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いつの間にか太った身体がスレンダーになっていた

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魔力増強用の魔法薬を価格崩壊しない程度に製作して売り捌き、さあどうだと鏡の前に立つ。いつの間にか、太った身体はスレンダーになっていた。

天の国でみたミレイユ様そのものの姿を見て、思わずガッツポーズ。

「お嬢様、やっと元のお嬢様に戻りましたね!」

「ルナさんの支え合ってこそだよー。ありがとう、ルナさん」

「お嬢様…!お嬢様にそう言っていただけて、ルナは幸せです!」

ルナさんとハイタッチアンドハグ。やっとここまで来たよー。これでもう魔法薬の製作は必要ないね。

「エド!どう?見違えた?」

「うん!顔の無駄な肉が落ちたら、すっごい美人だね!ミレイ様が美しくなって、僕嬉しいよ!」

「ありがとう!嬉しい!」

エドともハイタッチアンドハグ。きゃーきゃーと三人で騒ぐ。

「お父様ー!お母様ー!見てください、痩せましたよ!」

「あら、しばらく見ない間に元に戻ったのね。すごいわ、ミレイユ。お母様は鼻が高いわ。ルナ、エド。ミレイユを支えてくれてありがとう」

お母様が私をきつく抱きしめて褒めてくれる。お母様が離れたと思ったら、今度はお父様が抱きしめてくれた。

「ミレイユ。本当にすまなかった。お前が元の美しさを取り戻せて本当に良かった。愛してるよ、お前は私達の宝物だ。…マノンも、そうなんだがなぁ…」

しょぼんとするお父様。お母様も俯いてしまった。事情を知るルナさんと、ルナさんから大体の話を聞いていたエドも押し黙る。

「…」

「そうだ。せっかく美貌を取り戻せたんだから、なにかお祝いをしよう。今日はお前の好きな苺のケーキを用意させるよ。なにかプレゼントも用意しよう。何が欲しい?なんでも言ってみなさい」

「あら、とても素敵な考えですわ。ミレイユ、私からも何か贈りたいわ。何が欲しい?言ってみなさい?」

お祝いかぁ。欲しいものは特にないなぁ。

「じゃあ、我儘を言ってもいいですか?」

「もちろん」

「何が欲しいの?」

「孤児院に寄付して欲しいんです。ダメですか?」

おそらくお父様とお母様のポケットマネーから寄付して貰えれば相当孤児院の経営も楽になるはずなんだけど。

「まあ…!ミレイユは本当に良い子ね。わかったわ。そうしましょう」

「ミレイユは私達の誇りだな」

良かった。

「ありがとうございます。お父様、お母様!」

ぎゅっとお父様とお母様に抱きつく。お父様とお母様は私の頭を撫でてくれた。

その後部屋に戻ると、フェリクス様が来た。

「やあ、ミレイ。ご機嫌よう」

「ご機嫌よう、フェリクス様」

「いやー、見違えたね!すごく綺麗になった!可愛らしいよ、僕の花嫁」

大仰な態度でそういうフェリクス様は相変わらずのようだ。

「もう!普通にお祝いしてくれてもいいじゃないですか!」

「おや?僕は可愛らしいと褒めたのに、皮肉に聞こえた?捻くれてるのは君の心の方じゃないかな?」

「フェーリークースー様ー?」

「あっははははは!君をからかうのは楽しいなぁ!」

「もー!」

「牛の真似かな?」

「いい加減怒りますよ!」

「わかったわかった。…ミレイ。これあげるよ」

フェリクス様が差し出してくれたのは指輪。

「指輪ですか?」

「うん。婚約指輪。今君が着けているのは、ミレイユに贈った指輪だから。けじめ、だね」

どこか寂しそうに笑った後、フェリクス様はミレイユ様に贈られたという婚約指輪を私の指から外し、可愛らしいデザインの新しい婚約指輪を私の指にはめてくれた。

「うん。やっぱり似合う。可愛いよ、ミレイ」

「あ、ありがとうございます。フェリクス様…」

直球の褒め言葉に思わず照れる。フェリクス様はそんな私の頬を摘んだ。

「まあ、それだけ。じゃあ、僕は忙しいからこれで」

「また来てくださいね、フェリクス様」

「暇があればね」

フェリクス様は帰っていった。…私のための婚約指輪。私はフェリクス様にとって、ミレイユ様の代わりではなく全く違う一人の女の子なんだと思ったら、なんだか嬉しくなった。
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