのかわからない。十分役に立ってくれているのに。
「アリス」
「…なんですか?」
「誰かがこうして手を握って側で励ましてくれるだけで、心強い。それが君で良かった。アリスのおかげで、私は頑張れる」
「…ふぇえええええ、クロヴィス様ぁあああああ!!!」
子供のように泣くアリス。その間に治癒は済んだ。
「はい、これで内側まで含めて治癒魔法は終了。ただ…やっぱり血が多く出ただろうから貧血も心配だし、血を増やすお薬をもらうためにも本当にちゃんと診てもらってね?」
「わかった。ほら、アリス。怪我は完全に治ったぞ」
「ふぇえええええ!!!よ、よがっだー!!!」
「心配かけてごめんな、アリス。君がそんなに泣き虫だとは思っていなかった」
「クロヴィス様ー!!!ご無事でなによりですー!!!」
すっかり元気になった私は、泣き止むまでアリスの頭を撫でた。ルー先生もその後に来てくれた。感染症もなさそう、治癒も完璧、ただ貧血気味だからと血を増やすお薬だけもらった。今回の襲撃はちょっと冷やっとしたので、最終的に無事に済んで良かった。
「でもクロヴィス様、なんであんな大怪我をしてたんですか?もう、怪我はしないで欲しいです」
「すまない、アリス…私は公爵であり、女王陛下の甥にあたる。そのことで、人から狙われやすい立場にあるらしい。私を排除したい人間は多いんだ」
「そ、そうなんですか…クロヴィス様は、いつも頑張ってるんですね…偉いです…」
何故アリスがそんなショックを受けるんだ。自分のことのように傷ついた顔をするアリスが理解できない。
「それならせめて、僕は毎日クロヴィス様の無事を祈りますね。呪われた黒の僕の願いが叶うかはわからないけど、祈ります」
なんで、呪われた黒を宿し誰よりも人の悪意に触れてきただろうアリスがこんなにも人に優しくできるんだ。
「…アリス。なんで君はそんなに人に優しくできるんだ?自分を冷遇した両親を怨むでもなく、縁談を押し付けた姉を非難するでもなく、シエルを可愛がりリュックを雇い入れ、私のために毎日祈るなんて。理解できない」
「え?うーん。別に僕は優しくないですけど…そう思うなら、それだけ僕がクロヴィス様を大好きってことでしょうか?」
バカじゃないのか。なんでそんなお人好しなんだ。息が苦しくなって、まるで海中に溺れる感覚。この感情は、なんだろう。
「…君は、変わってる」
何故か泣きたくなるような気持ちになった私に、いつもとは逆にアリスが頭を撫でた。
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