13 / 58
結局怪異
しおりを挟む
辰巳さんに唆されて、その日めちゃくちゃおしゃれをした。
可愛らしい白のワンピースを来て、メイクとネイルを辰巳さんが完璧にしてくれる。
そして辰巳さんと手を繋いで、悪戯電話をくれた彼の待つ駅へ向かった。
「…」
「…」
「…おやおや」
駅に着くと、おどろおどろしい妖がいた。
こちらとしてはものすごく驚いたが、彼は彼で驚いた様子。
人の形は辛うじて保っているものの、背中に背負う負のオーラを見るに相当数の人間を食っているらしい。
人の身でありながら妖に変化するほどに人を食べるとか、相当な変態だ。
彼が悪戯電話の人だろうか。
「なんだよ、喰われたいって変な意味じゃなくて妖が相手かよ。俺じゃ勝ち目ないじゃん」
「ふふ、自覚があるなら結構ですね。で、なんで僕の百合を狙ったんです?」
「自殺志願者を嗅ぎつけるのが得意なもんでね。ちょちょっと調べて引っかかってくれそうな子に声をかけていただけ」
「プライバシー…」
「死にたがってる子にしか声かけてないし、許されるでしょ」
許されないと思います。
あと、死にたがってる子でも食べられたがるような私みたいなのは少数派のはず。
「相手の希望は尊重しないんですか」
「やだなぁ、してるよ。本当に死にたがってる子をなるべく苦しめず終わらせてあげるし、その後残された遺体も骨は親族に全部返してるし」
「うわぁ」
ドン引きである。
「で、俺を警察に突き出したりするわけ?」
「しませんよ、僕たちには関係ありませんし」
「え?まじ?」
「普通の人間たちには君の正体はわからないでしょうし、証拠もありませんから」
辰巳さんの言う通り。
証拠などどこにも存在しないなら、どうしようもない。
野放しにするのもどうかとは思うが、ドライなことを言ってしまえば私には関係はない。
「でも、出来れば自首してほしいです」
ぽろっと溢れた本音。
辰巳さんはそんな私ににっこり笑う。
「この男がそんな殊勝なことすると思います?」
「思いません」
「ですよね」
くすくす笑う辰巳さん。
悪戯電話の彼はやばいと思ったのか距離を取る。
でも遅かった。
「僕の可愛い百合が、君を野放しにするのを躊躇っているようなので。可哀想ですが、ご退場願いますね」
人体発火現象。
急に彼が燃えた。
「ぎゃー!」
「なに!?」
「うわぁ!?」
彼はすぐに燃え尽き、炎が他に広がることもなかった。
残ったのは消し炭だけ。
「あらまあ」
「ふふ、これで安心しましたか?」
「まあ…はい」
人を喰うような妖が解き放たれる世の中よりはマシだろう。
いや、それでいくと辰巳さんも問題なのだろうか。
まあ、私はそれでも辰巳さんに食べてほしいので関係ないが。
…彼に食べられた子の中にもそんな子はいたんだろうか。
可愛らしい白のワンピースを来て、メイクとネイルを辰巳さんが完璧にしてくれる。
そして辰巳さんと手を繋いで、悪戯電話をくれた彼の待つ駅へ向かった。
「…」
「…」
「…おやおや」
駅に着くと、おどろおどろしい妖がいた。
こちらとしてはものすごく驚いたが、彼は彼で驚いた様子。
人の形は辛うじて保っているものの、背中に背負う負のオーラを見るに相当数の人間を食っているらしい。
人の身でありながら妖に変化するほどに人を食べるとか、相当な変態だ。
彼が悪戯電話の人だろうか。
「なんだよ、喰われたいって変な意味じゃなくて妖が相手かよ。俺じゃ勝ち目ないじゃん」
「ふふ、自覚があるなら結構ですね。で、なんで僕の百合を狙ったんです?」
「自殺志願者を嗅ぎつけるのが得意なもんでね。ちょちょっと調べて引っかかってくれそうな子に声をかけていただけ」
「プライバシー…」
「死にたがってる子にしか声かけてないし、許されるでしょ」
許されないと思います。
あと、死にたがってる子でも食べられたがるような私みたいなのは少数派のはず。
「相手の希望は尊重しないんですか」
「やだなぁ、してるよ。本当に死にたがってる子をなるべく苦しめず終わらせてあげるし、その後残された遺体も骨は親族に全部返してるし」
「うわぁ」
ドン引きである。
「で、俺を警察に突き出したりするわけ?」
「しませんよ、僕たちには関係ありませんし」
「え?まじ?」
「普通の人間たちには君の正体はわからないでしょうし、証拠もありませんから」
辰巳さんの言う通り。
証拠などどこにも存在しないなら、どうしようもない。
野放しにするのもどうかとは思うが、ドライなことを言ってしまえば私には関係はない。
「でも、出来れば自首してほしいです」
ぽろっと溢れた本音。
辰巳さんはそんな私ににっこり笑う。
「この男がそんな殊勝なことすると思います?」
「思いません」
「ですよね」
くすくす笑う辰巳さん。
悪戯電話の彼はやばいと思ったのか距離を取る。
でも遅かった。
「僕の可愛い百合が、君を野放しにするのを躊躇っているようなので。可哀想ですが、ご退場願いますね」
人体発火現象。
急に彼が燃えた。
「ぎゃー!」
「なに!?」
「うわぁ!?」
彼はすぐに燃え尽き、炎が他に広がることもなかった。
残ったのは消し炭だけ。
「あらまあ」
「ふふ、これで安心しましたか?」
「まあ…はい」
人を喰うような妖が解き放たれる世の中よりはマシだろう。
いや、それでいくと辰巳さんも問題なのだろうか。
まあ、私はそれでも辰巳さんに食べてほしいので関係ないが。
…彼に食べられた子の中にもそんな子はいたんだろうか。
20
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
【完結】箱根戦士にラブコメ要素はいらない ~こんな大学、入るんじゃなかったぁ!~
テツみン
青春
高校陸上長距離部門で輝かしい成績を残してきた米原ハルトは、有力大学で箱根駅伝を走ると確信していた。
なのに、志望校の推薦入試が不合格となってしまう。疑心暗鬼になるハルトのもとに届いた一通の受験票。それは超エリート校、『ルドルフ学園大学』のモノだった――
学園理事長でもある学生会長の『思い付き』で箱根駅伝を目指すことになった寄せ集めの駅伝部員。『葛藤』、『反発』、『挫折』、『友情』、そして、ほのかな『恋心』を経験しながら、彼らが成長していく青春コメディ!
*この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件・他の作品も含めて、一切、全く、これっぽっちも関係ありません。
【完結】キスの練習相手は幼馴染で好きな人【連載版】
猫都299
青春
沼田海里(17)は幼馴染でクラスメイトの一井柚佳に恋心を抱いていた。しかしある時、彼女は同じクラスの桜場篤の事が好きなのだと知る。桜場篤は学年一モテる文武両道で性格もいいイケメンだ。告白する予定だと言う柚佳に焦り、失言を重ねる海里。納得できないながらも彼女を応援しようと決めた。しかし自信のなさそうな柚佳に色々と間違ったアドバイスをしてしまう。己の経験のなさも棚に上げて。
「キス、練習すりゃいいだろ? 篤をイチコロにするやつ」
秘密や嘘で隠されたそれぞれの思惑。ずっと好きだった幼馴染に翻弄されながらも、その本心に近付いていく。
※現在完結しています。ほかの小説が落ち着いた時等に何か書き足す事もあるかもしれません。(2024.12.2追記)
※「キスの練習相手は〜」「幼馴染に裏切られたので〜」「ダブルラヴァーズ〜」「やり直しの人生では〜」等は同じ地方都市が舞台です。(2024.12.2追記)
※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ノベルアップ+、Nolaノベルに投稿しています。
犬猿の仲だけど一緒にいるのが当たり前な二人の話
ありきた
青春
犬山歌恋と猿川彩愛は、家族よりも長く同じ時間を過ごしてきた幼なじみ。
顔を合わせれば二言目にはケンカを始め、時には取っ組み合いにまで発展する。
そんな二人だが、絆の強さは比類ない。
ケンカップルの日常を描いた百合コメディです!
カクヨム、ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載しています。
恋とは落ちるもの。
藍沢咲良
青春
恋なんて、他人事だった。
毎日平和に過ごして、部活に打ち込められればそれで良かった。
なのに。
恋なんて、どうしたらいいのかわからない。
⭐︎素敵な表紙をポリン先生が描いてくださいました。ポリン先生の作品はこちら↓
https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911
https://www.comico.jp/challenge/comic/33031
この作品は小説家になろう、エブリスタでも連載しています。
※エブリスタにてスター特典で優輝side「電車の君」、春樹side「春樹も恋に落ちる」を公開しております。
曙光ーキミとまた会えたからー
桜花音
青春
高校生活はきっとキラキラ輝いていると思っていた。
夢に向かって突き進む未来しかみていなかった。
でも夢から覚める瞬間が訪れる。
子供の頃の夢が砕け散った時、私にはその先の光が何もなかった。
見かねたおじいちゃんに誘われて始めた喫茶店のバイト。
穏やかな空間で過ごす、静かな時間。
私はきっとこのままなにもなく、高校生活を終えるんだ。
そう思っていたところに、小学生時代のミニバス仲間である直哉と再会した。
会いたくなかった。今の私を知られたくなかった。
逃げたかったのに直哉はそれを許してくれない。
そうして少しずつ現実を直視する日々により、閉じた世界に光がさしこむ。
弱い自分は大嫌い。だけど、弱い自分だからこそ、気づくこともあるんだ。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
私のいなくなった世界
タキテル
青春
人はいつか死ぬ。それは逃れられない定め――
ある日、有近樹。高校二年の女子校生は命を落とした。彼女は女子バスケ部のキャプテンに就任した日の事だった。十七歳で人生もこれからであり、輝かしい未来があるとその時は思っていた。しかし、ある帰り道に樹はゲームに夢中になっている男子小学生の姿を目撃する。男子小学生はゲームに夢中になり、周りが見えていなかった。その時、大型のトラックが男子小学生に襲いかかるのを見た樹は身を呈して食い止めようとする。気づいた時には樹は宙に浮いており、自分を擦る男子小学生の姿が目に写った。樹は錯覚した。自分は跳ねられて死亡してしまったのだと――。
そんな時、樹の前に謎の悪魔が現れた。悪魔は紳士的だが、どことなくドSだった。悪魔は樹を冥界に連れて行こうとするが、樹は拒否する。そこで悪魔は提案した。一ヶ月の期間と五回まで未練の手助けするチャンスを与えた。それが終わるまで冥界に連れて行くのを待つと。チャンスを与えられた樹はこの世の未練を晴らすべく自分の足跡を辿った。死んでも死にきれない樹は後悔と未練を無くす為、困難に立ちふさがる。そして、樹が死んだ後の世界は変わっていた。悲しむ者がいる中、喜ぶ者まで現れたのだ。死んでから気づいた自分の存在に困惑する樹。
樹が所属していた部活のギクシャクした関係――
樹に憧れていた後輩のその後――
樹の親友の大きな試練――
樹が助けた男児の思い――
人は死んだらどうなるのか? 地獄? 天国? それは死なないとわからない世界。残された者は何を思って何を感じるのか。
ヒロインが死んだ後の学校生活に起こった数々の試練を描いた青春物語が始まる。
彼女は終着駅の向こう側から
シュウ
青春
ぼっちの中学生トヨジ。
彼の唯一の趣味は、ひそかに演劇の台本を書くことだった。
そんなトヨジの前に突如現れた美少女ライト。
ライトをみたトヨジは絶句する。
「ライトはぼくの演劇のキャラクターのはず!」
本来で会うことのないはずの二人の出会いから、物語ははじまる。
一度きりの青春を駆け抜ける二人の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる