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黒の少年は一生懸命に尽くしてくれる

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「食物が総じて不作ですか」

「ああ、そうなんだ。農業国出身のアリスになら相談できるかと思ったんだが」

「そうですね…本当に一つも収穫出来てません?」

せっかくアリスがいるので、相談してみる。アリスは一緒に真剣に考えてくれるらしい。

「ブタエサと呼ばれる植物の実以外は全部ダメだな」

「ブタエサですか?」

「毒があって食用に向かないんだ。家畜用の飼料にしかならない」

私がそう言うと、アリスは目の色を変えた。

「クロヴィス様。僕は農業国出身です。そのプライドが有ります」

「あ、ああ」

「だからこそ自信を持って言いましょう」

アリスの目は、いつになく真剣だ。

「食べられないものは、食べられるように調理すれば良いのです!!!」

「え」

「せっかくの実りを無駄にしない!!!」

「あ…ああ、わかった…?」

ということで私は、ブタエサをアリスに見てもらうことにした。

「とりあえず実物を見てみて、色々な調理方法を試してみましょう」

「飢饉が起きるよりはブタエサを食用に転用した方がマシだからな。実現できればいいんだが」

「大丈夫です。僕が腹を壊してでも実現させます」

「…無理だけはしないでくれ」

そしてブタエサを見たアリスは固まった。

「…く、クロヴィス様」

「ああ」

「これがブタエサですか…?」

「そうだ。やはり食用には向かないだろうか」

「…もったいなーい!!!」

私は思わず耳を抑えた。びっくりした。

「奥様。これ、じゃがいもですよね。我が国のと品種は違うけど」

「マリスビリー。まさしくじゃがいもだよ!ああ、もったいない!宝の山なのに!!!」

「た、宝の山?」

「我が祖国とだいぶ離れたこの国です。食文化の違いは仕方ない。けれど、ブタエサと呼ばれるこの食物は我が祖国ではじゃがいもと呼ばれる人気の食材なのです!」

「人気の!?」

私は思わず目を見張る。

「でも、クロヴィス様。チャンスです」

「え」

「これだけのじゃがいもがあれば、流通に問題はない。あとは、新たな食文化として広められれば飢饉が回避出来ます!さらにはビジネスチャンスです!」

「!!!」

「クロヴィス様。やりましょう」

アリスが決意を持ってそう言う。私は力強く頷いた。

「ああ。私達で、食の革命を起こそう」

こうして、私とアリスは食の革命を始めた。

「というわけで、まずは実際にブタエサに耐性のない使用人の皆様と共に我が国の食文化に触れてみましょう」

「俺ことマリスビリー監修のじゃがいも料理の数々、召し上がれー」

ということで、私たちは早速じゃがいも料理を大量生産して食べてみる。使用人たちはみんな最初は毒が怖いとおっかなびっくりだったが…。

「…ポテトフライってやつめちゃくちゃ美味い!!!」

「え、じゃがバターってやつシンプルに超美味いんだけど」

「待って!このウィンナーとブタエサの炒め物美味しい!」

「おいおい、マッシュポテト?これすごい美味いぞ」

「ビーフシチューに入ったブタエサ美味すぎ!」

ここがチャンスだとアリスはみんなに説明する。

「じゃがいもは確かに芽とかに毒はあるけど、その辺をちゃんと処理をして調理すると普通に食べられるんだ」

「ブタエサがねぇ…」

「あとそのネーミングセンス!!!」

アリスは吠える。食べ物への熱意が伝わってくる。

「ブタエサ、じゃなくて〝じゃがいも〟を主流の呼び方にしよう!処理と調理の方法を正しく広めよう!そして美味しさを宣伝しよう!それだけでじゃがいもは宝の山になる!間違いない!」

みんなその主張に頷いた。

「確かにこれなら、名前を変えて正しい知識さえ広まればいけそう」

「まさにビジネスチャンス」

「でもみんな、いくら飢饉が間近とはいえ最初は怖いと思う」

「それなんだが」

私の考えを述べる。

「叔母上…女王陛下に広告塔になって貰おうと思う」

「え!?ご当主様!?」

「私は女王陛下から特別信頼されているし、心配するな」

そして、私は女王陛下に直談判。女王陛下は私の訴えを受けて、ブタエサを〝じゃがいも〟として食用に転用することを宣言された。様々な策を講じて、じゃがいもを定着させる女王陛下には頭が上がらない。

「…結果的に、美味しさが広まったら早かったですね。クロヴィス様」

「正しい処理と調理の方法も合わせて公表したからな。今では国民食だ」

ということで、公爵領はもちろん国全体が飢饉から救われた。結果的にビジネスチャンスをモノにできたので税収も増えてウハウハである。

我が婚約者アリスはその見た目の美しさもあり、〝農業国から来た美食の神〟なんてエラい持ち上げられ方をされている。ちなみに普通に男性服を着ているのに、私との婚約関係とその見た目のせいで男装の麗人だと勘違いされていた。

「とりあえず、お国の役に立てて良かったです」

「もちろん我が公爵家の役にも立ってくれたぞ。ありがとう、アリス」

「えへへ」

頭を撫でられて気持ち良さげなアリス。女性だったらさぞモテるだろうに、もったいない。

「アリスティアお兄ちゃん!ポテトフライ一緒に食べよう!」

「うん!一緒に食べよう!」

シエルも今ではじゃがいもの虜だ。本当に色々、よかったと思う。…そして、ここまで国に、公爵領に尽くしてくれたアリスに心から感謝をした。
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