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メランコーリッシュ、父の処刑に立ち会う
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ニタと二人でお茶会を楽しんでいると、ニタから大事な話があると切り出されました。なんでしょうか?
「シュシュ。パラディースで革命が起きた」
「え…?」
革命ということは、お父様達は…。
「革命軍が勝利し、王家の者は捕らえられた。シュシュの父や兄、姉が処刑されることになる。…助けることはできない。革命の理由が理由だからな。彼らは、私腹を肥やした。そのしわ寄せが臣民に向かってしまった。為政者として許されることではない。パラディースはシュシュと俺の結婚に伴ってアトランティデに吸収合併する。それまではパラディースの革命軍が暫定政府としてなんとか国を守ることになった。アトランティデからも援助はする。…大丈夫か?」
青ざめて震えてしまう弱い私を、ニタはそっと抱きしめてくれます。
「お父様…お兄様やお姉様まで…どうして…」
「シュシュ…」
…優しいニタに甘えてばかりではダメ。私は私として、けじめをつけなければ。
「…ニタ」
「ああ。どうした?」
「せめて…お父様達を看取らせてください」
「処刑されるんだ。斬首されるんだぞ?ギロチンで首が跳ね飛ばされる。シュシュには見せられない」
「だからこそです。私は、パラディースの王女として、お父様達に蔑ろにされてきた家族として。色々な意味で、けじめをつけなければ。看取ることで、これからの人生への覚悟を決めたいのです」
「…わかった。なら、せめて直接ではなく魔法で処刑の映像を写す形にしよう。それなら、俺も隣で見守ってやれるから」
「ニタ…ありがとうございます」
そうして、私は家族の処刑を看取ることになりました。
ー…
処刑の日。教会の鐘が鳴り、処刑が始まりました。
お父様達が引き摺られて処刑台の側まで連れて来られます。その際臣民達から石が投げられます。美しく整っていたはずのお父様達の顔は、どんどんと痣だらけになり、腫れ、醜くなります。私はただ、目に浮かぶ涙を必死に堪えその姿を目に焼き付けます。
お父様達への罵声は段々と大きくなります。お姉様が堪え切れず、「お前達がもっと稼いで税金を納めていればこうはならなかったのに!」と叫びました。一瞬場が静まり返り、次の瞬間には先程よりも更に投げつけられる石が増え、罵声が増えました。
「お前達からの重税のために娘を売るしかなくなった!」
「子供達に満足な食事も与えられず餓死させてしまった!」
「重税に耐え切れず弟家族が自殺した!」
「なぜお前たちのような者が王家に生まれてしまったのか!」
「死んで詫びろ!」
お父様から処刑されるはずだったのですが、お姉様を殺せとの声の大きさに順番が前後して、お姉様達、お兄様達、王妃様、お父様の順に変えられました。お姉様が処刑台に引き摺られます。
「なにするのよ!私はパラディースの王女よ!この国で一番偉いお父様の娘なのよ!私は何にも悪くない!きちんと稼いで私達王家に貢がないお前達が悪いんじゃない!なんで私のせいにするのよ!やめて、触らないで!私は悪くない!私は悪くない!大体、私達王家のおかげで数多くの亜人族の奴隷を抱えて来られたのよ!奴隷がいたからこの国は今までやってこれたのよ!私達の力が無ければ亜人族の国に吸収されてしまうのよ!お前達はそれでもいいの!?亜人族なんかに支配されて恥ずかしくないの!?あの卑しいメランコーリッシュがパラディースなんかに嫁ぐ際にこの国は吸収合併されてしまうのを、お前達は聞いていないの!?」
「メランコーリッシュ王女を監禁しその存在を我々に隠蔽しておいて、なおメランコーリッシュ王女を悪く言うのか!」
「メランコーリッシュ王女は唯一の我が国の救いだというのに、なにもわかっていない!」
「殺せ、殺せ!無能な王女を殺せ!」
お姉様の首が跳ね飛ばされる。私は涙を拭い、その最期を看取る。他のお姉様達も、お兄様達も、王妃様も、お父様も同様に。お父様を看取ると泣き崩れた私を、ニタは何も言わずに抱きしめてくれた。
…うん。これで覚悟は決まった。私はこのアトランティデのために、未来の皇后として相応しい人間になる。私はこの優しい婚約者のために、未来の妻として相応しい人間になる。お父様達の犠牲も無駄にしない。たとえ反面教師という形であれ、必ず今後に活かしてみせる。…だから、どうか、今だけは。
「お父様…王妃様…お兄様、お姉様…」
もう少しだけ、泣かせて欲しい。
「シュシュ。パラディースで革命が起きた」
「え…?」
革命ということは、お父様達は…。
「革命軍が勝利し、王家の者は捕らえられた。シュシュの父や兄、姉が処刑されることになる。…助けることはできない。革命の理由が理由だからな。彼らは、私腹を肥やした。そのしわ寄せが臣民に向かってしまった。為政者として許されることではない。パラディースはシュシュと俺の結婚に伴ってアトランティデに吸収合併する。それまではパラディースの革命軍が暫定政府としてなんとか国を守ることになった。アトランティデからも援助はする。…大丈夫か?」
青ざめて震えてしまう弱い私を、ニタはそっと抱きしめてくれます。
「お父様…お兄様やお姉様まで…どうして…」
「シュシュ…」
…優しいニタに甘えてばかりではダメ。私は私として、けじめをつけなければ。
「…ニタ」
「ああ。どうした?」
「せめて…お父様達を看取らせてください」
「処刑されるんだ。斬首されるんだぞ?ギロチンで首が跳ね飛ばされる。シュシュには見せられない」
「だからこそです。私は、パラディースの王女として、お父様達に蔑ろにされてきた家族として。色々な意味で、けじめをつけなければ。看取ることで、これからの人生への覚悟を決めたいのです」
「…わかった。なら、せめて直接ではなく魔法で処刑の映像を写す形にしよう。それなら、俺も隣で見守ってやれるから」
「ニタ…ありがとうございます」
そうして、私は家族の処刑を看取ることになりました。
ー…
処刑の日。教会の鐘が鳴り、処刑が始まりました。
お父様達が引き摺られて処刑台の側まで連れて来られます。その際臣民達から石が投げられます。美しく整っていたはずのお父様達の顔は、どんどんと痣だらけになり、腫れ、醜くなります。私はただ、目に浮かぶ涙を必死に堪えその姿を目に焼き付けます。
お父様達への罵声は段々と大きくなります。お姉様が堪え切れず、「お前達がもっと稼いで税金を納めていればこうはならなかったのに!」と叫びました。一瞬場が静まり返り、次の瞬間には先程よりも更に投げつけられる石が増え、罵声が増えました。
「お前達からの重税のために娘を売るしかなくなった!」
「子供達に満足な食事も与えられず餓死させてしまった!」
「重税に耐え切れず弟家族が自殺した!」
「なぜお前たちのような者が王家に生まれてしまったのか!」
「死んで詫びろ!」
お父様から処刑されるはずだったのですが、お姉様を殺せとの声の大きさに順番が前後して、お姉様達、お兄様達、王妃様、お父様の順に変えられました。お姉様が処刑台に引き摺られます。
「なにするのよ!私はパラディースの王女よ!この国で一番偉いお父様の娘なのよ!私は何にも悪くない!きちんと稼いで私達王家に貢がないお前達が悪いんじゃない!なんで私のせいにするのよ!やめて、触らないで!私は悪くない!私は悪くない!大体、私達王家のおかげで数多くの亜人族の奴隷を抱えて来られたのよ!奴隷がいたからこの国は今までやってこれたのよ!私達の力が無ければ亜人族の国に吸収されてしまうのよ!お前達はそれでもいいの!?亜人族なんかに支配されて恥ずかしくないの!?あの卑しいメランコーリッシュがパラディースなんかに嫁ぐ際にこの国は吸収合併されてしまうのを、お前達は聞いていないの!?」
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