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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第48話 繋がり合う思い
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随分と古い記憶を思い出した。
とは言っても、勇者ちゃんがあの人という確信まであるわけでもないけど…。
雰囲気とかその他含め完全にあの人なんだよなぁ…。
「ご主人様…?気分悪いならもう少し寝ておくか?」
「いや、食事を摂らない方がむしろ身体に悪そうだ…。
そう言えば、他のみんなは?」
「あぁ、みんな城に設置してある転移門通して戻ってきてるよ。勇者までな…。」
「あの子、中央皇国ギルド所属のS級じゃなかったかな…。そもそもここは俺の城であってギルドでもないのだが…。」
とりあえず俺たちは食堂へ向かった。
「マスター!お目覚めになられましたのね!
どうぞこちらへ!食事をご用意しておりますわ♪
私たち、あなた様のメイドとして仕える為に腕を振るいましたのよ♪
さぁさぁ、どうぞこちらへ…。」
「マスターってのは俺の呼び方…かな?」
「あぁ。みんなと話し合ってな。ご主人様って呼び方は盗賊の奥様のマスターに対する大切な呼び方だからな。
だから俺様たちは大賢者様をマスターと呼ぶことにしたんだ。」
盗賊ちゃんは奥様と呼ばれてまんざらでもなさそうだ。
「ひとまず、腕をふるってくれたのは嬉しいけど、とんでもないゲテモノ料理が並んでるってオチは嫌だぞ俺…。」
「おくさま…オレが…おくさま…♪」
「ところで、他のみんなは?」
「あちらにいらっしゃいますわよ♪」
視線の先には魔女さんにギルマスちゃん、戦士ちゃんに妹ちゃんに勇者ちゃんまで居た。
「お!大賢者!目が覚めたんだな!体の調子はどうだ!」
「一眠りしたら割と楽になったよ。勇者ちゃんこそその幼い身体になってから変なところはない?」
「うむ!問題ないぞ!ただ、この幼い身体になったことで筋肉量も減ってるだろうからなぁ…。
以前ほど剣を振るえるかもわからないからなぁ。
誰か後で私と一戦やらないか!?」
「そんだけ元気あるなら大丈夫そうだな…。
俺は伊邪那美命モード発動により全身が筋肉痛だぞ…。そもそも、俺は見ての通り運動なんか出来ないというかしたことも無いような男だ。
見ろ、この腹を…。とてもじゃないが女の子に好かれる腹ではない。」
俺は服をめくり駄肉たっぷりのぽってりお腹を見せる。
「オォ!!これは素晴らしいな!鍛え甲斐のありそうな駄肉だ!」
「そうそこなんだけどさ、みんな服の上からでもわかるくらいこうすごい引き締まってるけどどんなトレーニングしてるのかなって。」
「そうねぇ…。私は主にプランクとスクワットかしら。そういえばこの城、筋トレ施設とかないのかしら?あれだけマッチョの団体がいるのに…。」
マッチョの団体…。要するに元盗賊団ドラゴスケイルのメンツだな…。
確かにあの人らこそどうやって体を鍛えてるんだろう?
「なるほど…。筋トレ施設か…。そう言えばそう言ったものはあまり考えてなかったねぇ。
確かにこの城で働いてるドラゴスケイルの元面々の為にも用意しても良いかもだね。
賢者くんは…確かに少し絞った方が良いかもだね…。
無論、私たちは皆君のことを顔で選んだわけじゃないけどね。
君のその優しさとか人柄とかそういう所に惚れ込んでいる。まぁ魔族の皆様としては君の尋常ならざる力に惚れ込んだようだけど…。」
「あぁ!大賢者の強さは我々魔族なら誰もが惚れ込むレベルの強さだからな!
と言うか、ワシもこんなに強い奴が現れるとは夢にも思わなかったぞ!」
「じゃ、マオちゃんは、俺がこうやって人のままだと指一本で殺せるレベルの弱さな以上はあまり好きじゃない?」
マオちゃんは、んーっと思案しだす。
「私たちも魔族である前に女ですから。
貴方が本当に何の魅力もない男性でしたら、たとえ強くともこんな簡単に惚れ込んだりはしないと思うのですよ。
なんというか、貴方の側にいると落ちきますのよね~。不思議な魅力に溢れているというか…。」
「なでなでされると俺様もすごく心地良いんだよなぁ…。なでなで~なでなでして~。」
ケロちゃんが俺の膝の上に頭を乗せてくる。
「はいはい…。せめて食事を終わらせてからな。
いただきます。」
俺はリヴァイアさんとケロちゃんたちが用意してくれた食事を口に運ぶ。
というかこれは唐揚げかな?
「やばいなこれ。めちゃくちゃ上手いな…。
ん…?唐揚げ……?
これ…大鳥の肉だったりしないよね…?」
\アイヨー/
「違いますよマスター。これは、食肉用にもともと用意されていた食材ですわよ。
いくら魔族とは言え、あんな可愛らしくもっふりでっぷりした子達を調理しようなんて思いませんわよ…。」
「そうであってよかったよ…。
でも美味しいなぁこれ。ネギポン酢みたいな感じのタレも凄く効いてるし、おっ、こっちは醤油でこっちは塩こうじみたいな感じかな。」
「お口にあったようで私も嬉しいですわ♪
これからも貴方のお口に、私のものをたくさん食べさせてあげますからね?」
「マスター!これも食べてくれ!
この米を握ったものは俺様とイフリートで作ったんだぞ!」
この世界に米があってよかったと思う。
異世界人は米を好んで食べると言うのを彼女たちは知っていたからこそ、こうやって腕をふるってくれたようだ。
少し崩れやすかったりしてて握り方も甘いし、三角じゃなくて俵形ではあるが、またそれも可愛らしく微笑ましい。
「ふふっ…なんというか、こうやって見てると…。」
「まるで、娘がたくさんいるお父さんみたいだにゃ…。」
「やめて…。盗賊ちゃんのお母さんが俺と同い年という事実だけでも色々と震えてるんだから…。
でもそうか…娘…か…。」
自分に子どもとか考えたこともなかったな。
この世界では俺くらいの年齢なら普通に子どもがいてもおかしくはないんだろう。
と言うか察するに、この世界の純粋な人間はきっと短命なんだろうな…。
でなければ成人年齢がこんなに低いわけはないだろう。
昔の日本でもそんなもんだったしな…。
そう考えると…、今こうやって過ごしてる日常もあと30年もしたら…。
いや、悲観的な事は考えないでおこう。
「君の世界だと平均的には20代半ばくらいから子を作る世代が多くなり始めて、30代くらいが最も多いんだったかな?
そう考えると、君にとってはむしろ妹くらいにしか見えてないのか…。」
「まぁそう言う事だね…。
だからこそ、恋愛対象として見れるギリギリライン…なんて事はないんだよ本当ならば…。
俺の世界なら犯罪レベルだ…。
18歳超えてて漸くだな…。」
「ははは、そのくらいにして起きたまえ。
君の可愛いフィアンセがまた泣きそうな顔して肩を震わせてるよ?」
でも、そうなんだよな…。この世界の常識と俺の世界のこの常識の違いはまだまだ慣れない…。
でもこの子達からしたら18歳まで未婚なんて俺の世界で言う30代まで未婚なのと変わらないのか…。多分…。
「結婚…か。今まで考えた事なかったな…。」
「本当にそうなのか大賢者!?君だって流石に30歳まで童貞&彼女なしの独り身は嫌だったろう?」
「そりゃ、ね。いやまぁ、童貞はなんとか脱したけど…。
勇者ちゃんこそどうなんだよ。記憶を思い出した今は…。」
と言うといつものハイテンションとは打って変わって珍しく切ない顔をする。
「大賢者。私は生前の記憶を全て思い出した。
その上で問う。君は…その…、おもちゃ屋に幼い頃から通ってくれていた少年…。いや、私が最後に会った時は立派な大人だったが…その人で間違いないか?
あの頃と服装はだいぶ変わってオシャレになったし、体系もその…少しふっくらしたが、雰囲気は優しさはそのままだから…。」
俺はスマホに保存してあった、おもちゃ屋のお姉さんの顔写真付きのアドレス帳の画面を見せる。
「貴女がこの人で間違いなら…。」
「そうか…。やっぱりそうだったんだな…!
こんな偶然が世の中にはあるなんてな…。
どう言えば良いのかな…こう言う時は…、久しぶり…?で良いのかな…?」
やっぱり、そうなんだな。
あの時亡くなったおもちゃ屋のお姉さんで俺の初恋の人…。
「この世界と俺たちの世界は流れてる時間も違うんだろうな…。
俺の世界じゃ約9年の月日が流れてるけど、こっちでは17年くらいは経ってるのか…。」
「そう言うことになるね…。
ただ、私は君が蘇生してくれるまでまるで思い出して居なかったんだけどな。」
魔女さんがキョトンとした顔でこっちの会話を聞いている。
「おい…2人とも。もしかしなくても2人は君たちの世界の知り合い…なのかい?」
「あぁ、勇者ちゃんは俺が幼い頃から通っていたおもちゃ屋のお姉さんだったみたいなんだよ…。
俺の世界で不幸な事故で亡くなった後にこの世界に転生して17年、その記憶はなくしてたみたいだけど。」
「なるほど。そして君の初恋の人と。」
その言葉を聞いて周りが騒然とする。
「ちょ!魔女さん!人の心の声を聞いたまま発言するのはやめてください!」
盗賊ちゃんの方を見ると案の定涙目で頬を膨らませてる。
「おい、ご主人様。今の魔女さんが言った事は真実か?」
「あはははは!そう言えば、確かに君が子どもの頃は私が行き遅れた時はお嫁さんにしてくれると言ってくれていたな!割とあれ本気にしてずっと待っていたのだぞ?」
「………。はぁ…。まぁ、子どもの頃の話ですから…。」
「何!?私のことは本気じゃなかったのか!?」
「頼むからこれ以上話をこじれさせないでくれ…。まぁひとまず、初恋の話自体は本当だよ。
子どもの頃の話だけどな…。
大人になってからは、その…色々とあって、むしろ女性は苦手だったんだけど…。」
昔の事はあまり思い出したくはないんだよな…。
忘れておきたいことが多すぎる…。
そんな時でも良く慰めてもらったりもしたんだよなぁ…。
その時に好きの感情があったかはもう思い出せないけど…。
「今は…どうなんだよ…。初恋だったんだろ?
死んだ初恋の人と形はどうあれ再会できたんだ。
普通なら…色々と昔を思い出したりして甘えたりもしたくなるんじゃないのか?」
「まぁ、その…。今はどう考えて良いかわからないのが本音だよ…。無意識で敬語でたりしちゃうくらいに。
お姉さんが亡くなった後、仕事は手につかなくなるし、あの店の前を通ると色々と思い出すから自然と避けるようになっていったし…。
そんな相手が突然こんな形で現れたら、どうすれば良いかわからなくなるのが普通だ。
盗賊ちゃんもそうだろう?3年も離れてた母親が急に現れた時、どう思った?」
「ぐぅ…。卑怯だぞ…母さんの話を出すのは…。
まぁ…たしかにどう接すれば良いかわからなくなったな…。
でも、それに関してはご主人様のおかげで不思議ともう昔のことなんてどうでも良くなったよ。
ありがとな。」
勇者ちゃんも色々と考え込んでいる。
俺でこれだけなんとも言えない状態なら彼女はもっとだろう…。
しかもお姉さんから俺より年下の女の子に変わってるんだから…。
「まぁ、なんだ。少なくとも、私は今の2人の仲に割り込む勇気はないな!勇者ではあるが、流石の私でもそう言う勇気はない!」
「逆におっぱい揉ませる勇気を常に持ってたほうが異常だよ…。
あれも昔からだよな…。俺が落ち込んでると口癖のように言ってきては俺が顔真っ赤にするの楽しんでたよな…。この悪女め…。」
「あははは!君は初々しくてからかい甲斐があったからなぁ~!それに、あれだ。
だんだん大きくなっていく自分の胸が面白くてな。ついつい君を使ってからかいたくなっていたのだ!いやぁ、それにしても懐かしいね!」
本当にな…。いやまぁ本当俺も異世界に来て同郷の、しかも一度亡くなった人に会えるなんて思いもしなかったよ…。
「盗賊ちゃん、盗賊ちゃんはこんな君からしたらお父さんみたいな年齢の男のどこに惚れたのさ?」
「んー?それを今更また聞くのか?当然全部だぞ?当たり前だろ?」
「そか。本当君は可愛いな。抱きしめさせろ。」
「やぁぁんっ♪みんなが見てるぞっ♪」
これだけ惚れられると本当に嬉しいし、物凄く癒される…。
「まったく、見せつけてくれるにゃ…。
少しジェラシーにゃけど…、これだけベタ惚れしてるの見せられるとむしろ応援したくなる気持ちのが勝ってくるにゃね。
でも魔女はいいのかにゃ?魔女はずっと夢だったにゃろう?それに…。」
「良いんだよ。自分の幸せより他人の幸せ…。
そう言うものを私は今、たくさん教えてもらっているからね。」
「後悔しないのかにゃ…?」
「猫。それ以上は言わない約束だよ。
幸せそうな彼に余計な気負いはさせたくないんだ。それにあれは、私が犯した唯一の過ちだからね。とは言え、そろそろケリをつけるべきなのかもだが…。」
魔女さん、そう言えば昔男絡みで色々とあったみたいな話をしてた気が…。
あまり触れない方が良いんだろうけど…なんというか、違和感というか落ち着かないと言うか…。
「君は優しい子だからね…。ついつい気にしちゃうんだろうけど、あまり深く気にしないでくれ。そう言う優しいところは本当に大好きだけども…。時にその優しさが痛い時もあるんだよ。」
魔女さんが見せるその切ない表情の理由。
とても気になるけど、今はそっと胸の奥にしまい込むことにした。
とは言っても、勇者ちゃんがあの人という確信まであるわけでもないけど…。
雰囲気とかその他含め完全にあの人なんだよなぁ…。
「ご主人様…?気分悪いならもう少し寝ておくか?」
「いや、食事を摂らない方がむしろ身体に悪そうだ…。
そう言えば、他のみんなは?」
「あぁ、みんな城に設置してある転移門通して戻ってきてるよ。勇者までな…。」
「あの子、中央皇国ギルド所属のS級じゃなかったかな…。そもそもここは俺の城であってギルドでもないのだが…。」
とりあえず俺たちは食堂へ向かった。
「マスター!お目覚めになられましたのね!
どうぞこちらへ!食事をご用意しておりますわ♪
私たち、あなた様のメイドとして仕える為に腕を振るいましたのよ♪
さぁさぁ、どうぞこちらへ…。」
「マスターってのは俺の呼び方…かな?」
「あぁ。みんなと話し合ってな。ご主人様って呼び方は盗賊の奥様のマスターに対する大切な呼び方だからな。
だから俺様たちは大賢者様をマスターと呼ぶことにしたんだ。」
盗賊ちゃんは奥様と呼ばれてまんざらでもなさそうだ。
「ひとまず、腕をふるってくれたのは嬉しいけど、とんでもないゲテモノ料理が並んでるってオチは嫌だぞ俺…。」
「おくさま…オレが…おくさま…♪」
「ところで、他のみんなは?」
「あちらにいらっしゃいますわよ♪」
視線の先には魔女さんにギルマスちゃん、戦士ちゃんに妹ちゃんに勇者ちゃんまで居た。
「お!大賢者!目が覚めたんだな!体の調子はどうだ!」
「一眠りしたら割と楽になったよ。勇者ちゃんこそその幼い身体になってから変なところはない?」
「うむ!問題ないぞ!ただ、この幼い身体になったことで筋肉量も減ってるだろうからなぁ…。
以前ほど剣を振るえるかもわからないからなぁ。
誰か後で私と一戦やらないか!?」
「そんだけ元気あるなら大丈夫そうだな…。
俺は伊邪那美命モード発動により全身が筋肉痛だぞ…。そもそも、俺は見ての通り運動なんか出来ないというかしたことも無いような男だ。
見ろ、この腹を…。とてもじゃないが女の子に好かれる腹ではない。」
俺は服をめくり駄肉たっぷりのぽってりお腹を見せる。
「オォ!!これは素晴らしいな!鍛え甲斐のありそうな駄肉だ!」
「そうそこなんだけどさ、みんな服の上からでもわかるくらいこうすごい引き締まってるけどどんなトレーニングしてるのかなって。」
「そうねぇ…。私は主にプランクとスクワットかしら。そういえばこの城、筋トレ施設とかないのかしら?あれだけマッチョの団体がいるのに…。」
マッチョの団体…。要するに元盗賊団ドラゴスケイルのメンツだな…。
確かにあの人らこそどうやって体を鍛えてるんだろう?
「なるほど…。筋トレ施設か…。そう言えばそう言ったものはあまり考えてなかったねぇ。
確かにこの城で働いてるドラゴスケイルの元面々の為にも用意しても良いかもだね。
賢者くんは…確かに少し絞った方が良いかもだね…。
無論、私たちは皆君のことを顔で選んだわけじゃないけどね。
君のその優しさとか人柄とかそういう所に惚れ込んでいる。まぁ魔族の皆様としては君の尋常ならざる力に惚れ込んだようだけど…。」
「あぁ!大賢者の強さは我々魔族なら誰もが惚れ込むレベルの強さだからな!
と言うか、ワシもこんなに強い奴が現れるとは夢にも思わなかったぞ!」
「じゃ、マオちゃんは、俺がこうやって人のままだと指一本で殺せるレベルの弱さな以上はあまり好きじゃない?」
マオちゃんは、んーっと思案しだす。
「私たちも魔族である前に女ですから。
貴方が本当に何の魅力もない男性でしたら、たとえ強くともこんな簡単に惚れ込んだりはしないと思うのですよ。
なんというか、貴方の側にいると落ちきますのよね~。不思議な魅力に溢れているというか…。」
「なでなでされると俺様もすごく心地良いんだよなぁ…。なでなで~なでなでして~。」
ケロちゃんが俺の膝の上に頭を乗せてくる。
「はいはい…。せめて食事を終わらせてからな。
いただきます。」
俺はリヴァイアさんとケロちゃんたちが用意してくれた食事を口に運ぶ。
というかこれは唐揚げかな?
「やばいなこれ。めちゃくちゃ上手いな…。
ん…?唐揚げ……?
これ…大鳥の肉だったりしないよね…?」
\アイヨー/
「違いますよマスター。これは、食肉用にもともと用意されていた食材ですわよ。
いくら魔族とは言え、あんな可愛らしくもっふりでっぷりした子達を調理しようなんて思いませんわよ…。」
「そうであってよかったよ…。
でも美味しいなぁこれ。ネギポン酢みたいな感じのタレも凄く効いてるし、おっ、こっちは醤油でこっちは塩こうじみたいな感じかな。」
「お口にあったようで私も嬉しいですわ♪
これからも貴方のお口に、私のものをたくさん食べさせてあげますからね?」
「マスター!これも食べてくれ!
この米を握ったものは俺様とイフリートで作ったんだぞ!」
この世界に米があってよかったと思う。
異世界人は米を好んで食べると言うのを彼女たちは知っていたからこそ、こうやって腕をふるってくれたようだ。
少し崩れやすかったりしてて握り方も甘いし、三角じゃなくて俵形ではあるが、またそれも可愛らしく微笑ましい。
「ふふっ…なんというか、こうやって見てると…。」
「まるで、娘がたくさんいるお父さんみたいだにゃ…。」
「やめて…。盗賊ちゃんのお母さんが俺と同い年という事実だけでも色々と震えてるんだから…。
でもそうか…娘…か…。」
自分に子どもとか考えたこともなかったな。
この世界では俺くらいの年齢なら普通に子どもがいてもおかしくはないんだろう。
と言うか察するに、この世界の純粋な人間はきっと短命なんだろうな…。
でなければ成人年齢がこんなに低いわけはないだろう。
昔の日本でもそんなもんだったしな…。
そう考えると…、今こうやって過ごしてる日常もあと30年もしたら…。
いや、悲観的な事は考えないでおこう。
「君の世界だと平均的には20代半ばくらいから子を作る世代が多くなり始めて、30代くらいが最も多いんだったかな?
そう考えると、君にとってはむしろ妹くらいにしか見えてないのか…。」
「まぁそう言う事だね…。
だからこそ、恋愛対象として見れるギリギリライン…なんて事はないんだよ本当ならば…。
俺の世界なら犯罪レベルだ…。
18歳超えてて漸くだな…。」
「ははは、そのくらいにして起きたまえ。
君の可愛いフィアンセがまた泣きそうな顔して肩を震わせてるよ?」
でも、そうなんだよな…。この世界の常識と俺の世界のこの常識の違いはまだまだ慣れない…。
でもこの子達からしたら18歳まで未婚なんて俺の世界で言う30代まで未婚なのと変わらないのか…。多分…。
「結婚…か。今まで考えた事なかったな…。」
「本当にそうなのか大賢者!?君だって流石に30歳まで童貞&彼女なしの独り身は嫌だったろう?」
「そりゃ、ね。いやまぁ、童貞はなんとか脱したけど…。
勇者ちゃんこそどうなんだよ。記憶を思い出した今は…。」
と言うといつものハイテンションとは打って変わって珍しく切ない顔をする。
「大賢者。私は生前の記憶を全て思い出した。
その上で問う。君は…その…、おもちゃ屋に幼い頃から通ってくれていた少年…。いや、私が最後に会った時は立派な大人だったが…その人で間違いないか?
あの頃と服装はだいぶ変わってオシャレになったし、体系もその…少しふっくらしたが、雰囲気は優しさはそのままだから…。」
俺はスマホに保存してあった、おもちゃ屋のお姉さんの顔写真付きのアドレス帳の画面を見せる。
「貴女がこの人で間違いなら…。」
「そうか…。やっぱりそうだったんだな…!
こんな偶然が世の中にはあるなんてな…。
どう言えば良いのかな…こう言う時は…、久しぶり…?で良いのかな…?」
やっぱり、そうなんだな。
あの時亡くなったおもちゃ屋のお姉さんで俺の初恋の人…。
「この世界と俺たちの世界は流れてる時間も違うんだろうな…。
俺の世界じゃ約9年の月日が流れてるけど、こっちでは17年くらいは経ってるのか…。」
「そう言うことになるね…。
ただ、私は君が蘇生してくれるまでまるで思い出して居なかったんだけどな。」
魔女さんがキョトンとした顔でこっちの会話を聞いている。
「おい…2人とも。もしかしなくても2人は君たちの世界の知り合い…なのかい?」
「あぁ、勇者ちゃんは俺が幼い頃から通っていたおもちゃ屋のお姉さんだったみたいなんだよ…。
俺の世界で不幸な事故で亡くなった後にこの世界に転生して17年、その記憶はなくしてたみたいだけど。」
「なるほど。そして君の初恋の人と。」
その言葉を聞いて周りが騒然とする。
「ちょ!魔女さん!人の心の声を聞いたまま発言するのはやめてください!」
盗賊ちゃんの方を見ると案の定涙目で頬を膨らませてる。
「おい、ご主人様。今の魔女さんが言った事は真実か?」
「あはははは!そう言えば、確かに君が子どもの頃は私が行き遅れた時はお嫁さんにしてくれると言ってくれていたな!割とあれ本気にしてずっと待っていたのだぞ?」
「………。はぁ…。まぁ、子どもの頃の話ですから…。」
「何!?私のことは本気じゃなかったのか!?」
「頼むからこれ以上話をこじれさせないでくれ…。まぁひとまず、初恋の話自体は本当だよ。
子どもの頃の話だけどな…。
大人になってからは、その…色々とあって、むしろ女性は苦手だったんだけど…。」
昔の事はあまり思い出したくはないんだよな…。
忘れておきたいことが多すぎる…。
そんな時でも良く慰めてもらったりもしたんだよなぁ…。
その時に好きの感情があったかはもう思い出せないけど…。
「今は…どうなんだよ…。初恋だったんだろ?
死んだ初恋の人と形はどうあれ再会できたんだ。
普通なら…色々と昔を思い出したりして甘えたりもしたくなるんじゃないのか?」
「まぁ、その…。今はどう考えて良いかわからないのが本音だよ…。無意識で敬語でたりしちゃうくらいに。
お姉さんが亡くなった後、仕事は手につかなくなるし、あの店の前を通ると色々と思い出すから自然と避けるようになっていったし…。
そんな相手が突然こんな形で現れたら、どうすれば良いかわからなくなるのが普通だ。
盗賊ちゃんもそうだろう?3年も離れてた母親が急に現れた時、どう思った?」
「ぐぅ…。卑怯だぞ…母さんの話を出すのは…。
まぁ…たしかにどう接すれば良いかわからなくなったな…。
でも、それに関してはご主人様のおかげで不思議ともう昔のことなんてどうでも良くなったよ。
ありがとな。」
勇者ちゃんも色々と考え込んでいる。
俺でこれだけなんとも言えない状態なら彼女はもっとだろう…。
しかもお姉さんから俺より年下の女の子に変わってるんだから…。
「まぁ、なんだ。少なくとも、私は今の2人の仲に割り込む勇気はないな!勇者ではあるが、流石の私でもそう言う勇気はない!」
「逆におっぱい揉ませる勇気を常に持ってたほうが異常だよ…。
あれも昔からだよな…。俺が落ち込んでると口癖のように言ってきては俺が顔真っ赤にするの楽しんでたよな…。この悪女め…。」
「あははは!君は初々しくてからかい甲斐があったからなぁ~!それに、あれだ。
だんだん大きくなっていく自分の胸が面白くてな。ついつい君を使ってからかいたくなっていたのだ!いやぁ、それにしても懐かしいね!」
本当にな…。いやまぁ本当俺も異世界に来て同郷の、しかも一度亡くなった人に会えるなんて思いもしなかったよ…。
「盗賊ちゃん、盗賊ちゃんはこんな君からしたらお父さんみたいな年齢の男のどこに惚れたのさ?」
「んー?それを今更また聞くのか?当然全部だぞ?当たり前だろ?」
「そか。本当君は可愛いな。抱きしめさせろ。」
「やぁぁんっ♪みんなが見てるぞっ♪」
これだけ惚れられると本当に嬉しいし、物凄く癒される…。
「まったく、見せつけてくれるにゃ…。
少しジェラシーにゃけど…、これだけベタ惚れしてるの見せられるとむしろ応援したくなる気持ちのが勝ってくるにゃね。
でも魔女はいいのかにゃ?魔女はずっと夢だったにゃろう?それに…。」
「良いんだよ。自分の幸せより他人の幸せ…。
そう言うものを私は今、たくさん教えてもらっているからね。」
「後悔しないのかにゃ…?」
「猫。それ以上は言わない約束だよ。
幸せそうな彼に余計な気負いはさせたくないんだ。それにあれは、私が犯した唯一の過ちだからね。とは言え、そろそろケリをつけるべきなのかもだが…。」
魔女さん、そう言えば昔男絡みで色々とあったみたいな話をしてた気が…。
あまり触れない方が良いんだろうけど…なんというか、違和感というか落ち着かないと言うか…。
「君は優しい子だからね…。ついつい気にしちゃうんだろうけど、あまり深く気にしないでくれ。そう言う優しいところは本当に大好きだけども…。時にその優しさが痛い時もあるんだよ。」
魔女さんが見せるその切ない表情の理由。
とても気になるけど、今はそっと胸の奥にしまい込むことにした。
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