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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。

第83話 壊れゆく魂

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機械の鎧となった龍を纏い、バイクと合体した。
バイクの車輪はふくらはぎ辺りに格納されてるっぽい。
ガシャンッと出したり引っ込めたりできる。
胸には龍の頭、両腕には龍の巨大な爪の付いた腕、そしてその脚にもまた強靭な三本の爪が生えている。
尻尾の先端は大剣に、尻尾そのものは盾になり、背中には大きな機械の翼が生えている。

まさに、合体ロボのような見た目となった俺。
そして…。

「ちょっとまって、デカイデカイデカイデカイ。
これもう大きさだけならオーバーキルだろう。
なんかこっち側が、巨大ロボ呼び出す前に脚で踏みつぶそうとする巨大化した敵の怪人みたいなポジになってるやん。これあかんて。縮められるのかな?」

動き出したら確実に街を破壊しかねないその大きな身体を縮小し、なんとか2m程度の大きさになる。

「これが限界サイズか…。相手も変身前は180センチくらいはあったし、これで似たような大きさだよな。うん。」
「オオキナママデタタカエバヨイモノヲ…。イヤ…。チイサクナルホウガリコウデハアルカ…。」
「デカけりゃそんだけ技もかわされやすくなるからな。
でっかい虫を叩くよりもコバエを叩く方が難しいのと一緒だ。
ってその例えだと、俺今コバエになっちゃうな…。
まぁ良いか。」
「良くないわたわけ!!虎と猫とかまた他にも例え方があろう!!まぁ良い。参るぞ。」

ガギュゥウイィインっと関節が音を立てて俺の体が動き出す。
このまま目が光る瞬間にビコォンっとか鳴りそうな勢いである。

マッシブ体系の巨大な身体の割に意外と俊敏に動かせそうだ。

巨大な翼をはためかせ、一気に敵に接近しそのままシールドで殴る。

「っ!ナンダコノハヤサワァァアッ!ッ!?グハァァアッ!」

相手に防御させる暇もなくシールドが相手の鎧を砕く。

「おぉ…。思ったより強いな。これならいける気がする!」
「チョウシニノルナ。オォァォォォオッ!!」

全身から真紅の雷をスパークさせると、身体中に赤い紋様が浮かび上がる黒い雷帝。
さしずめ超黒雷帝2とか?

そのまま両手を重ね合わせ強力な雷の波動を強烈な勢いで放ってくる。

「天叢雲剣!!」

龍の尾から作り出された盾が雷の波動を受け止め、そのまま跳ね返す。

「ナニィイッ!?」

跳ね返した波動をモロに食らって仰け反る黒い雷帝。
その隙を逃さず、俺は尾から作り出された剣で一気に斬りこむ。
斬撃は相手の鎧ごと、鎧に包まれたその雷と化した肉体も斬り裂いて行く。

「ガァァァアッ!!」

そして、そのまま変身は解除されていった。

「うっぐ…。俺の…力が…破壊された…!?」
「悪いが、このまま拘束させてもらうぞ。」

盗賊ちゃんと妹ちゃんとの三人がかりで、盗賊ちゃんはいばらで、妹ちゃんは氷で、俺は炎の渦で相手を拘束しようと包み込んで行く。

だが、その力は横から何者かに掻き消されていった。
まぁ…こいつしか居ないだろうとは思ったが。

「ふむふむ。まだまだ力の底上げが必要ですか…。
残念ですねぇ。とりあえず彼は私たちが頂いて行きますよ。あぁ、あなた方が私を拘束しようとしても無駄ですよ。そこに居るのはそもそも最初から私自身ではありませんので。」

そしてそのまま転移魔法で少年と共に消えていった。

「やっぱこうなるか…。定番中の定番…。予想通りの流れだな。さてと、変身を解除していくか…。」

ガコンッ!と胸元から全身にかけて鎧が開いていき、俺はそのまま鎧の外へと出る。
そして、鎧から龍ちゃんが憑依を解除すると鎧は元のバイクの姿へと戻っていった。

バイクからシリンダーに入れたライトニングクォーツを引き抜く。
やはり、ライトニングクォーツを包んでいたワイヤーはほとんど切れており、シルバーリングはそのままパキンッと砕け落ちていった。

「あちゃぁ…。やっぱこうなったか…。
石の方もまた浄化とチャージしないとな…。
ひとまず、しばらく雷帝の力は使えないな…。」
「おい…ご主人様…。石の心配してる場合かよ…。
その腹…魔法使い!急いで傷を塞いでやってくれ!!」

おっと…。さっき伊邪那岐に刺し貫かれた腹が変身解除してもそのまま傷として残っていたのか…。
言われるまで痛みもなかったから気づかなかった。
うぉぉおい…めっちゃ血出てるじゃん…。
この服気に入ってたのに汚れちまったな。

「悪い、多分今から貧血で倒れると思うから…あとよろしく。」

そして、そのまま気を失った。

「ご主人様?ご主人様ぁぁあっ!!」
「賢者様!しっかり!」
「賢者!死んじゃダメだからね!」

まだまだ死なねぇよ…。

しかし…今回の合体自体も大分力を浪費した筈だ。
この身体を縮小しても圧倒的なまでのあの力。
バイクや機械の龍との合体とかはまぁロマンではあったが…。

しかし…今まで腕を切り飛ばされても再生していたのに、伊邪那岐の槍は俺の肉体にまでそのまま傷を残したか…。

痛みがなかったのが救いだな…。

結構派手な傷口になってたし、痛みがあったらとてもじゃないが痛いなんて言葉じゃ済まないだろう。


「痛みはなくとも当然だし、傷が残るのも当然じゃ。
その傷は治癒魔術でも簡単には癒せぬ。
何故ならそれは、」
「俺の魂そのものに付けられた傷…だろ?闇龗神。
なんとなくそんな気はしていた。」

真っ暗闇の空間で、闇龗神が俺に語りかける。

「雷帝の力も、お前にはまだまだ大き過ぎたのだ。
お前も、お前の肉体にまで生じる程の火傷の跡を見た筈だ。今ならお前のその魂が如何にボロボロか…。よく見えるであろう。」

闇龗神は鉄扇をカシャンっと開き、鏡のようにして俺に見せようとする。

「待って。この空間、暗闇だからぜんっぜんみえない…。」
「……………。そうか…。ちょっと待って…。高龗神と変わる…。ぐすん…。」
「ごめん…いや、ほんとごめんね…?悪気はないの…。許して…。」
「いいもんいいもん。我の空間はどーせ真っ暗闇だもん…。」

あたりの空間が急に白く輝きだし、闇龗神は高龗神と交代する。

「なんか、変な感じ…。とりあえずはい、きちんと今の自分の魂を見て?これ以上、力を使ったら魂が耐えきれず崩壊していてもおかしくなかった筈。
人の魂に神を相乗りさせるって言うのは…それだけの事なの。」

改めて、姿見のように大きな鉄扇をカシャンっと開き、鏡のようにして俺の姿を映し出す。
そこに写っていた俺の身体は酷いものだった。

腹には先程刺し貫かれえぐられた跡。
ぽっかりと向こう側が見える程の大きな穴が空いていた。

そして、胸を中心に血管に沿って広がるような火傷のような跡。
胸元は完全に真っ赤に爛れている。
手足はファイアクォーツによるものか表面は黒焦げになっていた。

「わかりやすく可視化したらこうなった…。私に見えてる姿は…本当はもっと酷いよ。
このまま力を使えば徐々に肉体に影響を及ぼすほどになっていくよ。
肉体に現れた火傷はまだマシ。
そのうち、心臓そのものに病が生じたり、手足が動かなくなっていってもおかしくはない。
特に…心臓。既に貫ぬかれるような激しい胸の痛みや動悸、息切れなどの症状は出ていた筈だよ。」
「あぁ…。まぁ出ていたね…。日頃の不摂生が祟ってのものだと思ってたよ…。30代手前なのもあるし…。」
「うーん…まぁ…それもあるかもだけど、それ以上にライトニングクォーツによる代償の方が大きいのは明白だよ。そりゃあ、1人だけならまだしも、あれだけの数の雷神を一度にその身に降ろして力を行使してるんだから…。
一方、さっき闘った敵はたった2人の神であの力だった。
禍津伊邪那岐の力とこの世界の神霊化した雷虎。
雷虎の持つ力は特に大きかった…。
この世界の神獣と言うのは、私たちの世界の神複数に相当する程の力を持ってるんだと思うと素直に悔しいね…。
私が貴方と共に闘ってようやく互角だった。
気づいてたかは知らないけど、あの姿になった時の貴方は雷帝も炎皇の力も失われていた。
石の中の神の力までは失われていないけど、力そのものが貴方を壊さないためにも力を使うことを拒んでいたのかな?」

つまり、あの闘いの最後に俺がその身に宿していたのは高龗神と闇龗神。表裏一体の2人の神様ってわけだ。

本当に龍神と互角レベルなんだな。この世界の虎の神ってのは…。
龍神大好きな俺としても割と悔しい…。

しかし…この魂の傷ってのはだいぶやばそうだ…。

「一応聞いておきたいんだけど、この魂の傷ってのは治るもんなの?」
「普通は治らないよ。蓄積されていく。まぁ…普通なら…だけどね。私たちがいて良かったって思っておいてね?
本当は…貴方に無理をさせない為にも治すのは嫌なんだけど…。」
「ごめんね…。心配かけて…。」

高龗神が俺の胸元に手を触れると金色の鱗粉のような光が俺の魂の中に流れ込んで行き、魂に出来た傷を急速に修復していく。

「ありがとう。助かるよ。」
「傷を私の魂の一部で埋め直しただけみたいなものだよ。正確には治したって言うのとは違う。
掘り返した砂場に、別のところから持ってきた全然違う砂を使って、無理やり埋めたみたいなイメージかな?
私の魂が馴染めば、神の力をより効率よくかつ代償による魂の消耗も少なく使えるようにはなると思う。
だけど、こうなる度に毎回とは行かない。
そんなことを繰り返せば、最終的に貴方は貴方じゃなくなってしまうし人ですらなくなってしまう。
今までの貴方を100とするなら、そのうちの5くらいは貴方の魂は私の一部になってしまった。」
「たった5で、俺の魂のあれだけの傷を埋めれるものなのか…。」
「うん、埋めることは出来る。薄く広く伸ばしたり広げたりしてるイメージかな?無理やりなるべく少ない量で置き換えた。でもね、1割でも人の魂を失えばもう貴方は人には戻れなくなる。
人として生きる事も叶わなくなる。
それは具体的にどう言うことかって言うと、一つは当然ながら寿命。
簡単に言えば早死にしやすくなる。
二つ目は肉体がその力に耐えきれないから、傷みやすくなる…。
内臓や筋肉が壊れやすくなるって言い換えたほうがわかりやすいかな…。
三つ目は人としての欲望が薄くなっていく。
飢餓感とかも酷くなるかもしれないね…。
最後に…死んだ後は転生できなくなる…。
そして、人の世に降りたとしても誰にも気付いてもらえなくなるんだよ…。
この世界でなら、龍族に宿れば肉体は得られるかもだけど…。
最悪の場合は、人の肉体を捨ててこの世界の龍族になるしか無くなるかもだね…。」

大きな力には当然ながら大きな代償があるもんだ…。
当たり前の事だよな…。
今までそんなこと気にしたり考えずに使ってきたけども。

「わかった。雷帝の力を使うときは特に気をつける。」
「雷帝よりも、伊邪那美命の力を使うときだね。あのときは伊邪那美命になる為に8柱の雷神を一気にその身に降ろして居た。
だから、魂へのダメージの蓄積も激しかったんだよ。
炎帝や雷帝を1人ずつ、もしくは2人だけなら大きな負担はないよ。」
「もしくは、高龗神の力を借りる方が危険が少ないと…。今回の敵に対してなら相性的にも勝るって感覚もあったし。」
「今の私の身体、アーマードドラゴンの身体にまとわりつくように構成されてる魔鉄鋼の力も大きく作用したからかな?
敵によっては、雷帝や炎帝、蛟の方が相性が良い時もあるかもだね。
ひとまず…伊邪那美命の力を使うのはなるべく避けた方が良いと思う。
使う度にこれだけのダメージを魂に蓄積されてたら、本当に人間辞めないと行けなくなるよ…。
なるべくなら私たちの力を使って。貴方がまだ人でありたいならば…。」

人じゃなくなったら…愛しいあの子をまた泣かせる事になりかねないしな…。

「わかった。あとは…、意識が戻ったらライトニングクォーツを魔鉄鋼製のワイヤーとシルバーリングで再構築しないとだな…。」
「だね。それも魂にかけるダメージを減らせると思う。
可能なら魂への代償なく伊邪那美命の力を使えるものが作れれば、それが一番なんだろうけどもね…。」

そこに関しては色々と研究しないとだな…。
医療部も魔術部も俺の魂の消耗までは見ることは出来なかったんだし…。そもそも大丈夫とまで言い張ってこのザマだからな…。
そこは責められないけども。

「さて…。敵さんも撤退した以上は何かしら反省会を開いて、俺に対抗してくるだろう…。どう出るかな…。」
「本来だったら同じ魔鉄鋼製の鎧同士ならより神の力を引き出せていた筈。今の鎧は神の力を押さえつける拘束具だったんだから…。その意味合いを変えて作り直せば、そもそもが伊邪那美命の力を使う必要もなくなると思う。
それで行こうよ?まずは、ライトニングクォーツを魔鉄鋼製で再構築!ここからリベンジだね!」

しかし、今まで簡単に無双してたのが始めてここまでのリスクを負ってようやくとは…。
改めて、自分の使ってた力の大きさを知る羽目になった。

この世界で生きる為にも、あいつとあいつのバックにいるやつを早々に引きずり出してボコらないとだな…。
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