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私の秘密を知った日(長編版はこちらから)
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私はアニエス・ベルト・アメティスト。
広大なマルブル大陸の中でも一二を争う偉大なる大国、サフィール皇国に住んでいる。
そのサフィール皇国の中でも歴史も古く経済力もあり、皇帝陛下との血縁関係もあるアメティスト侯爵家の一人娘がこの私。
お父様はジャック・ギー・アメティスト。領民たちからも慕われる、すごく素敵な侯爵様。そんな自慢のお父様は、忙しくてなかなか会えなくて…顔を合わせない日の方が、正直多い。
けれど、それでもお父様の子であることが私の誇り。そう思っていた。
「…私が、お父様の実子じゃない?」
「はい。ご当主様の弟君の御子です」
「ー…」
合点がいった。
お父様は忙しくて私と会えないんじゃない。
実子じゃないから、興味がないんだ。
「それで…本当の父は?」
「…お嬢様が赤子の時に亡くなりました。それでお嬢様は、ご当主様に跡取りとして引き取られたのです」
執事が言うには、こういうことらしい。
私はお父様の実の娘ではなく、平民と愛し合い駆け落ちしたらしいお父様の弟の子。
実の両親が亡くなり行くあてもなかったところ、母親親族に押し付けられた…というか売られたらしく赤子の時に養子になる。
お父様は結婚する気がないので跡取りにちょうどいいと引き取られたらしい。魔術で血縁は確認された。母親親族には手切れ金として大金が払われた。
だから、養育は全部乳母に任せて私を構って下さらなかったんだ。私は愛されてなかったんだ。
「…分かりました。でも、どうして今そんなお話を?」
「ご当主様が、七歳になって一月が過ぎたのだからそろそろ話すべきだと仰いました。話すなら早い方が良いと」
「…そう」
お父様はきっと、私を愛していないからこそこんなお話を執事にさせたんだ。
しかも、こんな大切な時にそばにもいてくれない。
「…少し一人にして」
「はい、お嬢様」
「お嬢様…失礼します」
執事といつもそばにいてくれる乳母が部屋から出て行く。
私はそれを良いことに、声を上げてわんわん泣いた。
そして、泣き疲れていつのまにか眠ってしまっていた。
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けれど、それでもお父様の子であることが私の誇り。そう思っていた。
「…私が、お父様の実子じゃない?」
「はい。ご当主様の弟君の御子です」
「ー…」
合点がいった。
お父様は忙しくて私と会えないんじゃない。
実子じゃないから、興味がないんだ。
「それで…本当の父は?」
「…お嬢様が赤子の時に亡くなりました。それでお嬢様は、ご当主様に跡取りとして引き取られたのです」
執事が言うには、こういうことらしい。
私はお父様の実の娘ではなく、平民と愛し合い駆け落ちしたらしいお父様の弟の子。
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だから、養育は全部乳母に任せて私を構って下さらなかったんだ。私は愛されてなかったんだ。
「…分かりました。でも、どうして今そんなお話を?」
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「…そう」
お父様はきっと、私を愛していないからこそこんなお話を執事にさせたんだ。
しかも、こんな大切な時にそばにもいてくれない。
「…少し一人にして」
「はい、お嬢様」
「お嬢様…失礼します」
執事といつもそばにいてくれる乳母が部屋から出て行く。
私はそれを良いことに、声を上げてわんわん泣いた。
そして、泣き疲れていつのまにか眠ってしまっていた。
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