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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。

第58話 この世界に生きるもの達

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俺たちは族長の先導の元で遺跡へと歩みを進めていた。

族長の家から集落を奥へ奥へと進み、森を真っ直ぐ抜けてひらけた場所に出ると遺跡と言うよりはまさに神殿といった感じの建物が目の前に現れた。

「こちらがあなた達に遺跡と呼ばれてる場所であり、我らが聖地の神殿です。
古来よりこの地で亡くなった人たちの魂は、この神殿に一度来訪し、神殿内部の中央の吹き抜けの奥、そちらに見える太陽へと通じる扉と言われる天窓から、天上界に至ると言われています。
どうぞこちらへ。」

俺たちは族長に案内され神殿の中へと通される。

「本来、この神殿には歴代の族長以外は皇族の方達や各地の城の城主様とその側近の方しか通してはならない決まりになっています。
なので、本来であれば先代の魔王様がやらかしてるのもあり、現代の魔王様と言えどお通しは出来なかったのですが…。
まぁ、大賢者様の配下なら亡くなった祖父も許すでしょう。」

ずいぶん軽いな!!大丈夫なのかそれ!?

「そう言えば、前の族長はどんな人だったのですか?」

相手も相手なので一応丁寧に問うてみる。

「あまり気にせず、砕けた話し方で構いませんよ大賢者様。
そうですねぇ…。うちの祖父は…。
魔女さん、一応聞きますけど話して大丈夫だと思います?」
「良いと思うよ。あの人の話を聞けば、少しは緊張もほぐれるさ。なんなら今この場に居てもあの人ならおかしくないからね。」

魔女さんはなぜかクククっと笑いを堪えている。
思い出し笑いというやつだろうか?

「そうですか。ではお話ししましょう。
私の祖父はーーそれはもう、超が付くほどのエロジジイと言うやつですね。」
「………。もっとこう…オブラート包まなくてよかったの?」
「いやぁ、もう、本人居ないし良いでしょう!
あんのエロジジイ!人の妻の尻も乳も平気でお触りしやがって!!」

族長さんがなんかこう色々と思い出し始めた様子だ。

「魔女さんなんて、来るたびにあのジジイにダイブされておっぱいをこう、パフパフされてましたよね?」

族長がハイテンションで胸元でぱふぱふをする動作をしている。

「そうだねぇ…。あの人、本当におっぱいとお尻大好きだったからね…。
ここの集落に女尻祭りとか言う悪習作ったのもあの人だし…。
まぁ、あの時だけは他の土地の人たちもこの祭りに参加してお金落としていくから良いのかもだけど…。」
「えぇ…。この集落を少しでも豊かな暮らしに変えるには…って言うので急遽作られた祭りと祖母にも聞いていましたし、祖母もいくら当時は若かったとは言え、前だけ隠して尻丸出しで集落中の女と一緒に踊りを踊ったと聞いた時は色々と血の気が引きましたよ…。
ちなみに、一定年齢を超えると祭りに参加不可能になるので年寄りが尻を振ると言う見るに耐えない珍事には至りませんでしたが…。」
「毎年すごいよね…。あの時期の観光客…。」
「えぇ…。あの祭りの運営を今後私が引き継がないと行けないと思うと色々と思うことがあります…。年齢的に今年は娘に尻を降らせないと行けないかと思うと…。
だがこれも全ては我が集落のため…!くっ…!!」

爺さんの話から尻祭りの話に変わってきてるぞ。
あぁん?ホイホイチャーハン?ゆがみねぇな。
って感じの祭りじゃなくてよかったとは思うけど。

「あのジジィ。挙句最後の死に際のセリフが魔女さんの尻と乳を揉みながら死にたかった…ですからね。案外、あっち行ったら扉の目の前で待機してるかもですよ…?」
「案内人としてはこの上ない人選だけど、触られるのはごめんだね…。無駄に上手いし…。」

上手いって…。爺さんの性欲はとんでもないな…。

「いや、あの、そう言う話以外にまともな話はないの…?」
「そうですねぇ…。祖母は天上界でナンパでひっかけてきて無理やり地上まで連れてきたとか、この集落の住人達もその当時連れてきた人たちの子孫で今この人数になってるとかそういうのは聞いてますが…。
まともな話…。まずいですね…。考えても出てこないです…。このままでは歴史の教科書に載せられませんね…。」
「俺の世界でも、昔の偉い人たちは割とホモが多いって言われてるけど教科書にはそんなこと書いてないから大丈夫大丈夫。この集落を築き上げ守り続けた偉大な天使族とかって書いときゃなんとかなるよ。うん。」

そう言えばついつい忘れてたけど、この世界にはちゃんと学校もあるんだったな。
明らかに学校に行くべき見た目年齢層の子達が、俺のパーティで冒険者やってるから忘れてたけど…。

「まぁ、少し話戻して、天上界に行った時にそう言う味方が一人でもいれば確かにものすごく心強いだろう。
俺たちの中に天上界を知るメンツは誰もいないわけだし…。」
「そもそも、肉体のままあの世界に渡ったやつなどワシの祖父くらいのものだろうしなぁ。
あの人は異界渡のスキルを保有していたからいとも容易く天上界に入り込み、破壊の限りを尽くしたと聞いておる。」
「あぁ、それです。そのせいで私たちの祖父の世代は地上に降りたんですよ。
ちなみに私たちのこの特殊な肉体は、世間ではエルフ族と言われていますね。
この集落を出て他の国へと渡った者もいると聞いています。」

なるほど…マオちゃんの爺さんが暴れた結果、地上に降りた肉体を持った天使族がこの世界のエルフ族なのか…。
俺の世界のエルフ族のイメージと見た目は相違ないけども、出自はこの世界特有って感じだな…。

あれ…、そう言えばエルフ族って…。

「魔女さんのお父様やあなたの国のギルマスのお母様もエルフ族ですね。
ちなみに、私もこう見えて魔女さんとそんなに年齢は変わらないんですよ。」
「てことは400歳前後なんだ?
不思議なもんだなぁ。てか、そんだけ長命だと子ども増えまくりになるような…。」
「そこがむしろ私達の種族の課題でしてね。
同族同士だと子どもが出来にくいんですよ。
だから、多種族と子どもを作ろうと集落を出て行く者も多かったのですが、そうなると次は寿命の違いと言う課題に突き当たります。
そこを解決するために、祖父は私達の種族にパートナーと共に死ぬ為に、パートナーの種族と寿命と成長具合を合わせる魔法を編み出したのです。
魔女さんは魔族とエルフ族のハーフなので寿命はむしろ我々より長いようですね。」
「魔族もエルフ族と同じで長命故に子を作る必要性はほとんど無い。
故にワシらの国の魔族たちも、エルフ族同様に子が出来にくいのだ。
故に本気の子作りとなるとそれはもう大変だと聞く…。ワシは経験ないからわからんがな…。」

昔からこういう異世界系の話とか見ると甚だ疑問だったんだが、染色体数とかどうなってんだろうな。
同じ染色体数じゃないとそもそも子どもは出来ないとか聞いたことあるけど、1個違うだけでも子どもを作れる動物もいる。
例えばトラとライオンの配合種のライガーとか。
ただ、2代目を作れないから子孫の繁栄はできないとか聞くな…。
この世界の地上にいる種族は基本は人と同じってことなのだろうな。
じゃなければ子どもを増やせないだろうし…。
いやでも、多種族交配した後の世代は子を作れるのかな…。
魔女さんの呪いを解呪出来たとしても、元々子どもが作れない身体や種族だったりなんかしたら…。

「なんか難しいことを考えとるようだのう大賢者。
多種族間交配をし続けた種族はこの世界じゃ多々おる。
ワシら魔族なんて、今の世代までに果たしてどれだけの血が混ざっておるかわからぬぞ?
例えばリヴァイアにおいては龍種の血も混ざっておる。
子の出来やすさの違いはあるやもだが、魔女がお前の子を産めない道理はなかろう。
安心せい。」
「君たちが人の心を読めること時々忘れていたよ…。
でも、そう言うもんなんだね。この世界の人の姿をしている種族たちは。」
「魂のみの高位次元存在である天使族と天上界における天使族の反転存在である悪魔族、そしてさらにその上の高位存在である神族…。
こいつらが地上に降りて人と子を成せるようになったのがエルフ族とダークエルフ、そして龍族と言われている。
だが、お前らの土地に出たアーマードドラゴンのように中身の神が抜けて、ただの脱け殻となってる龍族の方が多くてな…。
それが時々北の大地から中央皇国へと移動して暴れたりするのだ…。
神が入ったままの龍族はそもそも、人の姿を取ろうとするからのう。
その理屈だと、神そのものになれるお前も…この世界ならとうに人としての理を外れておる。
ワシらの常識なら龍族だとしても不思議ではないのだ。」

なるほどな…。こうやって聞くと面白いな。この世界の種族は…。
というかやっぱいるんだダークエルフ。

「ちなみにワシのこのお前好みの健康的な日焼け程度の褐色の肌、うなじや臀部、肩などの所々にある強靭な鱗…。この真っ赤に血塗られたような瞳にしなやかで美しい金と銀の髪…。」
「そして平坦な胸。
魔王様はダークエルフに龍族にエルフが主に混ざり合った血族なのですわ。
ちなみに私も父と母はそれぞれ龍族とエルフ族ですのよ♪」
「おいこらぁ!リヴァイア!平坦な胸は余計だぁ!お前、自分が乳デカイからって偉そうに!
魔王ぞ?我、大魔王ぞ??」
「今の我々の立場は、平等ですわよマオちゃん様?私たちは今は共にこの大賢者様に仕える眷属なのですから。」
「ギギギ!くやしいのう!くやしいのう!とか言えば良いのか?こういう時は!」

山脈と小高い丘…。二人を比べるとまぁこういう言い方がしっくりくるな。

「さて…。そんなわけで…肉体を持つあなた方は本来ならば天上界に至れる訳がないのです。
神か天使か悪魔ならまだしも、人の身である貴方達がどのようにして天上界へ?
まさかとは思いますが…異界を渡る術をお持ちなのでしょうか?」
「やっとまともな会話に戻ったわね…。
そこは私が切り開く。次元斬と言う次元の壁を切り開くスキルを使ってね。」
「なるほど…。次元斬…ですか。
しかし、あの高さですよ?天窓まで。
あの天窓から次元を斬るのが最も効率は良いと推察されますが…。」

確かに天窓までは相当な高さがある。
瞬歩だけではあの高さに行くのはとてもじゃないが無理だろう。
俺、妹ちゃん、魔女さんはスキルや魔法を使えばそれぞれ飛べるだろうけど。

「なんじゃ?あそこまで至る足場があれば良いのか?それなら、おいリヴァイア。
お前、ちょっと変身して階段になれ。」
「正直そうなる予感はしてましたわ…。はぁ…。」

そう言ってリヴァイアさんが天窓までの高さに届くほどの大きさの海獣モードに変身する。

「よし、登るぞ。リヴァイア。さっきの礼はたっぷりさせてもらうからのう~?思いっきり踏みつけてやるわ!ほれほれ!」

ゲシゲシッと背中を蹴りながら全速力でてっぺんめがけて駆け上がるマオちゃん。
大人気ないなこの魔王様は…。

「俺らも登るか…。」

一歩ずつリヴァイアさんの背中側の硬い鱗を踏みしめながら恐る恐るてっぺんまで登っていく。

「これ、足滑らせそうだし高さあるし、踏んだところ沈むしですごい歩くの怖いんだけど…。」
「あぁ、そっか。賢者は私たちと違ってそのままだと瞬歩とか使えないもんね。
私たちは足の裏に気を纏わせて実際はその上に立って歩いてるから沈まないし、水の上も歩けるけど…。」

戦士ちゃん…いつのまにそんな技を身につけていたんだい…?
そうなのです。おじさんは所詮運動音痴のおじさんなのでそのような技能はないのです…。

「ならば、ここは私にお任せだ大賢者!お姫様抱っこで一気に駆け抜けてやろう!」
「いや、その必要はねぇよ勇者。オレが運ぶ。」

盗賊ちゃんがマフラーを変化させ俺をくるんで持ち上げると、そのままその身体を影のように変化させ一気に駆け上がっていってくれた。

「あはは。完全に置いてかれたねぇ。私たちも早く登ろうか。重力魔法で。」

そう言うと魔女さんと妹ちゃんは重力魔法で空中浮遊し一気に天辺まで登ってきた。
ちなみにケロちゃんはいつのまにか子狐モードで妹ちゃんに抱えられていた。

「ちょ!?みんな待ちなさいよ!そもそも私がいないと次元の壁は開けないんだから!!」

戦士ちゃんは瞬歩で一気にリヴァイアさんの背中を駆け上がってきた。

「では、皆さん。健闘を祈っております。どうかお気をつけて…。
祖父と祖母がそちらにおりましたら、よろしくお伝え願います。」

そして俺たちは族長へと別れを告げた。

「よし…。みんな、覚悟はいい?扉を開くわよ!
次元斬!!」

戦士ちゃんのスキルにより、天窓から先に空の上の大地のような場所が見えた。

「成功のようだな…。よし…。行こうみんな。」

俺はブレスウォッチを発動させ、セーブポイントを作成した。

そして、いよいよ天上界への扉を開くのだった。
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