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婚約者は決して彼女を手放さない
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アメリア・イヴ・マーティン。公爵令嬢である彼女は、何を隠そう悪役令嬢である。
まあ所謂テンプレである。彼女は前世で必死に創作活動を続けていた結果、何故か異世界の神様に気に入られて死後好きな世界に転生する権利を得られた。そして死後、約束通りこの世界で目が覚めた。大好きな乙女ゲームの世界。しかし、彼女はヒロインではなく悪役令嬢に転生していた。神様はおっちょこちょいだった。
「でも私、幸せですわ」
彼女は一人呟く。ずっと大好きだった攻略対象者の一人、エリオット・イーサン・フィリップス侯爵令息と婚約者になれた彼女はそれで十分だった。例え、いつか無慈悲に捨てられるとしても、それでも幸せだと胸を張って言える。
「せめて今は、一途に彼を愛し美しい思い出をたくさん作りましょう。幸いにして弟がいるので公爵家の跡継ぎは心配いりません。もし私がエリオット様に振られた後修道院に入っても問題ありませんわ」
彼女は時々、後ろ向きに前向きな性格だった。
ー…
「エリオット様、遊びに来ましたわ!」
「アメリア!いらっしゃい!今日は何をして遊ぼうか」
「まずは朝の散歩からですわ!」
「ふふ、いいよ。アメリアは本当に外が好きだね」
「日の光が心地いいんですもの」
病弱なエリオットは大人しく、自分からは外にもあまり出ない。だからアメリアは、婚約者のわがままと称して毎日一緒にお散歩している。体力作りである。
「はい、エリオット様。あーん」
「あーん…苦い…」
「エリオット様、お上手ですわ!ほら、もう一口」
「うう…アメリアの手作り料理だものね。頑張るよ」
さらに好き嫌いの激しく栄養の偏った食事をするエリオットのために、アメリアは毎日料理を作り、手ずから食べさせている。こうすれば優しいエリオットは拒めない。
「アメリア、ここの公式をここに当てはめてごらん」
「…まあ。エリオット様、私魔法学が得意になりそうですわ!」
「アメリアは筋が良いもの。きっとすぐ得意になるよ」
そしてアメリアは、勉強や読書が大好きなエリオットに付き合って一緒に勉強や読書をした。
「今日もアメリアの家の庭で実験していい?」
「もちろんですわ!」
さらにアメリアは、魔法が大好きなエリオットが思う存分魔法実験を出来るように、自分の屋敷の広大な庭を貸し出したりもした。これに関しては庭師と両親の説得が大変だったが。
「エリオット様、大好きですわ!」
「僕も大好きだよ、アメリア」
そして子供ならではの距離感の近さで思う存分ベタベタぺろぺろラブラブいちゃいちゃしまくりながら、たくさんの愛情を持ってエリオットの成長を見守り続けたアメリア。
挫折?トラウマ?アメリアがしっかりとフラグを折った。
そして時は過ぎ。
「エリオット様を愛で始めてから早数年。もう十五歳になってしまいましたわ。学園生活も始まりますし、そろそろ潮時なのかしら…。」
「アメリア、何を考えているの?」
「エリオット様!すみません、少し考え事をしておりましたの」
「だめだよ。アメリアは僕の事だけを見て、僕だけのことを考えていればいいんだ」
不覚にもときめくアメリアは、甘々溺愛王子様系のエリオットの口からヤンデレ台詞が吐き出されたことにも気がつかない。
「わかりましたわ」
「…よかった。じゃあ早速今日のお散歩に行こうか」
にこり、と微笑むエリオット。アメリアは脳内で、『ああ、まるで花が咲くようなその笑顔!愛しておりますわ!』と叫んでいた。
「…ふふ、アメリアは本当に僕の笑顔が好きだね?」
「はい!当然ですわ!その微笑みを独占することが出来るなんて感激ですわ!幸せですわ!」
「ふふ。嬉しいよ、ありがとう。僕もアメリアのような可憐で愛らしい子が婚約者だなんてとても幸せだよ」
『ああ、なんて可愛らしい方なのかしら!神々しいくらいだわ!例え振られる運命だとしても、私は最後まで貴方を愛し続けますわ!』とアメリアが考えているなど、エリオットは気付きもしない。こうして二人は今日もバカップルっぷりを披露し続けている。
ーそして、学園生活が始まった。物語の幕が上がる。
当然のように入学してきた平民出身のヒロイン。しかし彼女の周囲からの評価は愛らしいご令嬢ではなく、〝変わったご令嬢〟。なぜなら、折にふれ攻略対象全員に言い寄っているからだ。婚約者がいる方ばかりなのにである。逆ハーレムを築くつもり満々の彼女に周囲が辟易するのは無理もないことだった。
そしてもちろん、何股もかけていたため攻略対象からも蛇蝎の如く嫌われている。学園にも居辛くなって、困っているようだ。特にエリオットは近くに寄られるのも吐き気がすると公言するレベルである。アメリアはそんなエリオットの背中を一生懸命にさすってあげていた。
エリオット以外の攻略対象者とその婚約者は、ヒロイン絡みでちょっとしたいざこざはあったが、最終的に丸く収まってらぶらぶいちゃいちゃ、エリオットとアメリアレベルで仲良しカップルである。
ただ一人の人を一途に愛する。それも一つの選択肢である。
まあ所謂テンプレである。彼女は前世で必死に創作活動を続けていた結果、何故か異世界の神様に気に入られて死後好きな世界に転生する権利を得られた。そして死後、約束通りこの世界で目が覚めた。大好きな乙女ゲームの世界。しかし、彼女はヒロインではなく悪役令嬢に転生していた。神様はおっちょこちょいだった。
「でも私、幸せですわ」
彼女は一人呟く。ずっと大好きだった攻略対象者の一人、エリオット・イーサン・フィリップス侯爵令息と婚約者になれた彼女はそれで十分だった。例え、いつか無慈悲に捨てられるとしても、それでも幸せだと胸を張って言える。
「せめて今は、一途に彼を愛し美しい思い出をたくさん作りましょう。幸いにして弟がいるので公爵家の跡継ぎは心配いりません。もし私がエリオット様に振られた後修道院に入っても問題ありませんわ」
彼女は時々、後ろ向きに前向きな性格だった。
ー…
「エリオット様、遊びに来ましたわ!」
「アメリア!いらっしゃい!今日は何をして遊ぼうか」
「まずは朝の散歩からですわ!」
「ふふ、いいよ。アメリアは本当に外が好きだね」
「日の光が心地いいんですもの」
病弱なエリオットは大人しく、自分からは外にもあまり出ない。だからアメリアは、婚約者のわがままと称して毎日一緒にお散歩している。体力作りである。
「はい、エリオット様。あーん」
「あーん…苦い…」
「エリオット様、お上手ですわ!ほら、もう一口」
「うう…アメリアの手作り料理だものね。頑張るよ」
さらに好き嫌いの激しく栄養の偏った食事をするエリオットのために、アメリアは毎日料理を作り、手ずから食べさせている。こうすれば優しいエリオットは拒めない。
「アメリア、ここの公式をここに当てはめてごらん」
「…まあ。エリオット様、私魔法学が得意になりそうですわ!」
「アメリアは筋が良いもの。きっとすぐ得意になるよ」
そしてアメリアは、勉強や読書が大好きなエリオットに付き合って一緒に勉強や読書をした。
「今日もアメリアの家の庭で実験していい?」
「もちろんですわ!」
さらにアメリアは、魔法が大好きなエリオットが思う存分魔法実験を出来るように、自分の屋敷の広大な庭を貸し出したりもした。これに関しては庭師と両親の説得が大変だったが。
「エリオット様、大好きですわ!」
「僕も大好きだよ、アメリア」
そして子供ならではの距離感の近さで思う存分ベタベタぺろぺろラブラブいちゃいちゃしまくりながら、たくさんの愛情を持ってエリオットの成長を見守り続けたアメリア。
挫折?トラウマ?アメリアがしっかりとフラグを折った。
そして時は過ぎ。
「エリオット様を愛で始めてから早数年。もう十五歳になってしまいましたわ。学園生活も始まりますし、そろそろ潮時なのかしら…。」
「アメリア、何を考えているの?」
「エリオット様!すみません、少し考え事をしておりましたの」
「だめだよ。アメリアは僕の事だけを見て、僕だけのことを考えていればいいんだ」
不覚にもときめくアメリアは、甘々溺愛王子様系のエリオットの口からヤンデレ台詞が吐き出されたことにも気がつかない。
「わかりましたわ」
「…よかった。じゃあ早速今日のお散歩に行こうか」
にこり、と微笑むエリオット。アメリアは脳内で、『ああ、まるで花が咲くようなその笑顔!愛しておりますわ!』と叫んでいた。
「…ふふ、アメリアは本当に僕の笑顔が好きだね?」
「はい!当然ですわ!その微笑みを独占することが出来るなんて感激ですわ!幸せですわ!」
「ふふ。嬉しいよ、ありがとう。僕もアメリアのような可憐で愛らしい子が婚約者だなんてとても幸せだよ」
『ああ、なんて可愛らしい方なのかしら!神々しいくらいだわ!例え振られる運命だとしても、私は最後まで貴方を愛し続けますわ!』とアメリアが考えているなど、エリオットは気付きもしない。こうして二人は今日もバカップルっぷりを披露し続けている。
ーそして、学園生活が始まった。物語の幕が上がる。
当然のように入学してきた平民出身のヒロイン。しかし彼女の周囲からの評価は愛らしいご令嬢ではなく、〝変わったご令嬢〟。なぜなら、折にふれ攻略対象全員に言い寄っているからだ。婚約者がいる方ばかりなのにである。逆ハーレムを築くつもり満々の彼女に周囲が辟易するのは無理もないことだった。
そしてもちろん、何股もかけていたため攻略対象からも蛇蝎の如く嫌われている。学園にも居辛くなって、困っているようだ。特にエリオットは近くに寄られるのも吐き気がすると公言するレベルである。アメリアはそんなエリオットの背中を一生懸命にさすってあげていた。
エリオット以外の攻略対象者とその婚約者は、ヒロイン絡みでちょっとしたいざこざはあったが、最終的に丸く収まってらぶらぶいちゃいちゃ、エリオットとアメリアレベルで仲良しカップルである。
ただ一人の人を一途に愛する。それも一つの選択肢である。
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