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彼女の想い
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しおりを挟む人は、人生を前に進む事しか出来ない。
後ろには下がれない。
振り返ることは出来ても、その時に戻ってやり直すことは無理なのだ。
何度振り返っても、辛い思い出は変わらない。思い出せば自分が押し潰されそうになるだけ。
過去に背を向け、前だけを見なければ、心のバランスが保てない……。
それなのに、なんで私は何度も振り返ってしまうんだろう?
なんで忘れる事が出来ないんだろう?
新しい恋をすればきっと忘れられると、友人は笑った。
もし……いま私が抱いている気持ちが恋だと言うならば、友人の言った言葉は嘘になる。
だって、私はまだ忘れていないから。
それどころか、前よりずっと過去を思い出し、前よりずっと胸が痛い。
あの人がくれる、優しく穏やかな気持ち。凪ぐ胸中。
そうすると必ず現れる、過去のあの人。荒れる精神。
進むことを止めたくない。でも何かが立ちはだかる。
振り返ることを拒絶したい。だけど思い出してしまう。
恐怖に近い感情が、私の中にいつも居る。もうあんな思いはしたくないからと、自分に言い聞かせて。
恋なんてしたくない。
愛なんていらない。
(――それなのに、)
毎日重い扉を開き、薄暗い店に太陽の光を入れてくれるあの人。
何かを気にしながら彼の足音を待っている私は、
いったい、
(どうしたいというのだろう……)
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