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彼女は女王陛下の密命を受ける

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テレーズは女王陛下の夫の姪っ子である。公爵家の血筋であり、それ故に女王陛下に緊急時用の連絡を入れられる魔法を知っている。なので、今回はそれを使うことになった。

「テレーズ!何がありました!?」

この魔法を使うということはかなりの事態。女王陛下はテレーズに何かあったのだと心配する。

「女王陛下、実は……聖龍様の幼体であるユゲット様を一時保護していまして」

「え」

「どうも私が聖龍様の愛し子だと判明しまして」

「な」

「聖龍様は私とずっと一緒にいるのを希望されるそうなのですが……」

女王陛下はあまりの事態に一瞬くらりとする。だが、すぐに持ち直した。夫の姪っ子で侯爵夫人であるテレーズは女王陛下に懐いているのだし、国を守護する聖龍様がそのテレーズを愛し子だと言うのならそれはむしろ有り難いことだろう。

ただ……。

「……テレーズ」

「はい、女王陛下」

「貴女の評判は最近すごく良くなっています。とはいえ、頭の固い方からはまだ色々と言われているのも事実」

「はい」

「密命を下します」

テレーズもさすがに真剣な表情になる。

「聖龍様の保護を命じます。聖龍様が良いとおっしゃるまで、一生を掛けてでも守り通しなさい」

「はい」

「ただし、聖龍様の素性は隠し人間として保護しなさい。聖龍様は人間の姿に変化できるはずです。聖龍様を聖龍様だと知られず、自分が聖龍様の愛し子であることも隠し通しなさい」

「わかりました」

「ただし、どうしても聖龍様、あるいは愛し子である貴女の力が必要な非常時は例外とします。その場合は私が責任を持って事後処理をなんとかしますから、思いっきりやってしまいなさい」

「はい!」

ということで、テレーズは密命を受けることになった。ユゲットはこれでテレーズと一緒にいられるとご機嫌である。ボーモンは密命をテレーズから聞いて、どういう形で保護するのがいいか頭を悩ませる。マルカは重大な秘密を知ってしまったとちょっとドキドキしつつも案外状況を楽しんでいた。

「テレーズ、ユゲット様」

「はい、ボーモン様」

「ボーモン、どうかしたかぇ?」

「家族になりませんか、三人で」

「……つまり、妾を養女という形でバスチアン侯爵家に迎え入れるのかぇ?」

びっくりして固まるテレーズとマルカ。これは面白いとにんまり笑ったユゲット。この判断は本当に正しいのか少し迷うボーモン。次に口を開いたのは、やはりテレーズだった。

「ユゲット様が私達の娘になってくださるなんて、嬉しいです!」

「ほほ。テレーズも賛成ならばその案に乗っかるしかないのぅ。それはとても面白そうじゃな」

「では、ユゲットお嬢様の専属メイドも決めなければいけませんね!」

「その前に養子縁組の手続きもしなければな」

「ユゲット様のお洋服も用意しないと!お部屋も!その他諸々も!」

いきなり慌しくなったバスチアン侯爵家であった。
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