上 下
38 / 98

アニエスの魔法のセンスは

しおりを挟む
「…で、アニエスの訓練はどうだ。順調か?」

「いやー…うーん」

「あまり才能がない…か?」

アニエスが寝静まった頃、ジャックに聞かれる。

「いや…どうかな」

「なんだ、はっきりと言え」

「…正直まだわからない」

「は?」

「魔力が少ない上に天才とは言えないレベルのセンスだけど、完全にダメダメでもないんだよねぇ」

僕の言葉にジャックは少し期待した目を向けてくる。

「この段階で期待させるようなことを言うのはどうかとは思うけど、アニエスは努力自体は出来る子だと特訓しててわかったし…努力次第では化けると思う」

「そうか」

「ただし、少ない魔力と並みのセンスを努力で補うって相当だよ。魔力が少ないだけでセンスがあるとか、魔力が多いけどセンスがないとかはザラにあるけど…」

「…やはり魔法を学ばせるのは難しいか?」

「結局は本人の努力次第。でも、頑張れば良い線いくと思うんだよなぁ。身内贔屓かもしれないけど」

魔力の緻密なコントロールさえ、習得してくれれば。

そしてコスパのいい魔法を選んで全部習得させてしまえば。

「今のところ本人にはやる気はあるし、むしろ可能性はあると思うんだよなぁ」

「…そうか」

ジャックは悩ましげな表情だけど、うん。

「本当に、あの子はまだ可能性を秘めてると思うんだ」

「努力で全てをカバーしてしまうほどの?」

「うん。僕のような大魔法使いにはなれないだろうけれど、僕が教えるんだから。やる気さえあれば、そして努力の方向性さえ間違えなければ…並みの貴族には負けないレベルになるよ、きっと」

「きっとか」

「どうあがいてもアニエス自身の努力次第なんだもの」

でも、今日一日。魔力を手に集める特訓をなかなか成果が出なくとも、出来るまで投げ出さずに頑張ったあの子なら。

「…うん。教え甲斐のある生徒になりそうだ」

「まあ、お前がそう言って目を掛けてくれているうちは大丈夫だな」

「ふふ」

本人さえ諦めなければ、コスパのいい魔法なんてそれこそ無限にあるんだから大丈夫。

あの子なら、いけるところまではいけるはず。

「せっかくジャックにわざわざ指名してもらえたんだし、始祖として子孫をきちんと導かなくちゃね」

「ぜひそうしろ」

「まあ本人はダメダメなわけじゃないんだし、他の貴族の子と比べて早いうちからの特訓なんだから案外心配ないかもね」

「あの子は魔法以外は優秀だから、魔法の習得に多くの時間を費やして問題ないしな」

「うんうん!ま、二人三脚で頑張るよ☆」

ウィンクをジャックに飛ばしたら、なぜか呆れたようにため息を吐かれた。

何故。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

うちの座敷童さんがセマ逃げするんだけど、どうすればいい?

小雨路 あんづ
恋愛
「長男以外の子どもは十六歳で家を出る」 そんな廃れたしきたりによって家から追い出されたあたし。 一人暮らしするはずだった一軒家で、三つ指ついて出迎えてくれたのは、なんと「座敷童」を名乗る青年だった。 これは男嫌いのあたし(女子高生)が日常を過ごしていく中で、座敷童の青年(女装趣味)と恋を育んでいく物語ーーーと見せかけた、女装で迫る座敷童をイケメンパンチで返り討ちにする話である。 原稿用紙4〜9枚で綴る、そんなふたりの短編集です。

兄と妹がはっちゃけるだけ

下菊みこと
ファンタジー
はっちゃけた兄妹のあれやそれや。 不定期更新するつもりです。 アルファポリス様でも投稿しています

さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~

遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」 戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。 周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。 「……わかりました、旦那様」 反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。 その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ
ファンタジー
主人公の沖 紫惠琉(おき しえる)は会社からの帰り道、不思議な店を訪れる。 その店でいくつかの品を持たされ、自宅への帰り道、異世界への穴に落ちる。 落ちた先で紫惠琉はいろいろな仲間と穏やかながらも時々刺激的な旅へと旅立つのだった。

あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。

ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」  オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。 「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」  ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。 「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」 「……婚約を解消? なにを言っているの?」 「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」  オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。 「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」  ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

処理中です...