1 / 1
貴方に嫌われていたとしても、どうか貴方のお側に
しおりを挟む
私は公爵令嬢である。そのため大変恵まれている。衣食住に困ることはない。綺麗な流行りの高級ドレス、美味しくて栄養満点の食事、煌びやかで広いお屋敷と私室。さらに両親ともに美形でスタイルが良いお陰で私も美人でスタイル抜群。さらにそんな両親は私を溺愛してくれている。兄も非常に優秀だ。美形でスタイルの良い、優秀な後継の兄は所謂シスコンである。私自身も血筋のお陰かそれなりに優秀だ。王太子殿下の婚約者としての教育を受けているが、毒に慣らされる訓練以外は特に苦労していない。私は恵まれている。使用人たちも大変優秀だ。何も言わずともこちらの意図を汲んでくれる。お小遣いだって高額だ。欲しいものはなんでも手に入る。領民たちだって最高だ。父の領地経営がとても良いらしく、私達一家に感謝してくれている。私はとっても幸せ者だ。幸せ者なのに、一番欲しいモノだけが手に入らないの。
「リリー。いい加減婚約破棄してくれないか?私はロゼッタが好きだと言っているだろう」
酷い人。私が貴方を好きだと知っていながら、そんなことをおっしゃるなんて。
「私はシエル殿下が好きなのです。例えシエル殿下のお心が離れてしまっているとしても、それでもシエル殿下の婚約者で在りたいのです」
私は何度も告げられた言葉に、何度も告げた言葉を返す。シエル殿下は苦い顔をして去って行った。
シエル殿下は私の愛する婚約者。このシーンだけ見たらただの酷い人に見えるかもしれませんが、とても素敵な方でもあるのです。シエル殿下は、眉目秀麗でありながら文武両道。とても優秀で、カリスマ性に溢れる人望も厚い方。そしてなにより優しい方なのです。初めてお会いした時など、緊張しすぎて訳もなく泣いてしまった私を泣き止むまで抱きしめて背中をさすってくださり、もう二度と私が泣いてしまわないように守ってくださると約束してくれたのです。あの時の優しい笑顔に、私は幼いながら愛を感じ心の中の宝物としたのです。シエル殿下はロゼッタ様と出会うまでの間、誠実に私一人を大切にしてくださいました。私は幸せでした。
それが壊れたのは、平民のロゼッタ様とシエル殿下が貴族学院で出会ってから。珍しい闇の属性の魔法を使えるロゼッタ様は、特待生制度で貴族学院に通っています。そこでシエル殿下と恋に落ちたのです。私はそれをお兄様から聞いて泣いて過ごしました。私はシエル殿下の四歳下で、まだ貴族学院に通う年齢ではなくお兄様から聞くしか現状を知る術もなく、何かの間違いではないかと信じていましたが、最近ではシエル殿下が王太子妃教育を受ける私の元に現れて婚約者破棄を突きつけてくるようになりました。私は最初こそ目の前が真っ暗になりましたが、今はもうシエル殿下の愛は諦めています。しかし、婚約破棄などすればそれこそシエル殿下のお立場も危うい。それでなくてもお父様とお母様とお兄様がキレているのですもの。私がシエル殿下の手を離せばいつ何があるかわかりません。お父様とお母様とお兄様がまだ何もしないでくれているのも私からのおねだりのおかげですもの。だから、シエル殿下には申し訳ないのですが、婚約破棄は致しません。ロゼッタ様には妾となっていただきましょう。それか、何処かの貴族に養子にしていただけば側妃にもなれるかも知れません。私はこの日も、涙を堪えて屋敷へ戻り、眠りました。
ー…
「やあ、公爵家のお姫様」
ここは夢?貴方は誰?
「私はお節介な光の魔法使いさ。といっても、今は怖い魔女に睨まれていてあまり介入は出来ないんだけどね!」
怖い魔女?
「ああ。『ロゼッタ』さ」
え?
「あれはしがない平民の女の子じゃない。何百年と生きる闇の魔女さ」
そんな!ではシエル殿下は騙されているのですか?
「いいや?シエル君は全て知っているとも」
え?
「君を盾に脅されているのさ」
どういうことですか?
「ロゼッタはね、君を呪い殺されたくなければ、自分を王太子妃にしろとシエル君を脅したんだ。君を心から愛するシエル君は君を守るために君を傷付ける選択をした」
そんな!
「シエル君を救う方法は一つだけ。この光の短剣を、ロゼッタの方に向けておくれ。刺す必要はない。そうすれば、この短剣に貯めておいた僕の光の魔法がロゼッタを包みしばらく…そうだな、四百年はロゼッタは闇の魔法を使えなくなるよ。呪いも使えなくなるさ」
…!…わかりました。頑張ります。
「ロゼッタは馬鹿でわがままだけれど、一応何年も一緒にいた親友だからね。よろしく頼むよ」
は、はい!
ー…
目が覚めると、手元にはあの短剣。ただの夢ではなさそうです。
「お兄様…今日、私も一緒に貴族学院に向かわせてください」
「リリー?どうしてだい?」
「どうしても、ロゼッタ様とお話したいの」
「リリー…わかった。シエル殿下の話は校長先生の耳に入っているだろうし、いいよ」
「ありがとうございます、お兄様」
そうして校長室で、校長先生とお兄様同伴でロゼッタ様との話し合いの席が設けられた。シエル殿下は呼ばれなかった。
「初めまして、ロゼッタで…その短剣は!?」
私はロゼッタ様の挨拶を無視して短剣をロゼッタ様に向けた。お兄様と校長先生は一瞬私がロゼッタ様を害そうとしていると思い止めようとしたものの、短剣から光の魔法が現れてロゼッタ様を包むと誤解は解けたらしくそのまま見守ってくれた。
「おのれー!リアムの光の魔法か!闇の魔法を使えなくしたな!?この小娘め!」
ロゼッタ様は光の魔法に包まれた後、華奢で守ってあげなくてはと思うような容姿から一転、妖艶でドキドキしてしまうような美女となりました。そして私に襲いかかってきます。しかし闇の魔法を封じられたためか、お兄様と校長先生にすぐに取り押さえられました。
「リリー。話を聞かせてもらえるかな?」
「はい、お兄様」
そして昨日の夢のことをお兄様と校長先生に報告。すぐに王家の耳に入り、ロゼッタ様は兵によって捕らえられ牢獄へ。闇の魔女を殺すことは難しいと判断され何重にも封印を施され終身刑に。シエル殿下は国王陛下と王妃陛下から勝手に一人で判断したことを叱られましたがなんとか王太子位は守られました。そして私とシエル殿下は…。
「ごめん。幼い日、君を守ると言ったのに、君を傷付けた」
「いいんです、シエル殿下。私はシエル殿下にここまで愛されて幸せです」
「…こんな時にこんなことを言うものではないとは自分でも思うのだけれど」
「?」
「…今度こそ、幸せにする。もう一度、僕とやり直して欲しい」
「もちろんです!」
こうして仲直り致しました。今はとても幸せです。
「リリー。いい加減婚約破棄してくれないか?私はロゼッタが好きだと言っているだろう」
酷い人。私が貴方を好きだと知っていながら、そんなことをおっしゃるなんて。
「私はシエル殿下が好きなのです。例えシエル殿下のお心が離れてしまっているとしても、それでもシエル殿下の婚約者で在りたいのです」
私は何度も告げられた言葉に、何度も告げた言葉を返す。シエル殿下は苦い顔をして去って行った。
シエル殿下は私の愛する婚約者。このシーンだけ見たらただの酷い人に見えるかもしれませんが、とても素敵な方でもあるのです。シエル殿下は、眉目秀麗でありながら文武両道。とても優秀で、カリスマ性に溢れる人望も厚い方。そしてなにより優しい方なのです。初めてお会いした時など、緊張しすぎて訳もなく泣いてしまった私を泣き止むまで抱きしめて背中をさすってくださり、もう二度と私が泣いてしまわないように守ってくださると約束してくれたのです。あの時の優しい笑顔に、私は幼いながら愛を感じ心の中の宝物としたのです。シエル殿下はロゼッタ様と出会うまでの間、誠実に私一人を大切にしてくださいました。私は幸せでした。
それが壊れたのは、平民のロゼッタ様とシエル殿下が貴族学院で出会ってから。珍しい闇の属性の魔法を使えるロゼッタ様は、特待生制度で貴族学院に通っています。そこでシエル殿下と恋に落ちたのです。私はそれをお兄様から聞いて泣いて過ごしました。私はシエル殿下の四歳下で、まだ貴族学院に通う年齢ではなくお兄様から聞くしか現状を知る術もなく、何かの間違いではないかと信じていましたが、最近ではシエル殿下が王太子妃教育を受ける私の元に現れて婚約者破棄を突きつけてくるようになりました。私は最初こそ目の前が真っ暗になりましたが、今はもうシエル殿下の愛は諦めています。しかし、婚約破棄などすればそれこそシエル殿下のお立場も危うい。それでなくてもお父様とお母様とお兄様がキレているのですもの。私がシエル殿下の手を離せばいつ何があるかわかりません。お父様とお母様とお兄様がまだ何もしないでくれているのも私からのおねだりのおかげですもの。だから、シエル殿下には申し訳ないのですが、婚約破棄は致しません。ロゼッタ様には妾となっていただきましょう。それか、何処かの貴族に養子にしていただけば側妃にもなれるかも知れません。私はこの日も、涙を堪えて屋敷へ戻り、眠りました。
ー…
「やあ、公爵家のお姫様」
ここは夢?貴方は誰?
「私はお節介な光の魔法使いさ。といっても、今は怖い魔女に睨まれていてあまり介入は出来ないんだけどね!」
怖い魔女?
「ああ。『ロゼッタ』さ」
え?
「あれはしがない平民の女の子じゃない。何百年と生きる闇の魔女さ」
そんな!ではシエル殿下は騙されているのですか?
「いいや?シエル君は全て知っているとも」
え?
「君を盾に脅されているのさ」
どういうことですか?
「ロゼッタはね、君を呪い殺されたくなければ、自分を王太子妃にしろとシエル君を脅したんだ。君を心から愛するシエル君は君を守るために君を傷付ける選択をした」
そんな!
「シエル君を救う方法は一つだけ。この光の短剣を、ロゼッタの方に向けておくれ。刺す必要はない。そうすれば、この短剣に貯めておいた僕の光の魔法がロゼッタを包みしばらく…そうだな、四百年はロゼッタは闇の魔法を使えなくなるよ。呪いも使えなくなるさ」
…!…わかりました。頑張ります。
「ロゼッタは馬鹿でわがままだけれど、一応何年も一緒にいた親友だからね。よろしく頼むよ」
は、はい!
ー…
目が覚めると、手元にはあの短剣。ただの夢ではなさそうです。
「お兄様…今日、私も一緒に貴族学院に向かわせてください」
「リリー?どうしてだい?」
「どうしても、ロゼッタ様とお話したいの」
「リリー…わかった。シエル殿下の話は校長先生の耳に入っているだろうし、いいよ」
「ありがとうございます、お兄様」
そうして校長室で、校長先生とお兄様同伴でロゼッタ様との話し合いの席が設けられた。シエル殿下は呼ばれなかった。
「初めまして、ロゼッタで…その短剣は!?」
私はロゼッタ様の挨拶を無視して短剣をロゼッタ様に向けた。お兄様と校長先生は一瞬私がロゼッタ様を害そうとしていると思い止めようとしたものの、短剣から光の魔法が現れてロゼッタ様を包むと誤解は解けたらしくそのまま見守ってくれた。
「おのれー!リアムの光の魔法か!闇の魔法を使えなくしたな!?この小娘め!」
ロゼッタ様は光の魔法に包まれた後、華奢で守ってあげなくてはと思うような容姿から一転、妖艶でドキドキしてしまうような美女となりました。そして私に襲いかかってきます。しかし闇の魔法を封じられたためか、お兄様と校長先生にすぐに取り押さえられました。
「リリー。話を聞かせてもらえるかな?」
「はい、お兄様」
そして昨日の夢のことをお兄様と校長先生に報告。すぐに王家の耳に入り、ロゼッタ様は兵によって捕らえられ牢獄へ。闇の魔女を殺すことは難しいと判断され何重にも封印を施され終身刑に。シエル殿下は国王陛下と王妃陛下から勝手に一人で判断したことを叱られましたがなんとか王太子位は守られました。そして私とシエル殿下は…。
「ごめん。幼い日、君を守ると言ったのに、君を傷付けた」
「いいんです、シエル殿下。私はシエル殿下にここまで愛されて幸せです」
「…こんな時にこんなことを言うものではないとは自分でも思うのだけれど」
「?」
「…今度こそ、幸せにする。もう一度、僕とやり直して欲しい」
「もちろんです!」
こうして仲直り致しました。今はとても幸せです。
11
お気に入りに追加
42
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
10日後に婚約破棄される公爵令嬢
雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。
「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」
これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。
とっても短い婚約破棄
桧山 紗綺
恋愛
久しぶりに学園の門を潜ったらいきなり婚約破棄を切り出された。
「そもそも婚約ってなんのこと?」
***タイトル通りとても短いです。
※「小説を読もう」に載せていたものをこちらでも投稿始めました。
最後の思い出に、魅了魔法をかけました
ツルカ
恋愛
幼い時からの婚約者が、聖女と婚約を結びなおすことが内定してしまった。
愛も恋もなく政略的な結びつきしかない婚約だったけれど、婚約解消の手続きの前、ほんの短い時間に、クレアは拙い恋心を叶えたいと願ってしまう。
氷の王子と呼ばれる彼から、一度でいいから、燃えるような眼差しで見つめられてみたいと。
「魅了魔法をかけました」
「……は?」
「十分ほどで解けます」
「短すぎるだろう」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる