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お黙りになって わたくしの愛を否定することは許しませんわ
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エマ様に会いに来た。
牢につながれたエマ様は、わたくしを見つけると瞳に火が灯った。
「なんで!どうしてあんたばかりが幸せになるのよ!」
「どうしてと仰いましても…わたくしは何もしていませんわ」
エマ様が何故わたくしを目の敵にするのか。
それすらわからない。
「なんでも持ってるあんたなんかがいるから、私が一番になれなかった!せっかく聖魔力を持って生まれた勝ち組だったのに、あんたのせいで負け組になった!」
不思議な考え方の人だ。
勝ち組も負け組もないだろうに。
力があるなら力なき者の力になる。
力がないなら力がある者に頼り、その代わりにお布施を払う。
ただそれだけ。
「聖女とは、それで勝ち組になれるというものではありませんよ?むしろ重責を担うことになる貧乏くじと思う人もいます」
わたくしは…選ばれたからには最善を尽くし、妃としても聖女としても最高の人になりたいけれど。
「なんなのよ!あんたのそういうところがムカつくの!」
「そういうところ?」
「ああ、ムカつく!ムカつく!カマトトぶって、良い人ぶって、そうやって何人騙してきたのよ!」
騙すとはなんのことだろう。
「どうせ王太子のことだって、本当は自分を飾るアクセサリーくらいにしか思ってないくせに!さも純情ぶって一途なフリをして!」
「お黙りになって」
思ったより冷たい声が出た。
ヒートアップしていたはずのエマ様も動きが止まる。
「わたくしの愛を否定することは許しませんわ」
「愛って…」
「ヴァレール様はわたくしの命。わたくしはこの愛のために心を捧げておりますの。さすがにもうあの日のような無茶はしないつもりですが、ヴァレール様のためなら本当にわたくしはなんでも出来る」
エマ様は、わたくしの言葉に唇を噛み締めて俯いた。
「どうして、こんな偽善者に私は負けたの…」
そのまま唇をぎりっと噛んだのだろう。
血が滲む。
だけれどわたくしは優しい言葉をかけることはしない。
ヴァレール様の妃となる以上出来る限り優しい女性でありたいが、エマ様はわたくしの誇りを…ヴァレール様への愛を貶した。
優しく接するなんて出来ない。
「…さようなら。もう二度と会うことはありませんわ」
「…くそぉおおおおおおお!!!」
元聖女候補とは思えない声を上げて、エマ様はその場にうずくまる。
わたくしはそんな彼女に背を向けて、ヴァレール様の元へ戻った。
「大丈夫だったかい?」
「はい。彼女には思うところもありましたが…なんだかスッキリしましたわ」
「それなら良かった」
優しく微笑んでくださるこの方を愛することこそが、わたくしの誇りであり幸せですわ。
牢につながれたエマ様は、わたくしを見つけると瞳に火が灯った。
「なんで!どうしてあんたばかりが幸せになるのよ!」
「どうしてと仰いましても…わたくしは何もしていませんわ」
エマ様が何故わたくしを目の敵にするのか。
それすらわからない。
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力があるなら力なき者の力になる。
力がないなら力がある者に頼り、その代わりにお布施を払う。
ただそれだけ。
「聖女とは、それで勝ち組になれるというものではありませんよ?むしろ重責を担うことになる貧乏くじと思う人もいます」
わたくしは…選ばれたからには最善を尽くし、妃としても聖女としても最高の人になりたいけれど。
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「そういうところ?」
「ああ、ムカつく!ムカつく!カマトトぶって、良い人ぶって、そうやって何人騙してきたのよ!」
騙すとはなんのことだろう。
「どうせ王太子のことだって、本当は自分を飾るアクセサリーくらいにしか思ってないくせに!さも純情ぶって一途なフリをして!」
「お黙りになって」
思ったより冷たい声が出た。
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「わたくしの愛を否定することは許しませんわ」
「愛って…」
「ヴァレール様はわたくしの命。わたくしはこの愛のために心を捧げておりますの。さすがにもうあの日のような無茶はしないつもりですが、ヴァレール様のためなら本当にわたくしはなんでも出来る」
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「はい。彼女には思うところもありましたが…なんだかスッキリしましたわ」
「それなら良かった」
優しく微笑んでくださるこの方を愛することこそが、わたくしの誇りであり幸せですわ。
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