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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第90話 VSスパイディドールマスター
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蜘蛛のオーガノイドになったドール屋さん(なっげぇな!!)
以降スパイディでいっか。
とりあえずスパイディが俺達めがけて手首から糸を伸ばしてくる。
うん、やっぱスパイディでいいや。
「かわしても良いのですか?」
俺の後ろにいた男児へと糸が伸びていく。
盗賊ちゃんが伸びてきた糸をナイフで切りとばす。
「私…子どもって嫌いなんですよ。特に男の子は。
子どもって人形を本当になんだと思っているのでしょう…。
手足をもいだり、髪の毛を持って引っ張り回したり、叩きつけたり、男の子に至っては服を脱がして性の対象にして遊んだり…。穢らわしい…。」
「おい…まさか、最近オーガノイドの出現と並行して起きていた子ども達が意識不明になる事件の犯人は…。
お姉さん、そう言う雰囲気とか皆無の笑顔が素敵な優しそうな人だったのに…。」
「えぇ。私ですよ。敵を目の前に優しそうとは…。
貴方も彼に似て優しい子なのですね。」
俺たちが会話してる間に、この情景を見た人達同士で連携して住民達は避難していった。
時間稼ぎは出来たか…。
「俺たちの前でわざわざその姿になった理由は?
その他にもまぁ色々と聞きたいことはあるけど…。」
「そうですね。貴方の目の前で変身すれば、貴方は私を討伐しようとしてくるかなと。」
「うーん…。すると思う?目の前に敵がいる!俺の知ってる人だ!ってなってるこの状況で。」
「貴方は、やはりそう言う人なのですね。」
スパイディは地面に手をつくと、鎧の間からワサワサと子グモを出してきた。
「うわぁぁぁぁあっ!?キモっ!?やめてぇえっ!!」
「ふふふ。早く戦う準備をした方が良いですよ。クモって素早いですから。」
ワッサワサしてるクモがキモすぎて逃げようとしてたらクモが一斉にぴょいぃぃいんっ!飛び跳ねてこっちに向かって飛んでくる。
「心苦しいけど…クモさんごめんなさい!!」
ファイアクォーツとインフィニティブレードを同時に発動し、炎を纏った真っ赤な刀を生成し炎の衝撃波で一気に薙ぎ払う。
「あぁ、そうそう。言い忘れていました。」
途端、クモが連鎖的に大爆発を起こして行き爆風で俺と盗賊ちゃんは吹っ飛ばされた。
「そのクモ、1つ1つが爆弾になっています。
指の1つ2つ簡単に飛ばせるくらいの爆発力はありますよ。それが寄り集まれば、まぁ貴方達が今まさに体感した通りです。
ですが…流石ですねお二人とも。この爆発で無傷ですか…。」
大賢者のブレスのアップデートは正解だったようだ。
見事に大規模な結界を発生させ、爆風による大ダメージは防ぐことが出来た。
「ただ、貴方達がなぎ払いきれなかったクモ達はどうなりますかね?」
スパイディが指をパチンと鳴らそうとするその刹那の瞬間だった。
「【王泥棒】!アンタの蜘蛛を爆発させるスキルを…奪う!!」
盗賊ちゃんは悪魔の右手によりスパイディから爆弾子グモを発生させるスキルを奪い取った。
「あらあら…。スキル、取られちゃいましたか…。ですが、誰も爆発する蜘蛛しか居ないなんて言ってませんよ?」
遠くから見ていた子どもがギャァァアッ!と叫び出す声が聞こえる。
「まさか…!?毒蜘蛛か!?盗賊ちゃん!」
「任せろ!治癒してくる!ご主人様も気をつけろよ!」
「ふふ。素晴らしいパートナーですね。ですが、クモっていろんな大きさのものが居るんですよ?便利ですよね~?生き物を使った戦い方と言うのは。」
手元を見ると、小さな赤い蜘蛛が付いている。
梅雨時になるとよく見かける潰すと真っ赤な汁が残るアレみたいな奴がワサワサと…。そう…わさわさ…と…。
「うぉぅわぁぁぁっ!?ばっちぃいっ!!」
手で払うとすぐに潰れるし嫌なんだよなこの蜘蛛…。
殺すのが嫌なので拳と共に起こした風で払いのけていく。
「あら…。手で払うか燃やすかを期待していたんですけどね。」
「毒があったらシャレにならないからな。」
「ですが、服の中に入り込んだものまでは…。払えませんよ?」
え…。服の中…?
「もぉぉおおっ!?何でそう言う事するかなぁぁあっ!!ちくしょう!!変身!!」
ライト二ングクォーツを発動させ変身し、服の中に入り込んだ蜘蛛を素粒子レベルで分解する。
「!?クモが消えたのに毒煙が出ない…。いや…分解された!?」
「俺の世界にはな。プラズマの力で雑菌を除去する特許技術があるのさ!目の付け所がシャープな企業さん!おかげで助かったぜ!」
雷光の如きスピードで高速移動し、スパイディに掌底を叩き込む。
「女の子だから、あまり傷をつけたりはしたくなかった。そもそも、女の子に手をあげるなんて絶対にしたくなかったのに…!ほんとなんで、こう言うことするかなぁ君は!」
大賢者のブレスに意識を通す。
『見逃した蜘蛛を全て自動迎撃してくれ。』
『了。これより雷による自動迎撃を開始します。』
俺の体に纏った鎧の一部が体を離れて小型の自動迎撃ビットに変形していく。
そのままビットから網の目の様に雷が放たれ、一瞬のうちにその辺に散らばっていた蜘蛛達を瞬殺して分解していく。
「虫さんだって生きてるの!人に害を成そうとしたら殺さなきゃいけなくなるでしょ!こう言う攻撃技はやめなさい!!わかった!?」
「えぇ…。私、戦いの最中そんなレベルの説教を受けているのですか…。」
「そもそもだな。俺は君と戦いたくないの。わかったらさっさと引いてくれ。勝てないことくらいわかってるだろう?」
『髪の毛の細さの毒針が放たれました。
迎撃。完了しました。』
首元でバチっと静電気のような電撃が発生していた。
「髪の毛サイズの毒針とか…。意外と恐ろしい技を使うんだな。」
「くっ…。やりますね。しかし…戦わないと言う選択肢は早めに撤回すべきです。被害が増えるだけですよ?」
スパイディは再び鎧の隙間から無数の子グモをわっさわっさと出してくる。
子グモの動きは確かに早い。
だが、雷帝ほどではない。
「だぁぁぁぁかぁあああぁらぁぁあぁあっ!!やめろって言ってんでしょうがぁぁぁぁ!!」
『放たれた蜘蛛のみ殲滅を行います。』
青白い閃光が辺りを包み込み、子グモの群れを完全に蹴散らしていく。
「おまたせご主人様!治療終わったぞ!」
「おう、お早いおかえりで。よし盗賊ちゃん。あいつが蜘蛛をわさわさ出すスキル全部取っちゃって!
気持ち悪くて仕方ない!!俺、虫大っ嫌いなんだよ!!」
「わかった!!【王泥棒】!」
キィィインッ!と悪魔の右手がスパイディからスキルを奪い取る。
「スキル奪い取ったは良いけど、このスキルの使い道凄そうだぞ。
蜘蛛を経由して遠くのものを見たりする視覚共有スキルとの併用とか色々と応用が効きそうだ。」
「そか。とりあえず、まかり間違っても寝ぼけてベッドの中でわさわさとかさせたら俺は君を部屋の外へ放り出すぞ。」
「わかった。気をつける。」
蜘蛛を出すスキルを失うと、今度は手首から出す糸で攻撃を仕掛けてくる。
弾速は速いが、まぁこの程度の速度は俺ら二人の敵ではない。
「やっぱり、雷帝は速いですね。蜘蛛の糸では捕まえられそうな気がしません。」
「とりあえず、引くなら引いてくれないか?パワーアップしてからの力をまともに使うのは初めてなんだ。
制御を誤って殺したりとかしたくないし。」
「傲慢ですね。貴方の力が更に増している事は当然予測していますが、かといってすぐに私を殺せると?」
そう言うと背中から8本の蜘蛛の脚を生やして、体勢を低くして構えとんでもないスピードでこっちへと突進してくる。
『速度は音速以上です。防御障壁を展開します。』
障壁により完全に防がれてはいるが、彼女は俺への突進後、8本の脚を突き刺そうとして来ていた。
「強力な防御障壁…。それに反応速度…。今までの貴方は変身したところで力以外は所詮人の域を出ていませんでした。何かしらのスキルで、自動制御されていますね?図星でしょうか。素晴らしいです大賢者様。
しばらく見ないうちに、こんなにも強くなられて…。
では…こう言うのはどうでしょう?」
スパイディが何処からか取り出したカバンから大量のドールを取り出し、蜘蛛の糸で操作し始める。
「私はドールマスターです。この作品たちをそして私の作り出したこの子達をただの人形と侮ってはいけませんよ?」
人形達がそれぞれ縦横無尽に飛び回り、包丁やらナイフやらを向けてくる。
「これで俺を傷付けられないことくらいはわかってるだろう?どう言うつもりだ?」
「貴方を傷付けられないのは当然ですが、貴方は私を傷つけることもできませんよ?」
『告。ドール内に人の魂の反応を感知。』
「ドール内に人の魂…だと?まさか…。」
「えぇ。人形を大切にできないような子供達から抜き取って、この人形達に込めました。
ドールへのダメージはそのままこの人達の魂の繋がっている肉体へと返ります。
これもまた、ドールマスターたる私のスキルの1つです。
心苦しいですが身代わり人形をつくることも出来るのですよ?このように…。」
手首からシュルシュルと伸ばした蜘蛛の糸を、俺たち二人の形へと生成していく。
「貴方がいくら強くても、こう言う呪いへの対抗策はお持ちでしょうか?」
そして、自身のプリンっとした尻の割れ目から大きく長い毒針のようなものを引きずり出すと、それを俺を模した人形の腕に突き刺す。
『呪術の反応を検知。浄化魔法を発動します。
………成功しました。
合わせて、盗賊への呪術攻撃の反応を検知。
防御障壁を展開します。』
「呪術そのものを破壊する浄化魔術ですか。本当に万能ですね。」
そして高く飛び上がると、今度は尻から大量の毒針を地上めがけてマシンガンのごとく無差別に放ってくる。
『住民を守る為自動迎撃を行います。掌を前へ。
その位置です。迎撃します。』
両掌から網の目状に放たれた雷により毒針を全て撃ち落としていく。
「もうやめるんだ。貴方がどれだけ力を使おうが俺たちには敵わない。盗賊ちゃん、ドールと子供たちの魂を分離して肉体に戻す事はできそうかい?」
「悪い…。抜き取る事はできるが、何処にあるかわからない肉体へと戻すのはオレには無理だ…。」
「そうか。えーっと…。ブレスレットくん。俺は君をどう呼べば良いかな…。今更だけど。」
『告。今の私は弥勒菩薩のチャームの力により、このブレスの力を利用させていただいて居る「意思」です。
私のことは気軽にミロくんなりミロちゃんなり自由にお呼びください。尚、初期設定は男性の声ですが、マスターがお望みとあらば女性ボイスに変更も可能です。
声を女性に変更されますか?YES/NO』
「オッケーミロちゃん。答えはイエスだ。」
『かしこまりました。では、これより私のことはどうぞ気軽にミロちゃんとお呼びください。
では、本題に移ります。ドール内に封じ込められた魂はドールを破壊することで開放することは可能です。
ですが、それはマスターの意に反することを感知しました。よって、雷帝の白き雷によりドールと魂の繋がりを強制分離。そのまま、魂の意思で肉体へと帰還させることを提案いたします。
白き雷の威力調整、照準制御、魂の強制分離はお任せください。ではマスター。構えて。』
盗賊ちゃんがぽかんとした顔でこっちを見ている。
『マスター。私の声は指向性音声の為、周りには一切聞こえておりません。
スキル、思念伝達の発動を行いますか?YES/NO』
イエス。
『盗賊様。これで私の声が貴方にも聴こえてることと存知ます。初めまして。私は弥勒菩薩。気楽にミロちゃんとお呼びください。我がマスターの右手に装着されているブレスレットにこの度宿らせていただいた仏様に御座います。以後、よろしくお願い申し上げます。』
「うわぁぁあっ!?なんだ!?頭に直接声が!?
えっと…。弥勒さん。よろしくな?」
盗賊ちゃんが俺の右手をツンツンしてくる。
「悪いけどドール屋さん、子供たちの魂は解放させてもらうよ。白雷!!」
白い雷が槍状の形へと変化しドール達を貫いていき、ドールと魂を分離していく。
分離された魂はそのままスーッと何処かへと飛んで行った。
「あら…。こうもいとも簡単に私の切り札をあっさりと破られてしまうとは…。仕方ないですね。
ひとまず…、データは十分に得られました。
この辺で私も引かせていただきます。
貴方は私を逃がしてくれるのでしょう?」
「少なくとも、傷つけたくはないってだけだ。
逃がすつもりはないよ。」
指先から雷の針を頚椎へと飛ばし体の自由を封じる。
「器用な技ですね…。脳からの信号を遮断して動きを止めるなんて…。」
「悪いね。大丈夫、出来る限り悪いようにはしないから…。」
俺が彼女の変身を解こうと手を伸ばした瞬間、強い重力波で身体を地面に叩きつけられる。
「ぐっ!!なんだこれ…!めちゃくちゃ体が重い!」
『解。重力魔法です。離脱できません。攻撃の第二波に備え防御障壁を展開します。』
すると、スパイディの後ろからブラックホールを通って例のローブの男が現れる。
「ご苦労様ですドーラー。十分な働きでした。
ようやく現れたパワーアップした大賢者の力。十分にデータを取っていただき感謝致します。さて…捕まる前に退散といきましょう。
大賢者。素晴らしい成長です。私の期待通りですよ。
どうぞこれからも強くなってください。貴方が強くなれば、私たちの雷帝も強くなりますので。では…。」
「待て…!」
そして、スパイディと共にローブの男はブラックホールの中へと消え去っていった。
「クソ…。逃げられたか…。重力魔法とか…また厄介な技だな…。完全に動けなかった。」
「逃げられちまったな…。ひとまず、なんとか被害者を出さずに済んだか…。」
「そうだな…。ひとまず、報告に帰ろう。」
俺は変身を解除しバイクを召喚する。
「ご主人様…。凄く…ショック受けてんだろ…。
オレもあの人が悪者達の仲間なのは何か理由がある気がして、さっきから落ち着かないんだ…。」
「まぁ…な。俺もあの人の優しさやドールへの愛をもっと信じておきたい。ひとまず、帰ろう。」
そして俺は、城へとバイクを走らせた。
落ち着かない感情を背負いながら。
以降スパイディでいっか。
とりあえずスパイディが俺達めがけて手首から糸を伸ばしてくる。
うん、やっぱスパイディでいいや。
「かわしても良いのですか?」
俺の後ろにいた男児へと糸が伸びていく。
盗賊ちゃんが伸びてきた糸をナイフで切りとばす。
「私…子どもって嫌いなんですよ。特に男の子は。
子どもって人形を本当になんだと思っているのでしょう…。
手足をもいだり、髪の毛を持って引っ張り回したり、叩きつけたり、男の子に至っては服を脱がして性の対象にして遊んだり…。穢らわしい…。」
「おい…まさか、最近オーガノイドの出現と並行して起きていた子ども達が意識不明になる事件の犯人は…。
お姉さん、そう言う雰囲気とか皆無の笑顔が素敵な優しそうな人だったのに…。」
「えぇ。私ですよ。敵を目の前に優しそうとは…。
貴方も彼に似て優しい子なのですね。」
俺たちが会話してる間に、この情景を見た人達同士で連携して住民達は避難していった。
時間稼ぎは出来たか…。
「俺たちの前でわざわざその姿になった理由は?
その他にもまぁ色々と聞きたいことはあるけど…。」
「そうですね。貴方の目の前で変身すれば、貴方は私を討伐しようとしてくるかなと。」
「うーん…。すると思う?目の前に敵がいる!俺の知ってる人だ!ってなってるこの状況で。」
「貴方は、やはりそう言う人なのですね。」
スパイディは地面に手をつくと、鎧の間からワサワサと子グモを出してきた。
「うわぁぁぁぁあっ!?キモっ!?やめてぇえっ!!」
「ふふふ。早く戦う準備をした方が良いですよ。クモって素早いですから。」
ワッサワサしてるクモがキモすぎて逃げようとしてたらクモが一斉にぴょいぃぃいんっ!飛び跳ねてこっちに向かって飛んでくる。
「心苦しいけど…クモさんごめんなさい!!」
ファイアクォーツとインフィニティブレードを同時に発動し、炎を纏った真っ赤な刀を生成し炎の衝撃波で一気に薙ぎ払う。
「あぁ、そうそう。言い忘れていました。」
途端、クモが連鎖的に大爆発を起こして行き爆風で俺と盗賊ちゃんは吹っ飛ばされた。
「そのクモ、1つ1つが爆弾になっています。
指の1つ2つ簡単に飛ばせるくらいの爆発力はありますよ。それが寄り集まれば、まぁ貴方達が今まさに体感した通りです。
ですが…流石ですねお二人とも。この爆発で無傷ですか…。」
大賢者のブレスのアップデートは正解だったようだ。
見事に大規模な結界を発生させ、爆風による大ダメージは防ぐことが出来た。
「ただ、貴方達がなぎ払いきれなかったクモ達はどうなりますかね?」
スパイディが指をパチンと鳴らそうとするその刹那の瞬間だった。
「【王泥棒】!アンタの蜘蛛を爆発させるスキルを…奪う!!」
盗賊ちゃんは悪魔の右手によりスパイディから爆弾子グモを発生させるスキルを奪い取った。
「あらあら…。スキル、取られちゃいましたか…。ですが、誰も爆発する蜘蛛しか居ないなんて言ってませんよ?」
遠くから見ていた子どもがギャァァアッ!と叫び出す声が聞こえる。
「まさか…!?毒蜘蛛か!?盗賊ちゃん!」
「任せろ!治癒してくる!ご主人様も気をつけろよ!」
「ふふ。素晴らしいパートナーですね。ですが、クモっていろんな大きさのものが居るんですよ?便利ですよね~?生き物を使った戦い方と言うのは。」
手元を見ると、小さな赤い蜘蛛が付いている。
梅雨時になるとよく見かける潰すと真っ赤な汁が残るアレみたいな奴がワサワサと…。そう…わさわさ…と…。
「うぉぅわぁぁぁっ!?ばっちぃいっ!!」
手で払うとすぐに潰れるし嫌なんだよなこの蜘蛛…。
殺すのが嫌なので拳と共に起こした風で払いのけていく。
「あら…。手で払うか燃やすかを期待していたんですけどね。」
「毒があったらシャレにならないからな。」
「ですが、服の中に入り込んだものまでは…。払えませんよ?」
え…。服の中…?
「もぉぉおおっ!?何でそう言う事するかなぁぁあっ!!ちくしょう!!変身!!」
ライト二ングクォーツを発動させ変身し、服の中に入り込んだ蜘蛛を素粒子レベルで分解する。
「!?クモが消えたのに毒煙が出ない…。いや…分解された!?」
「俺の世界にはな。プラズマの力で雑菌を除去する特許技術があるのさ!目の付け所がシャープな企業さん!おかげで助かったぜ!」
雷光の如きスピードで高速移動し、スパイディに掌底を叩き込む。
「女の子だから、あまり傷をつけたりはしたくなかった。そもそも、女の子に手をあげるなんて絶対にしたくなかったのに…!ほんとなんで、こう言うことするかなぁ君は!」
大賢者のブレスに意識を通す。
『見逃した蜘蛛を全て自動迎撃してくれ。』
『了。これより雷による自動迎撃を開始します。』
俺の体に纏った鎧の一部が体を離れて小型の自動迎撃ビットに変形していく。
そのままビットから網の目の様に雷が放たれ、一瞬のうちにその辺に散らばっていた蜘蛛達を瞬殺して分解していく。
「虫さんだって生きてるの!人に害を成そうとしたら殺さなきゃいけなくなるでしょ!こう言う攻撃技はやめなさい!!わかった!?」
「えぇ…。私、戦いの最中そんなレベルの説教を受けているのですか…。」
「そもそもだな。俺は君と戦いたくないの。わかったらさっさと引いてくれ。勝てないことくらいわかってるだろう?」
『髪の毛の細さの毒針が放たれました。
迎撃。完了しました。』
首元でバチっと静電気のような電撃が発生していた。
「髪の毛サイズの毒針とか…。意外と恐ろしい技を使うんだな。」
「くっ…。やりますね。しかし…戦わないと言う選択肢は早めに撤回すべきです。被害が増えるだけですよ?」
スパイディは再び鎧の隙間から無数の子グモをわっさわっさと出してくる。
子グモの動きは確かに早い。
だが、雷帝ほどではない。
「だぁぁぁぁかぁあああぁらぁぁあぁあっ!!やめろって言ってんでしょうがぁぁぁぁ!!」
『放たれた蜘蛛のみ殲滅を行います。』
青白い閃光が辺りを包み込み、子グモの群れを完全に蹴散らしていく。
「おまたせご主人様!治療終わったぞ!」
「おう、お早いおかえりで。よし盗賊ちゃん。あいつが蜘蛛をわさわさ出すスキル全部取っちゃって!
気持ち悪くて仕方ない!!俺、虫大っ嫌いなんだよ!!」
「わかった!!【王泥棒】!」
キィィインッ!と悪魔の右手がスパイディからスキルを奪い取る。
「スキル奪い取ったは良いけど、このスキルの使い道凄そうだぞ。
蜘蛛を経由して遠くのものを見たりする視覚共有スキルとの併用とか色々と応用が効きそうだ。」
「そか。とりあえず、まかり間違っても寝ぼけてベッドの中でわさわさとかさせたら俺は君を部屋の外へ放り出すぞ。」
「わかった。気をつける。」
蜘蛛を出すスキルを失うと、今度は手首から出す糸で攻撃を仕掛けてくる。
弾速は速いが、まぁこの程度の速度は俺ら二人の敵ではない。
「やっぱり、雷帝は速いですね。蜘蛛の糸では捕まえられそうな気がしません。」
「とりあえず、引くなら引いてくれないか?パワーアップしてからの力をまともに使うのは初めてなんだ。
制御を誤って殺したりとかしたくないし。」
「傲慢ですね。貴方の力が更に増している事は当然予測していますが、かといってすぐに私を殺せると?」
そう言うと背中から8本の蜘蛛の脚を生やして、体勢を低くして構えとんでもないスピードでこっちへと突進してくる。
『速度は音速以上です。防御障壁を展開します。』
障壁により完全に防がれてはいるが、彼女は俺への突進後、8本の脚を突き刺そうとして来ていた。
「強力な防御障壁…。それに反応速度…。今までの貴方は変身したところで力以外は所詮人の域を出ていませんでした。何かしらのスキルで、自動制御されていますね?図星でしょうか。素晴らしいです大賢者様。
しばらく見ないうちに、こんなにも強くなられて…。
では…こう言うのはどうでしょう?」
スパイディが何処からか取り出したカバンから大量のドールを取り出し、蜘蛛の糸で操作し始める。
「私はドールマスターです。この作品たちをそして私の作り出したこの子達をただの人形と侮ってはいけませんよ?」
人形達がそれぞれ縦横無尽に飛び回り、包丁やらナイフやらを向けてくる。
「これで俺を傷付けられないことくらいはわかってるだろう?どう言うつもりだ?」
「貴方を傷付けられないのは当然ですが、貴方は私を傷つけることもできませんよ?」
『告。ドール内に人の魂の反応を感知。』
「ドール内に人の魂…だと?まさか…。」
「えぇ。人形を大切にできないような子供達から抜き取って、この人形達に込めました。
ドールへのダメージはそのままこの人達の魂の繋がっている肉体へと返ります。
これもまた、ドールマスターたる私のスキルの1つです。
心苦しいですが身代わり人形をつくることも出来るのですよ?このように…。」
手首からシュルシュルと伸ばした蜘蛛の糸を、俺たち二人の形へと生成していく。
「貴方がいくら強くても、こう言う呪いへの対抗策はお持ちでしょうか?」
そして、自身のプリンっとした尻の割れ目から大きく長い毒針のようなものを引きずり出すと、それを俺を模した人形の腕に突き刺す。
『呪術の反応を検知。浄化魔法を発動します。
………成功しました。
合わせて、盗賊への呪術攻撃の反応を検知。
防御障壁を展開します。』
「呪術そのものを破壊する浄化魔術ですか。本当に万能ですね。」
そして高く飛び上がると、今度は尻から大量の毒針を地上めがけてマシンガンのごとく無差別に放ってくる。
『住民を守る為自動迎撃を行います。掌を前へ。
その位置です。迎撃します。』
両掌から網の目状に放たれた雷により毒針を全て撃ち落としていく。
「もうやめるんだ。貴方がどれだけ力を使おうが俺たちには敵わない。盗賊ちゃん、ドールと子供たちの魂を分離して肉体に戻す事はできそうかい?」
「悪い…。抜き取る事はできるが、何処にあるかわからない肉体へと戻すのはオレには無理だ…。」
「そうか。えーっと…。ブレスレットくん。俺は君をどう呼べば良いかな…。今更だけど。」
『告。今の私は弥勒菩薩のチャームの力により、このブレスの力を利用させていただいて居る「意思」です。
私のことは気軽にミロくんなりミロちゃんなり自由にお呼びください。尚、初期設定は男性の声ですが、マスターがお望みとあらば女性ボイスに変更も可能です。
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『かしこまりました。では、これより私のことはどうぞ気軽にミロちゃんとお呼びください。
では、本題に移ります。ドール内に封じ込められた魂はドールを破壊することで開放することは可能です。
ですが、それはマスターの意に反することを感知しました。よって、雷帝の白き雷によりドールと魂の繋がりを強制分離。そのまま、魂の意思で肉体へと帰還させることを提案いたします。
白き雷の威力調整、照準制御、魂の強制分離はお任せください。ではマスター。構えて。』
盗賊ちゃんがぽかんとした顔でこっちを見ている。
『マスター。私の声は指向性音声の為、周りには一切聞こえておりません。
スキル、思念伝達の発動を行いますか?YES/NO』
イエス。
『盗賊様。これで私の声が貴方にも聴こえてることと存知ます。初めまして。私は弥勒菩薩。気楽にミロちゃんとお呼びください。我がマスターの右手に装着されているブレスレットにこの度宿らせていただいた仏様に御座います。以後、よろしくお願い申し上げます。』
「うわぁぁあっ!?なんだ!?頭に直接声が!?
えっと…。弥勒さん。よろしくな?」
盗賊ちゃんが俺の右手をツンツンしてくる。
「悪いけどドール屋さん、子供たちの魂は解放させてもらうよ。白雷!!」
白い雷が槍状の形へと変化しドール達を貫いていき、ドールと魂を分離していく。
分離された魂はそのままスーッと何処かへと飛んで行った。
「あら…。こうもいとも簡単に私の切り札をあっさりと破られてしまうとは…。仕方ないですね。
ひとまず…、データは十分に得られました。
この辺で私も引かせていただきます。
貴方は私を逃がしてくれるのでしょう?」
「少なくとも、傷つけたくはないってだけだ。
逃がすつもりはないよ。」
指先から雷の針を頚椎へと飛ばし体の自由を封じる。
「器用な技ですね…。脳からの信号を遮断して動きを止めるなんて…。」
「悪いね。大丈夫、出来る限り悪いようにはしないから…。」
俺が彼女の変身を解こうと手を伸ばした瞬間、強い重力波で身体を地面に叩きつけられる。
「ぐっ!!なんだこれ…!めちゃくちゃ体が重い!」
『解。重力魔法です。離脱できません。攻撃の第二波に備え防御障壁を展開します。』
すると、スパイディの後ろからブラックホールを通って例のローブの男が現れる。
「ご苦労様ですドーラー。十分な働きでした。
ようやく現れたパワーアップした大賢者の力。十分にデータを取っていただき感謝致します。さて…捕まる前に退散といきましょう。
大賢者。素晴らしい成長です。私の期待通りですよ。
どうぞこれからも強くなってください。貴方が強くなれば、私たちの雷帝も強くなりますので。では…。」
「待て…!」
そして、スパイディと共にローブの男はブラックホールの中へと消え去っていった。
「クソ…。逃げられたか…。重力魔法とか…また厄介な技だな…。完全に動けなかった。」
「逃げられちまったな…。ひとまず、なんとか被害者を出さずに済んだか…。」
「そうだな…。ひとまず、報告に帰ろう。」
俺は変身を解除しバイクを召喚する。
「ご主人様…。凄く…ショック受けてんだろ…。
オレもあの人が悪者達の仲間なのは何か理由がある気がして、さっきから落ち着かないんだ…。」
「まぁ…な。俺もあの人の優しさやドールへの愛をもっと信じておきたい。ひとまず、帰ろう。」
そして俺は、城へとバイクを走らせた。
落ち着かない感情を背負いながら。
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