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少女達は案外面倒くさい人達に捕まった
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「すまない、ミルフィーナ。私との婚約を解消して欲しい」
「…まあ」
ミルフィーナ・オルティス。オルティス公爵家の末っ子長女であり、誰からも愛される微笑みの天使。美しい顔立ちにまろやかな身体つきで女性すら見惚れるほどの美女である。何をやらせても完璧にこなす彼女は、王太子妃として相応しい淑女だった。が、今王太子から婚約解消を打診されている。これはどういうことだろうか?
「どなたか良い方が出来まして?」
「その…マリア・マーベリック伯爵令嬢と恋仲になった。すまない…」
「いえ、殿下を純粋に慕うお方ですものね。むしろ良かったのかもしれませんわ」
マリア・マーベリック伯爵令嬢。最近マーベリック伯爵に引き取られた妾腹の少女。可愛らしい顔立ち、スレンダーな身体つき。優しく、活発で純粋無垢。それでありながら妾腹だからと虐めを受けても笑って耐えるだけの精神の強さもある。また、学業も平民だったとは思えないほど優秀。所作も付け焼き刃とはとても思えない美しいもの。運動神経もいいらしい。また、なんだかんだと女性の味方を増やし今では伯爵令嬢として認められている。最初は義務として彼女を引き取った伯爵も、彼女を妾腹だと嫌っていた義母や義兄も彼女を大切に愛している。そんな彼女が男性の貴族には一切興味を示さず、ただ一人王太子殿下だけを見つめていたのをミルフィーナは知っていた。
彼女なら、伯爵令嬢であるし優秀だ。しかも一途に王太子殿下を愛している。王太子殿下も大層彼女を愛しているようだし何も問題はない。自分は、どうしても王太子殿下を愛して差し上げることが出来ずにいた。お互いに気を遣ってはいたが、恋愛関係にはなれそうにない。それでも良い夫婦にはなれたとは思うが…王太子殿下には、この優しく完璧な幼なじみには幸せになって欲しい。ミルフィーナは潔く身を引くことを決めた。
「…では、陛下に婚約の解消を打診されましたか?」
「いや、君に話してからと思って…ただ、その。王太子との婚約解消は、いくら皆から愛される君でも醜聞になるかも知れない。…本当に、すまない。でも、マリアを諦められないんだ」
「いいのです。さあ、私と一緒に婚約解消を申し入れに行きましょう?」
「ありがとう、ミルフィーナ…」
優しすぎるこの幼なじみは、わがままを滅多に言わない。だから、叶えてあげたいのだ。たとえ、自分の命を捧げてでも。
ー…
「婚約解消!?正気か!?」
「はい、国王陛下」
国王陛下はマリア様のことを知っていらしたようで、彼女ならば私も文句はない、と仰られた。
「だが、ミルフィーナ…お前は…」
「良いのです。陛下」
その時、玉座の間の重い扉が勢いよく開いた。
「何が良いのですだ、ミルフィーナ!君は王太子妃教育をあれだけ頑張ってきたじゃないか!」
「ルイスフォード様…」
王弟、ルイスフォード。ミルフィーナの、想い人。見目麗しく、国王と歳が離れた兄弟のためまだ年若い彼。優秀で、側近として国王を支える優しい人。なぜこのタイミングで、とミルフィーナな天を仰いだ。
「頑張り過ぎて、もう極秘教育まで終わったのだろう!王族に嫁がなければ君は…!」
極秘教育。国の裏の部分を学ぶそれは、知ったが最後王族に嫁がなければ毒杯を与えられるものだった。それを知った王太子は顔色が白くなる。
「み、ミルフィーナ…すまない、やっぱり婚約解消は、」
「王太子殿下。貴方は私の大切な幼なじみ。王太子殿下はどう思われるかわからないですが…貴方は私の兄も同然。幸せになっていただきたいの。だから、私は毒杯を賜りますわ」
「ミルフィーナ…」
「ミルフィーナ!」
その様子を見ていた国王は一言。
「早まるな」
ミルフィーナ達は国王を見つめた。
「ルイスフォード。お前が娶れば解決だろう」
「…え」
「…な」
「…兄上!?正気か!?」
ミルフィーナは思わぬ幸運に淑女らしからぬ驚きの表情を浮かべた。そんなミルフィーナを見て王太子はミルフィーナの気持ちを察して素早く援護射撃をする。
「父上、私もそれがよろしいかと」
「では決まりだな」
「兄上!」
「いいではないか。お前達、両片思いだろう?」
「え」
「は?」
ミルフィーナはまじまじとルイスフォードを見つめる。見つめられたルイスフォードはどんどん顔が赤くなる。ミルフィーナは、ルイスフォードの気持ちを悟り思わずルイスフォードに抱きついた。
「み、ミルフィーナ?」
普段完璧な淑女である彼女では考えられない行動に、ルイスフォードも彼女の気持ちにようやく気付く。優しく抱きしめて、そのまま彼女に求婚した。
「ミルフィーナ。僕と結婚、してくれる?」
「もちろんですわ!」
こうして全て大団円で終わったのである。
ー…
「ミルフィーナ様…お可哀想」
「マリア様こそ」
王太子妃と王弟妃は今日も二人でお茶会を開く。要は旦那様への愚痴大会である。
「まさかここまで束縛が激しいとは思いませんでしたわ。…まあ、愛されている証と思えば嬉しい部分もありますけれども」
「そのチョーカー、首の痕を隠すものですよね。さすがに独占欲強過ぎです」
「王太子殿下はマリア様が貴族の男性と話すだけで大人気なく腰を抱いてらぶらぶをアピールされるのでしょう?私だったら恥ずかしくて無理」
「私だって恥ずかしくてたまりません!でもまあ、それはそれで嬉しい部分もある、といえばあるんですけど…」
愚痴ではなく惚気かもしれない。
「…まあ」
ミルフィーナ・オルティス。オルティス公爵家の末っ子長女であり、誰からも愛される微笑みの天使。美しい顔立ちにまろやかな身体つきで女性すら見惚れるほどの美女である。何をやらせても完璧にこなす彼女は、王太子妃として相応しい淑女だった。が、今王太子から婚約解消を打診されている。これはどういうことだろうか?
「どなたか良い方が出来まして?」
「その…マリア・マーベリック伯爵令嬢と恋仲になった。すまない…」
「いえ、殿下を純粋に慕うお方ですものね。むしろ良かったのかもしれませんわ」
マリア・マーベリック伯爵令嬢。最近マーベリック伯爵に引き取られた妾腹の少女。可愛らしい顔立ち、スレンダーな身体つき。優しく、活発で純粋無垢。それでありながら妾腹だからと虐めを受けても笑って耐えるだけの精神の強さもある。また、学業も平民だったとは思えないほど優秀。所作も付け焼き刃とはとても思えない美しいもの。運動神経もいいらしい。また、なんだかんだと女性の味方を増やし今では伯爵令嬢として認められている。最初は義務として彼女を引き取った伯爵も、彼女を妾腹だと嫌っていた義母や義兄も彼女を大切に愛している。そんな彼女が男性の貴族には一切興味を示さず、ただ一人王太子殿下だけを見つめていたのをミルフィーナは知っていた。
彼女なら、伯爵令嬢であるし優秀だ。しかも一途に王太子殿下を愛している。王太子殿下も大層彼女を愛しているようだし何も問題はない。自分は、どうしても王太子殿下を愛して差し上げることが出来ずにいた。お互いに気を遣ってはいたが、恋愛関係にはなれそうにない。それでも良い夫婦にはなれたとは思うが…王太子殿下には、この優しく完璧な幼なじみには幸せになって欲しい。ミルフィーナは潔く身を引くことを決めた。
「…では、陛下に婚約の解消を打診されましたか?」
「いや、君に話してからと思って…ただ、その。王太子との婚約解消は、いくら皆から愛される君でも醜聞になるかも知れない。…本当に、すまない。でも、マリアを諦められないんだ」
「いいのです。さあ、私と一緒に婚約解消を申し入れに行きましょう?」
「ありがとう、ミルフィーナ…」
優しすぎるこの幼なじみは、わがままを滅多に言わない。だから、叶えてあげたいのだ。たとえ、自分の命を捧げてでも。
ー…
「婚約解消!?正気か!?」
「はい、国王陛下」
国王陛下はマリア様のことを知っていらしたようで、彼女ならば私も文句はない、と仰られた。
「だが、ミルフィーナ…お前は…」
「良いのです。陛下」
その時、玉座の間の重い扉が勢いよく開いた。
「何が良いのですだ、ミルフィーナ!君は王太子妃教育をあれだけ頑張ってきたじゃないか!」
「ルイスフォード様…」
王弟、ルイスフォード。ミルフィーナの、想い人。見目麗しく、国王と歳が離れた兄弟のためまだ年若い彼。優秀で、側近として国王を支える優しい人。なぜこのタイミングで、とミルフィーナな天を仰いだ。
「頑張り過ぎて、もう極秘教育まで終わったのだろう!王族に嫁がなければ君は…!」
極秘教育。国の裏の部分を学ぶそれは、知ったが最後王族に嫁がなければ毒杯を与えられるものだった。それを知った王太子は顔色が白くなる。
「み、ミルフィーナ…すまない、やっぱり婚約解消は、」
「王太子殿下。貴方は私の大切な幼なじみ。王太子殿下はどう思われるかわからないですが…貴方は私の兄も同然。幸せになっていただきたいの。だから、私は毒杯を賜りますわ」
「ミルフィーナ…」
「ミルフィーナ!」
その様子を見ていた国王は一言。
「早まるな」
ミルフィーナ達は国王を見つめた。
「ルイスフォード。お前が娶れば解決だろう」
「…え」
「…な」
「…兄上!?正気か!?」
ミルフィーナは思わぬ幸運に淑女らしからぬ驚きの表情を浮かべた。そんなミルフィーナを見て王太子はミルフィーナの気持ちを察して素早く援護射撃をする。
「父上、私もそれがよろしいかと」
「では決まりだな」
「兄上!」
「いいではないか。お前達、両片思いだろう?」
「え」
「は?」
ミルフィーナはまじまじとルイスフォードを見つめる。見つめられたルイスフォードはどんどん顔が赤くなる。ミルフィーナは、ルイスフォードの気持ちを悟り思わずルイスフォードに抱きついた。
「み、ミルフィーナ?」
普段完璧な淑女である彼女では考えられない行動に、ルイスフォードも彼女の気持ちにようやく気付く。優しく抱きしめて、そのまま彼女に求婚した。
「ミルフィーナ。僕と結婚、してくれる?」
「もちろんですわ!」
こうして全て大団円で終わったのである。
ー…
「ミルフィーナ様…お可哀想」
「マリア様こそ」
王太子妃と王弟妃は今日も二人でお茶会を開く。要は旦那様への愚痴大会である。
「まさかここまで束縛が激しいとは思いませんでしたわ。…まあ、愛されている証と思えば嬉しい部分もありますけれども」
「そのチョーカー、首の痕を隠すものですよね。さすがに独占欲強過ぎです」
「王太子殿下はマリア様が貴族の男性と話すだけで大人気なく腰を抱いてらぶらぶをアピールされるのでしょう?私だったら恥ずかしくて無理」
「私だって恥ずかしくてたまりません!でもまあ、それはそれで嬉しい部分もある、といえばあるんですけど…」
愚痴ではなく惚気かもしれない。
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