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嘘つき王女と優しい騎士見習い
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あるところに美しく愛らしい幼い王女様がいました。しかし王女様はとっても嘘つきでした。王女様は嘘つきなのでみんなの嫌われ者です。でも、実は王女様もとっても悲しんでいました。嘘をつくのは、王女様の意思ではなかったからです。王女様は言葉を話せるようになったばかりの頃に、その美しさを妬んだ北の魔女に思ったことと真逆のことを言ってしまう呪いをかけられていたのです。
王女様の呪いを神官によって知らされた国王様と王妃様は、可哀想な嘘つき王女をすごくすごく可愛がりました。そして、騎士団を派遣して遠く遠くに住んでいる西の女神様に呪いを解いてくれるように頼んでもらいました。しかし、西の女神様はどれだけ大金や宝物を積まれても首を縦には振りません。どうしたら王女様の呪いを解いてくれるかと聞くと、王女様自らここまでくれば解いてあげると言いました。
しかし西の女神様の居場所は王国から遠くにあり、針の谷や険しい山、流れの速い川に野生の肉食動物のたくさんいる原っぱを通らなければなりません。国王様はそれをよしとはしませんでした。
そうして王女様が毎日部屋で泣いていた中で。ある日の夜、突然王女様の部屋の窓が勝手に開いたのです。驚いた王女様。そこから一人の男の子が入ってきます。
「姫、助けにきましたよ」
「助けって?」
「貴女の呪いは聞きました。私は騎士見習いで貴女の近衛騎士を目指す者です。貴女の呪いを解くために、私と一緒に西の女神様の元へ行きましょう」
「…!嬉しくないわ」
「それはよかった」
王女様の嘘もさらりと流して、優しい騎士見習いは王女様の手を取ります。そうして二人の旅は始まりました。針の谷や険しい山、流れの速い川に野生の肉食動物のたくさんいる原っぱを二人は手を決して離さずに乗り越えました。二人はいつしか惹かれあっていました。帰ったらきっと結婚しよう。そう約束しました。そして西の女神様のいる森の、湖のほとりに辿り着きました。
「あら、よくきたわね」
「女神様、どうか姫の呪いを解いてください」
「ええ、いいわよ。その代わり、貴方のここに来るまでの記憶をちょうだい?」
「えっ…!?」
「ただで願いを叶えるわけないでしょう?だから、王女の宝物…騎士見習いのここまでの記憶をもらうわ」
「そんな…っ!嬉しいっ!早く呪いを解いてちょうだい!」
王女様は悲しそうな顔で騎士見習いを見ます。呪いを解かなくていい、私のことを忘れないでと目で訴えます。しかし騎士見習いは王女様をそっと優しく抱きしめるとこう言います。
「姫。私は姫の近衛騎士を目指す者。私の記憶が姫の助けになるのなら、いくらでも差し出しましょう」
「とても嬉しいわ!ありがとう!」
「姫…どうか泣かないで。大丈夫です。記憶がなくても、いずれ姫の近くに行きます。その時、姫がこの旅の記憶を私に話してください。私はきっと、もう一度姫に恋をすることでしょう」
泣き噦る王女様に最後にキスをひとつ落とすと、騎士見習いは西の女神様に向き直ります。
「さあ、この記憶と引き換えに姫の呪いを解いてください」
「わかったわ。ああ、ここまで来たお駄賃に、帰りは魔法で送っていってあげる」
西の女神様がそういうと、二人の体が光り輝き、宙に浮きます。
「姫!」
「騎士様!」
二人は最後に、手をそっと握り合い、そして意識を失いました。
王女様が目を覚ますと、そこはお城の自分の部屋でした。お城は突然消えた王女様が戻ってきて大慌て。国王様と王妃様はとても心配していて、よく帰ってきたと褒めてくれました。そして、王女様とお話して呪いが解けたことを知ると、さらに喜び褒めてくれました。
そして月日は流れ、王女様はそれはそれは美しく愛らしく育ちました。今日は王女様の新しい近衛騎士が配属される日です。王女様はそわそわしています。そして、近衛騎士が登城してきました。それは、あの騎士見習いでした。
「はじめまして、姫。今日から貴女の護衛となりました。よろしくお願いします。」
「…はじめましてじゃないわ。そうね。私の話を、聞いてくれる?」
「?…はい、喜んで」
こうして二人は、再び恋に落ちるのでした。
王女様の呪いを神官によって知らされた国王様と王妃様は、可哀想な嘘つき王女をすごくすごく可愛がりました。そして、騎士団を派遣して遠く遠くに住んでいる西の女神様に呪いを解いてくれるように頼んでもらいました。しかし、西の女神様はどれだけ大金や宝物を積まれても首を縦には振りません。どうしたら王女様の呪いを解いてくれるかと聞くと、王女様自らここまでくれば解いてあげると言いました。
しかし西の女神様の居場所は王国から遠くにあり、針の谷や険しい山、流れの速い川に野生の肉食動物のたくさんいる原っぱを通らなければなりません。国王様はそれをよしとはしませんでした。
そうして王女様が毎日部屋で泣いていた中で。ある日の夜、突然王女様の部屋の窓が勝手に開いたのです。驚いた王女様。そこから一人の男の子が入ってきます。
「姫、助けにきましたよ」
「助けって?」
「貴女の呪いは聞きました。私は騎士見習いで貴女の近衛騎士を目指す者です。貴女の呪いを解くために、私と一緒に西の女神様の元へ行きましょう」
「…!嬉しくないわ」
「それはよかった」
王女様の嘘もさらりと流して、優しい騎士見習いは王女様の手を取ります。そうして二人の旅は始まりました。針の谷や険しい山、流れの速い川に野生の肉食動物のたくさんいる原っぱを二人は手を決して離さずに乗り越えました。二人はいつしか惹かれあっていました。帰ったらきっと結婚しよう。そう約束しました。そして西の女神様のいる森の、湖のほとりに辿り着きました。
「あら、よくきたわね」
「女神様、どうか姫の呪いを解いてください」
「ええ、いいわよ。その代わり、貴方のここに来るまでの記憶をちょうだい?」
「えっ…!?」
「ただで願いを叶えるわけないでしょう?だから、王女の宝物…騎士見習いのここまでの記憶をもらうわ」
「そんな…っ!嬉しいっ!早く呪いを解いてちょうだい!」
王女様は悲しそうな顔で騎士見習いを見ます。呪いを解かなくていい、私のことを忘れないでと目で訴えます。しかし騎士見習いは王女様をそっと優しく抱きしめるとこう言います。
「姫。私は姫の近衛騎士を目指す者。私の記憶が姫の助けになるのなら、いくらでも差し出しましょう」
「とても嬉しいわ!ありがとう!」
「姫…どうか泣かないで。大丈夫です。記憶がなくても、いずれ姫の近くに行きます。その時、姫がこの旅の記憶を私に話してください。私はきっと、もう一度姫に恋をすることでしょう」
泣き噦る王女様に最後にキスをひとつ落とすと、騎士見習いは西の女神様に向き直ります。
「さあ、この記憶と引き換えに姫の呪いを解いてください」
「わかったわ。ああ、ここまで来たお駄賃に、帰りは魔法で送っていってあげる」
西の女神様がそういうと、二人の体が光り輝き、宙に浮きます。
「姫!」
「騎士様!」
二人は最後に、手をそっと握り合い、そして意識を失いました。
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そして月日は流れ、王女様はそれはそれは美しく愛らしく育ちました。今日は王女様の新しい近衛騎士が配属される日です。王女様はそわそわしています。そして、近衛騎士が登城してきました。それは、あの騎士見習いでした。
「はじめまして、姫。今日から貴女の護衛となりました。よろしくお願いします。」
「…はじめましてじゃないわ。そうね。私の話を、聞いてくれる?」
「?…はい、喜んで」
こうして二人は、再び恋に落ちるのでした。
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