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お姉様の真実
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お姉様に助けられた。私はあんな事をしたのに。お姉様を呪ったから、呪詛返しを受けたのに、お姉様は私を助けてくれた。私に人間の形を与えてくれた。私を痩せさせてくれた。そして、お姉様の護衛は私の身体中の皮をなんとかしてくれるという。
「よく聞きなよ。あんたの皮を取る方法は、本当に取るしかない」
「…どういう、意味?」
「剣で切る」
「!?」
つまりは私を殺すって事…?そうよね、私みたいな妹がいたら、お姉様は安心して過ごせないもの。仕方がないわよね。
「…なんか勘違いしてない?別にあんたを殺したりはしない。拷問もしない。まあ、拷問されるよりキツいと思うけど」
「え?」
どういう事?
「俺、治癒魔法の天才なんだよね。だから、あんたの皮を切ってはあんたに治癒魔法をかける。皮を生きたまま剥がれるのは、正直どんな拷問よりキツいよ。それでも、ミレイ様を喜ばせるために耐え切れる?そして、どれだけ苦痛だったかも隠せる?」
「…」
お姉様は、こんなどうしようもない私を助けてくれた。だから、そんなお姉様に報いることが出来るなら、私は…。
「…耐えます。隠せます。お願いします」
「…わかった。本当に耐え切ったら、俺はあんたを尊敬するよ。ミレイ様にした事は許さないけど、一使用人としてあんたの更生を支える。頑張りな」
「はい」
そこからは本当に苦痛だった。皮を生きたまま剥がれるその痛みは尋常じゃない。痛みは決して引いてくれず、ずっと痛いままが続いた。何度も失神しては、痛みで無理矢理意識を引き戻されて、また失神する。その繰り返し。痛くて痛くて、呪詛返しを受けた時と同じくらい…下手したら更に強い苦痛が襲う。けれど、お姉様に報いるため、お姉様を喜ばせるために私は耐えた。耐え切った。エドは言った。
「ご苦労さん。今のあんた、すごい綺麗だよ」
「…ありがとう」
そして私は、今度こそ本当に失神した。
ー…
ここ、どこ?
夢の中。私は目覚めた。そこはまるでこの世ではないどこかのような、幻想的な風景。花が咲き乱れ、蝶が飛び交う。
「マノン」
お姉様!?
「お姉様、あの、私…」
「久しぶりね」
久しぶり?
「お姉様…?」
「マノン。貴女には話すわ。よく聞いてね。…今まで貴女を助けるために奔走してくれた彼女は、私ではないの」
「…?」
お姉様は何を言ってるの?
「順を追って話すわ。よく聞いてね。私は神の愛し子だった。これは良いわよね?」
「うん」
「貴女が私にした仕打ちを神は嘆き、私を天に召し上げたの。それにミレイさんという少女が巻き込まれてしまったの。私は神に、空になった私の身体にミレイさんの魂を繋ぎ止めて欲しいと願ったの。そして今に至るの」
「えっ…そんな…」
いつから、お姉様はお姉様じゃなかったの…?
「ミレイさんが私の身体に繋ぎ止められたのは、あの馬車の一件。それ以降に貴女がした行為は、全部ミレイさんに」
「じゃあ、何もしていないミレイさんを私は呪い殺すところだったの…?」
「ええ、そうよ」
「そんな…」
私…ミレイさんになんてこと…。
「それでもミレイさんは貴女を許して、助けようと奔走してくれた。私からももちろん謝るしお礼を言うけど、貴女もちゃんとミレイさんに謝ってお礼を言ってね?」
「…はい、お姉様」
「それと…」
「…?」
「…貴女に、あそこまでさせてしまってごめんなさい」
「え…」
「貴女をあそこまで追い詰めてしまって、ごめんなさい」
「お姉様…」
「私、貴女を大切に思っていた。でも、伝え切れてなかったかもしれない。私、何か貴女にしてしまったなら…本当に…ごめんね」
違うんです、お姉様。
「お姉様、私…私はお姉様が大好きだったの」
「え…?」
「私はお姉様を愛していた」
「…本当に?」
「うん。今でもそうなの。お姉様が大好きなの。愛してるの」
「なら…どうして…」
「ごめんなさい…素直になれなかっただけなの…それを拗らせて…お姉様に大好きだといえる人達に嫉妬して…ごめんなさいっ!」
「…マノン」
お姉様は私を抱きしめてくれる。
「私もマノンが大好きよ。愛してるわ。何をされても、結局貴女が大切だった。ミレイさんに、貴女を恨まないで欲しいと頼んでしまうほどに…」
「お姉様…」
「マノン。私はこれからも、天の国で貴女達を見守っています。だからね、どうかやり直して。幸せに老け込んでから、天の国に来てね」
「…はい、お姉様!」
「あと、ミレイさんのことをよろしくね。ミレイさん、本当に優し過ぎるくらい優しいから…」
「はい。ミレイお姉様(・・・)を必ずお支えします!」
「…ふふ。うん、お願いね。大好きよ、マノン。さようなら」
「はい、お姉様。またいつか」
「ええ。またいつか」
そして眼が覚めると、暗い地下牢。ああ、もう一度眠らないと…。そして、目が覚めて、ミレイお姉様が来たら謝り倒そう。それで許されるとは思わないけれど、誠心誠意、謝るんだ。そして、ミレイお姉様の妹として良い子になろう。私がミレイお姉様に出来ることなんて、それくらいなのだから。
「よく聞きなよ。あんたの皮を取る方法は、本当に取るしかない」
「…どういう、意味?」
「剣で切る」
「!?」
つまりは私を殺すって事…?そうよね、私みたいな妹がいたら、お姉様は安心して過ごせないもの。仕方がないわよね。
「…なんか勘違いしてない?別にあんたを殺したりはしない。拷問もしない。まあ、拷問されるよりキツいと思うけど」
「え?」
どういう事?
「俺、治癒魔法の天才なんだよね。だから、あんたの皮を切ってはあんたに治癒魔法をかける。皮を生きたまま剥がれるのは、正直どんな拷問よりキツいよ。それでも、ミレイ様を喜ばせるために耐え切れる?そして、どれだけ苦痛だったかも隠せる?」
「…」
お姉様は、こんなどうしようもない私を助けてくれた。だから、そんなお姉様に報いることが出来るなら、私は…。
「…耐えます。隠せます。お願いします」
「…わかった。本当に耐え切ったら、俺はあんたを尊敬するよ。ミレイ様にした事は許さないけど、一使用人としてあんたの更生を支える。頑張りな」
「はい」
そこからは本当に苦痛だった。皮を生きたまま剥がれるその痛みは尋常じゃない。痛みは決して引いてくれず、ずっと痛いままが続いた。何度も失神しては、痛みで無理矢理意識を引き戻されて、また失神する。その繰り返し。痛くて痛くて、呪詛返しを受けた時と同じくらい…下手したら更に強い苦痛が襲う。けれど、お姉様に報いるため、お姉様を喜ばせるために私は耐えた。耐え切った。エドは言った。
「ご苦労さん。今のあんた、すごい綺麗だよ」
「…ありがとう」
そして私は、今度こそ本当に失神した。
ー…
ここ、どこ?
夢の中。私は目覚めた。そこはまるでこの世ではないどこかのような、幻想的な風景。花が咲き乱れ、蝶が飛び交う。
「マノン」
お姉様!?
「お姉様、あの、私…」
「久しぶりね」
久しぶり?
「お姉様…?」
「マノン。貴女には話すわ。よく聞いてね。…今まで貴女を助けるために奔走してくれた彼女は、私ではないの」
「…?」
お姉様は何を言ってるの?
「順を追って話すわ。よく聞いてね。私は神の愛し子だった。これは良いわよね?」
「うん」
「貴女が私にした仕打ちを神は嘆き、私を天に召し上げたの。それにミレイさんという少女が巻き込まれてしまったの。私は神に、空になった私の身体にミレイさんの魂を繋ぎ止めて欲しいと願ったの。そして今に至るの」
「えっ…そんな…」
いつから、お姉様はお姉様じゃなかったの…?
「ミレイさんが私の身体に繋ぎ止められたのは、あの馬車の一件。それ以降に貴女がした行為は、全部ミレイさんに」
「じゃあ、何もしていないミレイさんを私は呪い殺すところだったの…?」
「ええ、そうよ」
「そんな…」
私…ミレイさんになんてこと…。
「それでもミレイさんは貴女を許して、助けようと奔走してくれた。私からももちろん謝るしお礼を言うけど、貴女もちゃんとミレイさんに謝ってお礼を言ってね?」
「…はい、お姉様」
「それと…」
「…?」
「…貴女に、あそこまでさせてしまってごめんなさい」
「え…」
「貴女をあそこまで追い詰めてしまって、ごめんなさい」
「お姉様…」
「私、貴女を大切に思っていた。でも、伝え切れてなかったかもしれない。私、何か貴女にしてしまったなら…本当に…ごめんね」
違うんです、お姉様。
「お姉様、私…私はお姉様が大好きだったの」
「え…?」
「私はお姉様を愛していた」
「…本当に?」
「うん。今でもそうなの。お姉様が大好きなの。愛してるの」
「なら…どうして…」
「ごめんなさい…素直になれなかっただけなの…それを拗らせて…お姉様に大好きだといえる人達に嫉妬して…ごめんなさいっ!」
「…マノン」
お姉様は私を抱きしめてくれる。
「私もマノンが大好きよ。愛してるわ。何をされても、結局貴女が大切だった。ミレイさんに、貴女を恨まないで欲しいと頼んでしまうほどに…」
「お姉様…」
「マノン。私はこれからも、天の国で貴女達を見守っています。だからね、どうかやり直して。幸せに老け込んでから、天の国に来てね」
「…はい、お姉様!」
「あと、ミレイさんのことをよろしくね。ミレイさん、本当に優し過ぎるくらい優しいから…」
「はい。ミレイお姉様(・・・)を必ずお支えします!」
「…ふふ。うん、お願いね。大好きよ、マノン。さようなら」
「はい、お姉様。またいつか」
「ええ。またいつか」
そして眼が覚めると、暗い地下牢。ああ、もう一度眠らないと…。そして、目が覚めて、ミレイお姉様が来たら謝り倒そう。それで許されるとは思わないけれど、誠心誠意、謝るんだ。そして、ミレイお姉様の妹として良い子になろう。私がミレイお姉様に出来ることなんて、それくらいなのだから。
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