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私の悩み

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「はぁ…」

「大丈夫かい?アンナ」

「お兄様…」

「…よしよし、アンナはいい子だね」

何度目かわからないため息に、優しく微笑んで頭を撫でてくれるお兄様。

私、アンナ・ミラ・ディオールは公爵家に生まれた娘。栗色の髪と瞳の、貴族であること以外何も持たない平凡な娘だ。十五歳になって、それなりに色々気を遣っているのだがどうしても垢抜けない感じ…。

「ほら、アンナ。この髪飾りすごく似合ってるよ」

「お兄様、ありがとう」

「…お世辞じゃないよ?私の妹はこんなに可愛い」

そう言って微笑むお兄様は、ヴィクトル・ガブリエル・ディオール。私の実の兄で、公爵家の正統な後継者。昔からすごく優秀な人で、お兄様がいれば公爵家も安泰だろうと言われている。

私とお揃いの栗色の髪に、私とは違う緑色の瞳。残念ながらイケメンとは行かないが、優しく微笑んだ時の穏やかな雰囲気は人を惹きつける。まだ二十歳なのにちょっと色気があるのが狡い。が、妹である私にはすごく甘いのが玉に瑕かな。

そんな兄は私の自慢だが、だからこそ言えない。…婚約者との関係に悩んでいるなんて言ったら、お兄様は私のために無茶をしかねないから。

「さて、そろそろ悩みを聞かせてくれるかな?」

「ええっと…その…」

「妹に頼られたら、すごく嬉しいのだけど」

「…ごめんなさい」

「…まだ言えない?」

こくりと頷いた私に、お兄様は困ったような表情を浮かべた。それでもお兄様は、私を尊重してくれる。

「なら、まだ待つよ。話す気になれば、いつでも呼んで。妹を甘やかすのは兄の特権だからね」

そう言ってお兄様は、再度私の頭を撫でてから席を立った。お兄様は五つほど歳が離れているからか、私を甘やかすのがすごく上手い。本当に言いたくないことは無理に聞いてくることはないのだ。

「ごめんなさい、お兄様…」

結局は困らせるだけ困らせて、上手く甘えることすら出来ない私。そんな私にも優しいお兄様に、罪悪感が芽生えただけだった。

「うーん…」

私は、婚約者との関係に悩んでいる。いや…正確に言うのならば、婚約者とその幼馴染に悩まされている。

浮気ではない…らしいが、アウトじゃなかろうかと思う二人に悶々としている。

そして、そんな二人を見てある願望まで芽生えてしまった。

「お父様とお母様に言えば、おそらく認めてもらえると思うけど…」

婚約者のことを責めたり、問い詰めたり、婚約の白紙化をおねだりするのは許されないだろう。けれど、この願望くらいは叶えてくれる…と思う。

公爵家にとっても決して悪い話じゃない。

ただ…全てが簡単に、思う通りに行くだろうか。

「うー…ん」

お父様とお母様にお話するか、否か。まだ、考えはまとまらない。
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