上 下
61 / 97

アンナの自慢話をする

しおりを挟む
「…でさ、アンナにプレゼントがしたいって言い出してさ。アンナに花束をプレゼントしてて微笑ましかったんだよなぁ」

「へえ、第三王子殿下はとても愛らしいですね!」

「だろ?それもこれもアンナのおかげだな。うちの弟はアンナにそれはもう懐いていてなぁ」

「さすがはアンナ様だ」

「俺や兄上もアンナのことは本当に信頼していてな」

同年代の貴族連中と茶を飲む機会があり、俺はここぞとばかりにアンナの話をする。

「第一王子殿下や第二王子殿下からの信頼を得られるなんて、アンナ様は本当に素晴らしいお方なのですね」

「弟を安心して任せられる。人として誰にも負けない魅力があるよ」

「おお…」

「その魅力に気付かないような男がいるのなら、さぞ見る目のない凡骨だろうなぁ…」

俺の言葉に目の色が変わる奴も、当然いる。

「そうでしょうね!アンナ様のような素晴らしい女性に捨てられた男がいるのなら後はないでしょう!」

「だよなぁ」

「それも国教に反する行いをしたのなら、許されることではない」

「俺もそう思うよ」

「きっと、そんな男がいれば周りから人が離れていくでしょうね」

口々にここにいない誰かさんを責め立てる連中。きっと、家に帰れば両親にこの話をするだろう。そうなれば当然、この話を聞いた全員が王族の不信を買った男からは逃げようとするだろうなぁ。

いくら公爵家の息子殿とはいえ、周りから距離を取られればいずれは破滅に向かうだろうに…どうしてこの展開を予想できなかったんだろうか。サミュエルのお気に入りだと知った時点で、手のひらを返せばまだやり直せたかもしれないのに。

「まあでも、もしそんな男がいたとして…それを誑かして喜んでいる女がいたとしたら、当然地雷だよな」

「それはまた慎みのない…もしそんな女性がいたとしたら、高貴な血が流れているとは思えませんね」

「きっと、病気か何かで貴族としての教育を受けられていないのでしょう」

「常識を身につけないまま外に放り出すなど、親も貴族の風上にも置けませんね」

「まあ当然、そんな女性はそもそも貴族ではないと思いますが」

言いたい放題だな。この分なら伯爵家も立場がなくなるだろうなぁ。

「まあだが、もしそんなことが起こったなら一番の問題は国教に反する行いだろうなぁ」

「そうですね!」

「まったくです」

「許されませんね」

父上のこともあるからかあまり強く言及はしないが、たしかに拒絶を示す連中。

「まあともかく、何事においても自衛は大事だよな」

「そうですね!もし仮にそんな男女がいたのなら関わらないのが一番です!」

「少なくともうちは今後近づかないでしょうね」

「自衛は大事ですよね、本当に」

うんうんと頷くのを見て、まあこんなもんでいいかと話題を逸らす。仕込みは完了。ここまで露骨にやれば、目に見えて効果が出るのも早いだろう。あくまでも第二王子だからできることで、兄上にはこんな真似させられないからな。うん、頑張った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。

待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。 妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。 ……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。 けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します! 自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。

当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。

可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?

愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

【本編完結】聖女は辺境伯に嫁ぎますが、彼には好きな人が、聖女にはとある秘密がありました。

彩華(あやはな)
恋愛
王命により、グレンディール・アルザイド辺境伯に嫁いだ聖女シェリル。彼には病気持ちのニーナと言う大事な人がいた。彼から提示された白い結婚を盛り込んだ契約書にサインをしたシェリルは伯爵夫人という形に囚われることなく自分の趣味の薬作りを満喫してながら、ギルドに売っていく。ある日病気で苦しむニーナの病気を治した事でシェリルの運命は変わっていく。グレンディールがなにかと近づくようになったのだ。そんな彼女はとある秘密を抱えていた・・・。

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

悪役令嬢っぽい子に転生しました。潔く死のうとしたらなんかみんな優しくなりました。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したので自殺したら未遂になって、みんながごめんなさいしてきたお話。 ご都合主義のハッピーエンドのSS。 …ハッピーエンド??? 小説家になろう様でも投稿しています。 救われてるのか地獄に突き進んでるのかわからない方向に行くので、読後感は保証できません。

なんでそんなに婚約者が嫌いなのかと問われた殿下が、婚約者である私にわざわざ理由を聞きに来たんですけど。

下菊みこと
恋愛
侍従くんの一言でさくっと全部解決に向かうお話。 ご都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...