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悪役王女はチートなラスボスからチートな愛され姫に進化した
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フォセット・エロイーズ・ドナシアン。ドナシアン皇国の末っ子長女である。上に兄ディオンとデジレ、ダヴィドがいる。しかし、兄三人と違い側妃の子である彼女は継母から嫌われて兄達とは関わりがなかった。
しかし、側妃を愛していた父王からは大切にされそれなりに幸せに生きてきた。側妃である母は最近亡くしたが、幸せな記憶はたくさん作れた。なのにいきなり、前世の記憶を思い出した。なんの理由もなく、唐突に。
その記憶では、彼女は大人の女性で乙女ゲームという遊戯を愛していた。その中で最もお気に入りの作品の設定が、この世界に酷似していた。
そのゲーム「三人の王子様と聖女候補」では、ヒロインである聖女候補が三人の王子様の誰かと恋に落ちる。兄達である。そしてその仲を嫉妬して邪魔するのが自分。フォセットである。
悪役王女に転生したと知った、中身が一気に大人になってしまった彼女が一番に思い付いた作戦。兄達に媚を売る。しかしこの歳までほぼ接触がなく、王妃様の目もあるので無理だと判断した。
次の作戦。自分が聖女候補になっちゃえばヒロインが湧いて出ることもなくない?
これだと思った彼女は行動に出た。
「お父様ー!」
「どうしたフォセット!」
ダッシュで父王に駆け寄り抱きつく。しっかりと抱きとめられる。
「護衛を連れて、終末期医療院へ慰問に行きたいです!出来る限り複数箇所!」
「よーしすぐに手配してやるぞー!」
「お父様大好きー!」
父親のチョロさはともかく。終末期医療院とは現在の医術では救えない患者の苦痛を取ることに特化した施設である。
彼女が何をしたいかといえば。
「フォセットは全ての属性の魔術を扱える上にほぼ無尽蔵の魔力を持つ、チート系悪役王女なのよね。ラスボスとして倒す時治癒魔術が厄介だったわ」
ということで、治癒魔術で治せないはずの患者を治して聖女候補に成り上がる作戦である。
終末期医療院についてフォセットは挨拶も何もなくいきなり治癒魔術を広域展開した。そしてほぼ無尽蔵の魔力を使って最初から最後まで全力で治癒を施し患者全ての病気を治した。終末期医療院にいた医師達も開いた口が塞がらない。こんな無尽蔵の魔力聞いたこともない。
次の瞬間、歓声が上がった。
「王女様ばんざーい!」
「王女様は聖女だ!」
「いや女神だ!」
ということで、作戦大成功である。複数箇所の終末期医療院で同じことをして、これで聖女候補入りも間違いないと確信した。
ところが、いつまで経ってもフォセットに聖女候補入りの話は上がらない。フォセットは功績が足りないのかと次の行動に出る。
「お父様ー!」
「どうしたフォセット!」
いつものやり取りである。抱っこされたままフォセットはおねだりした。
「先の戦争で身体の一部を失った人達のための施設がありましたよね?」
「ああ、貢献者福祉施設か」
「そこに慰問に行きたいです!出来る限り複数箇所!」
「もちろんいいぞー!」
「お父様大好きー!」
ということで次の慰問先が決まった。フォセットはまた治癒魔術を全力で広域展開して、入居者の欠損を癒す。
「王女殿下、ありがとうこざいます!これで子供達を抱きしめられます!」
「王女様、わしなんかの目を取り戻してくれてありがとうのぅ」
「王女殿下、このご恩は一生忘れません!」
これで今度こそ聖女候補入りすると思ったフォセットだったが、やはりそんな話は上がらなかった。
というのも、王妃が教会の提案を突っ撥ねていたのだ。父王も浮気した上で相手の女性を側妃とした後ろめたさがあり王妃に強く言えない。
一方で、子供達にはそんなことは関係ない。妹が今凄いらしいと兄達はワイワイ盛り上がった。そんなわけで妹にちょっかいをかけにいく。
「フォセット」
「ディオンお兄様?どうされました?あら、デジレお兄様、ダヴィドお兄様まで」
フォセットは驚いたが可愛い笑顔を三人に向けておいた。こんなこともあろうかと鏡の前で何回も練習したとっておきである。
「お前が最近国民達のために頑張ってるって聞いてよ、俺の小遣いでご褒美にチョコレートケーキを買っておいた。食べるか?」
「ディオンお兄様大好きー!本当にありがとうございます!」
甘いものが大好物のフォセットは演技も忘れディオンに抱きつく。フォセットは自ら甲斐甲斐しく紅茶を淹れて、兄三人に出した。
「…うん、美味しいよ。さすがは私の妹だね」
「デジレお兄様もありがとうございます!」
「美味しい紅茶のお礼に、これを受け取ってもらえるかな?」
「これは…うさぎのぬいぐるみ?可愛い!」
フォセットは可愛いモノが好きである。テンションが上がる。
「大切にします!大好きです、デジレお兄様!」
「それは良かった」
無邪気に笑うフォセットにディオンもデジレも、そしてダヴィドも好感を持った。
「フォセット、良かったらこのアミュレットを受け取って」
「わあ、ダヴィドお兄様ありがとうございます!さっそく着けてもいいですか?」
「もちろん。着けてあげるよ」
ダヴィドがフォセットのドレスの胸元にアミュレットを着ける。
「おー、似合ってるぞフォセット」
「とても可愛らしいね」
「さすがは僕の見立てだね。素敵だよ、フォセット」
「えへへ」
この日、一気に兄妹の仲が縮まった。
兄達と仲良くなり、国民達からも〝奇跡の治癒姫〟と呼ばれ人気も高くなったある日。フォセットは王妃から呼び出された。
「あの、王妃様。今日はその、呼んでくれてありがとうございます」
「…お前、とりあえず紅茶を飲みなさい」
「は、はい」
この紅茶、甘い。フォセットはそう思った。甘いそれは、毒とも知らずに。
「お前、少し調子に乗っているのではなくて?」
「そんなことは…」
「もういいから下がりなさい」
「え?」
不思議に思いつつもフォセットは素直に下がる。そして、いつも通り兄達と遊んでいたその時。口から血を吐いて倒れた。
「フォセット!?おいお前、すぐに治癒術師を呼べ!お前は父上を呼んで来い!」
「はい、兄上!」
「父上ー!父上ー!」
フォセットが目を覚ましたのは、実に三ヶ月後のことだった。
その頃には王妃が処分を受け、離宮に生涯幽閉となっていた。兄達は自分の母が、腹違いとはいえ妹を傷付けたとショックを受けていた。それぞれ体を壊すまで稽古に打ち込んだり、勉強に打ち込んだり、眠れなくなり病気にかかったり。
王妃はどうも、父王の浮気から少しずつ心を壊していたらしい。だからこんなバレバレな暗殺も実行してしまった。可哀想だと、フォセットは思った。
フォセットは兄達の元を訪ねて、治癒魔術を使って三人を癒した。そして、また遊んで欲しいと頼んで仲直りした。
離宮に幽閉された王妃の元にも足を運んだ。一日一回、一時間だけのお喋りを王妃と繰り返す。次第に王妃の心を動かすに至り、謝罪を受けた。それからも毎日王妃の元へ通う。兄達もそんなフォセットを見て毎日一回時間をずらして王妃の元へ通うようになった。王妃は、王妃として暮らしていた頃よりも幸せを感じる時間が増えた。
ー…
フォセットも成長して、乙女ゲームの始まる年齢になった。王妃の妨害もなくなり、フォセットは無事に聖女となった。国民達を日々癒して、国に安全な結界を張り、全ての人の尊敬を集めた。
しかしヒロインと兄達は運命なのか、街中などで出会いを果たした。それでもフォセットは悪役王女とはならずに優しく恋模様を見守っている。
そしてフォセットにも運命は訪れた。
「聖女よ。どうか私の求婚を受け入れて欲しい」
「えー…」
隣国の王子からのアプローチ。フォセットは兄達と相談しつつ少しずつ前に進んでいく。自分の幸せを掴み取るために。
しかし、側妃を愛していた父王からは大切にされそれなりに幸せに生きてきた。側妃である母は最近亡くしたが、幸せな記憶はたくさん作れた。なのにいきなり、前世の記憶を思い出した。なんの理由もなく、唐突に。
その記憶では、彼女は大人の女性で乙女ゲームという遊戯を愛していた。その中で最もお気に入りの作品の設定が、この世界に酷似していた。
そのゲーム「三人の王子様と聖女候補」では、ヒロインである聖女候補が三人の王子様の誰かと恋に落ちる。兄達である。そしてその仲を嫉妬して邪魔するのが自分。フォセットである。
悪役王女に転生したと知った、中身が一気に大人になってしまった彼女が一番に思い付いた作戦。兄達に媚を売る。しかしこの歳までほぼ接触がなく、王妃様の目もあるので無理だと判断した。
次の作戦。自分が聖女候補になっちゃえばヒロインが湧いて出ることもなくない?
これだと思った彼女は行動に出た。
「お父様ー!」
「どうしたフォセット!」
ダッシュで父王に駆け寄り抱きつく。しっかりと抱きとめられる。
「護衛を連れて、終末期医療院へ慰問に行きたいです!出来る限り複数箇所!」
「よーしすぐに手配してやるぞー!」
「お父様大好きー!」
父親のチョロさはともかく。終末期医療院とは現在の医術では救えない患者の苦痛を取ることに特化した施設である。
彼女が何をしたいかといえば。
「フォセットは全ての属性の魔術を扱える上にほぼ無尽蔵の魔力を持つ、チート系悪役王女なのよね。ラスボスとして倒す時治癒魔術が厄介だったわ」
ということで、治癒魔術で治せないはずの患者を治して聖女候補に成り上がる作戦である。
終末期医療院についてフォセットは挨拶も何もなくいきなり治癒魔術を広域展開した。そしてほぼ無尽蔵の魔力を使って最初から最後まで全力で治癒を施し患者全ての病気を治した。終末期医療院にいた医師達も開いた口が塞がらない。こんな無尽蔵の魔力聞いたこともない。
次の瞬間、歓声が上がった。
「王女様ばんざーい!」
「王女様は聖女だ!」
「いや女神だ!」
ということで、作戦大成功である。複数箇所の終末期医療院で同じことをして、これで聖女候補入りも間違いないと確信した。
ところが、いつまで経ってもフォセットに聖女候補入りの話は上がらない。フォセットは功績が足りないのかと次の行動に出る。
「お父様ー!」
「どうしたフォセット!」
いつものやり取りである。抱っこされたままフォセットはおねだりした。
「先の戦争で身体の一部を失った人達のための施設がありましたよね?」
「ああ、貢献者福祉施設か」
「そこに慰問に行きたいです!出来る限り複数箇所!」
「もちろんいいぞー!」
「お父様大好きー!」
ということで次の慰問先が決まった。フォセットはまた治癒魔術を全力で広域展開して、入居者の欠損を癒す。
「王女殿下、ありがとうこざいます!これで子供達を抱きしめられます!」
「王女様、わしなんかの目を取り戻してくれてありがとうのぅ」
「王女殿下、このご恩は一生忘れません!」
これで今度こそ聖女候補入りすると思ったフォセットだったが、やはりそんな話は上がらなかった。
というのも、王妃が教会の提案を突っ撥ねていたのだ。父王も浮気した上で相手の女性を側妃とした後ろめたさがあり王妃に強く言えない。
一方で、子供達にはそんなことは関係ない。妹が今凄いらしいと兄達はワイワイ盛り上がった。そんなわけで妹にちょっかいをかけにいく。
「フォセット」
「ディオンお兄様?どうされました?あら、デジレお兄様、ダヴィドお兄様まで」
フォセットは驚いたが可愛い笑顔を三人に向けておいた。こんなこともあろうかと鏡の前で何回も練習したとっておきである。
「お前が最近国民達のために頑張ってるって聞いてよ、俺の小遣いでご褒美にチョコレートケーキを買っておいた。食べるか?」
「ディオンお兄様大好きー!本当にありがとうございます!」
甘いものが大好物のフォセットは演技も忘れディオンに抱きつく。フォセットは自ら甲斐甲斐しく紅茶を淹れて、兄三人に出した。
「…うん、美味しいよ。さすがは私の妹だね」
「デジレお兄様もありがとうございます!」
「美味しい紅茶のお礼に、これを受け取ってもらえるかな?」
「これは…うさぎのぬいぐるみ?可愛い!」
フォセットは可愛いモノが好きである。テンションが上がる。
「大切にします!大好きです、デジレお兄様!」
「それは良かった」
無邪気に笑うフォセットにディオンもデジレも、そしてダヴィドも好感を持った。
「フォセット、良かったらこのアミュレットを受け取って」
「わあ、ダヴィドお兄様ありがとうございます!さっそく着けてもいいですか?」
「もちろん。着けてあげるよ」
ダヴィドがフォセットのドレスの胸元にアミュレットを着ける。
「おー、似合ってるぞフォセット」
「とても可愛らしいね」
「さすがは僕の見立てだね。素敵だよ、フォセット」
「えへへ」
この日、一気に兄妹の仲が縮まった。
兄達と仲良くなり、国民達からも〝奇跡の治癒姫〟と呼ばれ人気も高くなったある日。フォセットは王妃から呼び出された。
「あの、王妃様。今日はその、呼んでくれてありがとうございます」
「…お前、とりあえず紅茶を飲みなさい」
「は、はい」
この紅茶、甘い。フォセットはそう思った。甘いそれは、毒とも知らずに。
「お前、少し調子に乗っているのではなくて?」
「そんなことは…」
「もういいから下がりなさい」
「え?」
不思議に思いつつもフォセットは素直に下がる。そして、いつも通り兄達と遊んでいたその時。口から血を吐いて倒れた。
「フォセット!?おいお前、すぐに治癒術師を呼べ!お前は父上を呼んで来い!」
「はい、兄上!」
「父上ー!父上ー!」
フォセットが目を覚ましたのは、実に三ヶ月後のことだった。
その頃には王妃が処分を受け、離宮に生涯幽閉となっていた。兄達は自分の母が、腹違いとはいえ妹を傷付けたとショックを受けていた。それぞれ体を壊すまで稽古に打ち込んだり、勉強に打ち込んだり、眠れなくなり病気にかかったり。
王妃はどうも、父王の浮気から少しずつ心を壊していたらしい。だからこんなバレバレな暗殺も実行してしまった。可哀想だと、フォセットは思った。
フォセットは兄達の元を訪ねて、治癒魔術を使って三人を癒した。そして、また遊んで欲しいと頼んで仲直りした。
離宮に幽閉された王妃の元にも足を運んだ。一日一回、一時間だけのお喋りを王妃と繰り返す。次第に王妃の心を動かすに至り、謝罪を受けた。それからも毎日王妃の元へ通う。兄達もそんなフォセットを見て毎日一回時間をずらして王妃の元へ通うようになった。王妃は、王妃として暮らしていた頃よりも幸せを感じる時間が増えた。
ー…
フォセットも成長して、乙女ゲームの始まる年齢になった。王妃の妨害もなくなり、フォセットは無事に聖女となった。国民達を日々癒して、国に安全な結界を張り、全ての人の尊敬を集めた。
しかしヒロインと兄達は運命なのか、街中などで出会いを果たした。それでもフォセットは悪役王女とはならずに優しく恋模様を見守っている。
そしてフォセットにも運命は訪れた。
「聖女よ。どうか私の求婚を受け入れて欲しい」
「えー…」
隣国の王子からのアプローチ。フォセットは兄達と相談しつつ少しずつ前に進んでいく。自分の幸せを掴み取るために。
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