神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました

下菊みこと

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お狐様から加護が与えられそうになり全力で拒否る

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「んん…」

また、目が覚めたら夢の世界にいた。

もはや慣れたもので、真っ直ぐにお狐様のいる部屋に向かう。

「こんばんは」

「こんばんは」

「じゃあ、ムーンリット」

その言葉だけでムーンリットは頭を下げて部屋を出る。

「今日も御用ですか」

「うん。一方的に与えるのは良くないと知ったからね」

そう言ってお狐様は笑う。

「そうですね、良くないです」

「うん、だから確認してから与えようと思って」

「?」

お狐様は爆弾発言を落っことした。

「どんな加護が欲しい?」

「…は?」

いやいやいやいやいや…。

「君も僕の愛し子に認定しようと思ってさ。あの子のと同じ加護でいいかな?」

「加護を受け取るの前提で話を進めないでください」

「え、嫌なのかい?」

嫌ですけど。

「キューは加護は要りません」

「どうしてだい?加護があったほうが便利だろう」

「私はパラディース教のトップである兄様とは違って、ただの妹ポジションですから。要りません」

んー?とお狐様は首をかしげる。

「そういうものかい?」

「そういうものです」

百パーセント善意で言ってくるのがいっそ質が悪いと思う。

「そうか…なら、わかった。やめようか」

「はい」

「代わりに欲しいものはあるかい?」

代わりに欲しいもの?

「僕はやっぱり、どうしようもないお節介焼きみたいだ。なにか出来ることがあれば、やってあげられることがあれば教えてほしいな」

「うーん…してほしいことならありますけど」

「なにかな」

ワクワク顔で聞かれて、ちょっと罪悪感はあるけれど単刀直入に言う。

「もう、余計なお世話はダメです」

「え」

「死んじゃいそうなところを助けるとか、困ってるのを助けるとかなら全然いいですけど。なにも困ってないのに施しはしないようにしてください」

「…はぁい」

お狐様はしゅんとする。

「あと、一つ聞いていいですか」

「うん?」

「私と兄様の色が似てるのとか、私が前世の記憶持ちなのってお狐様がしたのですか?」

だとしたら感謝しかないですが、というとお狐様は困ったように笑った。

「ごめんね、僕ではないよ。この世界には神やそれに近い性質の妖が多いから…この世界の『神』のしたことかもね」

「そうですか、それではその方に感謝しておきます」

「そうだね。まあそういう奴らは大抵やりっぱなしで後は放置だから、感謝が伝わることも関わってくることもないと思うけれど」

なるほど、神様はお狐様曰く勝手らしい。

それもまた神らしいなとは思うけれど。

「まあそういうことで、これからはこうやって私を神隠ししたりもしないでくださいね」

「ええっ」

「必要な時だけでお願いします。あとはやく兄様の元に返してください」

「…はぁい」

僕はまだ君とお話ししていたかったのにとボソボソ呟いて、お狐様は私を現実の世界に戻してくれた。

やはり兄様はぐっすりと眠っていた。
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