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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第38話 母親と盗賊と大きな秘密。
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気づかれたか…。
「金で解決させろって言うのか?」
「私はね。まぁ、もう成人もしてる娘だ。
どっかの男に引き取ってもらえるなら願ったり叶ったりだけどさ。アタシだって生きるにゃ金がいる。
体を売ることしか知らないアタシじゃもう限界なんだよ。娘を売るくらいしかなかったくらいにね。」
「だから、アンタには返すつもりはないと言ったにゃ。
それに、この子はもう大賢者の所有物。
それを奪おうとすればアンタの方が罪人になるにゃ。
それをわかって言ってるのにゃ?」
「ケッ…なんだい…。しらねぇうちにそんな事になってたのかいうちの娘は…。まぁいい…。
はぁ…。幸せそうに買い物袋抱えて…。可愛らしい髪留めにピアスなんてつけて、唇にうっすら紅引いてお洒落して…。
うちの娘使って、うちの娘たぶらかした男脅して金でもせびってやろうなんて思ってたってのに…。」
ため息をつきながらこっちへ向かってくる盗賊ちゃんの母親…。
俺は盗賊ちゃんを俺の後ろに隠す。
「は!なんだい?王子様気取りかい?
その買い物袋の中身はなんだい?」
「この子の服だよ。」
「この髪留めとピアスは?」
「俺が作ってこの子にプレゼントしたものだ。」
「じゃ、最後にもう一つ。うちの娘、可愛いかい?」
「めっちゃ可愛い。」
「よし!こりゃ無理だ。はい、諦めた。諦めました。うちの娘をよろしくどーぞっと。
はぁ…、なんだいあんた…。数年見ないうちに随分と良い男つかまえたじゃない。
アタシとは大違いだね…。ま、幸せになるんだよ。」
そんなことを言われて盗賊ちゃんもポカンとしている。
「お、おい!母さん…。なんで、オレを探してたんだよ…。」
「言ったろう?アンタの噂を聞きつけたから金をその男からせびりに来た。
失敗したけどね。はぁ…しかしよわったねぇ…。今更何して働けって言うんだ。
まだ若い方だとは思うけど、全盛期ほど買ってくれる客も居ないし…。」
理由は深くは知らないが、色々と苦労して生きてきてるんだな…このお母さんも…。
「あとね、皇族から命狙われかねないんで生きてるうちに色々と楽しもうと思ってね。」
「皇族に命を?一体何したんだ母さんは…?」
「正確にはナニされたんだよ。
だから、アンタが産まれた。おっと、喋っちゃった。重大な秘密。ま、その男も居ないし時効だ時効。アタシゃもう、しーらないっと。」
は…?えっ…?それはつまり…。
「今、サラッととんでもないこと口走らなかったかにゃ?この女…。」
「だから言ったろう?皇族から命狙われかねないって、て言うか…もう来たのかい?皇女殿下自ら。」
ギルドの前に馬車が止まりそこから皇女殿下が降りてくる。
「申し訳ございません…。こちらにドラゴスケイルのボスを務めていた方の母親が向かっていると聞いて探していました。
色々とお話ししたいことがあり…。」
「なんだい?都合が悪くなって殺しに来たのかい?もう良い、どうせ殺されるなら大声で喋ってやろうじゃないか。いいかい?アンタの父親はねぇ…!」
「はい、存じております。若気の至りで私のお母様と言うものがありながら娼館をあそびあるき、あろうことか貴方を孕ませてこちらの盗賊さんを産ませたアホだと言うことは!!
と言うか、最近知りました!
うちの爺やがうっかり酒の席で口を滑らせたので洗いざらい白状させて今ここに至ります!
むしろ、私の父が大変なご無礼を…。
亡き父に変わり謝罪申し上げます…。」
さすがの状況に周りも最早どう動けばいいかわからないと言う状態だ。
「と言うわけで…。貴方は母親は違えど、ワタクシの妹に当たると言うわけなのです。」
「は…?はぁぁぁぁぁぁっ!?オレが、皇女殿下の妹!?というかオレの父親はまさかの今は亡き前国王だと!?
そんな話聞いてねぇぞ母さん!」
「そりゃそうよ。言ったら首飛んでたもん。
まあもう、あの男も死んだし時効よ時効。」
「そうですね…。時効で良いと思います。
まぁ、国家スキャンダルものですが当の本人はもう亡くなっておりますので…。」
「ちょーーーっとまつにゃ!!だからって皇女様!はいそうですか。ってこの件おーわりって行くような話じゃないにゃよ!?それはつまり、この盗賊ちゃんが…!第二王位継承権を元々持っていて、下手すればこの国の二人目のお姫様ってなってもおかしくない事態にゃ!」
流石にそこまで言われるとようやく周りがざわめき出す。
「は…?え…??オレ…お姫様?いやいやいやいやいやそれこそチョーーット待ってくれ!!オレの理解が色々と追いつかない!」
「大丈夫だ盗賊ちゃん!俺の理解も追いついてない!」
「今、西のギルマスが申し上げた通りです。
貴女には私を姉と呼び、そして貴女もまた皇族となる資格を持つのです。無論、その母親も…。」
「アタシは皇族になる気は無いよ。
この子もそうだ。見ての通りそんなガラじゃない。」
それを聞いた皇女殿下が今度は俺の方に向かって微笑みかける。
「たしかに、姫としてはふさわしくはないかもしれません。
ですが、こちらの大賢者様のお妃様となれば…どうでしょうか?」
は?
「ごめん、さっぱり言いたい意味が理解できないのだが…。」
「貴方についての考察は東の魔女からお伺いしています。
貴方という存在をこの世界につなぐ楔は、どれだけの人に貴方を認知させ続けるかとそして歴史に残るような規模の事をするかと言うことを。
今、そちらの元ドラゴスケイルのボスが私の妹…即ち皇女殿下の腹違いの妹であることを認め、そしてそのことを私の口から大々的に知らしめた上で偉大なる異世界人 大賢者様の妃となれば…。
貴方をこの世界に結びつける楔としては十分なものとなるでしょう。
姫として振る舞えとは言いません。
様々な意味でこの世界の常識を知らない大賢者様の妃となれば、姫として振る舞わなくとも皆違和感は感じないでしょう。」
そうかそうかなるほどなるほどな…。
「すみません。それ、もしかしなくても私今バカにされてます?」
「えぇ…。だって…貴方は…その…。決して品のあるお方ではないでしょう?
たるんだお腹にこの世界にはそぐわない服装、王への態度や立ち振る舞いに、テーブルマナーや礼節は大して存じていない…。
当然ながら貴族階級の出でもないのでしょう?
魔女さんからあなたの世界にはそう言うのを気にされるような方は余程のお金持ちくらいだとは聞き及んでいますが…。
ですからこそ、力こそが全てというような西の国の長として君臨する貴方にその妃として…という形なら、姫のような高貴さよりもむしろ暴君のような力強さの方がしっくり来るというものです。
ご理解頂けたでしょうか?」
「お、おう…。皇女殿下が腹違いの妹であるオレの事を何かこう難しい言い回しでバカにしてくれてんのはよくわかったぞ♪
皇女殿下じゃなければぶん殴りたいところだが、オレの姉っつーなら姉妹喧嘩って事でぶん殴っても許されるよなぁ?」
盗賊ちゃんが珍しく拳を握っている。
「よーし良いぞ!私の娘!やっちまえ!!皇族なんてクソ食らえだ!思いっきりやっちまえ!!」
「あの…お二人とも不敬罪って知ってます…?
盗賊ちゃんも色々とまずい状況になる前にごめんなさいしよ?ねっ?」
キッ!と盗賊ちゃんに睨まれる俺。
「オレのこたぁ別に良いんだよ!
親含めてこんなだからな!でもな!
大好きな人バカにされて怒らない奴は居ないだろうがっ!」
「ほーほー。そうかそうかお母さんは別に大好きじゃないかー。」
「茶化すんじゃねぇよ!クソババァ!」
「あぁん!?誰がババァだって口の減らないガキだね!あんたを15で産んで13年の今年29歳現在28歳だよこっちは!まだまだ男に抱いてもらえる年齢だっつーのっ!男に抱かれた事もないようなクソガキがっ!」
親子喧嘩が始まってしまった…。
え?ていうかこの人俺と同い年だったの!?
「え、えっと…。わたくしどうすべきでしょうか…。」
「いやもうここはお引き取り願った方が良いかと…。
話を整理すると、まず皇女殿下がここに来た目的は、盗賊ちゃんのお母さんが変な行動を起こすのを止めるため…ってことで良いのかな?」
「正確には私の妹を探し出し、そして彼女に皇族としての血が流れ、その資格も持つ者の一人である事を告げたいと思ったこと。
そして、私の父の過ちを謝罪しに来たという事です。
決して、こちらの方を殺しに来たり捕まえに来た訳ではありません。」
盗賊ちゃんのお母さんはタバコをふかしながら、皇女殿下の話を聞いている。
「だからって、はいそうですかなんて素直にいうと思うかい?
アタシはね。この子を産んだ後もアンタの父親にはずっと口止めの為に命狙われてたんだ。
だってのにあの男は手切れ金をいくらかぽんっと渡してきただけだ。
気がつきゃ流行病で死にやがって…。
アタシはアンタ達の父親に対して別に情もないよ。アレはあくまで私を買った客の1人だ。」
「当時は戦場を駆け回る身でもあった故に、母の目の届かないところで…と爺やは言っていました。ただただ、人肌が恋しくなって一夜の過ちをおかしたのだろうと…。」
「一夜どころじゃなかったけどねあの男は…。」
「あ、あの、一夜限りとは言葉の綾で…回数については娘として正直聞きたくないです…。」
「いやぁ~あいつはああ見えてわりとど変態だよ。あの時はたしか…。」
「だから言わないでくださいませ!私の今の年齢で…とか色々と考えると私も父の遺影を蹴り飛ばしてしまいそうなので…。」
しかし、本当にこれはなかなかの国家スキャンダルなのではないのか…?
色々と大丈夫なのだろうか…。
特に盗賊ちゃんとお母様の人生は…。
「あ、あの皇女殿下…。
ひとまず…ひとまずですが…。
私の元で、この子の母親を雇う…と言うのはダメでしょうか?働き口も必要でしょうし…。
それに、皇族の元へいきなり連れて行くと言うのは難しいでしょう?
それならば私の城で何かしらの仕事と住む場所を用意して雇ってというのは…。」
「貴方ならきっとそのように言うのではないかと思ってましたよ。
魔女様から聞き及んでいる通りのお方ですね。
彼女の身の上を知り、母親が目の前に現れるような事があれば、2人を家族として側におくかどうかをよく考えた上で最善の結論を出すであろうと…。
魔女様はそう仰っていました。」
盗賊ちゃんの母親はぽかんとした顔をしている。
「アタシは身体を売るようなことしか知らない女だよ。
汚れた体のアタシが、アンタの元で働けるような仕事はあると思わないんだけどねぇ…。」
「 俺が頼みたい仕事は、例えばほかの執事の人たちと一緒に家事を手伝って欲しいとかその程度のことくらいだよ。それ以上は特に望まない。」
「それこそ、うちの娘をさっさと嫁にしてそいつにさせな!
なんだかんだでそいつは意外と料理もできるよ?
私なんかより役に立つぞ~?」
盗賊ちゃんの方を見ると彼女もぽかんとしている。
「い、いったい何考えてんだ!
母さんを俺たちの城に雇うって…。」
「いやほら、俺の城の家政婦って女の人1人もいないしなって…。
そうなると、戦士ちゃんや妹ちゃんや盗賊ちゃんの洗濯とかアイツらがするんだよ?
アイツらがうちの女の子達のパンツ干してる姿とか想像したくないだろう?
実際、そう言うのあるから女性の家政婦さん雇うつもりで居たし、ちょうど良いかなって。」
「だからって、オレの母親雇うこたぁないだろ!?」
「それでも、知った上でほっとく気にはなれなかったんだよ。俺は俺の出来る限りで盗賊ちゃんのお母さんも幸せに今後を生きれる方法を考えたかった。」
呆れた顔で呆けている盗賊ちゃんのお母さん。
「私を本気で幸せにしたいなら、それこそ娘共々私を嫁にしてくれりゃ最高なんだけどねぇ~?
ただ、アンタなかなか口には出さないけどうちの娘が本命なんだろう?
ならそこは仕方ないから譲ってやるさ。
ひとまず、アタシはアンタの城で何をすればいい?」
「とりあえず、娘含めうちの城に住んでる計3人の女性陣に対して女性しかできないお世話をお願いできれば…。」
「はぁ…。私に小娘3人の世話をしろと…。
まぁその代わり衣食住をくれるなら悪くはないかね…。わかった引き受けたよ。
そんかわり、住み込みは勘弁してくれよ?
流石に娘と一緒に住むのは色々と…ね?」
「盗賊ちゃんはお母さんのことは嫌いか?」
むすっとした顔で目をそらしてくる盗賊ちゃん。
「なんだかんだで、俺を育てようとしたことは感謝してる。だが、男にオレを抱かせようとした事とかは許せねぇよ。
アレはそう簡単に許せるようなもんじゃない。
オレも当然一緒に住むのは無理だ。
本当なら顔も見たくなかったよ。
嫌いで当然だろう?
ご主人様、人が良いのにも限度があるぜ?
流石のオレも、今ご主人様の事が嫌いになりそうだ。
それに…。
アンタが悪いわけじゃないのはわかっちゃいるけどよ、オレの人生をこんなにした原因である前の国王の娘であるこいつも…オレは許せない。
自分だけのうのうと幸せに生きてきやがって…。
少なくとも、アンタを姉と呼ぶ気はさらさらないね。」
皇女殿下は深々と頭を下げる。
「改めて、父の犯した過ちをここに謝罪申し上げます。
ですが…いつかは貴方と私が仲良く話せる日が来ることを願っています。」
今回の件はとても難しい話だ…。
だが、俺は…盗賊ちゃんの母親を放っておくつもりにはなれなかった。
それが、例え盗賊ちゃんに嫌われてしまうような事であっても…。
「金で解決させろって言うのか?」
「私はね。まぁ、もう成人もしてる娘だ。
どっかの男に引き取ってもらえるなら願ったり叶ったりだけどさ。アタシだって生きるにゃ金がいる。
体を売ることしか知らないアタシじゃもう限界なんだよ。娘を売るくらいしかなかったくらいにね。」
「だから、アンタには返すつもりはないと言ったにゃ。
それに、この子はもう大賢者の所有物。
それを奪おうとすればアンタの方が罪人になるにゃ。
それをわかって言ってるのにゃ?」
「ケッ…なんだい…。しらねぇうちにそんな事になってたのかいうちの娘は…。まぁいい…。
はぁ…。幸せそうに買い物袋抱えて…。可愛らしい髪留めにピアスなんてつけて、唇にうっすら紅引いてお洒落して…。
うちの娘使って、うちの娘たぶらかした男脅して金でもせびってやろうなんて思ってたってのに…。」
ため息をつきながらこっちへ向かってくる盗賊ちゃんの母親…。
俺は盗賊ちゃんを俺の後ろに隠す。
「は!なんだい?王子様気取りかい?
その買い物袋の中身はなんだい?」
「この子の服だよ。」
「この髪留めとピアスは?」
「俺が作ってこの子にプレゼントしたものだ。」
「じゃ、最後にもう一つ。うちの娘、可愛いかい?」
「めっちゃ可愛い。」
「よし!こりゃ無理だ。はい、諦めた。諦めました。うちの娘をよろしくどーぞっと。
はぁ…、なんだいあんた…。数年見ないうちに随分と良い男つかまえたじゃない。
アタシとは大違いだね…。ま、幸せになるんだよ。」
そんなことを言われて盗賊ちゃんもポカンとしている。
「お、おい!母さん…。なんで、オレを探してたんだよ…。」
「言ったろう?アンタの噂を聞きつけたから金をその男からせびりに来た。
失敗したけどね。はぁ…しかしよわったねぇ…。今更何して働けって言うんだ。
まだ若い方だとは思うけど、全盛期ほど買ってくれる客も居ないし…。」
理由は深くは知らないが、色々と苦労して生きてきてるんだな…このお母さんも…。
「あとね、皇族から命狙われかねないんで生きてるうちに色々と楽しもうと思ってね。」
「皇族に命を?一体何したんだ母さんは…?」
「正確にはナニされたんだよ。
だから、アンタが産まれた。おっと、喋っちゃった。重大な秘密。ま、その男も居ないし時効だ時効。アタシゃもう、しーらないっと。」
は…?えっ…?それはつまり…。
「今、サラッととんでもないこと口走らなかったかにゃ?この女…。」
「だから言ったろう?皇族から命狙われかねないって、て言うか…もう来たのかい?皇女殿下自ら。」
ギルドの前に馬車が止まりそこから皇女殿下が降りてくる。
「申し訳ございません…。こちらにドラゴスケイルのボスを務めていた方の母親が向かっていると聞いて探していました。
色々とお話ししたいことがあり…。」
「なんだい?都合が悪くなって殺しに来たのかい?もう良い、どうせ殺されるなら大声で喋ってやろうじゃないか。いいかい?アンタの父親はねぇ…!」
「はい、存じております。若気の至りで私のお母様と言うものがありながら娼館をあそびあるき、あろうことか貴方を孕ませてこちらの盗賊さんを産ませたアホだと言うことは!!
と言うか、最近知りました!
うちの爺やがうっかり酒の席で口を滑らせたので洗いざらい白状させて今ここに至ります!
むしろ、私の父が大変なご無礼を…。
亡き父に変わり謝罪申し上げます…。」
さすがの状況に周りも最早どう動けばいいかわからないと言う状態だ。
「と言うわけで…。貴方は母親は違えど、ワタクシの妹に当たると言うわけなのです。」
「は…?はぁぁぁぁぁぁっ!?オレが、皇女殿下の妹!?というかオレの父親はまさかの今は亡き前国王だと!?
そんな話聞いてねぇぞ母さん!」
「そりゃそうよ。言ったら首飛んでたもん。
まあもう、あの男も死んだし時効よ時効。」
「そうですね…。時効で良いと思います。
まぁ、国家スキャンダルものですが当の本人はもう亡くなっておりますので…。」
「ちょーーーっとまつにゃ!!だからって皇女様!はいそうですか。ってこの件おーわりって行くような話じゃないにゃよ!?それはつまり、この盗賊ちゃんが…!第二王位継承権を元々持っていて、下手すればこの国の二人目のお姫様ってなってもおかしくない事態にゃ!」
流石にそこまで言われるとようやく周りがざわめき出す。
「は…?え…??オレ…お姫様?いやいやいやいやいやそれこそチョーーット待ってくれ!!オレの理解が色々と追いつかない!」
「大丈夫だ盗賊ちゃん!俺の理解も追いついてない!」
「今、西のギルマスが申し上げた通りです。
貴女には私を姉と呼び、そして貴女もまた皇族となる資格を持つのです。無論、その母親も…。」
「アタシは皇族になる気は無いよ。
この子もそうだ。見ての通りそんなガラじゃない。」
それを聞いた皇女殿下が今度は俺の方に向かって微笑みかける。
「たしかに、姫としてはふさわしくはないかもしれません。
ですが、こちらの大賢者様のお妃様となれば…どうでしょうか?」
は?
「ごめん、さっぱり言いたい意味が理解できないのだが…。」
「貴方についての考察は東の魔女からお伺いしています。
貴方という存在をこの世界につなぐ楔は、どれだけの人に貴方を認知させ続けるかとそして歴史に残るような規模の事をするかと言うことを。
今、そちらの元ドラゴスケイルのボスが私の妹…即ち皇女殿下の腹違いの妹であることを認め、そしてそのことを私の口から大々的に知らしめた上で偉大なる異世界人 大賢者様の妃となれば…。
貴方をこの世界に結びつける楔としては十分なものとなるでしょう。
姫として振る舞えとは言いません。
様々な意味でこの世界の常識を知らない大賢者様の妃となれば、姫として振る舞わなくとも皆違和感は感じないでしょう。」
そうかそうかなるほどなるほどな…。
「すみません。それ、もしかしなくても私今バカにされてます?」
「えぇ…。だって…貴方は…その…。決して品のあるお方ではないでしょう?
たるんだお腹にこの世界にはそぐわない服装、王への態度や立ち振る舞いに、テーブルマナーや礼節は大して存じていない…。
当然ながら貴族階級の出でもないのでしょう?
魔女さんからあなたの世界にはそう言うのを気にされるような方は余程のお金持ちくらいだとは聞き及んでいますが…。
ですからこそ、力こそが全てというような西の国の長として君臨する貴方にその妃として…という形なら、姫のような高貴さよりもむしろ暴君のような力強さの方がしっくり来るというものです。
ご理解頂けたでしょうか?」
「お、おう…。皇女殿下が腹違いの妹であるオレの事を何かこう難しい言い回しでバカにしてくれてんのはよくわかったぞ♪
皇女殿下じゃなければぶん殴りたいところだが、オレの姉っつーなら姉妹喧嘩って事でぶん殴っても許されるよなぁ?」
盗賊ちゃんが珍しく拳を握っている。
「よーし良いぞ!私の娘!やっちまえ!!皇族なんてクソ食らえだ!思いっきりやっちまえ!!」
「あの…お二人とも不敬罪って知ってます…?
盗賊ちゃんも色々とまずい状況になる前にごめんなさいしよ?ねっ?」
キッ!と盗賊ちゃんに睨まれる俺。
「オレのこたぁ別に良いんだよ!
親含めてこんなだからな!でもな!
大好きな人バカにされて怒らない奴は居ないだろうがっ!」
「ほーほー。そうかそうかお母さんは別に大好きじゃないかー。」
「茶化すんじゃねぇよ!クソババァ!」
「あぁん!?誰がババァだって口の減らないガキだね!あんたを15で産んで13年の今年29歳現在28歳だよこっちは!まだまだ男に抱いてもらえる年齢だっつーのっ!男に抱かれた事もないようなクソガキがっ!」
親子喧嘩が始まってしまった…。
え?ていうかこの人俺と同い年だったの!?
「え、えっと…。わたくしどうすべきでしょうか…。」
「いやもうここはお引き取り願った方が良いかと…。
話を整理すると、まず皇女殿下がここに来た目的は、盗賊ちゃんのお母さんが変な行動を起こすのを止めるため…ってことで良いのかな?」
「正確には私の妹を探し出し、そして彼女に皇族としての血が流れ、その資格も持つ者の一人である事を告げたいと思ったこと。
そして、私の父の過ちを謝罪しに来たという事です。
決して、こちらの方を殺しに来たり捕まえに来た訳ではありません。」
盗賊ちゃんのお母さんはタバコをふかしながら、皇女殿下の話を聞いている。
「だからって、はいそうですかなんて素直にいうと思うかい?
アタシはね。この子を産んだ後もアンタの父親にはずっと口止めの為に命狙われてたんだ。
だってのにあの男は手切れ金をいくらかぽんっと渡してきただけだ。
気がつきゃ流行病で死にやがって…。
アタシはアンタ達の父親に対して別に情もないよ。アレはあくまで私を買った客の1人だ。」
「当時は戦場を駆け回る身でもあった故に、母の目の届かないところで…と爺やは言っていました。ただただ、人肌が恋しくなって一夜の過ちをおかしたのだろうと…。」
「一夜どころじゃなかったけどねあの男は…。」
「あ、あの、一夜限りとは言葉の綾で…回数については娘として正直聞きたくないです…。」
「いやぁ~あいつはああ見えてわりとど変態だよ。あの時はたしか…。」
「だから言わないでくださいませ!私の今の年齢で…とか色々と考えると私も父の遺影を蹴り飛ばしてしまいそうなので…。」
しかし、本当にこれはなかなかの国家スキャンダルなのではないのか…?
色々と大丈夫なのだろうか…。
特に盗賊ちゃんとお母様の人生は…。
「あ、あの皇女殿下…。
ひとまず…ひとまずですが…。
私の元で、この子の母親を雇う…と言うのはダメでしょうか?働き口も必要でしょうし…。
それに、皇族の元へいきなり連れて行くと言うのは難しいでしょう?
それならば私の城で何かしらの仕事と住む場所を用意して雇ってというのは…。」
「貴方ならきっとそのように言うのではないかと思ってましたよ。
魔女様から聞き及んでいる通りのお方ですね。
彼女の身の上を知り、母親が目の前に現れるような事があれば、2人を家族として側におくかどうかをよく考えた上で最善の結論を出すであろうと…。
魔女様はそう仰っていました。」
盗賊ちゃんの母親はぽかんとした顔をしている。
「アタシは身体を売るようなことしか知らない女だよ。
汚れた体のアタシが、アンタの元で働けるような仕事はあると思わないんだけどねぇ…。」
「 俺が頼みたい仕事は、例えばほかの執事の人たちと一緒に家事を手伝って欲しいとかその程度のことくらいだよ。それ以上は特に望まない。」
「それこそ、うちの娘をさっさと嫁にしてそいつにさせな!
なんだかんだでそいつは意外と料理もできるよ?
私なんかより役に立つぞ~?」
盗賊ちゃんの方を見ると彼女もぽかんとしている。
「い、いったい何考えてんだ!
母さんを俺たちの城に雇うって…。」
「いやほら、俺の城の家政婦って女の人1人もいないしなって…。
そうなると、戦士ちゃんや妹ちゃんや盗賊ちゃんの洗濯とかアイツらがするんだよ?
アイツらがうちの女の子達のパンツ干してる姿とか想像したくないだろう?
実際、そう言うのあるから女性の家政婦さん雇うつもりで居たし、ちょうど良いかなって。」
「だからって、オレの母親雇うこたぁないだろ!?」
「それでも、知った上でほっとく気にはなれなかったんだよ。俺は俺の出来る限りで盗賊ちゃんのお母さんも幸せに今後を生きれる方法を考えたかった。」
呆れた顔で呆けている盗賊ちゃんのお母さん。
「私を本気で幸せにしたいなら、それこそ娘共々私を嫁にしてくれりゃ最高なんだけどねぇ~?
ただ、アンタなかなか口には出さないけどうちの娘が本命なんだろう?
ならそこは仕方ないから譲ってやるさ。
ひとまず、アタシはアンタの城で何をすればいい?」
「とりあえず、娘含めうちの城に住んでる計3人の女性陣に対して女性しかできないお世話をお願いできれば…。」
「はぁ…。私に小娘3人の世話をしろと…。
まぁその代わり衣食住をくれるなら悪くはないかね…。わかった引き受けたよ。
そんかわり、住み込みは勘弁してくれよ?
流石に娘と一緒に住むのは色々と…ね?」
「盗賊ちゃんはお母さんのことは嫌いか?」
むすっとした顔で目をそらしてくる盗賊ちゃん。
「なんだかんだで、俺を育てようとしたことは感謝してる。だが、男にオレを抱かせようとした事とかは許せねぇよ。
アレはそう簡単に許せるようなもんじゃない。
オレも当然一緒に住むのは無理だ。
本当なら顔も見たくなかったよ。
嫌いで当然だろう?
ご主人様、人が良いのにも限度があるぜ?
流石のオレも、今ご主人様の事が嫌いになりそうだ。
それに…。
アンタが悪いわけじゃないのはわかっちゃいるけどよ、オレの人生をこんなにした原因である前の国王の娘であるこいつも…オレは許せない。
自分だけのうのうと幸せに生きてきやがって…。
少なくとも、アンタを姉と呼ぶ気はさらさらないね。」
皇女殿下は深々と頭を下げる。
「改めて、父の犯した過ちをここに謝罪申し上げます。
ですが…いつかは貴方と私が仲良く話せる日が来ることを願っています。」
今回の件はとても難しい話だ…。
だが、俺は…盗賊ちゃんの母親を放っておくつもりにはなれなかった。
それが、例え盗賊ちゃんに嫌われてしまうような事であっても…。
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