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悪役令嬢の悪足掻き
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珍しく悪役令嬢バッドエンドなのでご注意下さい。ただ鬱な話です。救いをくれー!
はじめまして、ご機嫌よう。私、アビゲイル・ブローニュですわ。公爵令嬢でしたの。そして、悪役令嬢で、王太子ウィリアム・フィリップ殿下の婚約者でしたわ。今?今は国王ウィリアム陛下の側妃ですわ。それも名ばかりの。本来王妃がやるべき仕事をヒロインさん…リュシエンヌ・ルテル王妃陛下に押し付けられて、身重の身で毎日徹夜を強いられていましたの。当然、お腹の子も天に還ってしまいましたわ。リュシエンヌ王妃陛下はいい気味、と影で笑いながら、可哀想に、と気遣うふりをしてきますわ。そして、ウィリアム国王陛下はよくも余の子を殺したなと怒り狂っていますわ。殺したのはあなた方でしょうに。これはそんな私の、今までのお話。
私とウィリアム殿下は、それはそれは相思相愛で仲が良かったですわ。それもそう。だって私には前世の記憶があって、この乙女ゲームの世界を知っていたから。母を亡くし、悲嘆にくれるウィリアム殿下に寄り添い、ヒロインさんが現れる前にそれはそれは相思相愛な仲になるのは朝飯前でしたわ。もちろん殿下に一途に、他の男には目もくれませんでした。しかし、それは突然でしたわ。いえ、私だけは知っていたのですが。
宮殿の中庭の小さな泉が突然光だし、魔法みたいに夢みたいな光景が広がったのです。そう、ヒロイン、泉の乙女リュシエンヌの登場でした。それを見た瞬間、ウィリアム殿下はまるで魅了魔法にでもかかったように私のことを邪険にし、リュシエンヌに跪き求婚しました。それに私以外の誰も疑問に思わず、皆が当然のように受け入れました。もちろんリュシエンヌの返事はYES。ふざけるなという話ですわ。
あの時は、魅了魔法なんて御伽噺の中だけのもの、ウィリアム殿下の不実な心変わりだと思いましたけれど、今思えば本当に魅了魔法を使っていたんでしょうね。しばらくすると、私の家族や使用人達までも私を邪険にし、リュシエンヌを愛するようになりましたわ。
わからないことだらけの中、結局私は側妃となり、リュシエンヌが王太子妃になることに決まりましたわ。あのあざとい女が、汚い笑顔の女が、王太子妃になんて!私は屈辱に耐えきれませんでしたわ。
私はそれに耐えきれず、リュシエンヌに対し虐めをしました。もしかしたら、この女の本性をズル剥けにすればみんなの目も覚めると思って。でもそれは、今思うと一種の破滅衝動のようで、もしかしたらリュシエンヌの魔法にかかっていたのかもしれませんわ。
結局虐めは明るみにでて、私はお咎めこそなく口頭注意で済んだものの、ウィリアム殿下に嫌われましたわ。ヒロインの力がこんなにチートなんて聞いてないですわ。酷い…酷すぎる…。
その後も私は必死にウィリアム殿下にアピールしましたが、引かれ、嫌われる一方。一体どこで間違えたというの?
耐え難いことだらけの中で、それでも私は我慢して生きてきましたわ。そしてリュシエンヌとウィリアム殿下は結婚。披露宴はそれはもう賑わいましたわ。私も遅れて、側妃となりましたわ。私は民衆からゴミを投げつけられましたわ。私、リュシエンヌが現れるまでは優しい清らかな、聖女のようなお方と言われ人気者でしたのにね。慈善活動もいっぱいしましたのにね。
そして初夜。ウィリアム殿下は私に一度だけ、今日だけ特別に抱いてやる。今後はもう俺に付き纏うなと仰いました。そして無理矢理抱かれましたわ。
ふざけないで。
それだけが私の本心ですわ。
ですが、よかったのか悪かったのか、私はその一回で身籠りましたわ。国王陛下と王妃陛下は喜んでくださいましたわ。ウィリアム殿下は複雑そうでした。リュシエンヌの心は読めませんでしたわ。
そしてその日、国王陛下と王妃陛下は突然お亡くなりになりました。今思えば、きっとリュシエンヌが何かしたのですわ。
そして冒頭に至りますわ。…ああ、お腹の子…クリスに申し訳ありませんわ。男の子ならクリスティアン、女の子ならクリスティーヌと名付けるはずでしたのに。…ああ、クリス。母も、今、そちらに行きますわ。
私は、怒り狂った王に閉じ込められた高い塔から、身を投げました。
はじめまして、ご機嫌よう。私、アビゲイル・ブローニュですわ。公爵令嬢でしたの。そして、悪役令嬢で、王太子ウィリアム・フィリップ殿下の婚約者でしたわ。今?今は国王ウィリアム陛下の側妃ですわ。それも名ばかりの。本来王妃がやるべき仕事をヒロインさん…リュシエンヌ・ルテル王妃陛下に押し付けられて、身重の身で毎日徹夜を強いられていましたの。当然、お腹の子も天に還ってしまいましたわ。リュシエンヌ王妃陛下はいい気味、と影で笑いながら、可哀想に、と気遣うふりをしてきますわ。そして、ウィリアム国王陛下はよくも余の子を殺したなと怒り狂っていますわ。殺したのはあなた方でしょうに。これはそんな私の、今までのお話。
私とウィリアム殿下は、それはそれは相思相愛で仲が良かったですわ。それもそう。だって私には前世の記憶があって、この乙女ゲームの世界を知っていたから。母を亡くし、悲嘆にくれるウィリアム殿下に寄り添い、ヒロインさんが現れる前にそれはそれは相思相愛な仲になるのは朝飯前でしたわ。もちろん殿下に一途に、他の男には目もくれませんでした。しかし、それは突然でしたわ。いえ、私だけは知っていたのですが。
宮殿の中庭の小さな泉が突然光だし、魔法みたいに夢みたいな光景が広がったのです。そう、ヒロイン、泉の乙女リュシエンヌの登場でした。それを見た瞬間、ウィリアム殿下はまるで魅了魔法にでもかかったように私のことを邪険にし、リュシエンヌに跪き求婚しました。それに私以外の誰も疑問に思わず、皆が当然のように受け入れました。もちろんリュシエンヌの返事はYES。ふざけるなという話ですわ。
あの時は、魅了魔法なんて御伽噺の中だけのもの、ウィリアム殿下の不実な心変わりだと思いましたけれど、今思えば本当に魅了魔法を使っていたんでしょうね。しばらくすると、私の家族や使用人達までも私を邪険にし、リュシエンヌを愛するようになりましたわ。
わからないことだらけの中、結局私は側妃となり、リュシエンヌが王太子妃になることに決まりましたわ。あのあざとい女が、汚い笑顔の女が、王太子妃になんて!私は屈辱に耐えきれませんでしたわ。
私はそれに耐えきれず、リュシエンヌに対し虐めをしました。もしかしたら、この女の本性をズル剥けにすればみんなの目も覚めると思って。でもそれは、今思うと一種の破滅衝動のようで、もしかしたらリュシエンヌの魔法にかかっていたのかもしれませんわ。
結局虐めは明るみにでて、私はお咎めこそなく口頭注意で済んだものの、ウィリアム殿下に嫌われましたわ。ヒロインの力がこんなにチートなんて聞いてないですわ。酷い…酷すぎる…。
その後も私は必死にウィリアム殿下にアピールしましたが、引かれ、嫌われる一方。一体どこで間違えたというの?
耐え難いことだらけの中で、それでも私は我慢して生きてきましたわ。そしてリュシエンヌとウィリアム殿下は結婚。披露宴はそれはもう賑わいましたわ。私も遅れて、側妃となりましたわ。私は民衆からゴミを投げつけられましたわ。私、リュシエンヌが現れるまでは優しい清らかな、聖女のようなお方と言われ人気者でしたのにね。慈善活動もいっぱいしましたのにね。
そして初夜。ウィリアム殿下は私に一度だけ、今日だけ特別に抱いてやる。今後はもう俺に付き纏うなと仰いました。そして無理矢理抱かれましたわ。
ふざけないで。
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ですが、よかったのか悪かったのか、私はその一回で身籠りましたわ。国王陛下と王妃陛下は喜んでくださいましたわ。ウィリアム殿下は複雑そうでした。リュシエンヌの心は読めませんでしたわ。
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そして冒頭に至りますわ。…ああ、お腹の子…クリスに申し訳ありませんわ。男の子ならクリスティアン、女の子ならクリスティーヌと名付けるはずでしたのに。…ああ、クリス。母も、今、そちらに行きますわ。
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