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また迎えに行く
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「どうして…どうしてお前が殺されなければならない!」
男が女の亡骸を抱きしめて叫ぶ。
「…すまない!また守れなかった!だがな、今度こそ、今度こそ絶対守ってみせる!必ずまた会いに行く。待っていてくれ、僕の愛しい人」
男は持っていたナイフで自分の首を掻き切った。
ー…
「…おい、おい!大丈夫か?フェリ?よかった、起きたな」
「あれ?ここは…」
「俺たちの通ってる貴族学院に決まってるだろ。どうした?大丈夫か?さっきも居眠りしながらすごい魘されてたし。最近ちゃんと眠れてるのか?」
…あ。そうだ、そうだった。私はフェリシエンヌ・アルマニャック。侯爵令嬢だ。そしてこの人はリアム・タイユフェル。公爵令息で、私の婚約者。私達は貴族の義務である貴族学院に通っている。リアと私は同じクラスだ。私達はラブラブカップルとして有名なほど仲がいい。リアはとっても頼りになる優しい人で、誰にでも好かれる素敵な人。ただ、私のことになるとちょっとだけ子供っぽいところがある。独占欲の塊だし、過保護だし。けど、なんだかんだでそんなところも好きなのだ。
「ごめん。最近変な夢をよく見るんだよね」
「んー?マジ?大丈夫か?どんな夢?」
「えっと…」
「お前らー、そろそろホームルームの時間だぞ!席につけー」
「あ、やべ。じゃあ後でな」
リアが席に着く。といっても隣の席なんだけど。
「今日から転入生が来るぞ。…ご挨拶をお願い致します」
「隣国から留学に来た、ナタナエル・エルドラドという。まあ、所謂第三王子という奴だ。よろしく頼むぞ」
美しい銀のウェーブのかかった髪に、紫水晶の瞳。あの夢に出てくる人そっくりだ。…心臓の鼓動がやけに速い。どうしてこんなに胸が高鳴るの?私にはリアがいるのに。こんなのダメだ。でも、自然とナタナエル様を見つめてしまう。そして偶然か、ナタナエル様と目が合う。…なんだろう、あの、熱い瞳は。まるで愛おしい人を見つけた時のような。
「先生。僕はあの席がいいんだが」
ナタナエル様が指を指したのはリアとは反対側の私の隣の席。ちょうど空席だ。
「わかりました。ならばフェリシエンヌ。ナタナエル様はまだ学院に慣れていないから、しばらく案内役を頼むぞ」
「は、はい。先生」
リアの方をふと見ると、射殺すような目でナタナエル様を睨んでいた。
「リア、どうしたの。エルドラドの第三王子殿下をそんな目で睨んじゃダメでしょ」
「…あ、ん。ごめんごめん。気をつける。なんか、お前のこと熱っぽい目で見てた気がして。俺の婚約者なのにって」
「そっか。大丈夫だよ、私にはリアだけだよ」
さっきのはきっと、ときめきではなく第三王子という遠い人への憧れだ。
「そうだよな!よかったー。顔も地位も敵わないからさぁ」
「何言ってるの。リアは世界一カッコいいよ!」
「ん。サンキュー」
「仲がいいんだなぁ、お前たち」
「ナタナエル様。同じクラスになれて光栄です。フェリシエンヌ・アルマニャックと申します。よろしくお願いします!」
「ん、よろしくな。そこのお前も、よろしく頼むぞ」
「…リアム・タイユフェルです。よろしくお願いします」
「…今度は僕の方が地位は上だな。もう殺させないし、僕が守るぞ」
「残念ながら今回は殺す必要すらないね。俺の婚約者になったんだから」
「ならば奪い返す」
「やれるもんならやってみな」
「?」
二人はなんの話をしているんだろう?
「まあ、なんだ。早速だが学院の案内を頼むぞ、フェリ」
「は、はい!」
「じゃあ俺も一緒に行きますね」
「お前は来なくていい」
「あんたとフェリを二人きりになんてさせられませんね」
「ちょっと、リア!」
「…まあ、いい。ついてくるなら好きにしろ。行くぞ、フェリ。ああ、僕のことはエルと呼ぶように」
「はい、エル様」
エル様、と呼んだ瞬間頭痛がした。思わずしゃがみこむ。頭には、あの夢の男に笑顔で抱きつく女の映像が。あれは、私?
「おい、大丈夫か!?」
「あ、リア…」
「お前、やっぱり体調悪いんだろ。保健室に行くぞ」
「う、うん…」
「なら、失礼するぞ」
エル様が私を抱き抱えた。
「エル様!?」
「リア、お前は職員室に行って先生に事情を話した後フェリの鞄やらなんやらを持って保健室に来い。これは隣国の王子としての命令だ」
「…わかった…りました」
「フェリ、行こう」
「わ、私歩けます」
「いいから」
また、頭痛がした。花畑で頭に花かんむりを乗せられ、抱き抱えられる女。男は女を大切そうに抱き抱え、ひどく幸せそうに笑っている。
「頭痛が、するんだろう?今は寝ていろ」
エル様がそういうと、自然と瞼が重くなる。
「おやすみ、僕の愛しい人。目が覚めたら、思い出してくれ」
ー…
「エル…私、リア様に逆らえない。貴方だけを愛しているけれど、家族を守るためにはリア様に嫁ぐしかないの」
「フェリ…愛してる。せめて、幸せになってくれ」
そう、あの時、婚約者だった公爵令息であるエルと別れて、ザンクトゥアーリウムの第一王子だったリア様に私は嫁いだ。
「フェリ、愛してる。お前も俺が好きだよなぁ?」
「はい、リア様…」
「…まだあの男が好きなのか!」
「そ、そんなこと…」
「ならば何故俺をそんな目で見る!俺はこんなにもお前が好きなのに!」
「ご、ごめんなさい…でも、私…」
「ならばもういい!俺を愛さないお前など殺してやる!」
「え…い、いや…助けて…エル!助けて!」
「まだあの男を呼ぶのか!死ね!」
私はこうしてリア様に斬り殺された。
「ふ、ふふふ。来世では、俺を愛してくれよ?必ず迎えに行くぞ、俺のフェリ」
そしてリア様も果てた。
「どうして…どうしてお前が殺されなければならない!」
エルが私の亡骸を抱きしめて叫ぶ。
「…すまない!また守れなかった!だがな、今度こそ、今度こそ絶対守ってみせる!必ずまた会いに行く。待っていてくれ、僕の愛しい人」
エルは持っていたナイフで自分の首を掻き切った。
ー…
「目が覚めたか?フェリ」
「うん、エル」
「思い出したか?」
「うん。ねぇ、またってことは私が知らないだけで何度も繰り返しているの?」
「ああ、そうだ。だが、無限ループも今回で終わりだ。もう、リアにそれだけの魔力は残っていないし、不完全な転生のせいで権力なら僕の方が持っているしな」
「…だからリアは魔力値が貴族にしては低いんだね」
「そうだ。なあ、色々なごたごたは全部僕が解決する。だから…今度こそ、僕のお嫁さんになってくれないか?」
エルにプロポーズされる。私はそれに頷いた。瞬間、雷魔法が私達を襲う。でも、エルが土魔法で防いでくれた。
「お前…またその男を選ぶのか…また、また!俺の方がお前を愛しているのに!」
「お前のそれはただの執着心だ。愛ではなかろうよ」
「貴様のせいだ、死ねぇ!」
リアが渾身の力で雷魔法をエルに向けたが、エルはあっさりとそれを防ぎ駆けつけた衛兵達にエルは取り押さえられエルドラドの第三王子を害そうとした罪で連行された。
「これからは僕がお前を守るよ」
「ありがとう、エル」
こうして私達は新たに婚約し、私はエルドラドに嫁いだ。臣籍に降下したエルと共に公爵家を興し、子供にも恵まれ幸せに暮らしている。
ー…
「いやぁ、リアの転生魔法が不完全で助かったなぁ」
僕はワインを片手にひとりごちる。
「一番最初に二人の仲を引き裂いたのも、フェリを殺したのも僕だというのに」
最初の人生では三人とも平民だった。幼馴染の仲良し三人組だったのに、フェリを取ったリアに怒り狂い、フェリを無理矢理奪うためにフェリを殺した。そしてフェリを愛するリアが転生魔法という禁呪に手を出したため、これ幸いとそれを利用して同じ禁呪を低コストで使ってフェリを迎えに行った。リアの転生魔法は僕のそれと違って不完全なモノだった。フェリはリアとの記憶を失っていた。次は僕がフェリと結ばれた。しかしリアはそれを許さずにフェリを殺した。何度も何度も繰り返して、フェリを殺し合い続けた。そして、やっと、禁呪は成した。フェリが積み重ねた記憶を呼び起こしたのだ。…僕を選んでくれた時の記憶だけを。リアの転生魔法が不完全で本当に良かった。さあ、今日も愛おしい妻を可愛がってやらなければ。愛しているよ、僕のフェリ。
男が女の亡骸を抱きしめて叫ぶ。
「…すまない!また守れなかった!だがな、今度こそ、今度こそ絶対守ってみせる!必ずまた会いに行く。待っていてくれ、僕の愛しい人」
男は持っていたナイフで自分の首を掻き切った。
ー…
「…おい、おい!大丈夫か?フェリ?よかった、起きたな」
「あれ?ここは…」
「俺たちの通ってる貴族学院に決まってるだろ。どうした?大丈夫か?さっきも居眠りしながらすごい魘されてたし。最近ちゃんと眠れてるのか?」
…あ。そうだ、そうだった。私はフェリシエンヌ・アルマニャック。侯爵令嬢だ。そしてこの人はリアム・タイユフェル。公爵令息で、私の婚約者。私達は貴族の義務である貴族学院に通っている。リアと私は同じクラスだ。私達はラブラブカップルとして有名なほど仲がいい。リアはとっても頼りになる優しい人で、誰にでも好かれる素敵な人。ただ、私のことになるとちょっとだけ子供っぽいところがある。独占欲の塊だし、過保護だし。けど、なんだかんだでそんなところも好きなのだ。
「ごめん。最近変な夢をよく見るんだよね」
「んー?マジ?大丈夫か?どんな夢?」
「えっと…」
「お前らー、そろそろホームルームの時間だぞ!席につけー」
「あ、やべ。じゃあ後でな」
リアが席に着く。といっても隣の席なんだけど。
「今日から転入生が来るぞ。…ご挨拶をお願い致します」
「隣国から留学に来た、ナタナエル・エルドラドという。まあ、所謂第三王子という奴だ。よろしく頼むぞ」
美しい銀のウェーブのかかった髪に、紫水晶の瞳。あの夢に出てくる人そっくりだ。…心臓の鼓動がやけに速い。どうしてこんなに胸が高鳴るの?私にはリアがいるのに。こんなのダメだ。でも、自然とナタナエル様を見つめてしまう。そして偶然か、ナタナエル様と目が合う。…なんだろう、あの、熱い瞳は。まるで愛おしい人を見つけた時のような。
「先生。僕はあの席がいいんだが」
ナタナエル様が指を指したのはリアとは反対側の私の隣の席。ちょうど空席だ。
「わかりました。ならばフェリシエンヌ。ナタナエル様はまだ学院に慣れていないから、しばらく案内役を頼むぞ」
「は、はい。先生」
リアの方をふと見ると、射殺すような目でナタナエル様を睨んでいた。
「リア、どうしたの。エルドラドの第三王子殿下をそんな目で睨んじゃダメでしょ」
「…あ、ん。ごめんごめん。気をつける。なんか、お前のこと熱っぽい目で見てた気がして。俺の婚約者なのにって」
「そっか。大丈夫だよ、私にはリアだけだよ」
さっきのはきっと、ときめきではなく第三王子という遠い人への憧れだ。
「そうだよな!よかったー。顔も地位も敵わないからさぁ」
「何言ってるの。リアは世界一カッコいいよ!」
「ん。サンキュー」
「仲がいいんだなぁ、お前たち」
「ナタナエル様。同じクラスになれて光栄です。フェリシエンヌ・アルマニャックと申します。よろしくお願いします!」
「ん、よろしくな。そこのお前も、よろしく頼むぞ」
「…リアム・タイユフェルです。よろしくお願いします」
「…今度は僕の方が地位は上だな。もう殺させないし、僕が守るぞ」
「残念ながら今回は殺す必要すらないね。俺の婚約者になったんだから」
「ならば奪い返す」
「やれるもんならやってみな」
「?」
二人はなんの話をしているんだろう?
「まあ、なんだ。早速だが学院の案内を頼むぞ、フェリ」
「は、はい!」
「じゃあ俺も一緒に行きますね」
「お前は来なくていい」
「あんたとフェリを二人きりになんてさせられませんね」
「ちょっと、リア!」
「…まあ、いい。ついてくるなら好きにしろ。行くぞ、フェリ。ああ、僕のことはエルと呼ぶように」
「はい、エル様」
エル様、と呼んだ瞬間頭痛がした。思わずしゃがみこむ。頭には、あの夢の男に笑顔で抱きつく女の映像が。あれは、私?
「おい、大丈夫か!?」
「あ、リア…」
「お前、やっぱり体調悪いんだろ。保健室に行くぞ」
「う、うん…」
「なら、失礼するぞ」
エル様が私を抱き抱えた。
「エル様!?」
「リア、お前は職員室に行って先生に事情を話した後フェリの鞄やらなんやらを持って保健室に来い。これは隣国の王子としての命令だ」
「…わかった…りました」
「フェリ、行こう」
「わ、私歩けます」
「いいから」
また、頭痛がした。花畑で頭に花かんむりを乗せられ、抱き抱えられる女。男は女を大切そうに抱き抱え、ひどく幸せそうに笑っている。
「頭痛が、するんだろう?今は寝ていろ」
エル様がそういうと、自然と瞼が重くなる。
「おやすみ、僕の愛しい人。目が覚めたら、思い出してくれ」
ー…
「エル…私、リア様に逆らえない。貴方だけを愛しているけれど、家族を守るためにはリア様に嫁ぐしかないの」
「フェリ…愛してる。せめて、幸せになってくれ」
そう、あの時、婚約者だった公爵令息であるエルと別れて、ザンクトゥアーリウムの第一王子だったリア様に私は嫁いだ。
「フェリ、愛してる。お前も俺が好きだよなぁ?」
「はい、リア様…」
「…まだあの男が好きなのか!」
「そ、そんなこと…」
「ならば何故俺をそんな目で見る!俺はこんなにもお前が好きなのに!」
「ご、ごめんなさい…でも、私…」
「ならばもういい!俺を愛さないお前など殺してやる!」
「え…い、いや…助けて…エル!助けて!」
「まだあの男を呼ぶのか!死ね!」
私はこうしてリア様に斬り殺された。
「ふ、ふふふ。来世では、俺を愛してくれよ?必ず迎えに行くぞ、俺のフェリ」
そしてリア様も果てた。
「どうして…どうしてお前が殺されなければならない!」
エルが私の亡骸を抱きしめて叫ぶ。
「…すまない!また守れなかった!だがな、今度こそ、今度こそ絶対守ってみせる!必ずまた会いに行く。待っていてくれ、僕の愛しい人」
エルは持っていたナイフで自分の首を掻き切った。
ー…
「目が覚めたか?フェリ」
「うん、エル」
「思い出したか?」
「うん。ねぇ、またってことは私が知らないだけで何度も繰り返しているの?」
「ああ、そうだ。だが、無限ループも今回で終わりだ。もう、リアにそれだけの魔力は残っていないし、不完全な転生のせいで権力なら僕の方が持っているしな」
「…だからリアは魔力値が貴族にしては低いんだね」
「そうだ。なあ、色々なごたごたは全部僕が解決する。だから…今度こそ、僕のお嫁さんになってくれないか?」
エルにプロポーズされる。私はそれに頷いた。瞬間、雷魔法が私達を襲う。でも、エルが土魔法で防いでくれた。
「お前…またその男を選ぶのか…また、また!俺の方がお前を愛しているのに!」
「お前のそれはただの執着心だ。愛ではなかろうよ」
「貴様のせいだ、死ねぇ!」
リアが渾身の力で雷魔法をエルに向けたが、エルはあっさりとそれを防ぎ駆けつけた衛兵達にエルは取り押さえられエルドラドの第三王子を害そうとした罪で連行された。
「これからは僕がお前を守るよ」
「ありがとう、エル」
こうして私達は新たに婚約し、私はエルドラドに嫁いだ。臣籍に降下したエルと共に公爵家を興し、子供にも恵まれ幸せに暮らしている。
ー…
「いやぁ、リアの転生魔法が不完全で助かったなぁ」
僕はワインを片手にひとりごちる。
「一番最初に二人の仲を引き裂いたのも、フェリを殺したのも僕だというのに」
最初の人生では三人とも平民だった。幼馴染の仲良し三人組だったのに、フェリを取ったリアに怒り狂い、フェリを無理矢理奪うためにフェリを殺した。そしてフェリを愛するリアが転生魔法という禁呪に手を出したため、これ幸いとそれを利用して同じ禁呪を低コストで使ってフェリを迎えに行った。リアの転生魔法は僕のそれと違って不完全なモノだった。フェリはリアとの記憶を失っていた。次は僕がフェリと結ばれた。しかしリアはそれを許さずにフェリを殺した。何度も何度も繰り返して、フェリを殺し合い続けた。そして、やっと、禁呪は成した。フェリが積み重ねた記憶を呼び起こしたのだ。…僕を選んでくれた時の記憶だけを。リアの転生魔法が不完全で本当に良かった。さあ、今日も愛おしい妻を可愛がってやらなければ。愛しているよ、僕のフェリ。
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