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番外編 パンダの一日

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我輩は猫である。

名前はパンダ。

野生の猫にしては長生きな十歳のおじいちゃんである。

我輩は最近、とある寺にお世話になることにした。

パラディース教とかいう新興宗教の総本山だそうな。

「あ、パンダ。おはよう」

「おはようパンダ」

この二人はパラディース教の天主であるゴッドリープとその妻キューケン。

ゴッドリープはキューケンを溺愛しており、キューケンはゴッドリープに懐いている。

元々は兄妹のように育ったそうだが、爛れた関係ではないらしい。

「にゃーん」

「うんうん、今日もパンダは元気だね」

「パンダ、今日も可愛いね」

「にゃーん」

キューケンの方が可愛いぞと言うが、残念ながら人間に我輩の言葉は通じない。

傾国の美女と呼べるほど美しいのに、どこか幼い雰囲気のあるキューケンは本当に可愛い。

ゴッドリープが甘やかすのもわかるというものだ。

「あ、パンダがスリスリしてくれた」

「ふふ、パンダもキューが大好きなんだね」

でも、渡さないよ。

そんなゴッドリープの心の声が聞こえた気がした。

まったく、わざわざ取ったりせんわ。

取らなくても一緒に居られるからな。

ところで、ゴッドリープは最近妙な気配が深くなった。

「にゃーん」

「ん、どうしたの?」

あの狐神に近付いているぞと警告するが、やはり伝わらない。

まあ、やがて狐神と同等の存在になってもキューケンがそばにいるだろうから悪くない結末にはなるだろうが。

「にゃーん」

「可愛いね、パンダ」

「そろそろ朝のお参りだからパンダはお寺の中をお散歩しておいで。外には出ないようにね」

「にゃーん」

まったく、過保護な夫婦だ。

我輩はもう寺の外に出るほどの元気はないというのに。

だが、穏やかな余生を過ごせるのはこの二人のおかげだからな。

「にゃーん」

「うん、じゃあ行ってくるよ」

「にゃーん」

…おそらく我輩は、そこまで長くはこの二人を見守れないだろうが。

それでも。

「にゃーん」

そばに居られるうちは、我輩が守ってやろう。

我輩がいるうちは、人のまま生きるがいいさ。

その後はおそらく、神と神の嫁となるだろうが…。

「にゃーん」

我輩はお前さんたちが神となっても、神の嫁となっても。

ずっとずっと。

お前さんたちが大好きだからな。
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