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お兄様は皇太子殿下と仲良しなようです

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屋敷に帰って夕食の際に、今日も学園であったことを全てお兄様に報告します。ニコニコとして聞いてくれていたお兄様ですが、クリス様とお友達になったことをお話するとびっくりされていました。

「皇太子殿下とお友達に?」

「はい、そうなのです。皇太子殿下はその…孤独な方のようで。それを少しでも癒せればと思いました。…お兄様?」

お兄様は何故か俯き表情が見えません。

「まさか皇太子殿下に見初められるとは…」

「え?」

「さすがに皇太子妃に選ばれたら断れないな…」

「あの、お兄様?」

お兄様は呼びかけたら急に顔を上げました。

「エレナ、皇太子殿下は好きか?」

「クリス様ですか?もちろん大好きです。大切なお友達ですよ」

「…異性として意識したりは?」

「クリス様は雲の上の方ですから、そんな邪な気持ちはありませんよ」

「皇太子殿下がエレナを望んだら?その時は、受け入れるか?」

「え…そんなこと万が一にもありません」

「万が一にも備えておくことは大事だ」

「…クリス様のアピール次第ですね」

「…そうか」

またお兄様は俯いてしまいました。

「あの、お兄様、困らせてしまったならごめんなさい」

「いや、エレナは悪くない。皇太子殿下に困っているだけだ」

「クリス様に…?」

お兄様は私を真っ直ぐに見つめます。

「エレナ。もし、逃げたくなったら言ってくれ。いつでもエレナを連れ去って逃げることは出来るから」

「…お兄様?」

「私はエレナの味方だ。重圧に耐えられなければ逃げたって良い。それを覚えておいで」

「…はい。お兄様の言葉は決して忘れません」

「…ああ、それなら良い」

それからはお兄様はいつもの調子に戻りました。

「ところで、その、お兄様はクリス様がお嫌いなのですか?」

「え?」

「いえ。クリス様とお友達になったお話をしてから、元気が無くなったので」

「…」

お兄様は黙り込みました。やっぱりそうなのでしょうか?

「…そうだな。今はちょっと嫌いだ。可愛い妹を取られそうだからな」

「え?」

「嫉妬する。…し、エレナが心配だ。だから、今はちょっと嫌いだ」

「そう…なのですか?」

「ああ。けれどそれだけだ。むしろ皇太子殿下とは幼い頃からの付き合いだから、仲は良い方だな。むしろ幼い日は懐かれてはいた」

「そうなのですか!?」

「幼い頃から公爵家の嫡男として、宮廷に連れて行かれて。そこで幼い頃の皇太子殿下は、私を兄のように慕ってくれてな。まあ、懐かれていたし、今は〝兄離れ〟されてしまったがまあ普通に仲が良い。…だが、今回の件は我慢ならないな。面白くない。…ただ、他の有象無象に嫁がせるよりよほど良いとも思うしな。どうしたものか」

「ええと…」

「まあ、エレナが心配することは何もない。大丈夫だ」

「…はい、お兄様」

お兄様は皇太子殿下と仲良しなようです。なのにどうして私とお友達になると嫌いなのでしょうか?
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