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第一王子殿下の優しさ

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「やあ、おはようアンナ」

「おはようございます、第一王子殿下!」

薔薇園の方で第三王子殿下を膝枕していると、第一王子殿下がいらっしゃった。

第一王子殿下は、朝必ず第三王子殿下に会いに来る。第三王子殿下の顔を見るとやる気が出るとおっしゃっていた。

そして…最初は弟である第三王子殿下にしか興味がない様子だったが、最近は私のことも気にかけてくださる。大変に有り難い。

「最近サミュエルもやんちゃ盛りのようだけど、しんどくないかい?」

「いえいえとんでもない!第三王子殿下のお世話をするのが私の幸せですから」

「君はまさにお世話係の鑑だね」

にっこり笑う第一王子殿下は、まだ十五歳なのにこの美貌だ。大人になったら…あと三年も経てばかなりのイケメンになるだろう。

そんな第一王子殿下は、第三王子殿下を甘やかすのが最近の趣味だとおっしゃっていた。初対面から半年しか経っていないのに、いいお兄ちゃんだと思う。

そんな第一王子殿下は、最近前にも増して勉学に励み鍛錬を重ねているらしい。文武両道の王子さまはかっこいい。いつかは第三王子殿下にもそうなって欲しいと思う。

「サミュエルは今では健康になって幸せそうにしているし、君には感謝しているよ」

「もったいないお言葉をいただき光栄です!でも、頑張ったのは第三王子殿下ご自身ですから」

「そうだね。でも、きっかけをくれたのも支えてやってくれたのも君だよ」

そう言って微笑まれて、嬉しくなる。

「ありがとうございます!」

「…君には話しておこうかな」

「なんでしょうか」

「近々、私は父上にサミュエルを本宮に戻すよう提言する予定だ」

そう言った第一王子殿下は、覚悟を決めた表情をしていた。

「上手くいけば、サミュエルはこちらに戻ってくる。その時、君にもサミュエルと共にこちらに移って欲しいんだ。お世話係を続けてやって欲しい」

「…っ!喜んで!」

最近の第一王子殿下は、努力に磨きをかけていた。その理由は、次代の王として相応しい姿を見せて求心力を高め己の発言力を持つためだったんだ。そしてそれは、第三王子殿下のため…。

「第一王子殿下」

「うん」

「本当に、本当にありがとうございます!」

「ふふ、可愛い弟のためだからね」

第一王子殿下は心もイケメンだ。

「…んん、ラジエルお兄様?」

「やあ、サミュエル。おはよう、良い朝だね」

「おはよう!」

そこで第三王子殿下が起きた。第三王子殿下は第一王子殿下を見てパッと表情が明るくなる。

「今日は今から鍛錬があるから、また明日ゆっくりお話しようね」

「えー、もういっちゃうの?」

わがままを言えるようになってきた第三王子殿下。良い変化だと思う。

「ふふ、また明日来るから」

「約束だよ!」

「うん、約束だ」

可愛い約束を、私はそっと見守った。
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