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番外編 聖神教の教皇

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「…聖女よ、まさか奴らに肩入れするつもりか?」

「もし聖神教がパラディース教に嫌がらせをしたり対立したりするならば、私は聖女としての力を使うことを一切やめます」

そんな聖女とのやり取りの後、教皇たる私は我ら聖神教の者はパラディース教を害することを禁じるとのお触れを出した。

だが、納得がいかない。

あんな新興宗教のなにが良いというのだ。

「なんとか…なんとか秘密裏にパラディース教を追い詰められないだろうか」

一人部屋でポツリと呟く。

すると、目の錯覚なのか何か黄色いふわふわが視界の端に映った。

「…見間違いか?」

『ふふふ、そんなにあの子に文句があるのなら…話を聞いてあげるから僕の世界においで』

「え」

ふと、視界が閉じた。

そして次の瞬間には、和風な建築の知らない場所にいた。

「な、なんだここは…」

混乱する思考の中歩き回っていると、ふと厳かな雰囲気の場所に出た。

九尾の狐と、どこかで見たことのある娘に出会う。

あの娘は確か、パラディース教の天主であるクソガキに入れ込んで破滅した家の行方知れずの娘ではないか?

「やあ、いらっしゃい」

「き、狐が喋った…!?」

「狐とはいえ、一応神だからね」

「なっ…妖の分際で神を名乗るなどっ…!?」

キュッと首が締まる。

「ああ、いけないよ。ここは僕の領域なのだから、僕に敵意を向ければそれ相応の罰が下る」

…まさか。

まさか本当に、神の一柱だというのか!?

「僕はこれでも、パラディース教の神だからね。もしあの子…パラディース教の天主に文句があるなら、代わりに僕が聞こう」

「くっ…あっ…」

聖神教は確かに他の宗教、他の神の存在も認めている。

しかし、しかし!

パラディース教に、新興宗教であるあの宗教に!!!

神がいるなどとぉおおおおおおお!!!

「そんなこと、認められるかぁ!!!!!」

力を振り絞り、狐神に向けて走り出す。

しかし狐神に殴りかかる前に、狐神のそばに控えていたあの娘に止められた。

それほどに今の私は、虫の息であった。

「く、くるしぃ、息が…くる、しぃ…」

「落ち着いて、ほら、深呼吸してごらん」

「ぅ…ぅうう…ら、楽になった?」

「特別に、神の許しを与えたんだよ。さあ、これでもまだ僕の可愛いあの子を害する気になるのかな?」

「それは…」

おそらくこの狐神は、私をいつでも殺せる。

もう私に、抵抗の意志は…持てない。

私はあの天主を名乗る小僧と戦うことすらなく、完璧に叩きのめされたのだ…。

「もうなにもしないと誓うなら、逃がしてあげるよ」

「も、もう…パラディース教に敵意は持ちません…」

「よろしい。あ、ついでに言っておくけれど教皇なんだからさぁ…教会にある莫大な資金も少しは民草のために使いなよ」

「は、はい…」

そして私は、元いた部屋に戻された。

その後は極力パラディース教に関わらないようにして、教会の資金を貧民への支援に費やすようになった。

その後は狐神に神隠しされることもなく、穏やかな日々を過ごしている。

もう、パラディース教には近付きたくはないものだ。
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