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教会で行われた公式な謝罪

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突然お兄様から連絡があった。なんでもクレマン様とリナさんから教会に、私に対して公式に謝罪をしたいと申し出があったそうなのだ。

貴族にとってそれは耐えがたい屈辱のはず。呑気な方の私ですら余程のことを仕出かさない限りやりたくない。

それでも謝罪を申し出るということは、やっと反省してくれた…のかな?正直その気持ちだけで十分だけれど、本人たちがそうしたいならさせてあげても良いかもしれない。

…ここのところの色々に対する溜飲が下がりそうだし。

なんて、ちょっと意地悪なことを思いつつ謝罪を受け入れることにした。お兄様もオーケーしてくれた。

「ということなので、今日はちょっと今からお仕事を抜けさせていただきますね」

「今から教会に行くの?」

「はい」

「…護衛を貸してあげようか?大丈夫?」

「大丈夫ですよ」

さすがにあの二人が尊厳を破壊されるほどの屈辱を感じたとしても、教会という場で滅多なことはしないだろう。

「では、行ってきます」

「気をつけてね」

心配そうに見送ってくださるサミュエル様を見て、早く終わらせて帰ってこようと決めた。














教会に着くと、お兄様が先に待っていた。お兄様と共に神父様に案内され、神の御前に通される。教会の最奥にある、神の像。世界にたった一つの、神を象った大切なモノ。どんな人生でも、そうそうお目にかかれない。

その前で、今から謝罪を受ける。

私たちが像の前に来たら、続いてクレマン様とリナさんが現れた。そして、神の前で手をついて頭を床に擦り付けて詫びる。

「我々は貴女に対して罪を働きました。申し訳ございませんでした」

「申し訳ありませんでした…」

そのあまりの必死な様子に、溜飲が下がるどころかむしろ居た堪れない気持ちになる。神の御前での謝罪ってみんなこうなの?

「わ、わかりました!受け入れます!受け入れますから顔を上げてください。ほら、立って!仲直りです!今から仲直り!」

私がそう言えば、二人は顔を上げて立つ。二人とも憔悴しきった顔で、悲壮感が漂う。

「これにより、神の御前での謝罪は受け入れられました。お二人とも、神にもアンナ様にもお許しいただけましたよ。良かったですね」

何も良くないよ!?と神父様に言いたくなって口を噤む。言っちゃダメだ。二人がいくら可哀想でも言っちゃダメだ。

兎にも角にもそれで謝罪は終了。神父様とお兄様という見届け人も頷いてくれたので、クレマン様とリナさんは一応神に許された。そして私ももう許した…あの謝罪を見せられたらさすがに許すしかなかった…。

そして無事サミュエル様の元に戻り、謝罪を受けたことを報告した。

「それで、どうだった?謝罪を受けて」

「うーん…色々と衝撃的で全部吹っ飛びました」

「そんなに?」

「はい。ただ、婚約していた頃のモヤモヤとは完全におさらば出来た気がします」

「それなら良かった」

とりあえず、私の人生前半における最大の問題はこれで区切りをつけられたとは思う。

…と、考えていたので将来的にさらに一悶着あるとはこの時には夢にも思っていなかった。
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