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婚約者は面白くないそうです

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先輩方に協力してもらいつつコラムを書いてみる。とりあえずまずは魔法薬が如何に貴重かということと、これから価格崩壊しない程度に量産できるシステムを作るべきだということを書いてみる。先輩方は価格崩壊しない程度に量産できるシステムを作るという考えがなかったらしく、関心された。

「魔法薬の量産をシステム化かぁ。凄くいいアイデアだと思うよ」

「ただ、魔法薬を作るには良質な薬草や水の他に魔力を必要とするからなぁ…」

「魔法薬は需要に対して供給が少ない。価格崩壊しない程度に量産するというのはこれから必要になるとは思う。…問題は作り手の少なさだな」

「魔力がないと作れませんからね…魔力を多く持つ貴族はわざわざ魔法薬を作らなくてもお金がありますから…」

「俺達みたいに魔法薬の研究に没頭する貴族なんて希だしなぁ」

「僕は爵位を継がないから薬師になるつもりだけど、他の貴族の次男や三男なんかは婿養子に入ったりとか教会で出家するのが普通だしね」

「俺の妹達はみんな良家に嫁ぐことが決まってる。薬師になりたがる貴族なんてまずいない」

「だからこそ、国が支援してシステム化した方が良いと思うんですよね」

「国が支援かぁ…なるほどなぁ。潤沢な資金を調達出来れば、あるいは…いやでも、魔力がある奴は金があるしなぁ?」

「あ、待って。確か魔力を増強する魔法薬も有ったよね?それを貧しい平民に飲ませて、その平民を薬師として育てるシステムを作るとかは?」

「それならなんとかなりそうだな。今のところ国庫も潤っているし、いっそのこと上申するか?」

「待て待てお前たち、なんで学園新聞のコラムからそこまで話が広がるんだ?上申しても変わり者扱いを受けるだけだ、やめておけ。フェリクス殿下の御世になったらミレイ君から提案すれば良いだろう」

「ちぇっ!良い案だと思うんだけどなー」

「まあでもそうなるよね」

「ミレイ、フェリクス殿下によろしく」

「わかりました!頑張って提案してみます!」

「だから、フェリクス殿下の御世になったらって言ってるだろうに」

そんなことを話しながらコラムも書き上げ、イレール先生に提出する。さあ帰ろうと帰り支度を始めた時、部室のドアが開いた。

「ミレイ、今日は用事があって帰りが遅くなったんだ。一緒に帰ろう?」

「フェリクス様!ありがとうございます、一緒に帰ります!」

フェリクス様と帰れるなんて嬉しいな。

「やあ、皆様ご機嫌よう。僕の婚約者がお世話になってます」

「フェリクス殿下、ご機嫌よう。こちらこそ、ミレイ様にはとても良くしていただいてます」

「ご機嫌よう。フェリクス殿下とミレイ様はラブラブですね!いやぁ、羨ましい限りです!」

「ご機嫌よう。ミレイ様はとても魔法薬の研究に没頭しておいでです。やる気のある入部生に来てもらえて皆とても喜んでいます」

「ご機嫌よう、フェリクス殿下。ミレイ君が学園新聞のコラムを書いたので、よかったら今度読んでみてください。とても良い記事だと思います」

「そっかそっか。先輩方も先生も、本当にミレイをありがとうございます。これからもよろしくお願いします」

「こちらこそ」

「じゃ、帰るよ、ミレイ」

「あっ…は、はい!」

自然に恋人繋ぎで手を握られて、フェリクス様に連れられて帰る。顔が赤くなった私を、先輩方も先生もニヤニヤ笑いながら見送ってくれた。もう!先輩方も先生もこういう時には意地悪です!

「…ミレイ」

「はい、フェリクス様」

「魔法薬研究部ってあんなに男ばっかりなんだね?」

にっこり笑って振り返るフェリクス様。黒いオーラが見える。私なにかしちゃった?

「…ま、ミレイはそういう意味で魔法薬研究部に入部したわけじゃないのはわかっているけれどね」

フェリクス様は私の頬をむにょむにょと弄る。

「フェリクス様、何か怒ってますか?」

「君鈍すぎ。怒ってるんじゃなくて…嫉妬してんの」

嫉妬?なんで?

「その顔は分かってないな…はぁ。まあ、いいよ。分かって変にあいつらを意識されるより、何も考えてない方がよっぽどマシ」

「あいつら?意識?」

「なんでもないよ。…ああ、もう寮に着いたね。また明日」

「はい、また明日!」

フェリクス様の背中が見えなくなるまで手を振る。フェリクス様は時折振り向いて手を振ってくれた。ああ、今日も充実した一日だったなぁ。
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