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婚約者と離れて家に帰る時が一番辛い
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「はい、ユリア、着いたよ」
「送ってくれてありがとう、ノア」
「…それは大丈夫、僕はただユリアと一緒に居たかっただけだし。ほら、僕の手に掴まって」
「ありがとう」
馬車から降りる時に手を貸してくれるノア。嬉しいけど…正直このまま帰りたくない。私は両親と折り合いが悪いのだ。
「あのさ、ユリア。やっぱり、僕の家に泊まりに来なよ。あいつ、いるんでしょ?」
あいつ、というのはノアが毛嫌いする私の姉、マリアナ・オルコットだ。姉は私と違って見た目も性格も成績もとてもいい。それなのに平凡な私を大切な妹だと言ってくれる優しい人だ。ノアと婚約する前は、私にとって唯一の味方だった。今はノアが居てくれるけれど。私なんかよりむしろ姉の方がノアに相応しいと何度思ったことか。まあ、姉にも姉に相応しい素晴らしい婚約者がいるのだが。姉の婚約者、アルバート・サンチェスは遠縁の親戚で、将来家の婿養子に来て、爵位を継ぐことになっていたりする。姉が私を大切な妹だと紹介してくれたおかげで将来の義兄として優しく接してくれている、いい人だ。
何故ノアが姉を毛嫌いするかというと、私が昔姉に劣等感を感じていたこと(ノアの婚約者になってからは劣等感ではなく憧れを持っている)、いつも両親や他人から姉と比べられて悪口を言われたり酷い扱いを受けていた上に、使用人からすら虐めを受けていたこと(ノアの婚約者になってからはそういったことはなくなった)が理由だ。
姉はずっと私の味方をしてくれていたし、私を守ってくれていたのだけれど、姉と比べられて周りから可愛がられることがなかったのも事実なので、ノアとしては気に入らないらしい。
ただ、周りから虐められても気にせず背筋をしゃんと伸ばして強気でいた私の姿を見て、「可愛いのにかっこいい!」とノアが私に惚れ込んでくれて、父に是非婚約者にしたいと直談判してくれたのが私達の馴れ初めなので、いつか姉とも仲良くして欲しいなと思う。
「何度も言うようだけど、お姉様は本当に何も悪くないのよ?それどころか私を守ってくれていたのだから、そんなに毛嫌いしないで?」
「…でも、ユリアはあいつのせいで辛い思いをしてきたのに」
「そんなことないわ、心優しいお姉様に何度も救われたのよ?」
「…まあ、ユリアがそういうなら」
「ごめんなさい、私を気遣ってくれたのよね、ありがとう」
優しくノアを抱きしめる。ノアも抱きしめ返してくれる。…うん、私にはこんな素敵な婚約者がいるのだもの、大丈夫。
「じゃあ、私はこれで。また明日ね、ノア」
「うん、また明日迎えにくるよ、ユリア」
毎日、こうして家の前でノアと離れる時が一番苦しい。でも、少しでも両親と姉と仲良く出来るように頑張ろう。将来の旦那様の為にもね。
「送ってくれてありがとう、ノア」
「…それは大丈夫、僕はただユリアと一緒に居たかっただけだし。ほら、僕の手に掴まって」
「ありがとう」
馬車から降りる時に手を貸してくれるノア。嬉しいけど…正直このまま帰りたくない。私は両親と折り合いが悪いのだ。
「あのさ、ユリア。やっぱり、僕の家に泊まりに来なよ。あいつ、いるんでしょ?」
あいつ、というのはノアが毛嫌いする私の姉、マリアナ・オルコットだ。姉は私と違って見た目も性格も成績もとてもいい。それなのに平凡な私を大切な妹だと言ってくれる優しい人だ。ノアと婚約する前は、私にとって唯一の味方だった。今はノアが居てくれるけれど。私なんかよりむしろ姉の方がノアに相応しいと何度思ったことか。まあ、姉にも姉に相応しい素晴らしい婚約者がいるのだが。姉の婚約者、アルバート・サンチェスは遠縁の親戚で、将来家の婿養子に来て、爵位を継ぐことになっていたりする。姉が私を大切な妹だと紹介してくれたおかげで将来の義兄として優しく接してくれている、いい人だ。
何故ノアが姉を毛嫌いするかというと、私が昔姉に劣等感を感じていたこと(ノアの婚約者になってからは劣等感ではなく憧れを持っている)、いつも両親や他人から姉と比べられて悪口を言われたり酷い扱いを受けていた上に、使用人からすら虐めを受けていたこと(ノアの婚約者になってからはそういったことはなくなった)が理由だ。
姉はずっと私の味方をしてくれていたし、私を守ってくれていたのだけれど、姉と比べられて周りから可愛がられることがなかったのも事実なので、ノアとしては気に入らないらしい。
ただ、周りから虐められても気にせず背筋をしゃんと伸ばして強気でいた私の姿を見て、「可愛いのにかっこいい!」とノアが私に惚れ込んでくれて、父に是非婚約者にしたいと直談判してくれたのが私達の馴れ初めなので、いつか姉とも仲良くして欲しいなと思う。
「何度も言うようだけど、お姉様は本当に何も悪くないのよ?それどころか私を守ってくれていたのだから、そんなに毛嫌いしないで?」
「…でも、ユリアはあいつのせいで辛い思いをしてきたのに」
「そんなことないわ、心優しいお姉様に何度も救われたのよ?」
「…まあ、ユリアがそういうなら」
「ごめんなさい、私を気遣ってくれたのよね、ありがとう」
優しくノアを抱きしめる。ノアも抱きしめ返してくれる。…うん、私にはこんな素敵な婚約者がいるのだもの、大丈夫。
「じゃあ、私はこれで。また明日ね、ノア」
「うん、また明日迎えにくるよ、ユリア」
毎日、こうして家の前でノアと離れる時が一番苦しい。でも、少しでも両親と姉と仲良く出来るように頑張ろう。将来の旦那様の為にもね。
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