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「大体、君はせっかく可愛いのに着飾らないのはもったいないです」

「そうでしょうか」

「そうですよ。せっかく可愛いのですから、もっと普段からおしゃれしましょう」

そして促されるままに、ふわふわなスカートやワンピース、それに合うような上着やらなんやらとバッグに新しい財布まで買った。

「いっぱい買ってしまいました…」

「でも、君にぴったりですよ。全部、君が着るととても可愛らしい」

「て、照れますよ」

「では、次は化粧品をもっと揃えましょうか」

「え」

辰巳さんに押されて、化粧品やら化粧水に乳液やらも買わされてマニキュアやらなんやらも買った。

「マニキュアなんてしたことないです…」

「次のデートでさっそくつけて行きましょう」

「は、はい」

辰巳さんはなんだかノリノリだ。

「辰巳さんの必要なものも、もっと揃えましょうか」

「そうですね、ではお願いします」

辰巳さんも人間に擬態してウチに来た時に買った本当に必要な最低限のものしかなかったから、色々買って差しあげた。

結果一人暮らしを始めた時以来の、大きな買い物になった。

「貯金がほぼすっからかんです。今月の色々な引き落としくらいは間に合いますが」

「どうせすぐに死にますし、今月二馬力で働けば間に合うでしょう?」

「そうですね」

明け透けな物言いにクスクスと笑ってしまう。

そんな私に辰巳さんも笑った。

「ふふ、君は本当に魅力的な獲物だ」

「そうですか?」

「ええ、だから君のことをもっともっと知りたい。理解したい」

辰巳さんは私の頬を撫でるのが好きらしい。

また頬を撫でられた。

「そして、理解が深まって君への愛情が深く深くなったその時…」

「…」

「君を、この腹のなかで溶かしてしまいましょう。僕の血肉となり、永遠を共に生きるのです」

「…ふふ、それって素敵ですね」

「でしょう?」

二人で手を繋ぐ。

「さあ、そろそろ帰りましょうか」

「はい」

「今日もコンビニ弁当が楽しみですね。意外と美味しいんですよね、あれ」

「ふふ、はい」

繋いだ手がひんやりと冷たくて。

何故だかわからないけれど、満たされた気持ちになった。

このまま繋いだ手を離したくない、なんて。

そんなことを思ってしまうくらいには。

「百合」

「はい」

「僕を選んでくれてありがとうございます」

優しい笑みを向けられた。

「他の奴らに、可愛い君をくれてやらずに済んでよかった」

「…」

「美味しく食べてあげますからね」

ひんやりとした手に、頭を撫でられた。
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