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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。

第100話 異世界結婚式

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いよいよ結婚式が始まった。
式の会場として使われた俺の城なのだが、正門を抜けホールを抜けると観覧席ありの大広間、その向こうに玉座、そして玉座の後ろの窓越しに蛟ちゃんの神社が見えるというなかなかに面白い構造になっていた。

俺たちより先に司会進行役の皇族のギルマスに案内され、各国の重鎮たちが大広間に入場してきた。

なお、この式は魔女さん作の新技術により、各国のギルドと城、エルフ族の神殿遺跡と都庁、そして魔王城(!?)にて同時生中継されていた。

ちなみに各地の盛り上がりも玉座の上に作られたプロジェクター的なモニターで表示されている。

色々派手すぎないかな…。俺の結婚式…。

ちなみに俺と嫁は別々の部屋で同じ映像を見つつ出番を待っていた。

「敵が内部に侵入してる可能性も考慮して食事の毒味…、鑑定願力…、ギルマス達の読心スキルによるチェック…、多重結界展開による転移魔法による侵入対策…、領空、領海の巡回…街の中の魔王族配置…。」
「まぁだ気にしてんのかオメェさんはよ…。
万全を期すにこしたこたぁねぇがよ。その辺は俺ら他のメンツの仕事だ。自分で背負い込んでねぇでお前は式を楽しめよ。な?」
「いや…そうは言うがこれだけ重鎮と国民が集まってるとだな…。」
「各国には神族まで実体を持って神気放ちながら顕現してるんだぞ?それがどう言うことかわかるか?
1,000年以上存在して居ながらも明確に姿を見せなかった神が現れて、国を守護する程の事態。そこに手を出すことの愚かさっつーか恐ろしさ…。
仮に手を出してこようものなら自殺するようなもんだ。
まぁ少なくても式が終わるまではろくに手出しはできねぇさ。」

まぁ確かにここまでの規模の国防を行なっている国に手を出した所で、無意味なのはわかるだろう。
まともな頭なら報復を恐れて手を出せないだろうし。

「つーわけでお前は水晶見ながら出番に備えておけ。」
「まぁ…そうだな…。少しくらいは落ち着くか。
お、姫さま達入ってきた。
うっわ、派手だなぁ…姫様と黒エルフちゃん…。
黒エルフちゃんに至ってはキャバ嬢かよ…。すげぇ盛り髪…。」

子どもに大人の魅力を見せつけるかのごとく露出多めの色気ムンムンで入ってくる黒エルフちゃん。
そしてそれに対抗するかのように、今回はあえて肌をあまり露出させず、真の大人の女性の魅力を振りまく魔女さん。
そして………。着るものに困ったのだろうか民族衣装的な紅白フンドシで入場しようとして全力で警備に止められて一時退場させられたエルフ族の族長。

皆、個性豊かである。
約1名はなんとも言えないアレだったが…。

尚、エルフ族の族長は数分後白スーツに着替えて入場させられていた。

改めてエルフ族の族長が入ったところでようやく式が始まり、姫様のスピーチが始まる。

「此度は、この国の皆様が幾数百年とおとぎ話の英雄の来訪と共に待ち望んだ大変めでたき日です。
そして、この大変めでたく二度と経験できるかわからない記念日に、私や各国の重鎮をお招き頂いた事、大変光栄に思います。
大英雄であり異世界人であり、そして大賢者である彼。
元々この方は異世界でもこちらでも最初はただのひとりの青年でありました。
彼には私と東の魔女により大賢者の地位を与え、そして国の命運を託すような戦いに数多く巻き込みんでしまいました。
ですが、彼は時に苦しみ、弱音を吐いたり傷付きながらも、我々を決して見捨てる事なく戦ってくれていました。
先日の我が城で繰り広げられた戦いも、本来であればこの国の命運がかかっていた1つの戦いでありました。
彼がもし折れる事があれば、新たな戦の火種になりかねないような戦いでした。
今ここに、各国の重要人物が全てあつまり、各々の管轄を空にしている事も本来であれば異常事態です。
ですが、それは全て彼という信頼の名の下に行われていることを皆には認識して頂きたいと思います。」

姫様の発言に各会場もざわめき出す。

「いま各国に存在するかつての異世界人が残した遺跡に、異世界の神が顕現しています。
新たな異世界人とこの国を守るために1000年の時を超えて目覚めたのです。そのことからも、彼がいかに素晴らしい力と神からの信頼と祝福を持つものかはお分かり頂ける事でしょう。
さて…、そんな神にも愛され、祝福される我らが偉大なる大賢者 ワイズマン様。
私は今ここに、亡き父に変わり国の象徴としての王位を継承することを宣言します。」
「まぁ、本当なら姫様が彼に娶られる形で王位を…なーんて考えていたんだが見事に失恋してしまったからね。
こんな形ではあるが、我が国の新たな王の誕生と相成った訳だ。さて、皆で祝おうではないか!我が国の新たな王の誕生と成婚を!!」

各会場からワァァァアアッ!と大歓声が上がる。
ぶっちゃけ、アレよアレよと言う間に王位まで与えられてしまったことには驚きを隠せない。
政略結婚ならぬ政略王位継承である。

と言うか魔女さん、サラッと皇女殿下をディスってるぞ。
まぁそこは皇女殿下に次ぎ、この国では権力を保有し長年生きてるだけはある。

「おうおう…大変なことになってんなぁお前さん…。
ほんと、胃痛とかお前大丈夫?」
「いやぁ、俺だって3ヶ月で形上とは言え異世界の王様になるとか微塵も思っちゃいなかったよ…。
どんどん心労が増すばかりだ…。俺を殺す気なのかな…。」

さてさて、俺は一体今後どう生きていけば良いのやら…。
本当に万が一俺がこの世界からまた急に消えることになったらどうするつもりなのやら…。
まぁ、それを防ぐための楔としての王位継承なんだろうが…。

「では、そろそろ主役をお呼びいたしましょう。
新郎新婦の入場です!」

皇国のギルマスの合図により、俺と嫁がそれぞれの待機室から広間へと入場する。

そのまま俺たち2人は広間の中央の赤い絨毯を歩き、その先の祭壇まで歩きつくと互いに向かい合う。
そして、嫁のベールをめくり顔を出させると窓越しに見える神社へと互いに向き直る。

すると、神社から蛟ちゃんが此方へと歩み寄りスゥーっとその姿を俺たち2人の眼前へと顕現させる。

「神の名の下に…2人に祝福を…。汝らの愛を我の前に証明せよ。」

この世界独特に発展した神前式の結婚儀式みたいなものらしい。
まずは聖杯に注がれたお神酒を神にお供えし一口飲んでいただく。
そして、神の前で愛する人と口付けを交わし、その次に聖杯に注がれたお神酒を互いに飲ませ合い、最後にその杯の残りを神に捧げ、神に飲み干してもらう。
そう言う儀式だ。

それぞれ、神の祝福を貰う、神に愛の証明を見せる、互いの魂を預ける、神に自分の魂の一部を預けると言った意味合いがある。

実際に魂を預けているわけではないが、まぁひとまず意味合いはそんなもんらしい。

普通ならいわゆる神父さんとか神主さん的な人が神の代わりにそれら一連の流れを代行して行うって言うものなのだが、今回は神自らが行うと言う歴史的な物であった。

「今ここに…互いの愛は証明された。2人に神々の祝福のあらんことを…。
あと皆さん…始めまして…この国の神さま…蛟です…。」

神による私が神だ発言に流石に皆が目と口を見開いてポカンとしている。
そう、神が人前に姿を現わすなどそれこそお伽話の出来事なのだ。
蛟ちゃんの一言により、各地の中継映像でも各地に居る神が顕現し皆が一言名乗っていった。

そして名乗り終わると蛟ちゃんから一言。

「我ら…六神柱…今ここに復活せり…。 皆に告げる。
神はここに在り…。世界を救うは…我ら也…。
んー……なんか難しい言葉…。ねぇ?ますたぁ。もう少しくだけた言い方しちゃ…だめ?」
「………。威厳は保たなくて良いのか…?神としての…。」
「ん…。別に良い。簡単に言うと…私たち…この世界の神は…大いなる災いを退ける為…1000年の時を超え…今ここに顕現した…。だから…何が来ても大丈夫…。安心して…。」

今回は蛟ちゃんがリーダー格として各地の神々に働きかけた。
この国に大いなる災いが迫っているかもしれないといった感じで。
そして…、蛟ちゃんは神々に告げたと言う。
晴明の後継者がこの地に舞い降りたと。

興味本位もあったかどうかは定かではないが、皆協力的だ。
俺たちとこの国は、この世界で最も安全な国となった感じだな。

「では、改めまして皆様。なんか気が付いたら王様にされてしまいました大賢者ことワイズマンです。
この度は皆、こんな私の為のお祝いにこんなに集まってもらいありがとうございます。
いま、我が国の神様が告げた様にまぁこの国はいまこの世界でもっとも強固な守りを受けています。
それはさておき、まぁこの西の大国の長になったり挙句この国の象徴としての王様にされたりとまぁ私もいろいろとビックリしています。
とりあえずまぁ、なった以上はしかたありません。
甘んじて受け入れますが、本音を言うと今すぐこの立場から逃げたくて仕方ない。」
「ハハハハハ。それは困るねぇワイズマン。私たちは君をこの通り歓迎しているからね。
まぁ我々は君をこの国の象徴としてまつりあげてしまったが、何も面倒ごと全て押し付けようと言う訳ではないんだ。
うーん…なんと言えばいいのかな?
まぁアレだ。勢いに任せてこれでもかってくらいに盛大な結婚祝いのプレゼントを用意させてもらったという事で…。」

魔女さんのそんなとんでもジョークに参加者の皆さんは馬鹿笑い。
まぁ中身はさておき、俺もそんなこと言われたら悪い気はしない。
そして、カチコチになりながら我が嫁も挨拶をする。

「うぇぁっと…えと…ワイズマンの…嫁のヴェルデです…。
えっと、オレ…いや、私も今自分がこんな事になってることに凄く驚いてます。
この人に出会って、女として愛してもらえて、そして今この世界のどの女性よりも一番と選んで貰えて…。
いま、凄く幸せです。いや、きっとこの人の事だからこれからもっともっと私の事を幸せにしてくれるんだろうなって、今ワクワクしてます。
愛されるって、こんなにも幸せなんだなって…。
私は沢山教えてもらいました。
いまここにいる人たちにもきっと愛してる人が居て、愛されてる人が居て…。
その人と一緒になれることがこんなに幸せなんだって、いま凄く凄く思い知らされてます。
私はまだ幼くて、この人は私よりずっと歳上の人だけど、この先のお互いの人生を2人で愛し合い何時迄も歩んでいけたらって思います。
えと…今日は皆さん、本当にありがとうございました。」

嫁が深々と頭を下げる。
いつにも増して真面目だから少し違和感だが、良いコメントだ。
幸せにしてあげないとだな。ずっとずっと、末長く、永遠に…。
死が2人を分かつその時まで。

「さぁて、それでは今から待望のパーティタイムと行きましょう。
皆さま、飲み物は行き渡っておりますか?
では飲み物を掲げてください。せーの、乾杯!!」

\乾杯!!/

皆が掲げたグラスが次々と音を立てて祝福の鐘の様な音色となり響き渡る。

そのまま披露宴とパーティは特に何事もなく平和に幕を閉じた。
そう、本当に何事もなく終わったのだ。
国の重鎮たちは各々の国へ帰り、顕現していた神も再びそれぞれの遺跡へと帰った。

俺は嫁と共に城に作ってあった展望室で2人、この世界の綺麗な月を眺めていた。

「なんとか平和に終わったな…。怖いくらいに何事もなく…。
まぁ、とても良い事ではあるが…違和感は拭いきれないが…。」
「良いじゃないかダンナ。空気を読んだってわけじゃないんだろうけども、オレとダンナの新しい生活が平和に始まった事はとても良い事だろう?今はそういうの考えるのやめとこうよ。」
「だな。こういう日くらいはせめて考えるのはやめておこう。
改めて、今日の君はとても綺麗だよ。ーーー。」

俺は彼女を抱きしめながら、彼女の本当の名前を呼んだ。
とても素敵な名前、彼女の父親である王がせめてもの償いとして与えた名前なのだというその名を。

この世界では「名前」と言うものは魂を縛るとても大きな意味を持っているらしい。

故に俺は、無意識で皆をニックネームのように職業名で呼んでいたわけだ。

基本はこのように愛するパートナー同士のみ、互いの名前を教えあい、2人きりの時だけその名を呼ぶそうだ。

それがこの世界の独特のルール。

それ以外の時はニックネームで呼ぶのが習わしらしい。

そんなわけで、俺は彼女に本当の名をこの日初めて教えたのだ。

「改めてよろしくな。ダンナ様、いや、トウヤ。」

トウヤ。それが俺の本当の名前であり、昔からネットで名乗ってたニックネーム「騰鵺」である。

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