上 下
26 / 27

時が過ぎるのは早い

しおりを挟む
パパとお兄様と仲良くなり、エマちゃんというお友達も出来て。

魔法使いさんと出会ってから毎日が幸せ。

そして幸せになると時が経つのが早く感じた。

私は今日で十八歳。

今日、今この瞬間から魔法使いさんと結婚出来る。

「魔法使いさん」

「なに?お姫様」

「この書類に私の名前を書くんだよね」

「そうだよ」

「私の名前って?」

魔法使いさんが私の名前を教えてくれる。

初めて聞いた私の名前は、数百年前の聖女様と同じ名前で。

なんとなく、魔法使いさんが私に名前を教えたがらない理由がわかった。

その後書類にサインされた魔法使いさんの名前を一生懸命に覚えつつ、魔法使いさんに聞く。

「魔法使いさんが初めから私に優しかったのは、〝前の私〟のせい?」

「ふふ。前も今も、僕の最愛は君だけだよ」

そう言って頬にキスされる。

前の私に嫉妬がないわけじゃないけど、私自身のことだし前の私がいてこその今だから。

「はい、国王陛下。これで僕たちは夫婦ですよね」

「ああ」

「じゃあ、お姫様。二人の新婚生活を始めようか」

「うん」

魔法使いさんの宣言通り、それからは穏やかな新婚生活が始まった。

たまにパパとお兄様と会って仲良くしたり、エマちゃんと遊んだりするけれど…ほぼほぼ魔法使いさんといちゃいちゃしてばかりの、ちょっと自堕落な生活。

でもそれがすごく幸せ。

煩わしいアレコレからは魔法使いさんが守ってくれるし。

国も基本的に平和で安全で豊かで、たまに実は聖女を囲っているのではないかと言いがかりをつけて他国が我が国に聖女略奪のため攻め入ろうとすることもあるらしい。

けど、何故か実行前に必ず魔物の襲撃に遭って計画が頓挫するとか。なんとなく、魔法使いさんは色々知っていそうだけど聞かない。

おそらく、私の知らない前の私に関するお話だろうから。

「今日も平和だね」

「そうだね、お姫様」

「はやく魔法使いさんとの子供が欲しいな」

「ふふ、楽しみだね」

二人の時間を楽しむ。

時々、得体の知れない誰かがこちらを見ているのには気付いているけれど魔法使いさんがなにも言わないので悪いものではないのだろう。

窓の遥か向こうから感じる視線に魔法使いさんにバレないよう優しく手を振って、その後魔法使いさんに飛びついてハグした。

私は自分で思っている以上にたくさん守られているのだろう。

聖女として祭り上げられ利用されただけの前回の私とは違って、きっと幸せな最期を迎えられる。

そう確信して、優しく抱きしめ返してくれる魔法使いさんの唇にキスをした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。

新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。 そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。 しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。 ※カクヨムにも投稿しています!

転生発明家は異世界で魔道具師となり自由気ままに暮らす~異世界生活改革浪漫譚~

夜夢
ファンタジー
 数々の発明品を世に生み出し、現代日本で大往生を迎えた主人公は神の計らいで地球とは違う異世界での第二の人生を送る事になった。  しかし、その世界は現代日本では有り得ない位文明が発達しておらず、また凶悪な魔物や犯罪者が蔓延る危険な世界であった。  そんな場所に転生した主人公はあまりの不便さに嘆き悲しみ、自らの蓄えてきた知識をどうにかこの世界でも生かせないかと孤軍奮闘する。  これは現代日本から転生した発明家の異世界改革物語である。

可愛い可愛い天邪鬼な君のこと

下菊みこと
恋愛
天邪鬼な君、執着してしまう俺、そして執着しているあの侍女のお話。 御都合主義のSS、ツンデレ美女とヤンデレ美青年と隠れヤンデレな侍女のあれそれ。 小説家になろう様でも投稿しています。

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

極上の彼女と最愛の彼 Vol.2~Special episode~

葉月 まい
恋愛
『極上の彼女と最愛の彼』 ハッピーエンドのちょっと先😊 結ばれた瞳子と大河 そしてアートプラネッツのメンバーのその後… •• ⊰❉⊱……登場人物……⊰❉⊱•• 冴島(間宮) 瞳子(26歳)… 「オフィス フォーシーズンズ」イベントMC 冴島 大河(30歳)… デジタルコンテンツ制作会社 「アートプラネッツ」代表取締役

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

婚約解消された途端に求婚されたんですが

下菊みこと
恋愛
まさかの出会いの連続。 元サヤではないです、ざまぁもなし。 ご都合主義のハッピーエンドのSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...