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外から来た教徒

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基本的に、パラディース教の総本山に立ち入れるのは本当に困窮した教徒だけ。

だから、『神の子であり天主たるゴッドリープ様』にお会いすることが叶うのも基本的には困窮した教徒だけ。

そしてゴッドリープ様は『自立してこそヒトというもの』というお考えなのでいつかは総本山にいる教徒も外へ出る。

けれど何事にも例外というのはあるもので。

例えば…パラディース教の存続のためという理由からだろうか、累計のお布施が一定の額を越えればゴッドリープ様にお会い出来るという制度もあるわけだ。

「ゴッドリープ様!お会いしたかったです!」

「ムーンリット、久しいね」

「すごくすごくお会いしたかったのですよ、でもお布施はお小遣いの範囲内と決められていて…」

彼女はムーンリット様。とある子爵家の娘だと言う。ムーンリット様はとある縁があり、ゴッドリープ様の不思議なお力で助けられたことがある…と聞くが、実際のところ何があったのかはわからない。

ただ、ムーンリット様は純粋な教徒というよりかはゴッドリープ様に恋をしている節がある。

ゴッドリープ様はお美しい美少年だから、同じ年頃ならば確かに惚れ込むのも無理はない。

我々教徒としても、ゴッドリープ様を神の子であり天主たるお方と慕っているが恋をするななどとは言わない。

むしろ将来的にはゴッドリープ様の血を残さねばならないとは思っている…のだが。

「いいんだよ、ムーンリット。無理はしないで」

「ゴッドリープ様…」

ゴッドリープ様の嫁になるのにムーンリット様ならば不足はないと思われるが、いかんせんゴッドリープ様にはその気がない。

幼い故か、これから先も変わらないのか。

まだまだ見守らねばならぬ。

「それでね、ゴッドリープ様。私、聞きましたの」

「うん?なにをだい」

「最近、ゴッドリープ様の周りを我が物顔で這いずり回るネズミがいると!」

…はて、この寺にねずみなど出た覚えはないが。

「…ごめんよ、この寺にはねずみなどいないと思うよ。寺の外、この山の中にならいるとは思うけど」

ゴッドリープ様も心当たりがないご様子だ。

「…あの娘のことです」

あの娘、その言葉でムーンリット様の言いたいことがわかった。

ムーンリット様は、恐れ多くもゴッドリープ様の妹御たるキューケン様をねずみなどと蔑称をつけて呼んだのだ。

たとえムーンリット様でもそのような無礼は許されまい。

常にゴッドリープ様の側に控え、ご用命を拝する立場にある私の方から何か言うことはできないが。

雷がこちらにまで落ちることがないよう、心の底から祈った。
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