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仲直りの話
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私の彼は、正直ダメダメな人だ。
家事が一切できない、仕事も続かない。
…が、まあお金の方はある。
親から継いだ不労所得で生活している人だ。
彼は若いうちから苦労している人で、だから不労所得で生きるのに困らないお金があるのなら仕事についてはどうこう言うつもりはない。
「でも家事くらいはさぁ…」
せめて出来ないなら出来ないで、無駄に余っているらしい月々の収入を駆使してお手伝いさんでも雇えばいいのに…それすらしない。
私が遊びにいくたびにカップ麺の墓場と化した台所との戦いになる。
床にもビールの缶が転がりまくってるし…タバコの灰皿も溜まりっぱなしだし…。
洗濯物は、溜まったらコインランドリーには出してるみたいだけど。
「…ねえ奈月くん、そろそろ家事くらい出来るようにならないと」
「えー、面倒くさい。舞がやってくれるしいいじゃん」
「私は奈月くんのお手伝いさんじゃないんだけど」
「うん、俺の可愛い彼女だよ」
奈月くんが後ろからぎゅっと抱きしめてくる。
「家事、全部やってくれてありがとう。終わったところで、イチャイチャしようぜ」
「まったくもう…」
なんだかんだで私がこうして甘やかすのも悪いのだろう。
…だから、今日は一世一代の決心をして来たのだ。
「ねえ奈月くん」
「んー、なに?舞のお願いならなんでも聞いちゃう」
「調子が良いんだから…ねえ、私たち少し距離を置こう?」
「…は?え、なんで?」
「お互いにダメになる前に、距離を置いて冷静になろう。その上で今後どうするか、あとで話し合おうよ」
奈月くんは呆然とする。
その隙に私は奈月くんの家を出た。
同棲してなくてよかったと心から思った。
「なぁ、なんかの冗談だよな?」
「メッセージちょうだい?」
「なんで無視すんの?」
「わかった、心を入れ替えるから」
「ねえ、じゃあ頑張ってから会いに行けば、相手にしてくれる?」
「わかった、じゃあ頑張るから…待ってて」
奈月くんからメッセージが届いた。
奈月くんは頑張ることにしたらしい。
けれど私は、奈月くんと寄りを戻す気はない。
何故なら、寄りを戻すと元に戻る気しかしないから。
だから距離を置いた後の今後の話し合いで、別れる方向に話を進めるつもり。
とはいえ、これがきっかけで奈月くんが家事くらいできるようになればいいなとは思ってる。
あのままの奈月くんを私が放り出したら、可哀想な末路しか思い浮かばないから。
「…私も私で、結構勝手だよね」
奈月くんを甘やかしたのは私なのに、別れると一人で決めてしまった。
冷却期間を置いても、多分私の答えは変わらない。
勝手ばかり言ってごめんね、奈月くん。
「…今日、話し合いしよう。俺の家に来て」
奈月くんにメッセージをもらって、奈月くんの家に来た。
奈月くんの家はピカピカになっていて、びっくりした。
「久しぶり、舞」
「久しぶり、奈月くん。家、綺麗だね」
「家事をするのは苦手だと思ってたんだけどさ、いざやってみたら意外と出来た。掃除もだけど、料理も頑張ってさ。ほら、今日はカレーだよ。食べていってよ」
「あ…うん、じゃあご馳走になるね」
「よっしゃ」
奈月くんの作ったカレーをご馳走になる。
野菜もお肉もたっぷりの、美味しくて栄養ばっちりのカレー。
奈月くんは手先が器用だから、すぐに家事を出来るようになってしまったらしい。
やっぱり、私が甘やかしたのが悪かったみたい。
「美味しいよ、奈月くん」
「よかった!いつも舞にやってもらってばかりでごめんな。でもこれからは自分で頑張るから」
「うん、偉いね」
「うん。それでさ、禁酒と禁煙もしたの」
「え」
「舞との子供ができたら、やっぱり悪影響かなって」
…子供?
そこまで考えてくれてるの?
でも、私は別れるつもりなのに…。
「ストレス発散に運動もするようになってさ。イライラしたらとりあえず走るようにしてる」
「そ、そっか」
「洗濯物もコインランドリーじゃなくて、毎日洗って干すようにしたんだ」
「偉いね」
「仕事もさ、在宅ワークでできる仕事を探したの。今度は続いてるよ」
…思ったよりちゃんとしてた。
奈月くんはやればできるすごい人だ。
「だからさ、結婚しよう?」
「え」
「家事は俺が全部やるし、生活費も俺が全部負担する。舞は好きに働いて好きに稼いで、好きに遊んでいいよ。だから結婚して?」
奈月くんはダメンズから卒業したと思ったら、今度は私をダメにしようとする。
「それじゃあ私がダメになっちゃうよ」
「ダメになっていいよ。俺、尽くしちゃう」
「ダメだよ」
「うん、でも舞は俺と別れるつもりなんだろ?俺はそれは許さないよ」
「え」
なんと、バレていた。
「俺、舞のために頑張ったんだ。これからも同じように頑張る。舞に苦労はさせない。だから結婚しよう?」
「いや、でも」
「舞のご両親にも、結婚予定だってご挨拶したんだ」
「え」
「舞の就職先にもね」
だからかー!!!
最近やけに両親や仕事先の人たちが生温い目で見てくると思ったら、結婚の挨拶を勝手にしてたのかー!
なにをしてくれてるんじゃー!!!
「奈月くんのバカー!!!」
「ごめんって。でも、幸せにするから」
「…」
奈月くんはギラギラした目で私を見つめる。
「絶対幸せにするからさ、諦めて俺に捕まってよ」
「…もう」
捕まってとか言いつつ、すでに外堀を埋めたのは奈月くんだ。
こうなったらもう責任を取ってもらう他ない。
「…今度は私の目減りした愛情を取り戻す努力もしてね」
「それはもちろん。舞の気持ちがこっちに向かなきゃ虚しいだけだからね」
「…本当に変わったね、奈月くん」
「舞が離れていくくらいなら、いくらでも変わってやるさ」
ぎゅっと抱きしめられる。
…仕方がない、私も素直になろう。
「私、そういう奈月くんは好きだよ」
「!!!」
「ダメンズには戻らないでね」
「もちろん、舞のためならいくらでも努力する!」
仕方ない人だ。
彼も、私も。
家事が一切できない、仕事も続かない。
…が、まあお金の方はある。
親から継いだ不労所得で生活している人だ。
彼は若いうちから苦労している人で、だから不労所得で生きるのに困らないお金があるのなら仕事についてはどうこう言うつもりはない。
「でも家事くらいはさぁ…」
せめて出来ないなら出来ないで、無駄に余っているらしい月々の収入を駆使してお手伝いさんでも雇えばいいのに…それすらしない。
私が遊びにいくたびにカップ麺の墓場と化した台所との戦いになる。
床にもビールの缶が転がりまくってるし…タバコの灰皿も溜まりっぱなしだし…。
洗濯物は、溜まったらコインランドリーには出してるみたいだけど。
「…ねえ奈月くん、そろそろ家事くらい出来るようにならないと」
「えー、面倒くさい。舞がやってくれるしいいじゃん」
「私は奈月くんのお手伝いさんじゃないんだけど」
「うん、俺の可愛い彼女だよ」
奈月くんが後ろからぎゅっと抱きしめてくる。
「家事、全部やってくれてありがとう。終わったところで、イチャイチャしようぜ」
「まったくもう…」
なんだかんだで私がこうして甘やかすのも悪いのだろう。
…だから、今日は一世一代の決心をして来たのだ。
「ねえ奈月くん」
「んー、なに?舞のお願いならなんでも聞いちゃう」
「調子が良いんだから…ねえ、私たち少し距離を置こう?」
「…は?え、なんで?」
「お互いにダメになる前に、距離を置いて冷静になろう。その上で今後どうするか、あとで話し合おうよ」
奈月くんは呆然とする。
その隙に私は奈月くんの家を出た。
同棲してなくてよかったと心から思った。
「なぁ、なんかの冗談だよな?」
「メッセージちょうだい?」
「なんで無視すんの?」
「わかった、心を入れ替えるから」
「ねえ、じゃあ頑張ってから会いに行けば、相手にしてくれる?」
「わかった、じゃあ頑張るから…待ってて」
奈月くんからメッセージが届いた。
奈月くんは頑張ることにしたらしい。
けれど私は、奈月くんと寄りを戻す気はない。
何故なら、寄りを戻すと元に戻る気しかしないから。
だから距離を置いた後の今後の話し合いで、別れる方向に話を進めるつもり。
とはいえ、これがきっかけで奈月くんが家事くらいできるようになればいいなとは思ってる。
あのままの奈月くんを私が放り出したら、可哀想な末路しか思い浮かばないから。
「…私も私で、結構勝手だよね」
奈月くんを甘やかしたのは私なのに、別れると一人で決めてしまった。
冷却期間を置いても、多分私の答えは変わらない。
勝手ばかり言ってごめんね、奈月くん。
「…今日、話し合いしよう。俺の家に来て」
奈月くんにメッセージをもらって、奈月くんの家に来た。
奈月くんの家はピカピカになっていて、びっくりした。
「久しぶり、舞」
「久しぶり、奈月くん。家、綺麗だね」
「家事をするのは苦手だと思ってたんだけどさ、いざやってみたら意外と出来た。掃除もだけど、料理も頑張ってさ。ほら、今日はカレーだよ。食べていってよ」
「あ…うん、じゃあご馳走になるね」
「よっしゃ」
奈月くんの作ったカレーをご馳走になる。
野菜もお肉もたっぷりの、美味しくて栄養ばっちりのカレー。
奈月くんは手先が器用だから、すぐに家事を出来るようになってしまったらしい。
やっぱり、私が甘やかしたのが悪かったみたい。
「美味しいよ、奈月くん」
「よかった!いつも舞にやってもらってばかりでごめんな。でもこれからは自分で頑張るから」
「うん、偉いね」
「うん。それでさ、禁酒と禁煙もしたの」
「え」
「舞との子供ができたら、やっぱり悪影響かなって」
…子供?
そこまで考えてくれてるの?
でも、私は別れるつもりなのに…。
「ストレス発散に運動もするようになってさ。イライラしたらとりあえず走るようにしてる」
「そ、そっか」
「洗濯物もコインランドリーじゃなくて、毎日洗って干すようにしたんだ」
「偉いね」
「仕事もさ、在宅ワークでできる仕事を探したの。今度は続いてるよ」
…思ったよりちゃんとしてた。
奈月くんはやればできるすごい人だ。
「だからさ、結婚しよう?」
「え」
「家事は俺が全部やるし、生活費も俺が全部負担する。舞は好きに働いて好きに稼いで、好きに遊んでいいよ。だから結婚して?」
奈月くんはダメンズから卒業したと思ったら、今度は私をダメにしようとする。
「それじゃあ私がダメになっちゃうよ」
「ダメになっていいよ。俺、尽くしちゃう」
「ダメだよ」
「うん、でも舞は俺と別れるつもりなんだろ?俺はそれは許さないよ」
「え」
なんと、バレていた。
「俺、舞のために頑張ったんだ。これからも同じように頑張る。舞に苦労はさせない。だから結婚しよう?」
「いや、でも」
「舞のご両親にも、結婚予定だってご挨拶したんだ」
「え」
「舞の就職先にもね」
だからかー!!!
最近やけに両親や仕事先の人たちが生温い目で見てくると思ったら、結婚の挨拶を勝手にしてたのかー!
なにをしてくれてるんじゃー!!!
「奈月くんのバカー!!!」
「ごめんって。でも、幸せにするから」
「…」
奈月くんはギラギラした目で私を見つめる。
「絶対幸せにするからさ、諦めて俺に捕まってよ」
「…もう」
捕まってとか言いつつ、すでに外堀を埋めたのは奈月くんだ。
こうなったらもう責任を取ってもらう他ない。
「…今度は私の目減りした愛情を取り戻す努力もしてね」
「それはもちろん。舞の気持ちがこっちに向かなきゃ虚しいだけだからね」
「…本当に変わったね、奈月くん」
「舞が離れていくくらいなら、いくらでも変わってやるさ」
ぎゅっと抱きしめられる。
…仕方がない、私も素直になろう。
「私、そういう奈月くんは好きだよ」
「!!!」
「ダメンズには戻らないでね」
「もちろん、舞のためならいくらでも努力する!」
仕方ない人だ。
彼も、私も。
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