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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。

第42話 国境線を超えていけ

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中央皇国までは転移門を使い城まで一気に移動。
そこから先はバイクで皇国と北の大地とを隔てる山に向かった。

尚、バイクに関しては俺の雷帝モードのように力を込めれば変形できる事が判明したので、荷台付きの三輪トライクに変形させた。
流石に空飛ぶ乗り物には変形できなかったのでこれが最善と考えたからだ。

三輪なら安定してでこぼこ道も走りやすくなるし、横幅もとらないからダンジョンの中も走り抜けやすいだろうしな。

尚、道が狭い場合及び邪魔な壁は魔法使いちゃんが魔法でぶち抜くことにした。

「よーし…。ダンジョンとかクソ喰らえだ。
一気に北の大地まで風穴あけて走り抜けるぞ!」

ダンジョンの分かれ道に至るまでは真っ直ぐだったが途中から大きく蛇行してる感じがあったので、その時点で俺はライトニングクォーツによる雷帝モードに、魔法使いちゃんはオブシディアンメイル(そう名付けた)をまとって二人でド派手な熱線魔法を撃ちこみダンジョンから北の大地まで一気に広々としたトンネルを開通させた。

バイクどころか大鳥の荷車でも通れるようなトンネルだ。

尚、このトンネルは後に【大賢者のトンネル】と呼ばれる観光スポットになったと言うのはまた数年後のお話。

「おいおい。魔力の無駄遣いじゃ無いのかコレ…。
流石にイフリートもびっくりだろ…。
どこにダンジョンの壁ぶち抜いて強引にダンジョン攻略する奴がいるんだよ…。
国境のダンジョンのモンスターとか自我ないはずなのに恐れおののいて道譲りつつドン引きしてんじゃん…。」
「ハハハハ!楽で良いじゃ無いか!
と言うか急がないと皇女殿下の首が落とされるんだぞ?どんな強引な手を使っても一気に駆け抜けてやる!!ここのダンジョンはベヒーさんの管轄だしベヒーさんに後のことは任せた!俺は知らん!!」

ちなみにこの国境ダンジョンの難易度はAランクである。
が、流石に自我がない魔物でもわかる。
こんな無茶苦茶な奴に立ち向かったら俺たちが死ぬ!!と。

尚、このダンジョンにいた魔物たちはこのトンネル開通事件後に大移動したのも言うまでもない。

ベヒーさんのいる修練山のてっぺんのダンジョン内へと…。

「大賢者さん…。なかなかにとんでもないことやらかしてくれましたね…。
まぁ、暗黙の了解となっていた国境に、大きな風穴を開けるなんて今まで誰も考えなかったでしょうがね。さて…これからが楽しみです。」

ベヒーさんはクスリと笑い、これから起こるであろう様々な事にわくわくしていた。

「異世界人、本当に面白い。
なかなかに良い刺激をもらいました。
貴方のとんでもなさはかの晴明さん以上ですね。
さぁ、イフリーちゃん。貴方はどんな相手を敵に回してしまったかを考えねばならないでしょう。
しかし…、イフリーちゃんいつのまに私からの通信をブロックしていたのでしょう…。
凹みますね…。あんなに可愛がってあげていたのに…。しゅん…。」

魔族の幹部間には互いに伝達手段が用意されている。
なので当然ながら、本来は最高幹部であるベヒーモスは他の幹部へと連絡を取れるし、連絡が大量に来る立場なのだが…イフリートには通信をブロックされていたのであった。

「仕方ありません。
リヴァイアさんにはせめて連絡を取っておきますか…。この勢いなら数十分でリヴァイアさんの元に到着するでしょうし。
えーっと、リヴァイアさんの通信回線のコードはと…。」

水晶から待機音のようなものが流れて数秒後

「はーい、こちらリヴァイアサンです。
あら、ベヒーモス様。そちらから連絡とは珍しいですね?」
「もっしー?リヴァちゃん?あ、私私。ベヒーちゃん。おげんこ~?」

ブヅッ! ツー ツー。

今度はベヒーモスの水晶に着信音が流れる。

「はい。ベヒーモスです。」
「す、すみません…。いま貴方の通信回線から頭のおかしい人みたいな声が…。」
「あ、それ私です。少しおちゃらけてみたのですが…。」
「貴方の冗談は時々反応に困ります…。
して、要件は?もしや今地平線の彼方から見えた光に関するものですか?」

リヴァイアサンは、湖の中からも見えたその光を不思議に思い湖面に顔を出していた。

「えぇ。その通りです。
そちらに異世界人の大賢者様が向かわれました。
貴方のことをサラッと話してあります。
まぁ、お近くに来られたら是非ともお力を貸してあげてください。
その湖の外周を回ってイフリートの元に向かうのはなかなかに大変ですからね。」
「ぶふぉっwwwマジでござるかww異世界人キタコレwwマジテンアゲなんですけどww」
「貴女も大概ですよ…。」

魔族。異世界人の文化を調べてるうちに色々とおかしくなってる種族。

もうお気付きであろう!

そう!魔族の一部は、日本でいうならば…ヲタクなのだ!!

「と言うかベヒーモス様。イフリートは特に前々から行動に不審な点が目立つ子でしたが、何故放置されていたのです?
貴方ならそれこそグーパンで諫めることもできたでしょう?
それに今回の件の解決に出向く事も…。」
「それは勿論、大賢者さんに解決してもらう事に意味があるからですよ。
お膳立ては十分にしました。
あとは彼が魔王様にどう気に入られるかです。」
「なるほど…そう言うあれですか…。
して、私は彼が現れたらどうすれば良いのです?」
「せっかくですので、一戦交えてみては?
貴方が気に入ればそのままその湖の端まで彼らを渡してあげてください。
あとはそのままイフリートのところへ向かうでしょう。」

リヴァイアサンがにぃぃいっと微笑む。

「おっふwwそれはつまり、戦いと称して大賢者様にネトネトと絡みついたりかぶりついたりしても良いと言う事でござるか?wwんふっww拙者、興奮がおさまりませぬぞwww」
「あー…まー…。程々にしてくださいね?
あの人、力を行使してないときは限りなく人間ですし。ただ、力を発現させた場合は貴方には相性が悪いでしょうね。
あとは彼の従者たちもなかなかの実力者に育ちあがっていますので。」
「なるほど…。して、その従者たちの特徴は?」
「ロリっ子2人に私の好みの外の適乳が1人。」
「貴方のその言い方も大概ですわよベヒーモス様…。
つまり、男1人に女3人のパーティですか…。
どんだけハーレム街道まっしぐら何ですかこの人…。」


はっくしゅんっ!!

「ヤッベ…寒くなってきたな…。風邪ひいたかな…。」
「あー、でもイフリートのいる場所は暑そうだし大丈夫じゃ無いか?」
「気温差が酷すぎで体壊しそうね…。」
「コートは万能なのです。寒ければ着る。
暑ければ脱ぐ!これだけで体温調整が簡単です。
ぬくぬくっ。」

4人でそんな談笑をしながら地平の彼方の湖に向けて引き続き走る俺たち。
途中、魔族の集落と言うか街的な場所もあったりしたが今回はスルーだ。
そのまま突っ切り湖へとぐんぐんトライクを走らせて行く。

景色を楽しんだり街を散策したりメシを食う余裕なんかない。
人の命がかかってるんだ。

まぁ多分、まともにダンジョンに挑戦しながら進んでたり道中のでっかいモンスター相手にしてたらそりゃ死ぬんだろうが…。
俺はそんな奴らもスルーしつつ、どうしても邪魔なやつらは3人に任せながら進む事にした。

が、その途中で首が三つあるでっかい犬…いや、狐?に出くわした。

「こ、これはまさか…ケルベロスか…!
すっげぇえっ!かっこいい!そしてデケェ!強そう!」

俺はケルベロスが好きなのだ。
狐も大好きだ。
その二つが悪魔合体した魔物となればもう大興奮である。

「そ、そうか?そんなに俺様カッコいいか?て、照れるぞ人間…。あれ?人間だよな?
お前、魔王の一柱たる俺様をみても怖くないのか?」
「喋ったああああああ!!ってあれ?声のトーンの感じ…女の子なの?」
「うむ!俺様は女だ!と言うかだな、我々魔族は何故か女が多い。
お前、なんか面白そうな奴だな!
せっかくだ!ちょっと話そうじゃないか!」

めちゃくちゃ急いでんだけどなぁ…。
とりあえず一度バイクをしまい込む。
あっちもでっかい首3つの狐から可愛らしい狐耳と狐尻尾付きのゴスロリの女の子に変身した。
残り2つの首はネックレスについてることからどうやらダミー的なものなのかもしれない。

「しかし、お前がなぜ俺様の2つ名を知ってるかは知らないが改めて言おう。俺様はケルベロスだ!」
「あぁ、俺の世界のゲームにそう言う名前の魔物が出てくるんだよ。
えーっと、俺は人間たちの間では大賢者って呼ばれてる。よろしくねケルベロスさん。」
「な、なに!?お前が大賢者なのか!
ベヒーモス様から報告を受けていたものと確かに色々と一致してるが…。
すっげぇえっ!本物の異世界人だ…。
なぁ?触っていい?触っていい?できればペロペロしていい?」

盗賊ちゃんがケルベロスと俺を離れさせる。

「おさわりは許すが、ペロペロはダメだ。
オレだってまだしてないし…。」

流石に俺も今こんな状況でゴスロリ娘にペロペロなんかされたら色々なテンションが崩壊する。

「そうか!ならお前!俺様と一緒にペロペロしよう!それならいいだろう!?」
「ハァ!?なに言ってんだお前、そんな!そんな事…!!いい考えじゃねぇかお前…。」
「良くねぇよお前ら。わきまえろ。
いや、それよりもだ。ケルベロスさん。
ベヒーモスさんからどこまで聞いてる?
俺たちは今、イフリートにさらわれた皇女殿下を急いで救出に行かないと行けないんだ。
だから、ベヒーモスさんにはリヴァイアサンの協力を仰げって言われてたんだけど…。」

ケルベロスがんーっと考え込んだ。

「んとだなぁ、俺様が聞いてるのは魔王様と人間の間を取り持てる可能性を持つ異世界人が現れた。
だが、そのものはまだ弱いため数日をかけて強くしていく。
まぁ、そこまでだな。
イフリートの件はむしろ今聞いたよ…。
相変わらず馬鹿だなアイツは…。
そんでなるほどな…。リヴァイアサンのところへ…か。

ぐぅぅ…。

なぁおい、俺様の方が先に大賢者に会ったんだ!
俺様も頼れよ!お前のことはなんとなく気に入った。面白そうだし強そうだからな!

さっきの山を撃ち抜いたあの大魔法、お前とその従者によるものなんだろう?

ならば、俺様を従えるにゃ十分だ。
アレを喰らったりしたら俺様の力では勝てる気がしないからな。」
「君を従えるって…、そんな会ってまだ間もないのに…。」
「魔族にはある掟と言うか暗黙のルールがある。
【自分より強い奴に手を出すな。弱き者は強き者に従え。】
逆を言えば、自分の主人が自分より弱いと思ったら噛み殺して下を従えろって事だ。
あんたの力は相当だ。
俺様はもう、今すぐにでもあんたの可愛い犬になりたい…。ワンワンっ♪」
「冗談でもそう言うこと言わないの…。
そもそも闘ってすら居ないのにさ。」
「じゃあ、俺様が闘ったら満足できるか?」

そう言うと再びケルベロスは巨大な首が三つの狐に変身する。

「満足は出来るだろうけど、今は急いでんだけどなぁ…。」

俺は炎皇之手甲とサソリのガントレットを重ねて両腕に装備して身構える。
以前は片腕ずつしか展開できなかったこれも、最近両腕に展開できるようになった。

「行くぞ!大賢者!!」

そう言うと、見た目に合わずめちゃくちゃ俊敏な動きでこちらへ一気に襲いかかってくる。
俺はそれをかわし、炎皇之手甲からロケット噴射のように炎を発生させ、加速した拳を相手の腕へと叩き込む。
拳の先端にはサソリのガントレットから展開させた鋭利な毒針付きだ。

だが、相手の体の大きさに対してこいつはやっぱり小さすぎる。
決定打にはならなかった。

「やっぱ、人間サイズの拳で戦うの無理があるか…。ならば…!
炎皇之手甲…蒼炎モード!!」

戦士ちゃんの不動明王を纏う姿を参考にした新たな形態。
手甲の周りに巨大な青い炎の魔人の腕を展開させる形態だ。
こう言うデカブツを相手にするときに使えるかもと考えてはいた。
使うのは初めてだが…。
そして、インフィニティブレードを城の柱サイズの青い炎の大剣に変形させて装備した。

「な、なんだお前それ…。めちゃくちゃ強そうじゃないか…!」
「行くぞ!ケルベロス!!
そーーれとってこーーい!」

そして俺は思わずそれを遠くへ投げてしまった。

そして律儀にもそれを取ってきて俺の手元に持ってくるケルベロス。

「なにやってんだよご主人様…。
犬だけど…犬じゃないんだから…。」
「ごめん、あの見た目だからつい…。」

などと話してると

「なんだこれ…!すっごく楽しいぞ!!
もういい!やっぱ俺様の負けでいいから早く俺様をあんたの従者にしてくれ!」
「わかった…。お互い戦闘態勢を解こう…。」

俺は手甲をしまい込み、ケルベロスも人間の姿へと変身する。

「いやぁ、やっぱ強いな!あの剣を構えた時点で負けると思ったぞ!」
「途中まではあれで斬り伏せようとおもったんだけど、振りあげた時点で罪悪感が…。
動物を叩くとか無理…。」
「そうか!優しい奴なんだな大賢者様は!
これからは俺様の事は親しみを込めてケロちゃんと呼んでくれ!ベヒーモス様にはそう呼ばれていた!
あ、そだ、連絡しておかなきゃ。」

そう言うと、ケロちゃんは水晶を取り出してなにやら電話みたいな事をし出した。

「あ、ベヒーモス様?俺様、今日から大賢者様の従者になるー。じゃそゆことで。」
「え?ちょっとまってください。そこにいま大賢者さんいるんですか?というかなにがあったのです?コラ!ケロちゃん!切るんじゃな」

やっぱ、電話みたいなもんか…。
そして一方的に用件告げて切ったぞこの子…。

「改めてよろしくな大賢者様♪いや、ご主人様って呼んだ方が良いのか?」
「それもオレの特権だ!誰にも譲らん!!」

盗賊ちゃんにケロちゃんが小突かれる。

そして、ケルベロスことケロちゃんが俺たちの仲間になった。
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