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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。

第23話 雷帝VS獣王ベヒーモス

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今度は俺とベヒーモスさんが向かい合う。

「貴方には流石に本気で行きましょう。装備の力は惜しみなくフルに使いなさい。
私も本気で参りますので。」

そう言うと目の前のイケオジさんが真っ黒な魔力の塊に覆われて姿を変えていく。
豪腕に筋肉質で跳躍力のありそうな足…、大きな牙2本の巨大な角…。
その名の通り、ゲームでもよく見るベヒーモスに変貌した。

「獣王ベヒーモス…推して参る!」

オオオオオオ!と言う獣の咆哮が響く。
通常ならばこの咆哮で動けなくなるのがうかがい知れる。

「これは俺も変身しろってことか?」
「勿論です。死にますよ?人のままでは。」
「わかったよ…。ライド ザ ライトニング!」

俺はライトニングクオーツに魔力を流し込む。
全身を銀の鎧が覆い尽くし、関節部に白い雷光が走り変身が完了する。

「行くぞ!」

雷光の如き瞬間移動で一気に間合いを詰めて雷撃を叩き込む。

「ふむ…流石です。やはりその姿、神の力を宿していますね。
我ら魔族をいとも容易く傷付ける神の力…。
貴方の世界の石にその力が宿っているのでしょうね。
先程、おいなりさんに背後を取られた時は肝が冷えましたよ。」
「神の力…?」
「えぇ。人の世界の外側に居る高異次元の存在。
その力は魂すら書き換え討ち亡ぼすとも言われています。
魔族は言わば地上に堕ちた神…。そして人を殺す者。
神はそんな地上に堕ちた魔族を殺す者。
などと言われたりもしていましたね。」

この力にはそんな要素もあったのか…。
確かに魔を打ち払う雷…。そう言うイメージで作ったものではあるが…。

「あれ…。そう言えば俺、この姿で普通に喋れてる…。なんでだ?パワーダウンしたのか?」
「逆です。貴方に馴染んだのですよ。
貴方のそれは魔法と同じですからね。使えば使うほど術者に馴染みより強い力へと進化、成長していく。ただ、貴方のそれは限界まで力を使い果たさねば成長しないのです。
なので、本気で戦わせたいわけです。
このように!」

ドンっと地面を砕く勢いで跳躍しとんでもない速度でこっちへ飛んでくるベヒーモス。
俺はそれを再び雷光の瞬間移動で背後に回り込みかわした。
と思ったがその瞬間、そのすごい足で蹴り飛ばされる。
この体じゃなかったら間違いなく上半身は消し飛んでいただろう勢いだ。
そのままこちらに振り返り超高速でその豪腕に魔力を纏って衝撃波と共に何発も叩き込んでくる。
俺はそれを鎧を変形させた盾で受け止める。

「本当に便利な力ですね。
私の拳を受けきるとは…。大した装甲です。
アーマードドラゴンなど比じゃない強度ですねぇ…。」

俺は両手の鎧を変形させ、プラズマで構成した剣…つまりビームサーベル的な物を放ちベヒーモスの腕を切り落とす。

「おや…。簡単に落としてくれますね。
では、アーマードドラゴンの時のようにブレスの撃ち合いと行きましょうか…!」

ベヒーモスは頭の角で口の前に黒い魔力の塊を作り出す。

俺も両掌を例のポーズで重ねてその中心に雷撃魔法を溜め込む。

「雷光ぉぉぉぉ…波動拳!!」

ベヒーモスもそれに対抗するように黒い波動のブレス攻撃を放つ。
互いの力がぶつかりあいあたりの空気が震える。
力を放ちきり互いの波動が打ち消しあう。
流石にアーマードドラゴンのように簡単には行かないか…。

「やっぱ、強いな…。」
「当然です。」

ベヒーモスは切り落とした腕を魔力で引き寄せくっつけて再生してしまった。
そして、今度は両掌に黒い円盤を出現させこっちに超スピードで放ってくる。
俺はそれを前方に瞬間移動し交わそうとするが、放たれたそれは追尾能力があったらしい。
今度は俺の腕を切り落とした。

「ぐぅうっ!!いっでぇぇぇっ…!!」

しかし、腕は切り落とされたが血は出てない。
俺の身体が雷になっているからか…?
ならば…と俺もベヒーモスがさっきしていたように雷で切り落とされた腕を引き寄せくっつける。

「おぉ!!できた!!」
「えらいえらい♪よく出来ました。
そう。今の貴方は本気を出した私たちと似たような力もあります。
四肢を分断されようが腕を消しとばされようが首を落とされようが、魂が尽きぬ限りは何度でも再生できます。」

なるほどな…。この力、やっぱすげぇな…。
というか、雷光波動拳を打ったのに前回と比べても身体の魔力が尽き始めてる時みたいな変な感覚は何もない。

「魔力は使い切れば使い切るだけその総量が大きくなるのです。
魔法使いさんも魔女さんに鍛錬してもらいながら何度も何度も魔力を使い切ったのでしょう。それもこの短期間の間に何度も…。
故にそれだけの力を手に入れたと推測します。
貴方も同じですよ。アーマードドラゴンとの戦闘で、死に至る直前まで魔力を使い切った。
そしてそれが貴方に新たな力を与え始めている。」
「新たな…力…。」
「まぁ、貴方の想像力で如何様にも変容しますよ。ファイアークォーツ同様にね。」

ならば…、やってみるか…。
フォームチェンジ!!

「ファイアークォーツとの重ね使用はやめておきなさい。今の貴方では耐えられません。
魂が燃え尽きて人に戻れなくなりますよ?」
「うーん、やっぱそれは危険か…。」
「えぇ、せめてサソリと薔薇の水晶にしておきなさい。」

との事なので言われた通り、サソリと薔薇の水晶を取り出し右腕の鎧と融合し右足に雷撃を集め集中させるすね当てを形成する。

「やってみたかったんだよ。ヒーローみたいな…必殺キック…!!」

俺は雷光波動拳と同じ要領でその右足に強力な雷撃の力をたっぷり集める。

「ほう…。では、見せていただきましょうか。その力を…!」

ベヒーモスさんは再び黒い円盤を大量に生成し俺めがけて投げ飛ばしてくる。

俺はそれを右足で蹴り飛ばし、その魔力をその右足に取り込んでいく。
ファイアークォーツの炎帝之手甲形態と同じような性質の力だ。

「なるほど。では、こちらは吸収しきれますか?」

そして再び黒い波動のブレス攻撃を放ってくる。
俺はそのブレスめがけて右足を突き出し、雷光の瞬間移動を行いながらブレスに突っ込んでいく。

「雷蛇キイィィィイック!!」

右足に一点集中した強力な雷を纏った蹴りがベヒーモスの土手っ腹に炸裂する。
そしてその蹴りから相手の身体に大量の雷が一気に流れ込み、その雷に耐えきれなくなったベヒーモスの身体を爆発四散させる。

「ヒーローの必殺キックが当たった敵は、爆発四散すると相場が決まっているんだよ。」

俺は変身を解き、観覧席に再生されたベヒーモスさんと向き合う。

「お見事です。
ですが、勇者さんと比べたらまだまだですかねぇ…。
かっこよく敵を倒す事にこだわるところは勇者さんもでしたが…。
あれ、なんかこう…動いちゃダメな気がしてついやられちゃうんですよね。
勇者さんには派手に剣を構えられて巨大な光の剣で一刀両断されました。」

勇者ってそっちの勇者かよ!
まさか日が昇る勇者パースでバリってアレしたのか!?
若い人にはわかりにくいネタになってきてるよ!

「なんにせよ大変お見事でした。
今の貴方なら十分に魔王様と戯れられるでしょう。ただ…、やはりその力…魔力の欠乏が早すぎますね。
本日はここまでに致しましょう。
あなた方は城に戻りなさい。
大賢者様、貴方にはこちらを差し上げましょう。」

俺はベヒーモスさんから小さな石を渡される。

「これは…?」
「貴方のところの魔女さんにでも見せて差し上げてください。
魔王様から預けられていた、転移門を任意的に作り出す宝珠です。
この世界の範囲内かつ一度貴方が訪れた場所なら、水鏡を含め姿見になるものすべてをゲートにすることが可能です。
きっと貴方のところの魔女さんならこれを瞬時に理解し、量産することもできるでしょう。
ちなみに、これは記憶を利用して転移する宝珠です。
なので、この宝珠は皆が行ったことがある場所しか行けないのでご注意を。
1人でもその場所に行ったことがなければ取残されますのでご注意を。」

俺は宝珠に魔力を込めて見る。

「おぉ…。俺が借りてる部屋の鏡を想像したが、確かにきちんと繋がってるな…。」
「私たちもこの部屋には入ってますから、大丈夫そうですね。」
「とりあえず帰ろっか…。ここまで派手に動いたから流石に疲れた…。」

俺は靴を脱いでから、宝珠が作りだしたゲートに足を踏み入れる。

「では、明日もお待ちしておりますよ。
あ、ここへのショートカットは用意しておりませんので、明日も山登りから始めてくださいね~。」
「今日はありがとなベヒーさん。んじゃ、明日もよろしく頼むよ!」

俺たちはゲートを通り、俺の部屋へと転移した。

約1名をその場に残して。

「…………。みんなぁぁぁあ!!僕のことわすれないでよぉぉぉおっ!!」
「貴方は早く自分の国に帰りなさい…。
貴方の剣など、私や彼等の前ではとても教えるに値するようなものではありませんよ。
戦士さんは荒削りですが、貴方の剣などあと1日もあれば私が超えさせて見せますよ。
私を倒すことで刻まれる魂の経験値は相当な物です。
私から逃げ果せた場合でもね。
魔法使いさんと盗賊さんも同じく数日でさらなる領域へ行けるでしょう。
貴方達人間の言うS級…。私からすれば条件が甘すぎると思えるくらいですね。」
「確かにそうだろうね…。
まぁそれでも、S級に至れるのはごく僅かなんだよ。
そもそもS級のスキルはそう簡単に目覚めるものではありませんから…。」

ベヒーモスは椅子に腰掛け頬杖をつきながら話し出す。

「えぇ、だからこそ彼の周りに集まったあの3人は…異常なのですよ。
きっと、彼にはあるのでしょうね。
そのようなもの達を引きつける何かが…。
そう言えば、当然知っているのですよね?
彼はこの世界に来た時点でS級のスキルを保有していた事を…。」
「えぇ…驚きましたよ。
鑑定眼で見たときはこの目を疑いました。
それはこの世界における創生の物語で語られる神話の中の伝説のスキル…。
この世界に現存することはないと言われていたスキルです…。」
「【想像之創造者】貴方達の言うS級スキルの基準はわかりかねますが、その力はまさに神の領域…。あの力を最大限に活かしきれるなら誰も叶いますまい…。問題はそれを完全に使えるように至る為の魔力総量ですね。
彼は自分より強いものと何度も戦い、その都度力を使い果たし、強くなって行くのが最も手っ取り早い。
自分より弱いもの相手に魔力を使い果たして勝っても、彼は強くなりません。さて…どのように導きましょうかね…。」

ベヒーモスは思案に耽りながら皇族のギルマスを見据える。

「勇者と戦わせて見るのもありかもですね…。」
「あの子と…ですか…。どう見てるのです?貴方は…。」
「負けますよ彼は。今の彼の力では勇者と戦えば負けます。まだまだ足りないのですよ。
真の力を解き放つには…。」
「ところで、ベヒーモスさん。僕にもその…ゲー」
「貴方は歩いて帰りなさい。」

その後、皇族のギルマスは数時間かけて山を降り鉄道に乗って国に帰ったらしい。

一方俺たちは、完全に力を使い果たし夕飯までのおよそ1時間の間に眠っておくことにした。

「ご主人様、大丈夫なのか?派手に力を使ってたが…。
魔力欠乏症は発症するとキツイぞ?
その…、今のうちにキス…しとくか…?」
「あぁ、知ってる…。初めて雷帝の力を使った時にそれなって、魔女さんにキスしてもらって助けてもらってるし…。」
「へぇ…。魔女さんとねぇ…。」

俺はベッドの上で横になりながら、盗賊ちゃんを抱き寄せる。

「な、なんだっ!?その…やっぱキス…したいのか…?」
「俺のムラムラ度合いとか感情がわかるなら、なんとなくわかるだろ…。
色々と限界だよ…。ただ、手は出したくない…。」
「なんでだよ!オレが良いって言ってんだから…その…色々としたいなら…しても良いんだぞ…?」

俺はその言葉をスルーして眠りについた。

「むぅ…。ほんとご主人様は…。
オレも少し…寝よ…。」

盗賊ちゃんが俺の胸元に手を回し背後からギュッと抱きついてくる。

「冗談とか抜きで、苦しくなったら遠慮なくキスして来いよ…?じゃないと、オレの方から…キスしちまうんだからな…。」

眠る俺を抱きしめながら盗賊ちゃんはそんなことを言っていた。

しかし…やっぱ派手に力を使いすぎたな…。
すげぇ眠い…。

しっかし、このまま少し寝て、目を開けたら可愛らしい女の子が俺にぎゅっと抱きついてると思うと、それは確かに嬉しい限りだな…。
盗賊ちゃんの俺に向けてくる一途でまっすぐな好意は確かにすごく心地よい…。
だが、これだけみんなが好意を向けてくれている中で1人を選ばなきゃ行けないのは…確かに辛いんだよな…。
でも、かと言って一夫多妻制だからとみんなを愛するなんてことは…。

-------

「もう1時間位はたったか…。そろそろ起きないと…。」

俺はゆっくりと目を覚ます…。
きっとまた、目を覚ますと盗賊ちゃんが俺にまた抱きついてくれてるんだろうな…。

と思っていたが特に抱きつかれているような感触がしない。

ようやく覚えたか…とも思いつつちょっぴり寂しい…。

「先に食堂向かったのかな…。俺も起きて飯食うか…。」

そう思って、眠い目をこすりながら目を覚ます。

やはり盗賊ちゃんは居ない。

だが、それ以上の違和感があった。

いや、むしろどこからどこまでが違和感なのかわからない。

俺が目を覚ました場所は…


俺の


部屋だった。




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