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婚約者のライバルである友達と放課後2

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ハリーのエスコートで街に向かって歩きます。ハリーはうきうきわくわくといった雰囲気で、瞳もきらきらと輝いていますが、それでも私の歩調に合わせてゆっくり歩いてくださいます。

「ふふ」

「うん?ユーナ、どうかしたかい?」

「いや、私もこうしてお友達とお出かけ出来るのが楽しいんですけど」

「うん」

「ハリーはもっと楽しそうだなって思って」

私の言葉に何故か顔を赤くするハリー。

「すまない。少し浮かれ過ぎてしまったかもしれない」

「いえ、そんな!私も同じ気持ちですから!」

「…ふふ、それはよかった」

「あ!ハリー、見てください!焼き芋屋さんですよ!」

「ほう!これが焼き芋屋か!珍しいな!」

「本当ですね!でも、平民の皆様にとっては馴染みのお店らしいですよ!」

「なんと!そうなのか!」

私達貴族には焼き芋そのものが馴染みが薄いのです。ましてや焼き芋屋さんなんて初めてみるのです。

「もしかしてこれは、買ってすぐに食べられるのだろうか?」

「毒味係がいないのはちょっと不安ですけど、せっかくですし買ってみましょうか?」

「そうだな、是非食べてみよう」

焼き芋屋さんで焼き芋を買います。店員さんが親切で、私はもちろんハリーもこのお店を気に入ったようです。

「よし、じゃあ早速買い食いというものをしてみよう」

「はい!是非!では早速いただきます!」

「いただきます」

うーん、美味しい!蜜たっぷりで、ほくほくで、ねっとりしていてとても美味しい!

「温かいですね!」

「冷たくない温かい出来立ての料理がこれほど美味しいとは」

「案外こういう面では平民の皆様の方が恵まれているのかも知れませんね!」

「そうだな。僕達の食事は基本的に決まったものばかりだし、冷めた頃に食べるからちょっと味が落ちる」

「そうですね、今日はとっても楽しいです!」

知らなかった平民の皆様の暮らしぶりも少し知れましたし!

「ふふ。そんなに喜んでくれると誘った甲斐があったよ」

「さあ!次に行きましょう!」

「ふふ。はいはい」

「まあ!見てください、ハリー!ドーナツ屋さんですよ!」

「ふふ。じゃあ行ってみようか」

ドーナツ屋さんでもドーナツを買って食べてみます。

「うーん、出来立てのドーナツがこんなに美味しいなんて!」

「これは嵌ってしまいそうだね」

「ええ、とっても!」

「チョコレートがかかっているのもなかなか美味しい」

「プレーンも美味しいですよ!一口食べますか?」

「あ、…うん、いただくよ」

何故かお顔が真っ赤なハリー。私が食べたところを齧ります。

「…美味しいね」

「よかった!」

「ユーナもチョコレートドーナツ一口食べるかい?」

「ええ、是非!」

ハリーがくれたチョコレートドーナツを一口ぱくり。

「うーん、美味しいー!」

「ふふ。ユーナは本当に幸せそうに食べるね。見ていて気持ちが良いよ」

「そ、そうですか?ありがとうございます」

私も今顔が真っ赤です。二人して顔が真っ赤なので他人からみたらカップルに見えちゃうかも知れません。

「それにしても」

「?はい」

「これでお互い間接キスしちゃったね」

私の顔が余計に真っ赤になります。そこまで考えていませんでした。

「…あ、ごめんなさい。いつもノアとしているのでつい」

私がそういうと、ハリーは一瞬苦い顔をしましたがその後すぐに笑顔になりました。

「そっかそっか。でも僕は間接キスでもユーナに触れられて嬉しいよ」

ハリーったらまた冗談を。案外楽しい人なようです。

「ふふ。ハリーは本当に冗談がお上手ね」

「冗談ではないよ」

「ふふふ、ハリーったら」

「…これだけ口説いても伝わらないかぁ」

「え?」

「ふふ、なんでもないよ。さあそろそろ帰ろう。あとは手配しておいた馬車で送るよ」

「ええ、それじゃあお邪魔します」

「さあ、僕の手に捕まって」

「はい」

そうして楽しく話しながら馬車に乗って帰りました。とっても楽しかったです!
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