Antique Love

過去とこれから

２ (4)

　
　――私の大事な場所。

　癒してくれるのはアンティークと懐古の時間。外の世界を程良く遮断してくれる小さな箱庭世界は、自分の唯一の逃げ場でもあった。

　ひとりでここにいるのはとても落ち着く。

　そのはずなのに、誤魔化せそうにない気持ちを知った途端それが変わっていた。

　片づけを止めたテーブルの上にはグラスとお皿が残ったままで、二宮さんがいた確かな証拠を示している。

　引かれたままの椅子も、ついさっきまで人がいたという気配を強くさせる。

　残るそれらがまるで残り香の様に感じられ、私は、彼がこの店に在る大切なもののひとつへなりつつあるのだと……思い知らされた気がしていた。

　二宮さんが帰っていくあの瞬間が切なかったのは、そういうことだったんだ。

　彼がいた場所へ座ってみたら、急に寂しさが込み上げてくるなんて……。

　テーブルに頬を寄せて彼を想う。窓際には彼が嬉しそうに眺めていたカメラ。さっきの自分の気持ちを思い出し、私の中に寂しさと嬉しさが複雑に絡んだ。