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婚約の発表

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「とりあえず、そろそろ公式に婚約を発表するからね」

「は、はい。なんだか緊張してしまいますね」

「そうだね。明日には新聞の一面で出るだろうし」

「うう…」

「きっとしばらくはかなり騒がれるだろうね」

そう言って余裕そうに笑うサミュエル様。

「なんでサミュエル様はそんなに余裕なんですかー」

「だって、緊張なんかよりやっとアンナと婚約出来た嬉しさの方が大きいんだもの」

「うっ…」

そんなことを言われるとつい意識してしまう。

「あれ?アンナ顔真っ赤だよ。可愛いっ!」

「さ、サミュエル様っ!」

可愛い、という言葉にすら反応してしまう。サミュエル様が昔から本気で私を愛してくれていただなんて、そう思うとなんか、なんか…言語化出来ない感情に襲われてしまう。

「ふふ。それで、今日には父上の方から国内に向けて婚約が発表されて明日の朝には多分新聞に載って。明日の午後は国民向けのパレードがあるからね」

「パレードかぁ」

「教会の用意したお神輿に乗って国民たちに手を振るだけだよ」

「でも緊張します」

「それなら、もう片方の手でアンナの手を握っていてあげる」

こんなふうに、と手を絡めるサミュエル様。

…なんか恥ずかしいっ!

「べ、別の意味で緊張してしまいますっ」

「ふふ、そっか。僕が昔から本気でアンナが好きだって分かってから、反応が可愛いね」

「うう…」

だって意識しちゃうんです…。

「嬉しいな。早くアンナも僕を好きになってね」

「え」

「まだ恋愛感情はないんでしょう?」

なんでもお見通しなサミュエル様に固まる。

「あ、でもその調子ならすぐに両思いになれそうだね。よかったよかった」

「さ、サミュエル様っ」

いつのまにかこんなにもかっこよくなっていたサミュエル様に、翻弄されっぱなしです。
















ということで、教会プロデュースのお神輿に乗っけられて街中をぐるぐると回っています。

なるべく優雅に見えるように、国民たちに応えるように手を振ればみんな「お幸せにー!」とか「万歳!」とか声援をくれます。

「みんな喜んでくれてるね」

「祝福していただけてよかった…」

ずっと年上で、しかも主従関係なわけで。祝福してもらえるかと不安でしたが、新聞の力はすごい。

私を主人のために尽くした素晴らしい女性だと、主従関係を超えたラブロマンスだと大々的に宣伝してくれたおかげで国内は祝福ムード。

ありがたや。

「…アンナ」

「はい」

「愛してるよ」

サミュエル様に呼ばれたので、一旦国民たちからサミュエル様に視線を移す。するとサミュエル様は突然私の頬にキスをした。

「…!?」

「ふふ、隙ありってね」

真っ赤になって固まる私。余裕の表情のサミュエル様。そして湧き立つ国民たち。

私はまたも撃沈するのでした。
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